『劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕』:1999、日本

世界中の珍しい物を集めるコレクター、ジラルダンの空中要塞がオレンジ諸島に出現した。彼は火の神ファイヤー、雷の神サンダー、氷の神フリーザーを捕まえ、海の神ルギアを手に入れようと企んでいた。まず最初に、彼はファイヤーを捕獲した。
ポケモントレーナーのサトシは、ポケモンのビカチュウや仲間のカスミ、ケンジと修行の旅を続けている。ある時、サトシ達は女船長・みっちゃんの船に乗り、オレンジ諸島を巡っていた。しかし突然の嵐に見舞われたため、船はアーシア島に流れ着いた。
アーシア島では、年に一度の祭りが行われていた。サトシは島の少女フルーラによって、言い伝えにある“すぐれたるあやつり人”に選ばれた。そしてサトシは、祭りの祭壇に捧げる宝物を、沖にある3つの島々から取って来る役目を任される。
宝物とは、ファイヤーの宝、サンダーの宝、フリーザーの宝の3つだ。サトシは激しい嵐の中、まず火の島へと向かう。カスミ、ケンジ、フルーラはサトシの後を追い掛け、ピカチュウを狙っているロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースも火の島へ向かう。
ファイヤーの宝を手に入れたサトシの元に、カスミ達やロケット団がやって来た。そこへサンダーが現れ、主を失った島を支配しようとする。だが、ジラルダンがサンダーを捕獲し、サトシ達やロケット団も一緒に空中要塞に取り込まれてしまう。
空中要塞を脱出したファイヤーとサンダーは、フリーザーも加えて三つ巴の戦いを開始する。3匹が自然界の調和を司るポケモンだったため、世界は異常気象に見舞われていた。そこに出現したルギアは戦いを止めようとするが、失敗に終わる。
墜落した空中要塞から脱出したサトシは、サンダーの宝を手に入れた。だが、そこに現れたヤドキングは、宝が1つ足りないと告げる。サトシはルギアから、フルーラの持つ海の笛と3つの宝が調和した時、ファイヤー、サンダー、フリーザーを鎮めることが出来ると告げる。サトシは世界を救うため、フリーザーの宝が眠る洞へ向かった…。

監督&絵コンテは湯山邦彦、原案は田尻智、脚本は首藤剛志、演出は日高政光&須藤典彦、製作は河井常吉&富山幹太郎&坂本健&宮川鑛一&福田年秀&八木正男、プロデューサーは吉川兆次&松迫由香子&盛武源、アソシエイトプロデューサーは沢辺伸政&石川博&山内克仁&鶴宏明&紀伊高明&吉田紀之、エクゼクティブ・プロデューサーは久保雅一&川口孝司、キャラクター原案は杉森建&森本茂樹&藤原基史&西田敦子、キャラクターデザイン&総作画監督は一石小百合、アニメーションプロデューサーは奥野敏総&神田修吉、スーパーバイザーは石原恒和、アニメーション監修は小田部羊一、作画監督は松原徳弘&増永計介&田口広一&宮田忠明&玉川明洋&福本勝&つなきあき、色彩設計は吉野記通、色指定は加瀬結起、特殊効果は太田憲之、撮影監督は白石久男、編集はジェイ・フィルム&辺見俊夫&伊藤裕、美術監督は金森勝義、音楽は宮崎慎二、音楽プロデューサーは齋藤裕二、一部原曲&作曲は増田順一、 オープニングテーマソングは松本梨香『ライバル!』、エンディングテーマソングは安室奈美恵『toi et moi』。
声の出演は松本梨香、大谷育江、石塚運昇、飯塚雅弓、こおろぎさとみ、関智一、林原めぐみ、三木眞一郎、犬山犬子、鹿賀丈史、濱田雅功、山寺宏一、大塚周夫、平松晶子、久川綾、三石琴乃、潘恵子、豊島まさみ、愛河里花子、冬馬由美、小西克幸、かないみか、上田祐司、坂口侯一、篠原恵美、加賀谷純一、掛川裕彦、西村ちなみ、伊崎寿克、酒井哲也、川島得愛ら。


ゲームボーイのソフトを基にしたTV東京系の人気アニメシリーズの劇場版第2作。
TVシリーズのレギュラー声優陣の他、ジラルダンの声を鹿賀丈史、ヤドキングを濱田雅功、ルギアを山寺宏一、フルーラを平松晶子が担当している。

