『孔雀王』:1988、日本&香港

チベット高原の古代遺跡調査基地。作業をしている調査団の前に妖女の羅我が現れ、呪文を唱え始めた。警戒する調査団の前で、羅我は呪文を使って遺跡を爆発した。遺跡の中からは、閉じ込められていたアシュラという女が復活した。発砲を受けたアシュラは何のダメージも受けず、妖力を使って車両を炎上させた。羅我はアシュラに、「長き眠りであった。今こそ我ら魔界の者が、この世を支配する時さ。お前の力を借りねばならん」と告げた。
僧侶のコンチェは与えられた任務を済ませ、予定より2日早くラマ寺院へ戻った。彼は師匠であるジグメに話し掛け、怪しい振動を感じたことを知らせる。その直後、コンチェとジグメの眼前で、寺院に置かれている阿修羅像が割れた。怪しげな光が発せられた後、その場所に小さな阿修羅像が出現した。するとジグメはコンチェに、「我らの先達が封印したアシュラに、何かが起こった。その子は地獄の門を開く鍵だ」と語る。彼はコンチェに、アシュラを再び封印するよう命じた。
東京の小田急デパートでプランナーをしている風間冴子は、2日後に迫った大恐竜展の準備を指揮していた。冴子が作業中の部下たちに発破を掛けていると、会場が突如として停電になった。1人の女性社員は恐竜の口が動くのを目撃するが、他に気付いた者はいなかった。照明を付けた冴子は、怯える女性社員から「恐竜の口の中に、人の顔が見えたんです」と告げられる。しかし冴子は「気のせいよ」と軽く笑い、まるで信じなかった。
東京に来たコンチェは、大恐竜展の垂れ幕を目にした。拝み屋の孔雀は、小田急デパートの社長から依頼を受けて上京した。宣伝部長の佐藤から孔雀を紹介された冴子は、否定的な態度を取った。佐藤は孔雀に、妙な事件ばかり起きているのだと話す。冴子が相手にせず仕事に戻ろうとすると、孔雀は彼女の肩にいた魍魎鬼を捕まえた。「こいつが見えるようになると、とても危険です」と彼は説明し、呪文を唱えて消滅させた。「今夜、何かが起きそうです」と彼が言うと、冴子は「トリックよ、こんなの」と強がった。
孔雀は冴子と佐藤を伴って大恐竜展の会場へ行き、結界を張って退魔行に入った。冴子は作業の中断に苛立つが、孔雀は「もう少し我慢して頂けませんか。今ここを離れるのは危険です」と夜明けまで留まるよう告げる。しかし冴子は「ここは暑いから着替えに行く」と言い、ロッカールームへ向かう。孔雀は鬼門になっているロッカールームで異変が起きると察知し、慌てて駆け込んだ。着替え中の女子たちが騒ぐが、孔雀は「そこから離れなさい」と指示した。
ロッカーから恐竜の腕が飛び出し、孔雀は呪文を唱える。しかし恐竜の腕は動きを止めず、そこへコンチェが来て退治した。コンチェが孔雀と冴子に挨拶した直後、イベント会場の恐竜が暴れ出した。コンチェは孔雀と共に退治した後、佐藤に「この会場は呪われてる。その内に式鬼が出るぞ」と警告した。孔雀はデパートへ来る前に調査しており、用地買収に絡んで焼身自殺をした一家がいることを突き止めていた。佐藤が「あの連中は勝手に死んだんだ」と声を荒らげると、彼は「一人だけ生き残った娘がいました」と告げた。
佐藤が式鬼に襲われ、残る3人は結界へと避難した。孔雀が式鬼を退治する様子を、密かに羅我が観察していた。孔雀とコンチェと冴子は西新宿署へ連行され、事情聴取を受ける。恐竜が暴れたという説明に激怒した刑事たちだが、孔雀とコンチェが法力を使って催眠状態にした。孔雀とコンチェと冴子は警察署を出て、ディスコへ遊びに行く。コンチェは冴子から来日の目的を訊かれ、アシュラの捜索に来たことを話す。羅我はアシュラを連れてディスコに現れ、機材を破壊して姿を消した。
