『七人の秘書 THE MOVIE』:2022、日本

望月千代、照井七菜、長谷不二子、朴四朗、風間三和、鰐淵五月は萬敬太郎が経営するラーメン店「萬」に集まり、ラーメンを食べていた。七菜は千代たちに結婚することを明かし、相手は信州で牧場を営む九十九二郎だと話す。二郎の父親は信州を中心にホテルやレストラン、牧場など様々なビジネスを展開するアルプス雷鳥グループのCEOだ。そして二郎は、アルプス雷鳥牧場の経営を任されていた。七菜が彼とマッチングアプリで出会ったことを話すと、千代たちは「絶対に失敗する」と断言した。北アルプスで盛大な結婚式を挙げるので来てほしいと七菜が言うと、千代たちは「誰が行くか」と声を揃えた。
後日、千代は九十九邸へ向かう途中、山で道に迷ってしまった。そこへラーメン屋「味噌いち」の主人である緒方航一が通り掛かり、車で九十九邸まで送ってくれた。彼は千代に「熊より恐ろしい人間がいる」と忠告し、その場を去った。千代が屋敷に入ると、九十九家の息子である三郎と四郎と五郎丸、長野県知事の海藤和晃、アルプス雷鳥グループ顧問弁護士の九十九美都子、アルプス市長の北村旭たちが来ていた。しかし道山は現れず、二郎も一向に姿を見せなかった。
千代は七菜に、二郎に逃げられたんじゃないかと告げた。牧場から火が出ているという知らせを受けて、千代たちは現場へ向かった。二郎は左手から血を流し、離れた場所で火事になっている牧場の小屋を眺めていた。小屋は全焼し、北村の遺体が発見された。道山が牧場に姿を見せ、二郎のせいだと皆に告げて詫びた。彼は牧場の経営が行き詰まっていたことを明かし、二郎が保険金目当てで放火したと断言する。彼は牛に「住むとこ無くなって可哀想やな」と話し掛け、斧を手に取った。彼は無表情のまま、斧で牛の頭部を切断した。
千代と七菜は「味噌いち」に立ち寄り、ラーメンを食べた。店には牧場にいた子供のハヤトとユキも来ており、航一は金を取らずラーメンを提供した。七菜は信州に残り、ハヤトとユキを連れて白樺ふれあい動物園を訪れた。そこは二郎とデートした唯一の場所であり、七菜は彼が放火などしていないと信じていた。物陰から二郎が観察していることに、彼女は全く気付いていなかった。七菜は航一とハヤトとユキを連れて、「萬」に戻った。二郎は不登校だったハヤトとユキを預かり、牛の世話や勉強を教えていた。それだけでなく、引きこもりの若者や老人も助け合って牧場で働いていた。
航一たちは千代たちに、道山がリゾート開発を進めていたが市長と二郎は反対していたことを話し、「市長は消されたんじゃないか」と口にした。サランは千代たちに、2002年の新聞記事を見せた。そこには総務大臣時代の粟田口十三がアルブス雷鳥ホテルを視察し、道山と握手を交わす写真が載っていた。航一は千代たちに、二郎を見つけて土地を取り戻してほしいと依頼した。萬は快諾し、七菜は不二子の子供の世話を担当して他の面々が動くことになった。
三和は新聞記者として、四郎が社長を務めるリゾート開発会社を訪れた。彼女が四郎の取材を始めると、不二子が月刊トレッキングの記者として現れた。彼女は秘書に頼み、社長室で待たせてもらうことになった。不二子はパソコンからリゾート開発計画のデータを盗み出し、会社を去った。五月は家政婦として九十九邸に潜入し、隠しカメラを設置した。雷鳥牧場の創始者である九十九百之輔は人形のように動きが少なく、五月は困惑させられた。
道山には5人の息子がおり、千代たちは航一が長男だと突き止めた。その事実を千代に指摘された航一は、父と折り合いが悪くて家と苗字は捨てたが故郷は捨てられなかったと語る。牧場の土地について会議を開くため、道山は家族を招集した。サランは道山の秘書、不二子は三郎の秘書、三和は四郎の秘書として、会議に同席した。航一は秘書として千代を伴い、会議の場に現れた。美都子は道山に、牧場の土地の一部は権利があるので航一を呼んだと説明した。
航一が「牧場の跡地について話し合うなら二郎が必要だ」と主張すると、道山は「家から逃げた男に、ここにいる資格は無い」と出て行くよう怒鳴り付けた。そこへ七菜が現れ、自分にも発言する権利があると告げた。司法書士として同行した萬は、七菜と二郎の婚姻届を証拠として提示した。三郎と四郎は七菜に離婚を迫り、道山は鋭く睨み付けた。美都子が「改めて話し合う場を儲けさせて頂きます」と言うと、萬は受け入れた。萬と美都子は、大学時代に交際していた関係だった。美都子は萬と二人になり、大学を卒業した直後に道山の養女になったことを話した。
萬はメンバーを集め、入手した情報を共有する。道山には3度の結婚歴があり、最初の雪子との間に航一と二郎、2人目の佐賀江との間に三郎と四郎、3人目の松代との間に五郎丸を儲けていた。雪子とは死別、佐賀江とは離婚、そして松代とは別居中だった。雪子は百之輔の娘で、道山は婿養子に入って雷鳥グループの勢力を一気に拡大していた。雪子は車ごと崖下に転落して死亡していたが、事故に偽装して殺されたという噂もあった。同じ車には航一も乗っていて、重傷を負っていた。
道山は美都子に、七菜の始末を命じた。美都子は七菜を呼び出し、3千万円を用意して引き下がらせようとする。二郎を忘れて幸せになるよう美都子が諭すと、七菜はサランが見ている前で金を受け取った。そのまま七菜は姿を消し、サランは不二子たちに報告してショックを露わにした。千代は牧場の従業員が送られた宿舎に潜入し、そこが粗末なタコ部屋で違法な長時間労働を強いられていることを知る。過酷な肉体労働に老人の太田が倒れ込むと、見張りの男たちが暴力を振るった。千代が太田を駐車場へ連れ出すと、男たちが追い掛けて来た。千代は落としたペン型のカメラを発見されるが、そこへ航一が駆け付けた。航一は男たちを叩きのめし、太田を病院へ運んだ。
美都子は萬を呼び出し、婚姻届が偽造だと指摘した。彼女は「今の私がいるのはドンのおかげ」と言い、道山は恐ろしい男なので逆らうなと警告した。萬は湧き水を動画撮影している航一に気付き、声を掛けた。すると航一は、「見せたい人がいるんです。北アルプスにこんな綺麗な湧き水があるなんて、誰も知らないから」と語った。千代はクラブ「クララ」にホステスとして潜入し、代議士の永田研二と海藤の密会現場を観察した。永田は「大規模なリゾート開発には国の許可が必要」と言い、多額の賄賂を要求して道山に伝えるよう指示した。海藤が持参した手付金を差し出すと、永田は粟田口に繋げることを約束した。
道山は裏から手を回して粟田口を出所させ、信州料理店で密会した。店長は道山に雇われ、手下に二郎を捜索させていた。道山は不敵な笑みを浮かべて「それにしても牧場、よお燃えたなあ。市長のことも、ようやってくれた」と言い、店長に報酬を渡した。店を覗いていた七菜は物音を立てて気付かれ、慌てて逃げ出した。一方、航一は千代を湧き水の場所へ連れて行き、抱き締めてキスをした。「味噌いち」に2人が戻ると入口が壊され、暴行を受けた七菜が店内で倒れていた。
千代は七菜を病院へ連れて行き、萬たちに報告した。電話を受けた五月は、「手を引けというメッセージだ。良く殺されなかったわね」と口にする。怒りに燃える不二子たちに、萬は「裏で粟田口まで絡んでる。何も無かったように仕事を続けるんだ」と自重するよう指示した。病院に同行した航一は1人になり、何者かに電話で「あと一息だ、待ってくれ」と話した。萬は航一と会い、「千代はアンタのことを信じてる。だから傷付けないでくれ」と告げた…。

