『さらば あぶない刑事』:2016、日本

横浜港警察署捜査課のタカとユージは闘竜会の資金源を断つため、若頭の伊能丈治を逮捕しようと考えていた。タカは情報を得るため、素性を隠して留置所に入った。彼は鴻上という男と接触し、伊能が仕切るブラックマーケットの場所を知った。川澄和則は伊能の命を狙い、ブラックマーケットに乗り込んでいた。タカとユージは車でブラックマーケットに突っ込み、銃撃戦が勃発する。ユージは足を洗ったはずの川澄を目撃して驚くが、逃げる伊能を車で追う。しかし何者かのバイクに妨害され、タカとユージの車は横転した。
翌日、署へ赴いたタカとユージに、課長のトオルは「あと4日で定年退職じゃないですか」と告げる。トオルは勝手な行動に不満を漏らすが、タカとユージは軽く受け流した。トオルが勝手な行動を諌めるのは、2人に殉職してほしくない気持ちもあった。若手の津久浦と保谷を叱責する岸本も、タカとユージに「あと4日、おとなしくしていて下さい」と頼んだ。重要物保管所の所長を務めるカオルはタカとユージをお茶に誘い、結婚パーティーの招待状を渡す。パーティーは1週間後で、今の仕事に辟易しているカオルは4日後に退職することも決めていた。相手はIT企業の社長で、カオルは退職金を前借りして会社の株を購入していた。
パトカーが出動するのを見たタカとユージは後を追い、左手首を切断された伊能の死体を目撃した。NPO法人「横浜港を守る会」会長の松村優子は神奈川県警察本部長の深町新三と会い、トオルが同席した。横浜港を守る会は集めたデータを県警に提供し、捜査に協力していた。横浜では危険ドラッグを闘竜会、覚醒剤を中国マフィア、拳銃をロシアマフィアが取り扱い、3つの組織に棲み分けが出来ていた。だが、まとめていた伊能が殺されたため、組織間の争いが激しくなることを深町たちは危惧していた。
ユージは退職後におでん屋を開いているパパを訪ね、川澄のことを語る。かつて川澄は不良グループが暴力団に利用されないよう尽力しており、ユージが仕事を紹介した。川澄は暴力団に拉致された仲間を助けるために相手を半殺しの目に遭わせ、懲役刑を食らっていた。タカは若い恋人の夏海とホテルのレストランでデートし、ニュージーランドのオークランドへ移住する計画を確認する。外交官だった夏海はタカに付いて行くため、仕事を辞めて家も引き払っていた。
レストランにキョウイチ・ガルシアという男が現れ、夏海に話し掛けた。ガルシアが去った後、夏海はロスで会ったビジネスマンだとタカに説明した。ディーノ・カトウという男は伊能の側近だった樋口を伴い、闘竜会事務所を訪れた。彼は闘竜会の会長である奥西竜司に、ブラックマーケットを自分たちに仕切らせろと要求した。彼はスマホを握り締めた伊能の左手を見せ付けて、「よっぽど大事なデータが入ってるんだろうなあ」と言う。カトウは「これは我々が頂く」と言い、襲って来た組員を殺害した。彼は「近々、ボスを紹介するよ。我々と組めばビジネスはもっと大きくなる」と告げ、さらに2人の組員を撃って事務所を後にした。
ユージはタカのデート現場へ赴き、川澄を「シャキッとさせたいから協力して」と頼む。ユージは通り過ぎるカトウが奥に座るガルシアの元へ赴いた時、火薬の匂いに気付いた。次の日、タカとユージは山路瞳に調べてもらい、ガルシアとカトウの名前や国籍を知る。2人とも経営管理ビザで来日しており、犯罪歴は無かった。カトウに殺された3人の死体が港で発見され、横浜海上警察署の谷村たちが現場検証を行う。タカとユージは現場へ行き、背広の内側にコーヒー豆が入っていたことを鑑識係から知らされた。
タカとユージはガルシアの宿泊するホテルへ行き、部屋にいたカトウを連行する。タカはガルシアが拳銃を所持しているのに気付いたが、そのまま部屋を出た。取り調べを受けたカトウは、密輸との関わりを否定する。コーヒー豆からカトウの唾液は検出されず、タカとユージは彼に暴行させることで逮捕に持ち込んだ。カトウのタトゥーを見た2人は、アメリカで最悪のギャングと言われているBOBのメンバーだと気付いた。トオルはタカとユージの動きを抑えるため、警察IDと拳銃を回収して2日間の休職を命じた。トオルは「命令に背けば退職金は無し」と言うが、タカとユージは従うつもりなど無かった。
ユージはパパからの電話で、川澄が本牧ギャングの幹部だった石黒を頼るはずだと聞かされる。ユージは石黒が店長を務めるCJカフェを訪れるが、川澄とは1年以上も会っていないと告げられる。彼が嘘をついていると見抜いたユージは店を張り込み、出掛ける石黒を尾行した。タカはユージを呼び出し、食事に誘われたガルシアと会って情報を聞き出す考えを明かす。ユージは彼女が本気だと知り、「バカなこと言うな」と釘を刺した。
石黒は川澄と会い、頼まれていたホテルの案内図を渡す。彼は復讐を中止するよう説くが、川澄の考えは変わらなかった。そこへユージが乗り込むが、川澄は逃亡した。ユージは石黒を問い詰め、川澄の目的を吐くよう脅した。ガルシアは中国マフィアのボスである黄と会い、手を組むよう持ち掛けた。彼が「ビジネスの安全はBOBが保証するが、全てのアガリの30%は頂く」と話すと、黄は協力を断った。彼は手下にガルシアの始末を命じるが、中国語の理解できるガルシアは周という男を残して皆殺しにする。彼は周を脅し、「中国マフィアの頭はお前がやれ」と指示した。
ユージはホテルへ向かう川澄を待ち受け、「お前の手に負える相手じゃない」と告げる。川澄は仲間3人を闘竜会が開発した危険ドラッグの実験台にされ、虫けらのように殺されていた。彼は全てのデータが保存されているハードディスクを盗み出そうと考えており、「それを渡すんで、奴らを叩き潰して下さい」と持ち掛ける。ユージは川澄と共にホテルへ乗り込み、見張りの2人を襲って昏倒させた。ガルシアがホテルへ戻るとロビーでタカが待ち受けており、「少し話さないか」と告げた。
室内を捜索したユージは金庫を開け、ハードディスクを手に入れた。タカはホテルのバーでガルシアと酒を飲み、「横浜を手に入れたと思わないでほしいな」と告げた。部屋に戻ったガルシアは、ハードディスクが盗まれたことを知った。次の日、タカとユージはカトウが釈放されるのを見送り、松村が来ている重要物保管所へ赴いた。2人は松村にハードディスクを渡し、調べるよう依頼した。ガルシアはBOB本部と連絡を取り、貨物船で予定通りのブツが届くことを確認した。彼は奥西に電話を掛けて、「1回目の取引を行う。新しいルートだ」と告げた。
タカとユージがナカさんのラーメン屋台で話していると、松村がやって来た。彼女はハードディスクのリストを県警に回したこと、その夜に入港するリベリア船籍のボゴタ号が間違いなく密輸船であることを語る。ガルシアは3つの組織と会合を開き、「ビジネスに参加してくれて感謝する。この街は我々の物だ」と乾杯した。タカとユージは深夜の横浜海上警察署を訪れ、ブツが投棄された可能性があるので捜索するよう要請した。
夏海からユージに連絡が入るが、話し掛けると無言のまま切れてしまった。掛けて来た位置を確認すると新山下埠頭だったため、タカとユージは罠だと確信する。2人はトオルの元へ行き、休職期間が終わったので警察IDと拳銃を渡すよう要求した。夜が明けてからタカとユージが埠頭へ到着すると、倉庫で夏海が拘束されていた。カトウが向かいの建物から狙撃して来るが、タカが夏海を連れ出した。ユージはカトウを追い掛け、タカはバイクで襲って来たガルシアと戦う…。

