『劇場版 私立バカレア高校』:2012、日本

桜木達也、浅田哲也、寺川麻耶、野口聡は立浪祥平から、第二カトレア学院が合併することを聞かされる。驚いた達也たちは、古葉純一を問い詰めた。すると合併は誤情報で、校舎の耐震工事で1ヶ月だけ第一カトレア学院へ教室を移すというのが真実だった。古葉は達也たちに、「第一カトレア学院は第二より何倍も厳しいので、悪さをすれば即退学もある」と警告した。第一の生徒会長を務める九音園結香は、人前でクシャミをしただけで取り巻きグループから排除するほど下品な行為を嫌悪していた。
結香は取り巻きの優佐のぞみ、梅林寺遥、二階堂美優、橘菜々美から、第二の男子が来ることへの不安を相談される。結香は冷静な態度で、何か問題があれば退学にすればいいのだと話す。真行寺文恵、後宮沙耶、時宗小百合、本庄真奈、財前麗華、宮田杏、篠原香は達也たちに、第一で過ごす1ヶ月は校則を守らないと退学になると告げた。しかし達也たちは教室で下品な振る舞いを繰り返し、第一の女子は嫌悪して距離を取った。
里中ユウキと神保誠は達也たちと遭遇するが、一言も話さずに通り過ぎた。祥平は養護教諭の水原真里菜に一目惚れし、古葉も彼女に好意を寄せていると知った。転入生の結香は文恵を知らず、第一時代に憧れの存在だったことを取り巻きの面々から知らされて対抗心を燃やす。彼女は文恵たちに、来週のカトレア祭に参加する意思を確認した。第一時代に実行委員だった沙耶と小百合がアドバイスを申し出ると、文恵は「私たちのやり方でやらせて頂きますから」と断った。のぞみたちの態度に沙耶と小百合が腹を立てると、文恵はクラスの出し物であるコスプレカフェで人気投票を実施して一番を決めようと持ち掛けた。
達也は蓮の命日に事故現場を訪れ、花束を置いた。哲也も命日を覚えており、花束を持って現れた。彼らが去ろうとすると、梶剛がバイクで現れた。梶は馬鹿田高校時代の思い出を語り、蓮と真嶋ケンジの決着は付いていないと告げた。同じ頃、菊永高校の番長である海斗は仲間の三国颯太、汐見陸、丹後大輝、五十嵐駿、神崎徳之と共に他校の不良グループを倒し、トップを目指していた。哲也は書店で文恵と遭遇し、持っている本を見て留学の話を知った。文恵が迷っていることを明かすと、哲也は腕を掴んで「行くなよ」と引き留める。しかし彼は、すぐに「ごめん」と謝って走り去った。
翌朝、達也と哲也は不良たちが老女に因縁を付けている現場を目撃し、止めに入った。喧嘩を売られた達也が買おうとすると、哲也が「今はマズい」と制止した。そこへ海斗が現れ、不良たちを蹴散らした。彼は達也の名前を知って睨み付けるが、警官が来たので逃亡した。第一カトレア学院ではカトレア祭が始まり、結香たちは男子生徒を騙して中庭に閉じ込めた。コスプレカフェの人気投票で沙耶がトップを走ると、結香は1ドリンク引き換え兼を客に配って自分に入れさせるよう取り巻きに指示した。
中庭の男子たちは些細なことで喧嘩を始め、教師が駆け付けた。達也たちは逃げ出し、別の場所にいた祥平と合流した。5人はコスプレの衣装を発見し、教師に見つからないように変装する。文恵は達也が心配で捜索に向かい、沙耶が後を追った。海斗は兄のケンジに、「菊高を最強にしてみせる。兄貴が叶えられなかった夢、俺が叶えてみせるから」と告げた。海斗と菊高の面々は宇賀神高校の袴塚遼太郎と東浩に喧嘩を売り、叩きのめした。海斗は次の標的を馬鹿田に定め、達也を捜しに向かった。
達也と哲也は教師に気付かれ、お化け屋敷に逃げ込もうと考える。お化け屋敷はカップル限定だったため、文恵を見つけた達也は身振り手振りで一緒に入ろうと誘う。達也は猫のキグルミを被っており、文恵は相手の正体を知らないまま承諾した。沙耶は哲也の正体に気付き、彼に誘われて一緒にお化け屋敷へ入った。お化け屋敷を出た文恵は、達也が去った後で哲也から正体を知らされた。カトレア祭のゲートが結香に向かって倒れるが、達也たちが駆け付けて彼女を助けた。
達也たちは教師に見つかり、停学処分を受けた。文恵は達也に、次は退学なので絶対に喧嘩をしないでほしいと頼んだ。哲也は文恵が留学を決意したと知り、告白しようとする。しかし告白する前に、文恵から「留学のことは誰にも言わないでほしい」と告げられた。一部始終を見ていた沙耶は、文恵の思いを聞いて涙をこぼした。菊高はユウキと誠に遭遇し、喧嘩を吹っ掛けて叩きのめした。海斗は立ち去るが、大輝はユウキと誠を利用して達也を呼び出そうと企んだ。
達也たちは袴塚と東から、菊高が馬鹿田を狙っていることを聞かされた。陸はユウキと誠を人質に取って達也に電話を掛け、PCビルまで来るよう要求した。達也は哲也たちに「行くわけないじゃん」と嘘をつき、自分だけで乗り込もうとする。しかし哲也は彼の考えを見抜き、一緒にPCビルへ赴いた。海斗は大輝の策略を知り、激怒して殴り付けた。そこへ達也と哲也が乗り込んで来たので、海斗は仲間に戦いを指示した。達也と哲也は多勢に無勢で、すぐに窮地に陥った。
そこへ麻耶たちが駆け付けて菊高に襲い掛かり、ユウキと誠の拘束を解いた。海斗と颯太は屋上へ移動し、達也と哲也が後を追った。同じ頃、文恵は結香から、ずっと一番だったので負けたくないと思っていたことを告げられた。文恵は彼女に、自分も同じだったが変わったと話す。達也は海斗、哲也は颯太と、それぞれタイマンで戦った。2人は海斗と颯太を倒し、屋上を去ろうとする。海斗は鉄パイプを握り、背後から彼らに襲い掛かる。哲也は達也を庇い、怪我を負った。海斗が達也を攻撃しようとすると、ケンジが駆け付けて制止した。海斗がトップへの強い思いを口にすると、彼は汚い真似をするなと叱り付けた…。