監督は田村直己、脚本は中園ミホ、製作総指揮は早川洋、製作は西新&市川南&野村英章&今村俊昭&藤川克平&飯田雅裕&田中祐介&渡辺章仁&伊藤貴宣&寺内達郎&平城隆司&森君夫、エグゼクティブプロデューサーは内山聖子、プロデューサーは大江達樹&浜田壮瑛&峰島あゆみ&村上弓&遠藤光貴&大垣一穂&角田正子、撮影は五木田智、照明は花岡正光、録音は福部博国、映像は服部正邦、編集は河村信二、美術制作は木村正宏、美術プロデューサーは根古屋史彦、音楽は沢田完、主題歌『Final Call』はMilet。
出演は木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、江口洋介、室井滋、岸部一徳、笑福亭鶴瓶、吉瀬美智子、玉木宏、濱田岳、若林豪、光石研、中本賢、半海一晃、遠山俊也、内村遥、野間口徹、秋本奈緒美、岐洲匠、川原瑛都、小須田康人、國本鍾建、横山歩、横溝菜帆、松本海希、大槻修治、庄野崎謙、原田文明、林和義、末吉司弥、菅原健、八神蓮、菊原祐太朗、はやしだみき、矢崎まなぶ、奈良原大泰、足立学、ふるかわいずみ、真崎かれん、皆川尚義、梶谷奏陽、金井健ら。
ナレーションは岩下志麻。


