『3月のライオン 後編』:2017、日本

私立駒橋高校では新人王を獲得した桐山零の表彰が行われ、校長は彼を壇上に呼んでスピーチした。零は居心地の悪さを感じ、全校集会の後で林田に不満を漏らした。零は将棋会館に呼ばれ、神宮寺崇徳と柳原朔太郎から宗谷冬司との記念対局のポスターを見せられる。零は困惑するが、神宮寺は将棋ファンを増やすために注目のカードを組みたいのだと説明した。零にとって宗谷は、幼少期に初めて対局を見た時から特別な存在だった。そんな宗谷との対局に、彼は全く実感が湧かなかった。
零が川本家を訪れると相米二が来ており、彼はひなたから夕食に誘われた。相米二は三日月堂の新メニューを考案しており、三姉妹にもアイデアを尋ねていた。獅子王戦のトーナメントが始まり、零は勝利するが島田は1回戦で敗れた。柳原は零に、宗谷と戦った相手は必ず一からの再構築が必要になるのだと教えた。零は三角龍雪が幸田柾近に不戦勝だったと聞いて驚き、病院へ赴いた。幸田は頭部の怪我で入院しており、零に「家で転んだ」と説明した。
同じ病院には後藤正宗も来ており、意識不明で入院している妻の手を握った。病院を去ろうとした零は、後藤が看護師に怒鳴っている様子を目撃した。その夜、零のアパートに香子が押し掛け、幸田が進路のことで歩と喧嘩になって突き飛ばされたことを語った。彼女は零に、「ウチにはまだアンタの地雷が埋まってる」と告げた。零は自宅療養中の二海堂晴信に呼ばれ、「負けて元々と思ってるだろう」と図星を突かれる。二海堂は零に、勝つことだけを考えろと告げた。
岩手県盛岡市で行われる記念対局の前夜祭に出席した零は、大勢の大人たちに囲まれて緊張した。淡々と対応していた宗谷だが、記者から体調について質問された時に「ありがとうございます」と的外れなことを言う。そのまま彼が会場から去ったので、記者たちは戸惑った。ホテルの部屋に戻った零は幸田から電話を貰い、「明日、お前の前に座るのは、ただの人間だ。自分で作った化け物と戦うんじゃないぞ。それとな、楽しんでおいで」と助言した。
翌朝、零の先手で記念対局が始まった。最初は健闘していた零だが、途中で明らかに間違った手を指してしまう。すぐに気付いた零だが、挽回できずに敗北した。東京へ戻った彼は島田の家を訪れ、負けると分かっても終わらせたくないので打ち続けたと話す。島田は「宗谷の秘密に気付いたか」と問い掛け、宗谷は10年前からストレスのせいで耳が聞こえなくなる時があるのだと明かした。その秘密は、ほとんどの人間が知らないのだと彼は言う。
盛岡土産を持って川本家を訪ねた零は、ひなたが学校でイジメを受けていることを知った。中学3年生に進級してから、クラスメイトの佐倉ちほが高城めぐみを始めとする一部の女子たちの標的になった。ひなたから訴えを受けた担任の青山は「みんなを不安にさせるようなことを言わないでね」と告げ、何も対応せずに逃げた。ちほが屋上から飛び降りるよう詰め寄られるのを見たひなたは、彼女を助けた。ちほが耐え切れず転校すると、今度はひなたが標的となった。
ひなたは零の前で泣きながら、「私のしたことは、絶対に間違ってなんかいない」と口にした。零はイジメを受けていた小学校時代を回想し、彼女に「ありがとう。君は僕の恩人だ。約束するよ。僕が一生掛かっても君に恩を返すよ」と告げた。あかりから話を聞いた相米二は、ひなたの勇気を称賛して「胸を張れ」と励ました。松本一砂から飲みに誘われた零は、「ワケあってお金を貯めることにしたので」と言って断った。
あかりの買い物を手伝った零は、彼女からひなたのイジメ問題について「正義なんていいから、逃げてほしかった」と思ってしまったことへの後悔を吐露された。零は彼女の考えが間違っていないと擁護し、かつてイジメを受けていた自分がひなたの言葉で救われたことを話す。零の言葉を受けて、あかりは涙をこぼした。零はイジメ問題の行く先を想定して貯金を始めていたが、林田から「赤の他人からお金を受け取る人たちなのか」と質問されて言葉を失った。
