『十二人の死にたい子どもたち』:2019、日本

「集い」に招待された面々は、会場となる廃病院にやって来た。主催者のサトシは、暗証番号を入力して裏口を開けるよう事前に指示している。受付の金庫に入っている数字のプレートを到着順に取り、地下一階の多目的ホールへ向かうよう説明している。集合時間は正午だが、1時間前から鍵は開けてある。集いの参加者はサトシの他に、ケンイチ、ミツエ、リョウコ、シンジロウ、メイコ、アンリ、タカヒロ、ノブオ、セイゴ、マイ、ユキといった面々だ。
多目的ホールには12のベッドが用意され、中央には話し合いのためのテーブルと椅子が置かれている。ロビーで雑誌を読んでいたノブオはセイゴに声を掛けられ、エレベーターが止まっていることを教える。2人が最上階の6階へ行くと、エレベーターのドアに椅子が挟んであった。そこに現れたタカヒロはセイゴから犯行を疑われ、空が見たくて屋上にいただけだと否定した。ケンイチが多目的ホールに入ると、ベッドには1人の男が横たわっていた。
サトシを覗く面々は多目的ホールに揃い、彼が先に実行したのだと考える。そこへサイト管理人であるサトシが現れ、全員が安楽死のために集まったことを改めて説明する。サトシは全員の名前を確認し、ベッドの人物が招待されていない13人目だと判明した。サトシは「実行は全員一致が原則」「途中で棄権するのは自由」と改めて説明し、反対の人に挙手を求める。するとケンイチが挙手し、「だっておかしいでしょ。なんで関係ない人がいるの?」と口にした。
参加者の誰かが情報を漏らしたのではないかという疑惑が持ち上がる中、シンジロウがベッド脇にある車椅子の存在に気付いた。アンリやメイコは早く採決することを求めるが、シンジロウは話し合いを続けるべきだと進言する。彼はベッドの男を「ゼロバン」と呼び、車椅子に置いてあった睡眠薬の分量が致死量には足りていないことを挙げる。彼は何者かがゼロバンを集いの場へ運び込み、睡眠薬を使った自殺に見せ掛けたのだと語った。
警察が真相に辿り着けなかった場合、そこにいる全員が殺人犯にされる可能性もある。それだけでなく、安楽死に見せ掛けて殺されたと思われる可能性もある。セイゴは実行に反対し、母親が自分に保険金を掛けていること、自殺なら彼女に金は入らないことを話す。「でも、ずっと死ななければ保険金は入らないんでしょ」とケンイチが言うと、彼は契約の1年を過ぎれば殺される恐れがあると告げる。セイゴが煙草を吸いたがると、サトシは喫煙所に案内する。セイゴが吸っている煙草を確認したサトシは、外のベンチにあった吸い殻と同じ銘柄だと知った。
シンジロウはゼロバンが最初から車椅子生活だったと推測するが、靴が無いのは変だと指摘する。彼は被っていた帽子とカツラを外すと、療養期間が長いので病人については詳しいのだと語った。ミツエはトイレでスニーカーの片方を見たことを思い出し、マイは裏口の花壇に帽子とマスクが捨ててあったことを口にする。ケンイチは2階のカウンターに帽子とマスクがあったことを語り、帽子とマスクを使っているリョウコは「どこにも捨てていない」と述べた。
正面玄関の自動ドアが開いていたことにシンジロウが言及すると、サトシは電源を昨夜の内に切っておいたと話した。話し合いで明らかにするのは限界があると感じたシンジロウは、部屋を出てみないかと持ち掛けた。サトシはグループに分かれて行動することを提案し、4班で行動することになった。マイ、セイゴ、ケンイチは花壇で帽子とマスク。シンジロウ、ノブオ、ユキは1階ロビーの自動ドア。ミツエとリョウコは1階女子トイレで片方の靴。タカヒロ、アンリ、メイコは6階エレベーターで椅子二脚という分担だ。
タカヒロたちはエレベーターへ行き、先程は無かった靴を発見した。椅子を見たメイコは、1階のロビーに会った物と同じではないかと口にした。マイはケンイチに、死にたい理由はイジメかと尋ねる。ケンイチは彼女の指摘を認め、セイゴの質問を受けて期間は2年ぐらいだと答えた。最初は担任教師から始まり、親に「転校したい」と言ったら怒られたと彼は話した。セイゴは「おめえを苛めてる奴らに話を付けてやってもいいんだけどな」と口にした後、2本の吸い殻を発見した。
シンジロウたちは1階へ行き、受付は幅が狭くて車椅子が通れないことを確認する。シンジロウは両親が警察官だと明かし、推理することは元から好きだと告げる。彼は自動ドアについて検証し、ゼロバンには付き添いがいたと断定する。ミツエとリョウコは1階女子トイレへ行き、靴のサイズを確かめる。リョウコが洗面台に置いてある煙草に気付くと、ミツエは大事な人が好きだった物だと説明する。タカヒロは屋上へ行き、母親が自分の病気を必死で直そうとして多くの薬を与えていることをアンリとメイコに語る。それを飲むと頭がおかしくなるのだと彼が話すと、アンリは薬を飲んでいるせいだと指摘した。
タカヒロが母子家庭だと聞いたメイコは、「ウチの父親なら、そんな母親は追い出しますよ」と言う。彼女は2番目と3番目の継母が酷い女だったこと、だから父親に追い出されたことを語った。シンジロウは屋上へ来て周囲を眺め、誰が入って来たか分かる絶好のポジションだと感じる。タカヒロはノブオに、「君が殺したの?」と問い掛ける。するとノブオは「俺がやったんだ」と認め、続きは集いの場で話すと告げる。