テレビ朝日系「木曜ドラマ」で放送されたTVドラマ『七人の秘書』の劇場版。
監督の田村直己と脚本の中園ミホは、TVシリーズからの続投。
千代役の木村文乃、七菜役の広瀬アリス、不二子役の菜々緒、サラン役のシム・ウンギョン、三和役の大島優子、萬役の江口洋介、五月役の室井滋、粟田口役の岸部一徳、ナレーションの岩下志麻は、TVシリーズからの続投。
道山を笑福亭鶴瓶、美都子を吉瀬美智子、緒方を玉木宏、二郎を濱田岳、百之輔を若林豪、永田を光石研が演じている。

航一は道山と折り合いが悪くて家を捨てたはずなのに、千代が結婚式に招待されたことを知ると、何の躊躇も無く九十九邸へ送り届ける。事情を考えると、家に近付くことさえ嫌がりそうなのに、そこは全く気にしないのね。
そんな彼が道山の長男であることは、サランがパソコンを使って千代たちに「道山の子供たち」について説明する時には隠されている。その時点では、「長男」だけが顔も名前も不明という状態になっている。
でも、ちょっと調べれば簡単に分かる情報でしょ。
なので、サランがパソコンで情報を出す時点で、もう「長男が航一」と明かしてもいいよ。勿体ぶる意味なんて無いよ。

七菜は二郎と「盛大な結婚式」を挙げるはずだが、九十九邸の招待客は、そこまで多くない。また、酒は提供されているが、それ以外は何もテーブルに並んでいない。
招待客の少なさは、「道山が嫌われているので、招待されても来ない人が多い」ってのを表現しているわけではない。
酒しか出ていないのは、「道山がケチの守銭奴なので、食べ物を一切出さない」ってのを表現しているわけではない。
シンプルに、「盛大な結婚式」の映像が貧しくなっているだけだ。

雷鳥牧場が燃えているシーンでは、ロッジみたいな建物がポツンと建っているだけだ。どうやら、それが牛舎という設定のようだ。
でも火が消えた後のシーンでは、牛は一頭も死んでいない。そして、なぜか一頭だけ生きている牛がいる。どういうことなのか全く分からない。
道山は北村の遺体を見ると泣いて悼む様子を見せるが、直後に牛の首チョンパで冷酷な本性を露わにする。それ以降は冷酷で傲慢な本性しか見せていないので、北村の遺体を見るシーンの芝居は全く意味を感じない。
「普段は好人物を装っているけど実際は冷淡で横暴」というのを見せたいなら、そのための作業が全く足りておらず、かなり雑な形となっている。

ハヤトとユキが「味噌いち」でラーメンを食べる時、航一は千代と七菜に「二郎の牧場の子供たち」と説明する。
だけど二郎は子持ちじゃないはずなので、それでは説明として不充分だ。それなのに、なぜか千代は「どういうこと?」と疑問を抱いたり尋ねたりはしない。
そのシーン、店の客はハヤトとユキに、「牧場が焼けちまって、これからどうするんだ。行くトコあんのか」と尋ねるが、行く所はあるだろ。
「萬」のシーンで2人が不登校ってのは説明されるけど、不登校でも孤児じゃないんだから家はあるはずでしょ。