零は林田から本人に望んでいる解決策を尋ねてみてはどうかと提案され、ひなたに問い掛けた。すると彼女は、「あいつらは悪いことをしたと思ってない。そんな奴のために、私は私の人生を棒に振るわけにいかない」と力強く告げた。イジメ問題が露呈しても、めぐみはシラを切るどころかひなたに罪を被せようとする。ひなたが負けじと詰め寄っていると、青山がヒステリー症状を起こす。めぐみが挑発的な態度を取ると、青山は狂乱状態に陥って彼女に襲い掛かった。ひなたが火災報知器を鳴らすと、学年主任の国分が駆け付けた。青山が心労で入院したことを受けて国分が臨時担任となり、イジメ問題は解決に至った。
後藤は獅子王戦トーナメントの対局中、妻の容態が急変したことを神宮寺からメモで知らされる。後藤は神宮寺を退室させ、そのまま対局を続けた。しかし零は柳原から、後藤の行動を聞かされる。彼は2時間の長考を利用して将棋会館を抜け出し、病院へ駆け付けていた。妻の死を知った後藤は慟哭するが、将棋会館に戻って対局を続けたのだ。零は葬儀に参列した後、久々に幸田家を訪れた。彼が歩について訊くと、幸田は部屋に引き篭もってゲームばかりしていることを話す。2階に目をやった零は、幼少期のことを思い浮かべる。歩は零に、「宗谷名人と対局する時には誘ってやるよ」と告げていた。
零が川本家に行くと、ひなたが知らない男と向き合って暗い表情を浮かべていた。男は「今日は大事な用があってね」と言い、零に帰るよう求めた。零の携帯にはあかりからのメールが入り、そこには「父が家にいるようです。ひなとモモのそばにいて。おねがい」とあった。川本家にいたのは、3姉妹の父である甘麻井戸誠二郎だった。零は家に上がり込み、誠二郎に「今日はどういったご用件で?」と質問した。誠二郎は零の態度に苛立ちを示し、3姉妹の父親だと名乗った。
誠二郎はひなたに、また一緒に暮らさないかと持ち掛けた。彼は妻を捨てて別の女の元へ走り、新しい家庭には子供もいた。彼はひなたに、「この家で、みんなで暮らそう。それが嫌なら、お爺ちゃんの所へ行ってもいい」と告げる。零が「それって、お前たちは出て行けってことですか?それに、何か焦っているように見えますが」と指摘すると、誠二郎は不快感を見せる。あかりが駆け付けて相米二が来ることを話すと、誠二郎は「また来るよ」と告げて去った。
零はあかりから、塾講師だった誠二郎が保護者と揉めて辞めたこと、三日月堂の仕事を手伝っていたが簡単に辞めたこと、家族を捨てて他の女の元へ走ったことを聞く。零が「今度こそ僕を頼ってくれませんか。力になりたいです、少しでも」と言うと、あかりは頬を緩めた。再び誠二郎が家へ来た時、零は3姉妹に同席した。彼は誠二郎がリストラされて寮の立ち退き期限が迫っていることを指摘し、充分な年収を稼いでいる自分の方が遥かに大人だと主張した。「他人には関係ないだろ」と誠二郎が腹を立てると、零は「僕はひなたさんとの結婚を考えています。なので他人事ではありません」と言う。突然の告白にあかりは困惑し、ひなたは気を失った。
後日、対局を終えた零はあかりのメールを受け取り、誠二郎が保育園からモモを連れ出したことを知る。彼が急いで川本家へ駆け付けると、美咲があかり&ひなたと一緒にいた。誠二郎たちが戻るまで3人が待つつもりだと聞いた零は「甘いですよ。犯人が分かってるなら警察に行きましょう」と告げ、外へ飛び出す。そこへ誠二郎がモモを連れて戻り、能天気な様子を見せた。零が「本当は彼女たちに愛情なんか微塵もないんですよね。僕はそんな人間のクズを近付けたくないんです」と批判すると、ひなたは「こんな人でも、私たちのお父さんなんだよ」と口にする。零はあかりに「今日は帰ってくれるかな」と言われ、落ち込んで立ち去った…。