今回のロケット団は全く存在意義の無かった前作と違って、活躍するシーンを与えられている。しかしサトシと戦っている場合ではないので、仲間として協力するという形だ。これは何度も使えるパターンではないが、1度だけなら何の問題も無いだろう。

1作目で仲間だったタケシが消えて、何の説明も無くケンジが加わっているので、映画版しか見ていない人にはワケが分からないことになっている。
説明しておくと、この第2作はTVシリーズの“オレンジ諸島編”の流れに従って作られている。そのオレンジ諸島編では、タケシは旅の仲間から外れ、途中で出会ったタケシが加わるのだ。
で、そんなことは、TVシリーズを見ている人にとっては、もちろん分かり切っていることだ。そして、この映画を見る人の大半は、TVシリーズを見ていると考えていいだろう。しかし、それでも、何の説明も無いことは、やはり不親切すぎると断言したくなる。

前作と比べると、CGが多く使われていることが一目で分かる。なぜ一目で分かるかというと、通常のセル画から明らかに浮き上がっているからだ。天空の城ラピュタ、じゃなかったジラルダンの空中要塞は、ワザとなのかと思うほど浮き上がっている。まあ空に浮いているので、それに引っ掛けているのかもね(そんなワケ無いだろうが)。
劇場版の1発目が陰気で辛気臭い話になってしまったことを反省したのか、今回は最初から最後まで、とにかく迫力のあるバトル&アクションで見せようという意識が強く感じられる。もちろん、スケール感も出していこうという意識が満々である。

映画版ということで物語のスケールが大きくなり、登場するポケモンも強大になる。そうなると、サトシの持っているポケモンは全く役立たずになってしまうという困った現象が生じる。映画版だけで起きる急激なインフレに、登場人物が付いていけないのだ。
今回は途中で「サトシだけが世界を救うことが出来る」という、ものすごい展開が待っている。しかし、そこまでの流れに説得力が無いので、突拍子も無い話だと感じる。そこで突拍子も無い話だと感じても、そこからの流れを上手く運んで行けば、そういう印象は消えて行くものだ。しかし残念、その印象は最後まで変わってくれなかった。

海が荒れ狂っているにも関わらず、サトシは火の島へと向かう。
フルーラは「ただの“しきたり”だし、明日にしてもいい」と言っていたにも関わらず、その妙な使命感はどこから来るんだろう。
「船が荒れた海を進む迫力や、カスミ達の船のアクションシーンを見せるために無理矢理に話を持って行った」というのは邪推か、はたまた確信か。

サトシは世界を救うというバカバカしい、いや重要な使命を受けて、フリーザーの宝を取りに行く。氷の島なので、ポケモンのリザードン、フシギダネ、ゼニガメにソリを引っ張らせる。でも、ピカチュウだけは、サトシと一緒にソリに乗ってたままだ。
どうやらピカチュウ、えこひいきされているらしい。
と思ったが、しかし序盤で嵐に巻き込まれた時、サトシは他のポケモンをモンスターボールに入れたのに、ピカチュウだけは外に出したままだったよな。
ピカチュウも入れてやれよ、危ないんだから。

さて、フリーザーの宝を手に入れたサトシの元にルギアが現れ、自分の背中に乗せて彼を運ぶ。
いやいや、そりゃ無いでしょ、ルギアさん。
だったらさ、洞に行く時もアンタが運べばいいじゃない。
そうすれば、リザードン達やロケット団も苦労せずに済んだのに。

冒頭、ジラルダンは、ものすごく簡単にファイヤーを捕獲する。
サンダーも、やはり簡単に捕獲する。
自然界を司るほどの偉大なポケモン、神と呼ばれるポケモンが、騙まし討ちに遭ったわけでもなく、簡単に捕獲されるのだ。
いいのか、そんなことで?
で、ジラルダンに簡単に捕獲されてしまい、おまけに自力では脱出することさえ出来なかった2匹が、サトシ達の行動によって脱出。
で、脱出したファイヤーとサンダーは、今度は簡単にジラルダンの空中要塞を破壊する。
どういうパワーバランスなんだ?

ルギアはファイヤー、サンダー、フリーザーの3匹を捕まえて初めて登場するほどの幻のポケモンなのに、その3匹に簡単にやられてしまう。
その後、ジラルダンにもやられている。
ルギアってキャラ的に考えて、もっと強くなけりゃマズいんじゃないのかね。


第23回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【誰も要求していなかったリメイク・続編】部門(「タイトルに“2000”が付いた全作品」の内の1作品としてノミネート)
ノミネート:【最悪のアニメ】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会