九十九美都子が顧問弁護士なのに「九十九」の苗字なのは、最初に気付いて疑問を抱くはずのポイントなのに、千代たちは完全にスルーしている。
後から本人が萬に「養女になった」と説明しているけど、色々とタイミングがズレている。
七菜はハヤトとユキを連れて動物園を訪れるシーンがあるが、ここに何の意味も感じない。
「二郎を捜して動物園」という行動ですら意味を感じないし、ハヤトとユキを同伴するのは、もっと意味が無い。
後から「あのシーンに意味があった」と思わせるわけでもないし。

三和は新聞記者として四郎に接触するが、アポ無しなのでインタビューを断られる。それでも食い下がって同じエレベーターに入ると、四郎は承諾する。
不二子は雑誌記者として男性秘書と会い、社長室で待たせてほしいと頼む。最初は断られるが、結局は承諾してもらえる。
どちらのケースも「男が色仕掛けで態度を変えた」という設定なのかと思ったら、そういうことでもないのね。不二子のケースは秘書が鼻の下を伸ばした設定みたいだけど、四郎は違うのね。
たぶん「おだてられて調子に乗った」ってことなんだろうけど、それ以降の四郎の動かし方を見ていると、ちょっとキャラが定まっていないんだよなあ。

千代たちの登場シーンでは、カメラが横にパンし、カウンターに並んでラーメンをすする面々を順番に映す。ここはキャラ紹介のための場所なので、そういう映像表現は理解できる。
結婚パーティーのシーンで主要キャラの役職と名前をテロップ表示するのは、そんなに恰好は良くないけど、特に問題があるわけではない。
会議に招集された三郎と四郎が車から降りる時、秘書になった不二子と三和を見せるのも当然の描写。
ただ、その後で会議に集まった時、改めて「三郎と後ろに立っている不二子」「四郎と後ろに立っている三和」「五郎丸と隣にいる五月」「道山と後ろにいるサラン」を順番に見せるので、そうなると車から降りるシーンは二度手間になってるかな。

その会議で名前を問われた不二子とサランと三和が声を揃えて「名乗るほどの者ではございません」と返すカットは、分割画面で3人を並べている。
大仰な演出だしダサいとは感じるけど、問題は中途半端ってことにある。全体を通して、もっと振り切って突き抜けた演出にしておかないと、ギャグにならず寒々しいだけなんだよね。
あと、三郎が「秘書のくせに」と七菜を罵ると、千代、不二子、サラン、三和、五月の表情が鋭くなる様子を横並びの分割画面で描いているけど、これはクドいだけだわ。
たぶん「大げさな演出」は意図していると思うんだけど、その味付けや方向性が色々と間違っているんじゃないかと。

全員が集まって情報共有するシーンでは、不二子と三和が三郎と四郎の秘書になった時の回想シーンが挿入されるが、今さら何の必要性も感じないわ。
そこで「三郎は肉食」とか「四郎はプライドが高くてパワハラ野郎」とか説明するけど、そういうのは現在進行形の中でも示せる情報だし。
そこだけじゃなくて、何度かメンバーが集まって情報を共有するシーンがあるんだけど、その必要性からして大いに疑問を覚えるんだよね。
たぶん「情報を整理して観客に提供する」という狙いがあるんだろうとは思うけど、やり方が上手くない。

千代は牧場の従業員が送られた宿舎に潜入し、、酷い扱いを受けていると知る。だけど、別に従業員は弱みを握られているわけでもないし、多額の借金を背負っているわけでもないんでしょ。
だったら、そんな過酷な環境の中で、無理して働く必要も無いでしょ。「辞めることも許されずに監禁されている」ってことならともかく、そうではなさそうだし。
あと、年を取って体がキツい年寄りばかりを集めて強制労働させるのも、あまり狡猾なやり方とは思えないんだよな。
荒唐無稽で行きたいんだろうし、それがダメだとは思わない。ただし、幾ら荒唐無稽であっても、その中でのディティールが雑すぎて、リアリティー・ラインがガバガバなのよ。