メイコは駐車場に軽トラックの男たちが来たのを発見し、アンリたちに隠れるよう指示する。ノブオは彼女たちの隙を見て屋上から抜け出すが、何者かに階段から突き落とされた。他の面々は多目的ホールに戻り、ノブオが来るのを待った。タカヒロはノブオが犯人だと確信した根拠を問われ、エレベーターは止まっていたのにノブオが「屋上、いいよね。結構広いし」と言っていたことを思い出したのだと語る。シンジロウはノブオがゼロバンを売店に隠したのだろうと推理し、その時は多目的ホールの鍵が開いていなかったと考えた。
シンジロウが到着順をホワイトボードに書くと、矛盾が生じていることが判明した。セイゴは外で見つけた吸い殻を取り出し、リョウコが吸った物だと確信する。リョウコは自分の物だと認め、自身の行動を詳細に説明した。彼女は「黒っぽい服を着た人が走り去るのを見た」と証言し、セイゴは上着の色が異なるノブオが明らかに違うことを口にした。セイゴが顔を見せるよう要求すると、リョウコはマスクと帽子を外した。彼女の正体が人気タレントの莉胡だったため、他の面々は驚いた。リョウコは「莉胡」というまやかしの自分を葬り去るため、自殺するのだと告げた。
早く自殺の決を採りたいメイコは、せめて実行の準備をしようと提案した。それに反対する者はおらず、また4班に分かれて行動することになった。アンリとリョウコは1階事務室の火災報知器。ケンイチ、ミツエ、ユキは2階透析室の目張り用テープ。シンジロウ、タカヒロ、マイは2階ナースステーションの練炭。セイゴとメイコは4階給湯室の脚立の担当だ。ケンイチはミツエが首を吊って死んだバンドマンの後を追うつもりと知り、そこまで誰かを好きになれるのは羨ましいと話した。
アンリはリョウコに、「命にまつわる大きな選択に対しては誰もが真摯に向き合わなければいけない」という自分の主張が、有名人と一緒に死ぬことで当初の予定より遥かに広く伝わることになったと告げる。リョウコが「私は大人たちに利用されてきたんです。死ぬ時まで誰かに利用されたくありません」と反発すると、彼女は「幾らそう訴えたって、結果的にそうなるのよ」と告げた。マイはシンジロウとタカヒロに、ネットで知り合った中年男性のせいで病気に感染したことを明かした。メイコはセイゴに、自分で保険を掛けたこと、大好きな父の会社が倒産寸前であること、父に恩を着せるために死んで保険金を渡すことを語った。階段を使おうとしたセイゴは、血の跡が3階のトイレまで続いているのを発見した。
全員が多目的ホールに戻って準備を進める中、シンジロウはノブオに協力者がいた可能性を口にした。サトシは話し合いの最中に酸欠になることを防ぐため、ドアを塞がなかった。彼は道具の手配やベッドの配置を全て自分が行ったこと、この場所が父の経営していた病院であることを全員に語る。彼の母は、医大に落ちた兄と無理心中を図った。一命は取り留めたが、それぞれ別々の親戚に引き取られた。父は鬱病を患って自殺し、短期間に身の回りに死が蔓延したので自分も死に取り憑かれてしまったのだとサトシは説明した。
ユキは早く実行してほしいと頭を下げ、交通事故の後遺症で苦しんだので楽になりたいのだと告げる。メイコが苛立ってドアを封鎖しようとすると、アンリが制止した。メイコはアンリの不審な行動を列挙し、ノブオを殺した犯人ではないかと言い出す。そこへノブオが現れたため、メイコは驚いてドアを塞ぐ。しかしノブオがドアをノックして「開けて」と呼び掛けたため、セイゴはメイコを突き飛ばしてドアを開けた。ノブオの証言によって、彼を突き落とした犯人がメイコだと判明した。
ノブオはゼロバンを殺していないこと、1年前にイジメの主犯格を階段から突き落として殺害したこと、事故として処理されたことを全員に語る。彼は黙ったまま生きているのが苦しくなり、集いに参加していた。しかしメイコに突き落とされて全てが吹っ切れたため、自首して告白するつもりになったとノブオは語った。彼は全容解明まで残りたいと言い、シンジロウに全てを解き明かすよう要請した。するとシンジロウは、ノブオが協力者のアンリに配慮して全てを語ろうとしていないことを指摘した。
アンリが最初に到着して屋上にいると、ノブオがやって来た。2人はゼロバンの車椅子を誰かが押している様子を目撃し、1階へ向かった。すると車椅子を押して来た人物の姿は無く、トラブルで中止に追い込まれることを恐れた2人はゼロバンを女子トイレに隠した。アンリは電源を入れた直後、女性の参加者が来るのを目撃した。連絡を受けたノブオがゼロバンを引きずった時、片方の靴が脱げた。車椅子の代わりに受付の椅子を使った時、もう片方の靴も脱げた。ノブオが受付の帽子とマスクを回収して6階へ向かおうとした時、ゼロバンが椅子から落ちて音がした。6階に着いたノブオは売店にゼロバンを隠し、誰も来させないよう椅子を挟んでエレベーターを止めた。彼は集いの場にあったベッドを使い、ゼロバンを運んだ…。