監督は窪田崇、原作は秋元康、脚本は松田裕子、製作統括は城朋子&伊藤和明、製作は阿佐美弘恭&大島満&飯島三智&窪田康志&秋元伸介&小崎宏&百武弘二、エグゼクティブプロデューサーは森實陽三&伊藤響、プロデューサーは植野浩之&坂下哲也、制作プロデューサーは前畑祥子、ラインプロデューサーは平体雄二、アソシエイトプロデューサーは小林将高&茶ノ前香&山崎康史、撮影は木村重明&花村也寸志、照明は丸山和志、録音は田中博信、美術は樫山智恵子、編集は山中貴夫、アクション監督は小原剛、音楽は牧戸太郎。
出演は森本慎太郎、松村北斗、ルイス・ジェシー、京本大我、田中樹、地優吾、島崎遥香、大場美奈、光宗薫、永尾まりや、小林茉里奈、島田晴香、中村麻里子、木雄也、内博貴、小嶋陽菜、宮田俊哉、玉森裕太、岩本照、佐久間大介、阿部亮平、渡辺翔太、深澤辰哉、宮舘涼太、加藤玲奈、竹内美宥、川栄李奈、高橋朱里、市川美織、窪田正孝、阿部亮平、吉満涼太(現・吉満寛人)、小林且弥、笠原秀幸、波岡一喜、白水萌生、木下美咲、奥村祐毅、野口真緒、布施紀行、佐々木萌詠、しょーり、杉山りさ、大内田悠平、森元芽依、深澤大河、石戸香穂、菊池勇作、鎌田春奈ら。


ジャニーズJr.とAKB48のメンバーがグループとして初共演した深夜枠のTVドラマ『私立バカレア高校』の劇場版。
監督の窪田崇、脚本の松田裕子は、いずれもTVドラマからの続投。
達也役の森本慎太郎、哲也役の松村北斗、ユウキ役のルイス・ジェシー、麻耶役の京本大我、聡役の田中樹、誠役の地優吾、文恵役の島崎遥香、沙耶役の大場美奈、小百合役の光宗薫、真奈役の永尾まりや、麗華役の小林茉里奈、杏役の島田晴香、香役の中村麻里子、祥平役の木雄也、蓮役の内博貴、古葉役の宮田俊哉らは、TVドラマ版のレギュラー。
真里菜を小嶋陽菜、ケンジを玉森裕太、海斗を岩本照、颯太を佐久間大介、陸を阿部亮平、大輝を渡辺翔太、駿を深澤辰哉、徳之を宮舘涼太、結香を加藤玲奈、のぞみを竹内美宥、遥を川栄李奈、美優を高橋朱里、菜々美を市川美織が演じている。