萬は湧き水を動画撮影している航一と話した後、カットが切り替わるとサランが「懲らしめてやりましょう」と言い、五月と不二子の3人を並べる分割画面になる。
なので、ここから彼女たちが行動して懲らしめるための情報を集めたり準備を整えたりするのかと思いきや、そうではない。
五月は特に何もしていないし、サランは仲間から送られて来る映像を見るだけ。不二子はステーキハウスで三郎が海藤を接待するのを見るけど、そんなの全く要らない手順だし。その接待をリモートで見ている四郎に三和が近付くのも、全くの無意味。
この辺りは丸ごとカットして、いきなりクラブ「クララ」のパートに入っても全く支障は無い。

あと、秘書の面々って調査活動の時に必ず盗聴と盗撮を行っているんだけど、その大半は必要性を感じないんだよね。
前述した三郎と海藤の密会シーンでも、不二子と三和がイヤホンと小型マイクで会話しているけど、そんなのは無駄にリスクを負っているだけだ。
タコ部屋に潜入した千代が、ペン型マイクと小型カメラで仲間に情報を送るのも同様。
とにかく、ライブで仲間に情報を伝えようとしているんだけど、敵に見つかる危険と得られるメリットを天秤に掛けた時、あまりにもハイリスクでローリターンなのよ。

信州料理店の張り込みがバレた七菜は逃げ出し、物陰に隠れると「敵を撒いた」と思って安堵する。しかし背後から何者かが近付き、七菜は振り向く。
ここでカットが切り替わるので、近付いたのが誰なのかは分からない。
ただ、その後に暴行を受けた状態で見つかるので、道山の手下に見つかって襲われたんだろう。
だったら、隠れている七菜に近付いた奴の正体を隠す演出の意味は何なのか。
変に意味ありげな演出を用意しておいて、完全に肩透かしになってるじゃないか。

終盤、パーティーのシーンで悪事を暴露された道山は全く動じず、「この土地は生まれ変わるんや。豊かな街にしたいんや。ワシに付いて来い。この土地を変えたる」と演説する。
すると招待客は拍手し、彼を支持する態度を示す。
でも、そうなると、その直前に千代たちが順番に口上を語り、カッコ良く見得を切って「いよいよ敵を追い詰める」という感じで演出したのは何だったのかと言いたくなるぞ。
その直前に「ここは見せ場」みたいにキメまくっていた千代たちが、ものすごくカッコ悪いことになっちゃうだろ。

その後、七菜と二郎が登場して人殺しだと指摘すると、途端に道山がアタフタする。なんで急に中の人が変わったかのような態度なんだよ。
そりゃあ暴露された悪事の内容は違うけど、人殺しに関しても二郎の証言以外には確たる証拠なんて何も無いわけで。だったら道山は堂々とシラを切って、否定すれば良かっただろうに。
あと、ここで道山が逃走し、手下の集団が千代たちに襲い掛かるのはアホすぎるだろ。仮に千代たちを始末できても、大勢の目撃者がいるんだから、余計に道山の罪が増えるだけだろ。
アクションシーンに持ち込みたいのは分かるけど、そのために無理を通そうとして完全に話が崩壊しているぞ。

完全ネタバレになるが、航一は「道山の悪事を暴露しよう」とか「牧場を守ろう」という目的で行動していたわけではない。
地下水脈を見つけて外国人に売り飛ばすのが目的で、そのために千代たちを利用していたのだ。
「何か捻りを用意してドラマを面白くしよう」ってことなんだろうけど、安っぽさを助長するだけになっている。
だったら徹底して狡猾な悪党にしておけばいいものを、「でも性根は腐っていないから千代を助ける」みたいな手順もあって、これも安っぽさにしか繋がっていないし。

映画のラスト、診察のために病院に来た道山が入院する部屋へ行くと、先客として粟田口がいる。
2人は広すぎる病室の豪華なベッドに寝そべり、ノンビリした雰囲気の中で会話を交わす。彼らは秘書たちのことを話すと、顔を見合わせて大笑いする。
そういう様子を最後に見せると、「秘書たちが悪党である道山を懲らしめて痛い目に遭わせる」という勧善懲悪のカタルシスが薄れるでしょ。まだ警察の取り調べは残っているけど、まるで「憎まれっ子世に憚る」みたいな印象で終わっちゃうでしょ。
どういうつもりなんだよ。

(観賞日:2024年6月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会