『劇場版 TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』:2023、日本
乱気流で大勢の負傷者を出した旅客機が空港に緊急着陸するが、滑走路を外れて建屋に衝突した。炎上した機体からは燃料が漏れ、爆発の危険性もあった。東京消防庁即応対処部隊の千住幹生たちが現場で対処に当たる中、TOKYO MERチーフドクターの喜多見幸太が機内に飛び込んだ。幼い女の子の真緒が動かなくなり、母親が助けを求めていた。喜多見は真緒に優しく話し掛け、母親に状況と対処法を説明した。彼は迅速な処置を行い、真緒の母親に「もう大丈夫ですよ」と笑顔で告げた。
喜多見、弦巻比奈、蔵前夏梅が機内で対処に当たり、千住幹生たちが乗客を搬送した。搬送が終了して喜多見たちが出ようとすると、乗員の沢田が腹部からの大量出血で倒れた。直後にエンジンが爆発して退避命令が出るが、沢田はオペが必要な状態だった。レスキュー隊の車両で運ぶよう千住が促すと、喜多見は間に合わないと告げる。彼は徳丸元一に連絡し、TO1をハッチ下に付けるよう指示した。都庁危機管理対策室長の駒場卓は危険だと考えて止めようとするが、知事の赤塚梓は喜多見の判断を支持した。
冬木治朗やホアン・ラン・ミンたちは冷静に対応するが、研修医の潮見知広は「近付いたら爆発するんじゃ」と怯えた。沢田がTO1に搬送されると、千住は「ここでオペをするのは自殺行為だぞ」と喜多見に警告する。喜多見は「退避しながらオペを行う」と言い、TO1を発進させた。彼と仲間たちが冷静にオペを行う中、潮見だけは動揺して全く力になれなかった。爆発が起きれば半径500メートルが熱風に巻き込まれる状況にあり、その範囲からTO1は脱出できていなかった。
TO1は大型の破片にタイヤを取られ、動かなくなってしまった。そこへ千住が部下を引き連れて駆け付け、ウインチで破片を取り除いた。その直後に爆発が起きるが、全員が無事だった。喜多見はオペを再開し、沢田を救った。彼は冬木の言葉で、両親との食事会の予定を思い出した。慌てて帰宅すると両親は既に去っており、妊娠している妻の千晶が横浜の実家へ帰る荷造りをしていた。喜多見は説得を試みるが、千晶は先月に4回しか帰らなかったことを指摘した。彼女は「新しい家族が出来たら、貴方も少しは変わるかなと思ってた。でも、昔のまま」と語り、タクシーに乗り込んだ。
赤塚は厚生労働省に呼び出され、厚生労働大臣の両国隆文から「爆発寸前の飛行機に突っ込むなんて許される行為ではない」と注意された。医政局長の駒場卓は非常識なオペについて、国交省からクレームが入っていることを説明した。赤塚はTOKYO MERの正当性を主張するが、同調を求められたMER推進部統括官の音羽尚は「重大な二次災害に繋がる恐れがあったことは事実です」と述べた。両国は全国に厚労省が直轄するMERを配備しようと計画しており、その第一弾としてYOKOHAMA MERの試験運用が始まることを赤塚に話した。
YOKOHAMA MERのチーフドクターを務める鴨居友は、音羽の大学時代の同級生で元恋人だった。彼女はアメリカで活動していたが、両国から要請を受けて帰国していた。鴨居は音羽を誘い、ロサンゼルスへ行く前に2人で食事をしたレストランへ出掛けた。彼女は音羽に、逮捕歴があって無謀な医療行為をしている喜多見を外し、寄せ集めの初期メンバーは再編成した方がいいと語った。鴨居からセカンドドクターとしてTOKYO MERに参加していた時に何かあったのかと質問された音羽は、涼香を思い出した。