監督は堤幸彦、原作は冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』(文春文庫刊)、脚本は倉持裕、製作は今村司&池田宏之&瀬井哲也&谷和男&中部嘉人&安部順一&橋誠&長坂信人、エグゼクティブプロデューサーは伊藤響、プロデューサーは飯沼伸之&小林美穂、撮影は斑目重友、美術は清水剛、照明は木村匡博、録音は渡辺真司、音楽プロデューサーは茂木英興&剣持学人、編集は洲崎千恵子、音楽は小林うてな、主題歌「On Our Way」はThe Royal Concept。
出演は杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、高杉真宙、黒島結菜、橋本環奈、吉川愛、渕野右登、古川琴音、萩原利久、坂東龍汰、竹内愛紗、とまん、三上真司ら。


冲方丁の同名ミステリー小説を基にした作品。
監督は『真田十勇士』『人魚の眠る家』の堤幸彦。
劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」を主宰する倉持裕が、映画初脚本を担当している。
アンリを杉咲花、シンジロウを新田真剣佑、ノブオを北村匠海、サトシを高杉真宙、メイコを黒島結菜、リョウコを橋本環奈、マイを吉川愛、ケンイチを渕野右登、ミツエを古川琴音、タカヒロを萩原利久、セイゴを坂東龍汰、ユキを竹内愛紗が演じている。