監督は村川透、脚本は柏原寛司、製作総指揮は黒澤満、製作は中山良夫&遠藤茂行&木下直哉&間宮登良松&沢桂一&藪下維也&熊谷宜和&吉川英作&松田陽三、企画は奥田誠治、エグゼクティブプロデューサーは門屋大輔、プロデュースは近藤正岳、プロデューサーは畠山直人&佐藤現、共同プロデューサーは飯沼伸之、ラインプロデューサーは望月政雄、撮影は仙元誠三、照明は椎野茂、美術は山崎秀満、録音は室薗剛、編集は只野信也、アクション監督は高瀬将嗣、音楽は安部潤、音楽スーパーバイザーは佐久間雅一&浦田東公、挿入歌は「RUNNING SHOT」(柴田恭兵 feat. T.NAKAMURA,SENRI KAWAGUCHI & SHIGEO NAKA)、エンディングテーマは「冷たい太陽」(舘ひろし)。
出演は舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオル、吉川晃司、木の実ナナ、小林稔侍、菜々緒、夕輝壽太、吉沢亮、入江甚儀、ベンガル、山西道広、伊藤洋三郎、長谷部香苗、宮下順子、片桐竜次、須藤正裕、衣笠拳次、海一生、池田努、松浦慎一郎、成田瑛基、加賀谷圭、ホリベン、谷村好一、東村久也、一ノ瀬ワタル、安藤彰則、森聖二、瀬木一将、田中壮太郎、候偉、尚玄、飯沼千恵子、本郷弦、伊藤悌智、稲輸吉泰、前田慎治、重廣レイカ、北代高士、木村優介、太田剛、大山うさぎ、芸利古雄、岩田貴代志、片方隆介、江戸松徹、蛭川信博、鋼鐡男、ANGELLA、横田梓、塩澤眞佐子、薗田法拳、早川勇平、市原博、高野光希、福野麗生馬、渡辺能仁、高橋毅、LiLiCo他。