潮見はTOKYO MERに来て1年になるが、「皆と同じレベルになる自分が全く想像できない」と弦巻に漏らす。危険に飛び込んでいく自信が無いことを彼が語ると、弦巻は「自分を見返すためにも、諦めが付くまでやった方がいい。私もそうだったから」と助言した。喜多見は蔵前に、千晶の様子を見に行ってほしいと頼んだ。蔵前は横浜みなとみらいのランドマークタワーで千晶と会い、昼食に向かった。清掃員に化けた男がランドマークタワーに侵入し、無人のオフィスに液体を撒いて火を付けた。
TOKYO MERを訪ねた音羽は、ランドマークタワーの中層階で火災が発生してYOKOHAMA MERが出動するという知らせを受けた。エレベーターが停止して上層階に多数の人々が避難しており、赤塚の判断でTOKYO MERにも出動要請が届いた。YOKOHAMA MERとの共同ミッションになるが、赤塚は現場の指揮系統を音羽に統一するよう神奈川県知事に話を通した。音羽は現場指揮本部に入り、消防署員や警官たちに指示を出した。TOKYO MERの面々は現場に到着し、避難して来た人々の治療に当たった。
喜多見は避難途中で階段から落下した男性を診察し、大動脈破裂で早急なオペが必要だと判断する。彼が冬木たちに準備を指示していると、YOKOHAMA MERの車両であるYO1が到着した。鴨居は男性の様子を確認し、セカンドドクターの元町馨たちにオペの準備を命じた。潮見は自分たちが先だと腹を立てるが、鴨居が「YOKOHAMA MERにはTOKYO MERには無い装置がある」と話すと喜多見は了承した。鴨居は元町たちと共に、わずか5分でオペを終わらせて患者を救命した。
喜多見が笑顔で「俺たちが力を合わせれば、より多くの命が救えます」と握手を求めると、鴨居は「実力の分からないチームと医療分担をするのは危険です。我々は独自の判断で行動します」と拒否した。元町は「そもそも皆さんは町場の市民病院に所属するスタッフなんですよね」と鼻で笑い、「海外や大学病院から選抜され、最先端医療を災害事故現場に持ち込もうとしている我々とは意識も技術もレベルが違います」と見下す態度を取った。
音羽は情報を共有するため、喜多見と鴨居を現場指揮本部に呼んだ。出火した24階より下にいた人々の退避は完了し、炎より上層階にいて避難が遅れた193名は展望フロアに移動していた。喜多見は北側の非常階段から火災が広がる前に上層階まで行き、建物内での医療体制を整えておくべきだと主張する。しかし現時点で傷病者がいないことから、鴨居は危険を冒すメリットが無いと反論する。仮に上層階で不測な傷病者が出たとしても、屋上からヘリコプターで救助できると彼女は説明した。
鴨居が「救助はプロに任せ、運ばれて来る傷病者の救助に徹するべきです」と言うと、「待っているだけじゃ、救えない命があります」と喜多見は訴える。鴨居は「待っていなくちゃ、救える命も救えなくなります」と反論し、判断を求めらたれ音羽は言葉に詰まった。そこへ両国が久我山を伴って現れ、自分が喜多見を監督すると告げた。音羽は久我山の要求もあり、消火活動の進展を待つと告げた。大火傷の男が運び込まれたという連絡が入り、TOKYO MERの面々は犯人だと知らないまま処置に当たった。
展望フロアでは避難客に対して「安全確認後に非常階段で下りてもらう。屋上には救助ヘリも到着する」という説明があり、千晶と蔵前は安堵した。しかし消火活動中に中階層で大規模な爆発が連続して発生し、炎が上層階に広がった。大勢の消防隊員が爆発に巻き込まれて搬送され、上昇気流と黒煙の影響で救助ヘリは屋上に近付けなくなった。展望フロアではパニックが起き、大勢の客が将棋倒しになった。千晶と蔵前は身分を明かし、負傷者の対応に当たった。
