『今日から俺は!!劇場版』:2020、日本

森川悟はヤンキーとは無縁の学生だが、志望校に落ちたので仕方なくヤンキーだらけの開久高校に入学した。森川はヤンキーについて何も知らず、友人の野中健太から詳しく教えてもらう。紅羽高校には番長の今井勝俊と子分の谷川安夫がいて、軟葉高校のトップは三橋貴志と伊藤真司だ。三橋には赤坂理子という恋人がいて、伊藤は早川京子と交際している。京子は成蘭女子高校の女番長で、スケバンの川崎明美に慕われている。しかし森川は、ヤンキーと全く関わらない学生生活を送るつもりだった。
北根壊高校の校舎が火事で焼けたため、生徒が少なく教室が余っている開久高校に居候することになった。開久高校では番長の片桐智司やナンバー2の相良猛が三橋と伊藤に倒され、ヤンキーをまとめる人間がいなくなっていた。北根壊の番長の柳鋭次と大嶽重弘は、余裕で商売が出来そうな状態だと考える。彼らは勢力拡大を目論んでおり、そのためには三橋と伊藤を潰す必要があると考えていた。三橋は家来の佐川直也から北根壊への対策を取るよう助言されるが、まるで気にしなかった。
柳や大嶽たちは、喧嘩を仕掛けて来た開久高校のヤンキー集団を軽く叩きのめした。彼らは「これを付けていれば俺たちに襲われない」と言い、キーホルダーを5千円で売り付けた。北根壊の連中は他の生徒にもキーホルダーを売るが、悟は買わなかった。すると北根壊の連中は、悟を待ち伏せて暴行を加えた。大嶽が手下を率いて開久のヤンキーを暴行していると、三橋と伊藤が通り掛かる。三橋と伊藤は襲って来た大嶽たちに反撃するが、面倒なので自転車を盗んで逃走した。
悟は教師に柳たちの行動を訴えて対処を求めるが、「北根壊の生徒には何も言えない」と冷たく突き放された。悟は従妹の涼子に殴られたことを知られ、犯人を教えるよう迫られる。スケバンの涼子に迷惑を掛けたくない悟は、敵わない相手なら諦めるだろうと考えて三橋の名を出した。翌日、涼子は軟葉高校を張り込み、三橋が理子や今井と話す様子を目撃した。涼子は三橋を尾行し、1人になるのを待って弱い者イジメを非難した。三橋は否定するが、涼子は構わずに襲い掛かった。
三橋は慌てて逃げ出し、理子を見つけて助けを求めた。理子は涼子にコショウを浴びせ、三橋を連れて逃走した。涼子は谷川と一緒にいる今井を見つけ、「ちょっと付き合ってくんないかな」と告げる。今井は恋心を告白されたと誤解し、呆れる谷川を伴って涼子に付いて行く。涼子は今井に案内させて、三橋の元へ赴いた。三橋は咄嗟に、今井が涼子を欺いてモノにしようと目論んでいるように装った。憤慨した涼子は、今井を竹刀で叩きのめして立ち去った。
悟が北根壊の連中に暴行されていると、京子と明美が通り掛かった。京子と明美が挑発して来た北根壊の連中を蹴散らしていると、伊藤が通り掛かった。途端に京子は乙女の芝居を始め、明美を連れて立ち去った。伊藤は北根壊の連中を叩きのめし、その場を去った。柳と大嶽は三橋と伊藤が北根壊に手を出したと知り、罰を与えようと決めた。椋木は同僚の坂本&反町&水谷&山口に、生徒の集団下校と教師による町の見回りを提案した。
悟が学校のトイレで暴行を受けていると、柳と大嶽が来て助けた。悟は家まで送り届けるという柳と大嶽が善人だと思い込み、涼子に遭遇すると「自分を助けてくれた人たち」と紹介した。涼子の姿を目撃した三橋と今井は、復讐しようと目論む。そこへ理子が来て2人を説教し、涼子に手を出さないよう告げる。今井は快諾し、理子は諦めようとしない三橋を父の哲夫がいる自宅へ連れ帰った。伊藤は悟を見つけ、涼子が三橋に喧嘩を吹っ掛けたことを教える。本当に三橋からイジメを受けたのかと問い詰められた悟は、事情を説明した。
伊藤が悟と話していると、大嶽が現れた。大嶽に襲われた伊藤は、圧倒的な力を感じる。彼は一方的に叩きのめされ、止めを刺されそうになる。しかし悟が「警官が来る」と嘘をついたため、大嶽は立ち去った。翌朝、怪我だらけで登校した伊藤は三橋から馬鹿にされ、「完全に負けた」と素直に認める。三橋が侮辱しても、伊藤は全く反論しなかった。三橋は佐川から話を聞き、敵情視察を命じる。佐川は彼に、開久の生徒がお守りを買わされていることを教えた。
開久のヤンキーたちは柳を騙して包囲し、叩きのめそうと目論む。しかし柳は隠し持っていた刃物を手に取り、次々に開久の連中を刺した。その様子を隠れて見ていた三橋は、怖くなって逃げ出した。翌日、柳は悟を呼び出し、「イジメを助けたら復讐に来た。誰かがナイフを投げてくれたおかげで逃げられたが、警察に通報されて自分のせいにされている」と嘘をついた。彼が「真犯人を見つけるために、時間が稼げればなあ」と下手な芝居をすると、悟は身代わりになることを申し出た。
涼子は悟の母から電話を受け、「悟が自首すると言っている。理由は教えてくれない」と告げられる。今井が関わっていると疑った涼子は、怒って襲撃に行く。しかし今井が竹刀の攻撃をかわさずに潔白を主張したので、誤解だと感じて立ち去る。彼女は柳と手下たちの会話を耳にして、悟が騙されたと知る。激怒した涼子は襲い掛かるが、柳に軽く叩きのめされる。そこへ駆け付けた今井は涼子を助けようとするが、やはり柳に叩きのめされた。
三橋が悟を見つけて詰め寄っていると、谷川が来て今井の危機を知らせる。今井は涼子の盾になり、激しい暴行を受ける。そこへ三橋が駆け付け、柳の手下たちを軽く蹴散らした。柳がナイフを投げて襲い掛かろうとすると、刑事と警官が現れた。柳は三橋に捨て台詞を吐き、その場から逃亡した。三橋は伊藤にリベンジさせてやりたいと考えるが、理子は「開久より強いんでしょ。2人で敵う相手じゃない」と反対する。そこへ遠くの工場で働いていた片桐と相良が現れ、「今回は俺らに譲れ」と告げる。「北根壊を一人残らず叩き潰す」と彼らが言うので、三橋は任せることにした…。