監督は大友啓史、原作は羽海野チカ『3月のライオン』(白泉社刊・ヤングアニマル連載)、脚本は渡部亮平&岩下悠子&大友啓史、製作は長澤修一&市川南&鳥嶋和彦&畠中達郎&岩上敦宏&市村友一&高橋誠&加太孝明&広田勝己&堀内善太&荒波修&長澤一史&弓矢政法、エグゼクティブプロデューサーは豊島雅郎&上田太地&友田亮、プロデューサーは谷島正之&竹内文恵&守屋圭一郎、撮影は山本英夫、照明は小野晃、録音は湯脇房雄、美術は古積弘二、VFXスーパーバイザーは小坂一順、編集は早野亮、衣裳デザイン・キャラクターデザインは澤田石和寛、将棋監修は先崎学、音楽は菅野祐悟。
主題歌 藤原さくら『春の歌』作詞・作曲:草野正宗、編曲:永野亮。
出演は神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、前田吟、豊川悦司、伊藤英明、伊勢谷友介、佐々木蔵之介、加瀬亮、高橋一生、岩松了、斉木しげる、中村倫也、尾上寛之、奥野瑛太、甲本雅裕、新津ちせ、板谷由夏、綾田俊樹、森岡龍、西牟田恵、奥貫薫、小橋めぐみ、大西利空、萩原利久、原菜乃華、鈴木雄大、中田青渚、三好杏依、吉本菜穂子、小久保丈二、桐山清澄、田中寅彦、中座真、北島忠雄、飯塚祐紀、千葉幸生ら。


羽海野チカの人気漫画『3月のライオン』を基にした2部作の後編。
監督は『秘密 THE TOP SECRET』『ミュージアム』の大友啓史。
脚本は『TANNKA 短歌』の岩下悠子、『かしこい狗は、吠えずに笑う』の渡部亮平、大友啓史監督による共同。
零役の神木隆之介、香子役の有村架純、あかり役の倉科カナ、二海堂役の染谷将太、ひなた役の清原果耶、相米二役の前田吟、幸田役の豊川悦司、後藤役の伊藤英明、島田役の佐々木蔵之介、宗谷役の加瀬亮、林田役の高橋一生、神宮寺役の岩松了、柳原役の斉木しげる、三角役の中村倫也、松本役の尾上寛之、山崎役の奥野瑛太、安井役の甲本雅裕、モモ役の新津ちせ、美咲役の板谷由夏など、主要キャストの大半は前編からの続投。
誠二郎役の伊勢谷友介、めぐみ役の中田青渚、ちほ役の三好杏依らが後編から参加している。

最初に触れておくと、前編の出来栄えが決して良かったわけではない。ただ、ポンコツ映画とまでは言えないかなという印象だった。
それが後編に入ると、完全にポンコツの沼へ足を踏み入れている。
まず、これは前編から続いている問題だが、たぶん「原作の主要キャラや重要なエピソードだから」というだけで、安易に持ち込んでいるように思えるモノが多い。
例えば林田なんかは、まるで要らないキャラだ。どうせ零の高校での様子は中身が皆無に等しいし、林田もほとんど役に立っていない。
それじゃあマズいってことなのか、「ひなたのために貯金している零に助言する」という辺りで役目を与えたりしているけど、それは林田じゃなくても成立するしね。

二海堂は前編の頃から「無闇にギャーギャーと騒ぎまくるだけの奴」という印象が強かったが、後編に入り、ますます存在意義が乏しくなっている。自宅療養している設定は無意味だし、零をライバル視している設定も無意味。
島田は零にとって2番目の師匠のような存在のはずだが、ここも上手く扱い切れていない。何とか出番を増やそうってことなのか、記念対局を終えた零の訪問シーンを用意しているが、こんなの全くの意味が無い。
島田には「宗谷の秘密を零に教える」という役割を与えているが、ほとんどの人間が知らない秘密なので、口が軽い奴にしか見えないぞ。
そもそも宗谷の突発性難聴の設定って、まるで要らないし。その障害を抱えているからって、だから何なのか。それがあろうと無かろうと、ストーリー展開に何の影響も与えないでしょ。