火災の様子を映像で目にした犯人は「完璧だ」と薄笑いを浮かべ、「火災はもっと広がる」と言う。潮見が「なんでこんなことを」と口にすると、犯人は「死にてえんだよ。もう殺してくれ」と言う。しかし冬木たちは犯人を救命するため、処置を開始した。潮見が「助ける価値があるんでしょうか」と疑問を呈すると、弦巻は「命を救う気が無いなら出てって下さい」と告げた。展望フロアでは孫を守った老女が壁に衝突し、危険な状態に陥った。千晶は喜多見に連絡し、展望フロアの状況を伝えた。電話を切った彼女は陣痛に見舞われるが、痛みを堪えて老女の処置に当たった。
喜多見は現場指揮本部へ行き、音羽に千晶から聞いた内容を報告する。老女は早急に頭を開き、中の出血を取り除かなければ助からない状態だった。喜多見が展望フロアへ行かせてほしいと訴えると、両国が却下する。しかし赤塚が「私が責任を取ります」と言い、喜多見を展望フロアへ派遣するよう音羽に要求した。千住が部下たちを率いて支援に来ると、音羽は喜多見が展望フロアに行くことを許可した。喜多見から話を聞いた弦巻や冬木たちは、同行を志願した。喜多見は迷うが、結局は承諾した。潮見が震えているのに気付いた喜多見は、残って搬送を支援するよう指示した。
喜多見たちは北側の非常階段を進み、千住は一時的に炎を食い止めると告げる。徳丸は千住たちと共に残り、スプリンクラーと配電装置の復旧を担当することにした。喜多見たちは展望フロアに到着し、傷病者の処置に取り掛かる。新たなガソリンに引火して爆発が発生し、炎は上層階に広がった。駒場は喜多見に連絡し、「スプリンクラーの復旧方法が分かった。35階の制御室を破壊したと放火犯が自供した」と伝えた。千住や徳丸たちが復旧作業を急ぎ、喜多見は10分後にスプリンクラーが復旧することを避難客に知らせた。
喜多見たちは中層階への避難を開始し、音羽は動ける消防隊員に救助へ向かうよう指示した。YOKOHAMA MERの手当てを受けていた隊員たちは一斉に立ち上がり、非常階段へ走った。スプリンクラーが復旧して非常階段の火が消え、消防隊員たちが駆け付けた。しかしシステムが損傷していたため、再びスプリンクラーと配電装置が停止する。復旧には時間が掛かるため、喜多見たちは危険エリアを突破しようとする。しかし爆発が起きて階段が落ち、老女を運んでいた喜多見と千晶が取り残された。老女は輸血と止血オペが必要な状態に陥るが、千晶が陣痛に見舞われる。彼女は苦しみながら、自分を残して老女を運ぶよう喜多見に告げる…。監督は松木彩、脚本は黒岩勉、企画・プロデュースは高橋正尚、プロデュースは八木亜未&辻本珠子、共同プロデューサーは渡辺匠、ラインプロデューサーは野口聖太朗&鈴木大造、撮影は須田昌弘、照明は鈴木博文、録音は湯脇房雄、VEは塚田郁夫、美術プロデューサーは やすもとたかのぶ、美術デザインは渡邉由利&古積弘二、美術ディレクターは高田圭三、編集は菅野詩織、VFXスーパーバイザーは小坂一順、音楽は羽岡佳&斎木達彦&櫻井美希、音楽プロデューサーは溝口大悟、主題歌『Symphony』は平井大。
出演は鈴木亮平、賀来賢人、中条あやみ、要潤、石田ゆり子、仲里依紗、杏、菜々緒、小手伸也、佐野勇斗、ジェシー(SixTONES)、佐藤栞里、フォンチー、徳重聡、古川雄大、渡辺真起子、橋本さとし、鶴見辰吾、今野浩喜、新井恵理那、猪塚健太、工藤美桜、信太昌之、谷遼、高木慧一、湯川尚樹、三宅亮輔、谷風作、青山めぐ、森麻里百、梅田脩平、駒水健、外海多伽子、森優理斗、佐藤真弓、松嶋亮太、延増静美、野崎萌香、今奈良孝行、大村わたる、福田周平、阿佐辰美、もりりょう、池村碧彩、番家天嵩、長島慎治、二木咲子、成澤優子、中島愛子、黒田浩史、田中佑弥、平井貴子、西山蓮都、坂本龍之介、東原武久都、森美理愛、小菅汐梨、小熊萌凛、鍵和田花ら。
2021年にTBS系「日曜劇場」枠で放送された放送されたドラマ『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』の劇場版。