人気のTVドラマからスタートした「あぶない刑事」シリーズの劇場版第7作。
前作『まだまだあぶない刑事』からは10年3ヶ月ぶりの続編となる。
一応、今回で完結編ということになっている。
今までは「これで終わりですよ」と謳っておきながらシリーズを続けるという、どこかのプロレスラーみたいな「辞める辞める詐欺」を繰り返して来たが、今回はタカとユージが定年を迎えたので、さすがに続けることは無理だろう。

タカ役の舘ひろし、ユージ役の柴田恭兵、カオル役の浅野温子、トオル役の仲村トオル、松村役の木の実ナナ、深町役の小林稔侍、ナカさん役のベンガル、パパ役の山西道広、岸本役の伊藤洋三郎、山路役の長谷部香苗、谷村役の衣笠拳次、竹田役の海一生は、シリーズのレギュラー陣(途中からの参加者も含まれる)。
ガルシアを吉川晃司、夏海を菜々緒、カトウを輝壽太、川澄を吉沢亮、石黒を入江甚儀、パパの妻を宮下順子、奥西を片桐竜次、伊能を須藤正裕、津久浦を池田努、保谷を松浦慎一郎が演じている。
監督はTVシリーズに参加し、劇場版では第3作と第4作を担当した村川透。
脚本の柏原寛司は、劇場版の全てに参加してきた皆勤賞だ。

『あぶない刑事』ってのは一言で表現するならば、「バブルと寝たTVドラマ」だった。
その軽いノリと小粋なテイストは、バブル景気に浮かれる人々の感覚に上手くマッチしたことでヒットした。
だから、その後も劇場版としてシリーズは続いたが、どんどん時代の求める感覚とは合わなくなり、その演出は「かつてはカッコ良く思ってもらえたかもしれないが、もはや時代遅れでカッコ悪い」というモノへと変化した。
そして、「すんげえテキトーで大雑把な脚本」が悪目立ちする状態になってしまった。

そんな『あぶない刑事』のノリを、この映画は良くも悪くも全面的に引き継いでいる。これといったアップデートを行わず、大きな変化も加えず、「かつて多くの視聴者が愛した『あぶない刑事』のノリ」を踏襲している。
だから、TVシリーズのファンだった人々からすると、「そうそう、こういう作品だったよなあ」と懐かしさを覚えることだろう。
ノスタルジーだけで全てを受け入れることが出来る人には、この映画を手放しでオススメできる。
しかし、それだけでは厳しいという人、あるいは『あぶない刑事』に何の思い入れも無い人の場合、デタラメすぎるシナリオや寒々しい演出はキツいだろうし、老体のタカとユージが痛々しく思えるかもしれない。