脚本・監督は福田雄一、原作は『今日から俺は!!』西森博之(小学館「少年サンデーコミックス」刊)、製作は沢桂一&山田克也&市川南&久保雅一&藤本鈴子&菊川雄士&中西正樹&大塚勉&井上健&松橋真三、エグゼクティブプロデューサーは伊藤響&福士睦&池田健司、企画・プロデュースは高明希、プロデューサーは飯沼伸之&鈴木大造、協力プロデューサーは古林茉莉&戸谷志帆梨、撮影監督は工藤哲也、アクション監督は田渕景也、撮影は各務真司、照明は藤田貴路、録音は柿澤潔、美術は内田哲也、衣裳は高橋英治、編集は臼杵恵理、音楽は瀬川英史、主題歌『男の勲章』作詞・作曲:Johnny。
出演は賀来賢人、伊藤健太郎、清野菜名、橋本環奈、仲野太賀、矢本悠馬、若月佑美、柾木玲弥、鈴木伸之、磯村勇斗、吉田鋼太郎、佐藤二朗、瀬奈じゅん、ムロツヨシ、じろう(シソンヌ)、長谷川忍(シソンヌ)、猪塚健太、愛原実花、栄信、柳楽優弥、山本舞香、泉澤祐希、杉本哲太、嶋大輔、竹森千人、成田沙織、荒木秀行、クノ真季子、安藤勇雅、飯田有咲、飯田祐真、稲田崇光、太田唯、大平有沙、海谷紘平、金田卓也、川又崇功、菊池宇晃、木村風太、コーシロー、里佳津乃、篠原理沙、鈴木宏那、辻岡甚佐、中澤梨乃、永吉明日香、西間瑞希、長谷部光祐、本田聡、三原大樹、村田直樹、室井響、山下永夏、山本文香、弓木奈於、諒太郎、和田崇太郎ら。