監督の松木彩、脚本の黒岩勉は、TVシリーズからの続投。
喜多見役の鈴木亮平、音羽役の賀来賢人、弦巻役の中条あやみ、千住役の要潤、赤塚役の石田ゆり子、千晶役の仲里依紗、蔵前役の菜々緒、冬木役の小手伸也、徳丸役の佐野勇斗、涼香役の佐藤栞里、ホアン役のフォンチーらは、TVシリーズの出演者。
他に、鴨居を杏、潮見をジェシー(SixTONES)、両国を徳重聡、元町を古川雄大が演じている。駒場がTO1をハッチ下に付ける喜多見の判断を止めようとした時、赤塚は「行かなければ、必ず1つの命が失われる」と喜多見の肩を持つ。
だけど、行くことで多くの命が失われるリスクがあるでしょ。しかも、そのリスクがものすごく大きい状況なのよ。
今までは、たまたま上手く行っているだけであって。リスクの大きすぎる行動で大勢が死んだら、間違いなく批判を浴びる。
それに対して、喜多見や赤塚が納得のコメントを出せるとは到底思えないのよ。喜多見って、ただ命懸けのギャンブルに勝ち続けているだけなんだよね。
冒頭のエピソードにしても、爆発で誰も死なずに済んだのは、巻き込まれないように計算して行動した結果ではない。下手をすれば救助に来てくれた千住たちも含めて、全員が犠牲になっていた恐れも充分にあったのだ。
そんな最悪の事態が起きなかったのは、単なるラッキーでしかないのだ。
もしも爆発で大勢が犠牲になっていたら、それでも赤塚や喜多見は自信満々で「正しいことをした結果だ。何も間違っちゃいない」と言えるのか。両国を陰険な性格の憎まれ役に設定することで、「YOKOHAMA MERの方針は間違いで、TOKYO MERこそが正義」という印象操作を行っている。
鴨居や元町たちに高慢で失礼な言動を取らせることで、「嫌な性格の連中なので、その考えや行動も間違っている」とバイアスが掛かるように仕向けている。
でも冷静に俯瞰から見た時、YOKOHAMA MERの方針に大賛成したくなるのだ。
喜多見は他人の意見に耳を傾けず、自分たちは絶対的に正しいという危険思想で突き進んでいるだけにしか思えない。千晶が実家へ帰るタクシーに乗り込むと、喜多見がプロポーズした時の様子と、結婚式の後で集合写真を撮影した時の様子が回想シーンとして挿入される。
でも、こんなのは全く必要が無い。そんな回想を入れたぐらいで、夫婦のドラマに厚みが出ることなんて皆無だ。
しかも、不要な回想はそこだけで終わらない。音羽が鴨居と再会して一緒に昼食を取ると、10年前の同じ場所の回想シーンが挿入される。そこでは、ロサンゼルスへ行く鴨居が音羽を誘ったこと、音羽が「日本の医療を変える」と断ったことが描かれる。
でも、こんなのは会話の中で触れるだけで充分に事足りるのよ。音羽が鴨居から「TOKYO MERで何かあったのか」と問われると、涼香に関する思い出の回想シーンが挿入される。弦巻が潮見にアドバイスする時には、彼女の経験と成長を振り返る回想シーンが挿入される。
この2つの回想も、やはり必要性は乏しい。
ひょっとすると、TVシリーズの視聴者と「あんなこともあったよね」という思い出を共有する狙いがあるのかもしれない。
ただ、全体を通して同窓会的なノリに終始するならともかく、そういうことでもないからね。
っていうか、仮に「同窓会」に徹していたとすれば、それはそれで「映画じゃなくてTVスペシャルで充分でしょ」と言いたくなっただろうし。粗筋でも書いたように、ランドマークタワーの火災で喜多見は「上層階へ乗り込んで医療体制を整えるべき」と主張する。それに対して鴨居は、「救助はプロに任せ、運ばれて来る傷病者の救助に徹するべきです」と反論する。
この言葉を彼女が口にした時、何の迷いも無く「その通りだよなあ」と同意できるんだよね。
喜多見の主張って、明らかに医師の範疇を逸脱しているのよ。