孔雀は法力を使い、羅我が香港へ向かったことを知る。すぐにコンチェは香港へ飛び、孔雀は師匠の慈空に報告するため高野山へ戻った。慈空は「下手をすると地獄門が開くぞ」と言い、門が開けば究極の魔である皆魔障外神が現れることを語る。孔雀がコンチェという東洋人と会ったことを話すと、慈空は何か知っているような素振りを見せた。慈空は孔雀に「この世は魑魅魍魎の支配する世界になり、人間は生きながらにして地獄に落ちる。アシュラという少女が鍵だ。地獄門は、その子によって開かれる」と述べ、「アシュラを消すのが、お前の使命だ」と告げた。
コンチェが香港のオーシャンパークを訪れた時、アシュラは無邪気に遊んでいた。彼女は「もっと速く」と言い、遊具のスピードを上げる。そのせいで複数の人々が弾き飛ばされ、観覧車から女性が落下しそうになる。気付いたアシュラは、慌てて「停めて」と叫ぶ。コンチェは女性を救出し、アシュラを捕まえて「やり過ぎじゃないの?」と注意する。「楽しいから、いいの」とアシュラが言うと、コンチェは「遊びたいなら、俺が付き合うよ」と告げた。アシュラは笑顔を浮かべ、遊園地を満喫する。しかしコンチェがアイスクリームを買いに行っている間に、羅我がアシュラを連れ去った。
裏高野総本山では、座主が宮毘羅を始めとする十二神将に「孔雀が東京でコンチェという東洋人と会ったそうだ。20数年前、我らが逃した悪魔の子の片割れに相違あるまい」と語っていた。再び行動するよう命じられた十二神将は、慈空の元へ向かう。慈空を包囲した十二神将は武器を構え、孔雀の居場所を教えるよう迫った。宮毘羅は「魔界の子を殺すのは我らが使命。孔雀はコンチェの行方を知っているはず」と言うが、慈空は「全ては遥か昔のことだ。血相を変えるほどのことではあるまい」と受け流す。「コンチェが皆魔障外神と結ばれた時、この世は闇になるぞ」と宮毘羅が言うと、彼は「流れに身を任せるしかあるまい。孔雀とコンチェは香港におる」と述べた。
孔雀が香港の啓徳空港に降り立ち、冴子が現れた。彼女は孔雀が来ると確信し、デパートを辞めて1週間前から待っていたのだ。好奇心を示す彼女に、孔雀は「命の保証は出来ませんよ」と釘を刺した。タクシー運転手は孔雀と冴子をホテルまで送って行くと見せ掛け、仲間の待つ場所まで移動する。男は法外な料金を脅し取ろうとするが、孔雀は法力でメーターを戻し、冴子を連れて逃亡する。男から知らせを受けた組織のボスは、手下たちに冴子を拉致させた。後を追った孔雀は、ボスを退治して冴子を救い出した。
コンチェは香港警察の刑事たちと会い、男ばかりが血を吸われる連続殺人事件の発生を知った。現場写真を見せてもらったコンチェは、羅我が写っているのを確認した。新たな事件発生の知らせを受けたコンチェは、現場である九龍城へ赴いた。生中継のニュース映像に写るコンチェに気付いた孔雀と冴子は、すぐに九龍城へ向かった。2人が城内を捜索してコンチェと合流すると、目の前にアシュラが現れる。孔雀が印を結ぼうとすると、コンチェが制止して「アシュラは羅我に操られているだけだ」と言う。アシュラが地下道へ消えたので、孔雀たちは後を追った。
地下道の奥には羅我の神殿があり、彼女はアシュラを拘束して死体を食らっていた。羅我はアシュラを操り、孔雀とコンチェを襲わせる。孔雀が法力でアシュラを退治すると、羅我は彼女を連れ去ろうとする。コンチェはアシュラを奪還し、孔雀が法力で羅我を攻撃する。羅我は怪物に変身して襲い掛かるが、孔雀とコンチェの同時攻撃を受けて吹き飛ばされた。一行は崩れる神殿から脱出し、コンチェはアシュラを救うためにラマ寺院へ向かうことにした。孔雀と冴子も同行し、ジグメと面会する。
ジグメは孔雀の名を知ると、驚いた様子を見せた。孔雀とコンチェからアシュラを救うよう懇願されたジグメは、「分かった。だが、何が起こるか、ワシにも分からん。お前たちの身にも」と言う。ジグメは法力でアシュラを復活させた後、孔雀とコンチェに彼らの出生の秘密を教えた。20数年前、対立する陰陽道を指導する若い男女が禁じられた関係に落ちた。その時に女が身ごもったのが、孔雀とコンチェだ。それを知った双方の呪術者たちは呪いを掛け、孔雀とコンチェは世を滅ぼす悪魔の種子として誕生した…。