西森博之の漫画を基にしたTVドラマ『今日から俺は!!』の劇場版。
脚本・監督はTVシリーズに続いて福田雄一が担当。
三橋役の賀来賢人、伊藤役の伊藤健太郎、理子役の清野菜名、京子役の橋本環奈、今井役の仲野太賀、谷川役の矢本悠馬、明美役の若月佑美、佐川役の柾木玲弥、片桐役の鈴木伸之、相良役の磯村勇斗、一郎役の吉田鋼太郎、哲夫役の佐藤二朗、愛美役の瀬奈じゅん、椋木役のムロツヨシ、坂本役のじろう(シソンヌ)、反町役の長谷川忍(シソンヌ)、水谷役の猪塚健太、山口役の愛原実花らは、TVシリーズのレギュラー。
他に、大嶽を栄信、柳を柳楽優弥、涼子を山本舞香、森川を泉澤祐希が演じている。

良くも悪くも、TVドラマの延長でしかない。それ以上でもないし、それ以下でもない。
映画でなきゃいけない意味、映画である必要性は、ここには何も無い。
映画ならではのスケールの大きさとか、映画でしか有り得ないような大物俳優の出演とか、そういう要素は何も無い。
だから、TVドラマの2時間スペシャルで充分なのだ。

「同名漫画の実写化」と言うよりは、「福田雄一の作品」としての色が圧倒的に濃い。
出演者は総じて大仰な演技を見せ、幼稚なギャグをやる。
賀来賢人は顔芸で笑いを取りに行き、ムロツヨシは脇役だが無駄に存在感をアピールし、佐藤二朗はアドリブ満開で出演シーンの雰囲気を支配する。
良くも悪くも、いつも通りの福田雄一作品である。

柳が悟を騙すのも、悟が簡単に信じるのも、全てが陳腐で安っぽい。しかし意図的に三文芝居にしてある部分はあるんだろうし、そういう作品として受け止めるべきなんだろう。
それは「少年漫画が原作だから」とか「コミカルなテイストの濃い作品だから」ってことじゃなく、「福田雄一が荒唐無稽な映画として作っている」ってことだ。そもそも福田雄一作品の基本が、そういう味付けだからね。
なので、福田作品が大好きな人なら、もちろん大いに楽しめるだろう。
でも繰り返しになるけど、映画としてはダメだわ。これって「TVドラマならOK」ってヤツだよ。

TVドラマ版の製作が発表された時には、「なぜ今さら?」と感じた。原作が連載されていたのは1988年から1997年であり、「現在進行形でヒットしている漫画の実写化」というわけではないからだ。
さらに言うと、「最近になってブームが再燃したから」というわけでもない。
ただ、むしろ「今さら」が功を奏した部分が大きいのかもしれない。
あえて原作当時より少し遡った1980年代前半の時代設定に変更しているのだが、当時を知らない若い世代からすると、逆に新鮮味を感じられた部分があるのだろう。

劇中に登場するファッションや流行だけでなく、作品としてのノリも、1980年代のドラマを思わせるモノがある。
ただ、その辺りも、当時を知らない人からすると、ファースト・インパクトになるわけで。「ここ最近のTVドラマには無かったノリ」ってことで、若い世代から支持される大きな要因になったのではないだろうか。
TVシリーズのファンだった人は、もちろん原作を読んでいた世代もいるだろうが、それよりも全く知らない若い世代の方が多かった印象がある。特に、低年齢層の支持率が高かった印象がある。
それは、「子供にも受ける分かりやすいギャグ」ってのが大きかったんじゃないかな。顔芸とか、単純明快な掛け合いとかね。
あと、もうヤンキーとかツッパリって絶滅危惧種だし、いわゆる「エモさ」ってのもあったんじゃないかな。

純然たる映画として見た場合、ダメな部分は山ほどある。細かいことを言い出したら、まるでキリが無いぐらいだ。
しかし不幸中の幸いで、「細かいことはどうでもいい」と思わせてくれる力が、この映画には備わっている。
ただ、それは決して「ダメな部分は多いけど全く気にならない」「ダメな部分は多いけど面白い」という意味ではない。
ダメな映画であることは紛れも無い事実であり、その上で「いちいち細かいことを指摘する気にならない」ってことだ。
「ダメな映画」という感想が浮かんだら、そこで思考を停止させてくれる力が備わっているということだ。

「TVドラマの2時間スペシャルで充分だ」とは思うが、「TVドラマの2時間スペシャルとしては充分だ」とも思う。
「だって福田雄一作品だもの」と割り切って観賞すれば、意外に悪くないという気持ちにさせられたりもする。
ムロツヨシと佐藤二朗が登場するパート(特に佐藤二朗のパート)は強烈なノイズになっているが、それでも全体としては、福田雄一作品にしては悪くないんじゃないかと。
一応は、これでも褒めているつもりだ。
福田雄一作品にしてはね。

(観賞日:2022年4月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会