止むを得ない状況なら例外的な判断があってもいいけど、喜多見は常にレスキュー隊や消防隊の仕事も兼任しようと考えているのよね。
しかも、彼がローンウルフならともかくチームのリーダーなので、クルーにも悪影響が出て勘違いが蔓延しちゃうのよ。中層階への避難を開始する時、展望フロアの客は一斉に出口へ迫り、まるで指示に従おうとしない。しかし中学生の一団が救助の手伝いを申し出ると、客たちが視線を向ける。
冬木が「こんな状況ですから、慌ててしまうのは当然ですよ。だけど、みんなで助け合えば大きな力になります。手を貸して下さい」と語ると、大人たちも手伝い始める。
ヒューマニズムに溢れた、「ザ・お涙頂戴」というシーンである。
しかし実際に涙腺が刺激されることは皆無で、苦笑いかニヤニヤ笑いを誘うだけの恥ずかしいシーンになっている。音羽が動ける消防隊員に救助へ向かうよう指示すると、YOKOHAMA MERの手当てを受けていた隊員たちは一斉に立ち上がる。
その状態では無理だと止められても耳を貸さず、「いつやるの、今でしょ」ってな感じで全員が非常階段へと走る。
それまでは苦しそうに全く動かず治療を受けていたのに、一斉に立ち上がる様子は、まるでゾンビのようだ。
でも、そんなに普通に動き回れるのなら、音羽の指示がある前から救助活動を続行できていたんじゃないかと。爆発に巻き込まれる危険性が高い状況で弦巻は患者の手術を開始し、退避を命じられると拒否する。「目の前に助けが必要な人がいる」という彼女の主張は、一見すると医師として立派な考えにも思える。
だけど、とても近視眼的なのだ。
もしも爆発が起きたら、そこにいる全員が死ぬ恐れがある。そうなったら退避した重傷者を救うことも出来なくなり、余計に犠牲者が増えるだけだ。
そして、こういう反論に対して、TOKYO MERは誰も納得できる答えを持っていない。
ただ「待っているだけじゃ救えない命がある」「目の前に助けが必要な患者がいる」などと、噛み合わない主張を繰り返すだけだ。状況が厳しくなって喜多見が応援を要請すると、音羽は鴨居に呼び掛けて「TOKYO MERには夢を懸ける価値がある」と熱く訴える。鴨居はランドマークタワーの中に向かおうとするが、そこへ救助された大勢の患者が搬送されて来る。
目の前の患者を助けなきゃいけない状況になるわけだが、その直後に近隣各県からの増援が到着する。
あまりにも都合の良すぎるラッキーに全てを頼って、ピンチを脱出している。その方法には、苦笑しか無い。
ラッキーを呼び込むまでに、綿密な計画や丁寧な下準備があるわけでもない。
後から「実は赤塚が官房長官に協力を要請していた」と明かされるけど、後出しジャンケンみたいな印象しか受けないし。千晶が炎の中で絶体絶命のピンチに陥ると、喜多見がゴリラパワーで駆け付ける。そこの都合の良さぐらいは、余裕で甘受できる。
ただ、それ以外でも御都合主義の連続で構成された脚本なので、「おいおい」と言いたくなる。
千晶が「帝王切開で赤ん坊を取り出して逃げて。このままじゃ全員助からない」と言うのに喜多見は拒否して全員で助かろうとするのだが、ここで誰も死なずに済むのも完全なる御都合主義。
あの状況だと、普通に考えれば全員の死亡が確実と言ってもいいだろう。ようするに、デウス・エクス・マキナのおかげで全員が助かっただけであって、決して喜多見の判断が優れていたわけではない。
結果論として、正解になっているだけだ。
人命に関わる重大な案件なので、そこで「当たるも八卦」みたいな大博打ばかりを繰り返す人間には、とてもじゃないけどリーダーなんて任せられないよ。
確率論や確実性を重視する人じゃないと、大半のケースでは賭けに負けて多くの犠牲が出ることに繋がるわけで。(観賞日:2024年6月29日)