この映画の最大のセールスポイントは、「人気の若手俳優が勢揃いしている」ってことだ。
『湯を沸かすほどの熱い愛』『無限の住人』の杉咲花、『ちはやふる』シリーズの新田真剣佑、『君の膵臓をたべたい』『春待つ僕ら』の北村匠海、『散歩する侵略者』『虹色デイズ』の高杉真宙、『サクラダリセット』『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』の黒島結菜、『銀魂』『斉木楠雄のΨ難』の橋本環奈。
吉川愛、渕野右登、古川琴音、萩原利久、坂東龍汰、竹内愛紗はオーディションで選ばれているが、それ以外の6名は既に主演映画もある人気者だ。
そんな人気者の共演が見られるんだから、訴求力は充分と言っていいだろう。
この映画は、そんな「若手の人気俳優たちが共演している」ってのが最大の売りであり、同時に唯一の売りと言ってもいい。

導入部から、演出の方向性を間違えているとしか思えない。
これって前述したように原作はミステリーであり、もちろん映画版でも同じく「謎を解き明かす」という目的へ向けて話が進んでいく。
しかし、参加者が順番に会場入りする中で、「何か恐ろしいことが起きようとしている」とか、「得体のしれない何者かが怪しい動きをしている」ということを匂わせる描写で恐怖を与えようとしている。ようするに、明らかにホラー寄りの演出が見られるのよ。
しかも、それは「猟奇殺人鬼が彼らを狙っている」みたいな類のホラーを思わせる演出だ。
それはミスリードでも何でもなく、ただ演出を間違えているだけだ。

サトシは最後に多目的ホールに現れると、「では改めて、この集いについてご説明いたします。皆さんは今日、大きな選択をしに、ここにいらっしゃいました。命の選択。すなわち、今日ここで、この12人全員が、安楽死を迎えるということです」と語る。
もちろんタイトルや公開前の事前情報で、「そうだろうね」としか思えない人も多いだろう。でも映画の仕掛けとしては、「全員が死ぬために集まった」と明かすのは、驚きを与えるためのシーンになっているはずだ。
ところが、その前に「ベッドにいる男がサトシだと他の面々は思っている」という状況を見せてしまっている。
なので、サトシが登場した時点で、まず「ベッドの男は誰だよ」ってのが気になり、サトシが説明を始めても「いや、それどころじゃないから」と言いたくなってしまう。

ゼロバンの存在が判明し、アンリはサトシに「こういう場合はどうすればいいのかしら?」と尋ねる。するとサトシは、「お伝えしてある通り、実行は全員一致が原則ですから、このような状況でも実行すべきかどうか決を採ります」と告げる。
でも、「そういうことじゃねえから」と言いたくなる。
もはや「自殺するかどうか」を採決している場合じゃないだろ。
それより先に、「ゼロバンをどうするのか」を決めなきゃダメだろ。

ところが、こいつらはゼロバンを放置して、自殺についての決を採ろうとする。イカれているとしか思えないぞ。ケンイチはゼロバンを気にしているけど、なんで彼だけなんだよ。
ところが彼が「だっておかしいでしょ。なんで関係ない人がいるの?」と言い出した途端、他の面々も急に「彼は集いのことを知っていたんだろう」とか「誰かが情報を漏らしたのでは」とか口にする。それだけでも「だったら最初から言えよ」と言いたくなるが、すぐにアンリやメイコが「そんなことより早く死のう」と訴える。
「どうせ自殺するんだから、部外者がいても関係ないでしょ」ってことのようだが、そこは違和感があるのよね。
自殺志願者がそういうことを気にしないかって、そんなことは無いでしょ。

全員が話し合う中でヒントに辿り着いたり、謎が解明されたりしていくのかと思いきや、そうではない。グループに分かれて行動させることで、「全員が話し合う中で」という趣向があっさりと崩れてしまう。
何人かのグループに分けた方が、会話劇でドラマを進めやすくなるという利点はある。
それと、別グループにして多目的ホールから移動させることで、絵の変化が生じるというメリットもある。
でも、明らかに『十二人の怒れる男』をモチーフにしたタイトルからしても、そして作品としての仕掛けを考えても、4班に分けて多目的ホールから移動させるのは明らかに失敗だ。