まず冒頭、ユージが留置場へ行き、タカを釈放してもらう。タカは情報を得るために素性を偽り、鴻上という男に接触していた設定だ。
しかし、そんな設定にしている意味が全く無い。何しろユージが留置所へ行くと、すぐにタカが現れて解放されるのだ。
彼が素性を隠して潜入捜査していたという設定は、物語の展開に何の影響も与えていない。
いきなり「タカとユージがブラックマーケットへ向かう」というシーンから始めても、まるで変わらないのだ。

この映画を観賞する中で「一見さん」は少数派だと思うが、初めての人は序盤から困惑する羽目になるかもしれない。
何しろタカとユージは伊能の情報を得ると、2人だけでブラックマーケットへ乗り込むからだ。
「どう考えたって上司に連絡したり応援を要請したりすべきだろ」と思う人がいるかもしれないが、それは当然の感覚だ。しかし『あぶない刑事』の場合、貴方の思う常識など通用しない。
タカとユージは基本的に、自分たちだけで捜査し、自分たちだけで犯人を逮捕しようとする。時には他の刑事と行動を共にするが、それは「必要な時だけ利用する」ということに過ぎない。

2人だけで行動しても、それでキッチリと事件を解決できるなら、もちろん何の問題も無い。しかしタカとユージは、何度も失敗を繰り返す。
この映画でも、のっけから「ブラックマーケットで伊能を取り逃がす」という失態をやらかしている。
それも当然で、何の策も用意せず「正面から車で突っ込む」というだけなのだ。当然の流れとして、敵の発砲を受け、その間に逃げられる。
それでもタカとユージは全く反省しないし、その後も2人だけで事件を解決しようと目論む。
この2人は、学習能力が皆無に等しいのである。

たぶん一見さんからすると、いきなり始まる銃撃戦は「タカとユージの行動がアホすぎる」という印象が強いだろうし、銃の撃ち方も荒唐無稽に思える可能性が高い。
それらを全て「あたたかい目」で見ることが出来るのは、きっとノスタルジーの心地良さに浸る人々だけだ。
どれだけ発砲を受けても無防備なタカとユージには全く当たらないし、どんなに緊迫したシーンでも2人はジョークを忘れない。
一見さんには分からないかもしれないが、その軽いノリが昔は受けたのよ。

カオルが派手なファッションに身を包み、やたらと大げさな動きや喋り方をするのも、「いかにもバブリー」と感じさせるノリだ。
時代が大きく変化しても「相変わらずのカオル」が登場するのだから、かつてのファンからすると「あの頃と同じ」という嬉しさがあるだろう。そこがガラリと変化してしまったら、きっと寂しく思うはずだ。
「年を取っても、時代が変わっても、カオルはカオルのまま」であることが、彼女の存在意義だと言ってもいい。
だから、それを「痛々しい」とか「寒々しい」と感じる人には、この映画が根本的に合わないってことなのだ。それは、もはや「映画としての質が云々」という問題ではない。

タカが夏海とデートしているとガルシアが現れるが、「タカか夏海の動きを追い掛けていた」ってわけではなく、ただの偶然だ。そして彼は、過去にロスで夏海と知り合っている。
その辺りは見事なぐらいの御都合主義だが、そういうのは『あぶない刑事』では良くあることだ。
シーンが切り替わるとカトウが現れ、闘竜会の事務所で組員を射殺する。しかし他にも大勢の組員がいるのに、報復しようとせず、ただカトウが立ち去るのを見送るだけ。
それは不自然さがあるが、そういうのも『あぶない刑事』では良くあることだ。

タカとユージがガルシアの部屋を訪れると、都合良くカトウがいて、なぜか灰皿にはコーヒー豆が入れてある。ガルシアは分かりやすく脅しを掛け、タカは彼が銃を持っているのを目にする。
タカとユージが暴れるカトウを取り押さえると、都合良くシャツがはだけて腹のタトゥーが見える。タカとユージは警察IDと拳銃を没収されるが、それ以降の行動には大した影響を及ぼさない。
ガルシアは1人だけで中国マフィアの船に赴き、二丁拳銃で簡単に周以外の全員を始末する。
雑な展開や御都合主義が目白押しである。