監督はラン・ナイチョイ、原作は荻野真(週刊ヤングジャンプ連載/集英社刊)、脚本は橋本以蔵&関澄一輝、製作は三ツ井康&レイモンド・チョウ&レオナード・ホー、エグゼクティブ・プロデューサーは村上光一&チャイ・ラン、企画は岡正&三木孝祐&曽愛屏&周震東、SFXプロデューサーは一瀬隆重、ビジュアル・プロデューサーは九里耕介、コーディネイト・プロデューサーは堀口壽一、プロデューサーは河井真也&室岡信明&佐藤武光、撮影は奈良一彦&関志勤、編集は神谷信武&姜興隆、照明は高屋齋&阮定邦&劉鉄志、録音は武進&、美術は田中孝男&馬磐超、音楽はミッキー吉野。
出演は三上博史、ユン・ピョウ、緒形拳、安田成美、グロリア・イプ(グロリア・イップ)、左とん平、ポーリン・ウォン、コント山口君と竹田君、リュー・チャーフィ(リュウ・チャーフィー)、コウ・ホン(エディー・コー)、ウー・ヤンホン、久遠利三、高下久男、村上久勝、鈴木果、大貫幸雄、清水進一、宮本浩光、野々村仁、得居寿、西沢章、浅野潤一郎、小田原淳司、惠英紅、郭追、韓義生、張国華、元武、小虎、楊昇、季洪ら。
声の出演は大滝達矢、日高のり子、池田勝、池田秀一、小宮和枝ら。


週刊ヤングジャンプで連載された荻野真の同名漫画を基にした作品。
監督は『セブンス・カース』のラン・ナイチョイ。
脚本は『名門!多古西応援団』『スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲』の橋本以蔵と、これが映画デビューとなる関澄一輝の共同。
孔雀を三上博史、コンチェをユン・ピョウ、慈空を緒形拳、冴子を安田成美、アシュラをグロリア・イプ(グロリア・イップ)、佐藤を左とん平、羅我をポーリン・ウォン、刑事をコント山口君と竹田君、宮毘羅をリュー・チャーフィ(リュウ・チャーフィー)、ジグメをコウ・ホン(エディー・コー)が演じている。

原作と内容は大幅に異なっているし、王仁丸太郎邪も日光も月読も登場しない。
何よりドイヒーだと感じるのは、孔雀が主人公のはずなのにコンチェが美味しいトコの大半を持って行く内容。
そもそもキャスト表記からして、三上博史とユン・ピョウが並列表記になっている。
当時の役者としての序列を考えれば、そりゃあ三上博史とユン・ピョウが並列扱いなのは理解できる。
ただ、『孔雀王』なのに孔雀がピンで主役を張らないどころか、コンチェという映画オリジナルのキャラが実質的には主役ってのは、どう考えてもマズい。

コンチェも「孔雀」の意味ではあるんだが、だからって「それなら納得だね」なんて、そんな奴は皆無に等しいだろう。
ただ、香港版だと、完全に「コンチェが孔雀王」という扱いで公開されたらしい。
だったら、いっそのこと「ユン・ピョウが孔雀を演じる香港映画」として製作してくれた方が、ある意味ではスッキリする。
ただ、フジテレビジョンとゴールデン・ハーベストとの提携作品なので、そういうわけには行かないんだよね。
だから折衷案として、「三上博史とユン・ピョウの両方が孔雀を演じる」という、デタラメな設定が用意されたってことだろう。
その結果として、ボンクラ度数の高い『孔雀王』が仕上がったわけだ。