そりゃあ、事件を解き明かすためには、色んな場所へ行って手掛かりを探る必要があるってのも分かるのよ。
だけど、どうせシンジロウという頭脳明晰な都合のいいキャラがいるんだし、そいつを安楽椅子探偵みたいに使って、ほぼ多目的ホールから出ずに事件を解決させてもいいんじゃないかと。
回想シーンの中で別の場所に散らばっているヒントを提示し、それと関係者の証言から答えを導き出す形にしてもいいんじゃないかと。

グループに分かれて行動するパートでは、「それぞれの抱えている事情」ってのに触れている。
班ごとに分けて行動させた一番の理由は、実は事件解決の手掛かりを得るためではなく、それぞれの抱えている事情を紹介するためだ。
でも、「だから仕方がないよね」なんてことは微塵も思わない。そういう作業を全員が集まった状態では出来ないのかというと、そんなことは絶対に無いからだ。
むしろ4班に分けてしまったことで、その情報を他の班のメンバーが知らないという状態が生じてしまう。

本来なら、それぞれが抱えている事情は全員が共有すべき情報なのだ。みんなが事情を共有した上で深く考えるという経緯が無かったら、「全員の共通した思いとして自殺を中止する」という結末に向けた展開に大きな欠陥が出来てしまう。
しかも、グループ別で行動するのは1度だけじゃなく、2度もあるのよ。1度でさえ大きな欠陥になっているのに、2度も繰り返したら、生じる穴がデカすぎて手の施しようがないわ。
自分で用意した仕掛けを、自分で壊しているようなモンでしょ、それって。
なぜ積極的に十二人をバラバラにして、積極的に多目的ホールから移動させようとするのよ。

1時間20分ぐらい経過した辺りで、名探偵シンジロウが犯行の詳細について詳しく説明する。ここで回想シーンを使い、導入部で提示しておいた伏線を回収する。「あの時のアレは、そういうことだったんだよ」ってのを解説する。
本来なら、ここで「なるほど」と謎が一気に解き明かされる気持ち良さがあるべきだろう。でも、そういうのを全く感じないんだよね。
「あのキャラのあの時の行動は、こういう意味だったんだよ」「あの場所であんな風になっていたのは、こういう理由だったんだよ」ってのを説明されても、「だから何なのか」という気持ちしか湧かない。
だって、単に辻褄を合わせるための説明でしかなく、驚くべき情報なんて何も無いんだから。
あと、アンリとノブオがやったのは「ゼロバンを隠したり運んだりした」ってことだけであって、誰かを殺したりしているわけではないしね。そこに事件性は何も無いからね。

そこで全てが解明されたわけではなくて、まだ「ゼロバンを連れて来たのは誰なのか」ってのが残されている。
完全ネタバレだけど、それはユキだ。こっちの方が、「ゼロバンを運んだのは誰なのか」という謎よりも遥かに重要なはず。
ただ、ここではシンジロウが真相を説明して犯人を言い当てる方法を取らず、ユキが自白して詳細を説明するんだよね。
いやいや、なんでだよ。どうやらシンジロウは最初から彼女だと分かっていた様子だけど、だったらそこも探偵役をやらせりゃいいじゃねえか。
あと、実はゼロバンって死んでいないんだけど、これも実は早い段階で「そうじゃないかな」ってのが何となく見えちゃうのよね。だってゼロバンを見つけた時、誰も彼の生死をちゃんと確認していないからね。

あとさ、この映画って、自殺志願者を舐めているようにしか思えないんだよね。
別に自殺の動機がバカバカしいモノであっても、それは別に構わないのよ。悩みに悩んで決意したわけじゃなくても、それは別に構わないのよ。ただ、少なくとも自殺する覚悟は強固で無きゃダメでしょ。
でも集まった面々の内、本気で自殺を考えているように感じられる奴ってユキぐらいしかも見当たらないのよ。そのユキにしても、「こいつだけはマジだな」と感じるのは終盤に事情を明かした時だし。
他の連中は、ちょっとしたことで簡単に気持ちが変わりそうな連中にしか見えない。
だから「自殺を中止して別れる」という予定調和の結末に辿り着いても、「そりゃそうだろうね。だって、最初から本気で自殺なんて考えていなかった連中だからね」と冷めた気持ちになっちゃうのよ。

(観賞日:2020年9月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会