アイドル映画は昭和の時代から何本も作られてきたが、男女のアイドルがガッツリと共演する映画というのは、そう多くない。
パッと思い付くのは、近藤真彦と中森明菜が共演した1985年の『愛・旅立ち』ぐらいだ。平成以降、男女のアイドルがガッツリと共演した映画は全く思い浮かばない。
そもそもアイドル不毛の時代が長く続いたことも、その一因だろう。
ただ、それ以上に、「男女のアイドルが共演することでファンが騒ぐのを所属事務所が嫌った」ということが大きいのではないだろうか。

松浦亜弥以降は男女問わず、ソロアイドルが「ほぼ絶滅状態」に陥っている。そのため、本作品は男女共にグループでの参加になっている。
例えグループアイドルであっても、その中から1人だけ選抜して主演に起用することは可能だろう。ただ、単純に「ピンだと弱い」と言わざるを得ないメンツなのだ。AKB側は当時のトップメンバーじゃないし、ジャニーズ側はCDデビューしていないジュニアのメンバーだし。
どちらもトップクラスじゃないってのが、平成であろうと限界はあるってことなのかな。まあ、そもそもTVドラマが深夜枠だしね。
あと、このメンバーを今から売り出したいという思惑があったのかもしれない。でも仮にゴールデン枠の企画だったとしても、男女のトップメンバーをガッツリと共演させるのは難しかったんじゃないかな。

このコメントを書いている2023年の段階で、馬鹿田高の生徒を演じたジャニーズJr.のメンバーはSixTONESを結成して活躍している。菊高の生徒を演じたメンバーも、Snow Manとして活躍している。
一方、第一カトレアの生徒を演じたAKB48のメンバーは、全員が卒業している。結香と取り巻きを演じたメンバーも、既に全員がAKB48を卒業している。
もちろん、当時の立場が違っているということはあるだろう。
ただ、それ以上に、「基本的に男子の方が女子よりもアイドルとしての寿命が長い」ということが大きいんじゃないかな。

アヴァンでは過去の馬鹿田と菊高の抗争が描かれ、蓮と真嶋がタイマンを始めようとするシーンで終わる。
この2人はメインキャラクターじゃないのに、そこから話を始めている時点で構成として間違っていると言わざるを得ない。
今回は真嶋の弟である海斗が登場するので、全く関係の無いエピソードというわけではない。本編にガッツリと絡んで来る回想シーンではあるのよ。
だけど、それは後から挿入してもいいでしょ。

TVシリーズでは馬鹿田の生徒としてジャニーズから7名、第一カトレアの生徒としてAKBから7名が参加していた。
つまり主要キャストが14名もいるので、当然と言えば当然の結果として、全員に充分な見せ場を与えて全員の存在感を持たせることなど出来ていない。
男子は達也と哲也、女子は文恵と沙耶を使いこなすので精一杯。
他の面々はザックリ言うと、「ただの数合わせ」で十把ひとからげみたいな扱いになっている。

劇場版では新たにゲストとして、ジャニーズから6名、AKBから5名が参加している。
前述のようにTVシリーズの主要キャストだけでも手に負えないのだから、11人もいるゲスト全員を充分に使いこなすことなど出来るはずも無い。マトモに存在意義を持たせているのは、海斗と結香ぐらいだろう。
ただ、そもそものコンセプトを考えた時、それでも別にいいんだろう。
恐らく、これは「大勢のアイドルを出して喜んでもらおう」という企画なのだ。
だから、とても分かりやすく「質より量」なのだ。

1つ1つのエピソードはチープでバカバカしく、真面目に捉えていたら空しくなるばかりだ。
例えばお化け屋敷のエピソードにしても、何の生産性も無い。ここを丸ごとカットしたとしても、物語には何の影響も及ぼさない。
相手の正体が分からないのに文恵が猫のキグルミとお化け屋敷に入るのは「なんでやねん」とツッコミを入れたくなるが、たぶんツッコミを入れたら負けだ。
祥平と古葉が一緒に入る羽目になってお化けを怖がるギャグシーンも、ただ寒々しいだけだ。
でも、全ては生温かい目で見守るべきなのだ。

シナリオも演出もテイストも、何もかもが古臭い。
ひょっとすると、意図的に昭和っぽさを狙っている部分が大きいのかもしれない。っていうか、その可能性が濃厚だ。
でも、仮にそうだとしても、結果としては「古臭い」という印象しか受けない。
古臭さがギャグ的に機能しているわけでもないし、パロディーに昇華しているわけでもない。振り切った熱血モードで、強引に巻き込んでいくようなパワーがあるわけでもないし。
狙っていたとしても、「古臭い」だけで終わっちゃマズいでしょ。

(観賞日:2023年3月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会