前編では川本3姉妹の存在意義が乏しかったが、この後編では零が彼女たちのために行動するエピソードを大きく扱っている。
これにより、川本3姉妹の存在意義は一気に高まっている。
ただし、2部作のトータルで考えると、配分の計算が上手く出来ておらず、下手な辻褄合わせをしているように感じてしまう。
また、川本3姉妹を登場させるやり方や、彼女たちが関わるエピソードの処理にも、色々と問題が多いと感じてしまう。

今回は始まってすぐに川本3姉妹が登場し、三日月屋の新メニューを考えている様子が描かれる。
ここからして、既に必要性は高くないシーンだ。
その後、零が川本家を訪ねると、ひなたが相米二に「三日月焼きはお母さんが考えたんでしょ」と問い掛けて母の遺影に視線を向ける様子が描かれる。だけど、このシーンに何の意味があるのかサッパリ分からない。
それを見ている零の様子も写るけど、そこで彼が何か感じて、それが以降の展開に絡んで来るってわけでもないし。

その後、ひなたが新メニューのアイデアを描き、あかりの前で疲れているような様子を見せるシーンもあるが、これも必要性が見えない。
疲れているように見えたのは、実際には「イジメ問題で悩んでいた」ってことを表現したかったんだろうとは思うのよ。
ただ、後になって、あかりが「あの時のアレは、そういうことだったのかか」と気付くような様子も無い。また、イジメ問題を匂わせるやり方としても、匂いが弱すぎて効果が乏しい。
そういうのを何度か積み重ねてから「零がイジメを知る」というトコへ至るのならともかく、すぐにイジメを知っちゃうので「初めの第一歩」としても機能不全だ。

零があかりの買い物に付き合って彼女の思いを聞くシーンも、無理にあかりの出番を増やすためとしか感じない。
そこは最終的に「零の言葉を聞いてあかりが涙を流す」というトコへ着地するのだが、わざわざ盛り込むほど必要性の高いシーンとも思えない。
もちろん、それが「零と川本3姉妹の関係を描くシーン」になっていることは確かだけど、取って付けた感が半端無いのよね。
そこに限らず、零と川本家の関わりを示すシーンも大半が、似たような印象になっているのだ。

イジメ問題はそんなに長引くことも無く、あっさりと終了する。メインは将棋なので、そこだけを長く引っ張るわけにもいかないってことなんだろう。
だけど、「そんなに簡単に解決するわけねえだろ」と言いたくなるわ。
担任がヒステリーを起こし、学年主任が臨時担任になっただけで解決するって、どんだけ甘すぎるファンタジー的展開なのかと。
っていうか、犯人は全く反省しちゃいないし、これといった罰も受けていないし、実は何も解決していないんだよな。

しかもイジメ問題が解決するまでの流れにおいて、零がひなたの支えになることって一度も無いのよね。
こいつは「君は僕の恩人だ。約束するよ。僕が一生掛かっても君に恩を返す」と力強く口にしていたけど、ただの木偶の棒でしかないのだ。
ひなたが「話を聞いてくれて嬉しかった」と感謝を示すシーンがあるけど、こっちを納得させる力は皆無だ。
無力を自覚している零に林田が「人に伝わるのは結果だけじゃない」と言うシーンがあるけど、下手なフォローにしか見えないし。

っていうかさ、ひなたの「私のしたことは、絶対に間違ってなんかいない」という言葉を聞いた零が小学校時代を回想するシーンって、上手い表現に見えないのよね。
まず、零がイジメを受けていたことは、そこで初めて明らかになる。
高校生の彼は、「自分には将棋しか無いのだ」ってことで、意図的に友達付き合いを避けているように見えたし。
なので、「かつてイジメを受けていた」という設定を、唐突に放り込んで来たな、と感じる。

「小学校でイジメを受けていた零の前に、ひなたが現れる」ってのは、もちろん零のイメージだ。
それは分かるが、「人はこんなにも時が過ぎた後で、全く違う方向から嵐のように救われることがある」というモノローグは、ワケが分からない。
「ひなたの言葉で小学校時代の自分が救われた」ってことを表現したいのは理解できるが、「ありがとう。君は僕の恩人だ」と言われても「いや、どういうことよ」とツッコミを入れたくなる。
強引に解釈を捻り出すことは出来なくも無いが、まるで腑に落ちない。