冒頭でアシュラが復活し、シーンが切り替わるとコンチェがラマ寺院へ戻って来る。彼がジグメからアシュラの封印を命じられると音楽が流れ、タイトルロールに突入する。
そういう導入部なんだから、たぶん何も知らない大半の人間は「コンチェが主役」と解釈するだろう。
つまり構成からして、明らかにコンチェを主人公として扱っているのだ。
せめてタイトルロールで孔雀が登場すればともかく、なぜか「遅刻しそうになった冴子が慌てて出勤する」というシーンが描かれるのだ。
どういうセンスなんだよ。

タイトルロールが終わると、東京を歩く孔雀が登場する。しかし、「ただ登場した」というだけで終わり、すぐに冴子のターンに移る。
恐竜が動く出来事が描かれた後、今度は東京へ来たコンチェのターンになる。魍魎鬼が出現したので、野良犬に食わせる様子が描かれる。
コンチェが大恐竜展の垂れ幕を見た後、カットが切り替わるとデパートに来た孔雀が登場する。
その辺りで既に、「孔雀を排除して、完全にコンチェだけを主役にした方がスッキリするんじゃねえか」という印象が否めない。
少なくとも孔雀とコンチェのダブル主役ってのはバランスを壊しており、どちらを残すべきかと考えれば間違いなく後者なのだ。

佐藤は孔雀に「近頃、妙な事件ばっかり起きましてなあ」と言うが、こっちは全くピンと来ない。
こっちが見せられたのは「恐竜の口に人の顔が見える」という出来事だけであり、しかも女性社員が目撃しただけで他は誰も気付いていない。
つまり、それは「女性社員の見た幻覚」という扱いに過ぎないので、それを「事件」と言われても解せないのだ。
その段階で「今までに他の社員も怪奇現象を体験したり妙な物を見たりすることが何度もあった」ってことに言及していればともかく、冴子が一蹴して終わりだし。

デパートの依頼を受けた孔雀が退魔行を始めるので、ようやく彼が主役として扱われるのかと思いきや、恐竜の腕が暴れ出すとコンチェが駆け付けて退治する。
イベント会場の恐竜は孔雀とコンチェが1体ずつ倒して、式鬼は孔雀が退治する。
この辺りで、ようやく孔雀とコンチェがイーブンの関係になる。そして、この2人がコンビを組んで戦う話なんだなってことが伝わって来る。
そもそも孔雀が他の人物と同等の関係でコンビを組むという時点で違和感はあるが、まだコンチェが主役になるよりはマシだろう。

孔雀たちがディスコにいると、羅我がアシュラを伴って現れる。羅我はアシュラを踊らせて、その姿を孔雀とコンチェに見せる。それから機材を爆破し、店を去る。
何がしたかったんだか、サッパリ分からない。
彼女はイベント会場で事件が起きた時も孔雀の様子を観察しているが、そこに何の意味があったのかも分からない。
っていうか、そもそもイベント会場の恐竜暴走や式鬼出現は、羅我がアシュラを復活させて達成しようとしている目的には何の関係も無いんだよね。

孔雀とコンチェがデパートの事件を解決して香港へ渡った時点で、本来なら冴子の役割は終了している。
しかし、この映画の第一ヒロインなので、そこで出番を終わらせることは出来ない。
そのため、「孔雀とコンチェに出会って吹っ切れた彼女は、2人に付いて行けば面白い生き方が出来るんじゃないかと思い、デパートを辞めて香港へ飛ぶ」ということで、香港篇にも引き続いて出演する。
しかし、彼女は全くの部外者であり、しかも「好奇心で同行する」という場違いな人間なので、ただの邪魔な存在でしかない。

フジテレビジョンとゴールデン・ハーベストの合作なので、「どうしても日本と香港から1人ずつヒロインを出さないと」という事情があったんだろう。
そのせいで冴子を香港篇でも使わなきゃならず、「タクシー運転手と仲間が金を脅し取ろうとして孔雀と冴子が逃げる」「運転手が組織のボスに報告し、冴子が拉致されて孔雀が救出する」という、退魔とは何の関係も無い展開まで用意している。
ちなみに、この時に2人が複数の場所を移動し、いちいち場所の名前が表示されるが、これは観光映画としのて側面も持っているからだ。
ここまでのオーシャン・パークや啓徳空港も、同じことが言える。