川澄を取り逃がしたユージだが、簡単に彼を待ち伏せている。川澄の計画を知ったユージは、彼を更生させようとしていたのに、「全てのデータが保存されているハードディスクを渡す」と持ち掛けられると危険な行動を容認する。
色々と気になるかもしれないが、気にしたら負けだ。っていうか何1つを気にすると、全てが気になり始めるから避けた方がいい。
ガルシアは律儀なことに、金庫にハードディスクを入れている。しかも誕生日が暗証番号で、たまたまユージが覚えていたので金庫が開く。
金庫に入れているのも、暗証番号を誕生日にしているのもバカバカしいが、そういうのも『あぶない刑事』の味わいだ。

本当に利口な刑事なら、ハードディスクが盗まれたことをガルシアに気付かせないような作戦を考えるだろう。
しかしユージはオツムがパッパラパーなので(タカも)、そんなことは全く考えない。川澄からハードディスクを盗む計画を聞かされると、すぐにホテルへ向かう。「見張りを倒して部屋を探る」という、「そんなことしたら盗んだのはバレバレだし、すぐに敵は奪還や報復に動くだろ」と思うような行動を取る。
しかしガルシアは、なぜかハードディスクが盗まれたことに対する行動を何も取らない。
「なぜか」と書いたが、そこで「なぜ?」と考えるような人は、この映画に向いていない。
全てを寛容に受け入れる人こそ、この映画にふさわしい観客だ。

タカとユージは松村にハードディスクを渡すのだが、赴く場所は重要物保管所。たまたま松村がカオルを訪ねているという御都合主義だ。
松村は仕事が迅速で、その夜にはデータの内容を調べ上げてタカとユージに教えている。
それを教える時、タカとユージがナカさんの屋台にいるってのも、なぜか松村が2人の居場所を簡単に突き止めているのも、これまた御都合主義だ。
かつての仲間たちは退職しているので、全員を登場させようとしたら、それなりに無理をする必要があるってことだ。

ガルシアはタカとユージへの復讐心を抱くカトウに「リスクを減らす」と言うが、それが「夏海を倉庫に拘束して誘い出す」という作戦なんだろう。
しかし、それが何のリスクマネージメントにも繋がらないのが『あぶない刑事』だ。
で、夏海を助けたタカをバイク野郎が襲撃し、それがガルシアであることが判明する。つまり序盤にブラックマーケットで現れたのもガルシアってことだが、そこで正体不明の人物として登場させておいた意味が全く無いのも『あぶない刑事』らしさだ。
ガルシアは日本での仕事を任されたチームのボスなのに、手下を差し向けるのではなく自らバイクで突っ込むのはバカっぽいが、だからこそ『あぶない刑事』なのだ。

カトウは車に乗り込み、拳銃を構えるユージに向かって走る。だったら突っ込んでひき殺そうとすればいいものを、なぜか横を通り過ぎる。
だから発砲を受けて車が横転するのだが、すぐにユージが駆け付けたのに、なぜかカトウは消えているという魔法使いみたいな行動を取る。
一方、ガルシアはユージと格闘するが、夏海が拳銃で撃とうとするのを見てアイスピックを投げ、その場から逃走する。
ボンクラすぎる行動を取った夏海は死亡するのだが、「何のために出て来たのか?」と言いたくなるぐらいボンクラな役回りだ。

もちろん夏海が「人質になって殺されるため」に出て来たことは言うまでも無いが、「そんな役回り、ホントに必要ですか?」と問いたくなる。
ハッキリとした口調で「要らない」と答えたいところだが、何しろ『あぶない刑事』なので、ちょっと考えてしまう。
ただし「タカに若い恋人がいる」ってのはノスタルジーに何の関係も無い要素だし、菜々緒は新参者だから、やっぱり「要らない」と答えておこう。
ちなみにタカは恋人の死を受けて号泣するが、こっちは夏海に何の思い入れも無いので、まるで心は揺さぶられない。

あえてハッキリと断言してしまうが、これは「どうしようもなくダメな映画」である。何から何までカッコ悪いし、何から何まで痛々しい。シナリオは「大雑把にも程があるだろ」と言いたくなるような仕上がりだし、演出もグダグダだ。
しかし、エンドロールでは今までのシリーズの映像が流され、かつて見ていた人ならノスタルジーを喚起されるだろう。
だからタカとユージ、そしてシリーズに携わった全ての人々に「お疲れ様」と言いたい人は、見ても損は無いと思うよ。
ノスタルジーだけなら、間違いなく感じさせてくれるから。

(観賞日:2017年3月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会