ひなたのイジメ問題が明らかになって零が「恩を返す」と宣言した後、シーンが切り替わると「零がスランプを脱出した」ってことを示す様子が描かれる。
松本が「順位戦3連敗だけでスランプ脱出か」と言っているのだが、たぶん「ひなたの一件で零がスランプを脱出した」ってことなんだろう。
でも、どういうことなのか、関連性が分かりにくい。
あと、そもそも「零がスランプに陥っていた」ってことが何も描かれていないので「そこから脱出した」と言われてもピンと来ないし。

川本3姉妹の扱いを大きくした代わりに香子を引っ込めているわけではなく、彼女は彼女で相変わらず存在感をアピールする。
さらには、前編での存在意義が皆無に等しかった歩までもが、「俺もいるぜ」とばかりに出しゃばって来る。
それは明らかに欲張り過ぎだし、しかも処理の方法が酷いのだ。
零が「歩から宗谷との対局に連れて行くと言われた」という幼少期の出来事を回想するシーンがあり、終盤には「獅子王戦で宗谷との対局が決まった零が部屋の前で歩に話し掛け、家族で来てほしいと誘う」という展開に繋げるのだが、これって実は、かなり残酷で醜悪なんだよね。

零の行動は、「幼少期の約束を逆の立場で果たそうとする」という形になっている。ここで歩が部屋から出て来るので「感動的な義兄弟のドラマ」みたいに見えるかもしれないけど、そこは無理があり過ぎるだろ。
歩の心情を考えると、そこで簡単に部屋から出て来て零を受け入れるなんて、絶対に有り得ないと感じるのよ。むしろ激昂して掴み掛かっても、おかしくないんじゃないかと。
それぐらい、零のやったことは、人の傷口に塩を塗り込むような行為なのよ。
「零は勝ち組で、歩は敗北者」という現実を冷淡に突き付けているようなモンだよ。
零は無自覚だけど、大事なのは受ける側の気持ちだからね。

イジメ問題が終わった後には誠二郎が登場し、3姉妹が新たな問題を抱え込むことになる。しかし、ここもイジメ問題と同じく、あっさりと解決に至る。
そこに多くの時間を費やすほどの余裕が無いからだ。それは将棋と何の関係も無い出来事なので、さっさと片付けて本筋へ戻らなきゃいけないという事情があるのだ。
そもそも、前編では特に何も無かった川本家に後編では立て続けに問題が起きるって、配分としてどうなのかと。
それぞれを前編と後編に分けても良かったんじゃないかと。

その「3姉妹と父親の問題」は歩のエピソードと同様、その処理方法が酷い。何しろ、零はあかりとひなたに拒絶されちゃうもんだから、彼が全く関与しない所で問題は解決してしまうのだ。
この問題でも、また零は何の役にも立っていない。
零が首を突っ込んだのは、あかりからメールで助けを求められたからだ。
零は今度こそ姉妹の力になりたいと考え、誠二郎と戦う。それなのに、彼はあかりとひなたに拒絶されてしまう。
助けを求められた相手から、いきなり梯子を外されるのだ。

零は「自分が悪いことをした」と感じて落ち込んでいるけど、何も間違ってなんかいない。
そりゃあ誠二郎に対してキツい言葉を発しているし、「姉妹の父親だから」ってことでの遠慮は何も無かった。だけど、そこであかりとひなたが零を拒絶し、ある意味では誠二郎の側に立つってのは、酷い裏切り行為にしか見えないぞ。
そもそも2人が「もう誠二郎とは会いたくない」ってな感じで不快感を示していたわけで、だからこそ零は彼を排除しようと頑張ったのだ。
それなのに「自分たちが責めるのはいいけど、他人なのに言い過ぎ」みたいな態度を取られたら、あまりにも零が不憫だわ。

もしかすると「モモもいる前で誠二郎をクズ呼ばわりしたから、あかりたちが問題視した」ってことかもしれないが、それは伝わらんよ。
あと、そうだとしても、「モモのいる場所で零が誠二郎を厳しく糾弾する」という状況を用意していること自体が間違い出し。
っていうか、その後で、あかりとひなたがモモもいる前で誠二郎をビンタしたり拒絶したりする展開があるんだよね。なので、「それなのに零は拒絶したのかよ」と責めたくなる。
後で零に詫びを入れるようなことも無いし、なんか不快感が残るわ。

(観賞日:2019年3月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会