九龍城で殺人事件が起きたのに、孔雀と冴子が到着すると、なぜか警察とマスコミは入れ違いで一斉に去る。
孔雀と冴子がコンチェと合流した後、アシュラが出現する。でも、すぐに消えるので、何がしたいのかサッパリ分からない。
で、アシュラはマンホールを飛ばし、それをコンチェが蹴り飛ばしている間に地下道へ消える。カットが切り替わって孔雀とコンチェと冴子が写し出されると、3人の後ろに2人のも男が立っている。
いつの間に現れたんだよ。っていうか、お前ら誰だよ。
いや香港警察の刑事なんだけどさ、急に現れるから困惑するわ。っていうか、そいつら全く要らないだろ。

終盤、ジグメは「孔雀とコンチェは双子で、コンチェも孔雀を意味する言葉」と説明するが、それで本作品の中での整合性は取れても、『孔雀王』としての整合性は取れていない。
あと、「対立する陰陽道を指導する若い男女が禁じられた関係に落ちたので、双方の呪術者が呪いを掛け、孔雀とコンチェは世を滅ぼす悪魔の種子として誕生した」って、どういうことだよ。
呪いを掛けて産まれて来ないようにするならともかく、世を滅ぼす悪魔の種子として誕生させたら、どっちも困るだろうに。

ともかく「孔雀とコンチェは悪魔の種子で、皆魔障外神に取り込まれたらヤバい奴」という設定ではあるんだけど、孔雀の方は全く警戒されておらず、コンチェだけが「危険人物」として扱われている。裏高野と十二神将も、殺そうとするのはコンチェだけだ。
どうして孔雀は安全な存在ってことになっているのかというと、悪魔の種子ってことを裏高野が終盤まで知らないからだ。
まあ都合のいいことで。
ちなみに、そんな「孔雀とコンチェは双子で悪魔の種子」という要素は、「羅我がアシュラを操る」という筋書きと全く融合していない。ホントは地獄門や皆魔障外神を仲介して上手く絡むことが出来るはずの要素なのに、見事なぐらいバラバラになっている。

終盤、十二神将がラマ寺院に乗り込んで裏切り者であるジグメを殺害し、激怒したコンチェとの戦いになる。
ここは人間VS人間なので、特撮を使わないカンフー・アクションとして演出される。そのためにリュウ・チャーフィーを起用したようなものだ。
なので、途中で孔雀が参加したり、慈空が来て戦いを終わらせたりするのが、ホントに残念だわ。
いや、そこに主軸が無いから仕方が無いんだけど、でも実質的にはユン・ピョウVSリュウ・チャーフィー&仲間たちのバトルが本作品のセールス・ポイントだからね。決してユルい特撮シーンではないからね。

原作を読んでいる人間からすると、ユン・ピョウには黄海峰でも演じてもらえばピッタリだったんじゃないかと思ったりもする。
でも、それだとユン・ピョウは脇役ってことになっちゃうので、それはゴールデン・ハーベストとしても受け入れられなかっただろうなあ。
結局のところ、「ユン・ピョウを主演として起用し、なおかつ孔雀の役は三上博史が演じる」という条件で『孔雀王』を映画化しようとすれば、絶対に無理が生じるわけで。
だから配役の時点で、ほぼ失敗が決まったようなモンだ。

「言わずもがな」だろうけど、もちろん格闘能力で三上博史とユン・ピョウを比較すれば後者が圧倒的に上だ。
だからアクションシーンになると、ユン・ピョウが活躍することになる。そこでユン・ピョウを脇に追いやって三上博史を活躍させようってのは、それはそれで納得し難いものがある。
なので、アクションシーンでユン・ピョウが活躍して三上博史の影が薄くなるのは、配役からすると正解と言える。しかし孔雀よりコンチェが活躍するってのは、『孔雀王』としては大間違いだ。
とどのつまり、何をどう頑張ろうと「ユン・ピョウをコンチェというキャラで登場させている」ってトコで無理が生じるのよ。

(観賞日:2016年8月31日)

 

*ポンコツ映画愛護協会