『高校生無頼控』:1972、日本

鹿児島の桜島で、「なんでも切れる薩摩出刃、切腹にも最適です。」と書かれた立て看板の前に正座している男がいた。高校生の村木正人 、通称ムラマサである。修学旅行生3人がバカにして笑い、「テメエの腹を斬って証明してくれ」と告げた。ムラマサは1本1万円で 3万円を要求し、包丁を腹に突き刺した。大量の出血を目にした3人は、怯えて逃げ出した。
ムラマサの前に示現流陽心館総帥の娘・早瀬卓子が現れ、「またやったのね。今日は何の血?」と告げる。ムラマサは豚の血を水枕に 詰めて腹に巻き、切腹に見せ掛けていた。わざと修学旅行生やチンピラを挑発し、彼は金を巻き上げているのだ。ムラマサは林へ向かい、 そこで首吊り死体となっている母に「これから東京へ行って兄貴を貰い受け、ぶった斬る」と告げ、死体を火葬した。
夜、ムラマサは卓子の寝室に忍び込み、いつものように彼女を抱いた。「いつもと違うのね」と言う卓子に、ムラマサは「学校に退学届、 剣道部には退部届を出して来た。俺は東京へ行く。じゃあな」と告げた。卓子が「セックス処理係だった私に解雇通知ってわけ」と口に すると、ムラマサはニヤリと笑う。卓子は「私も一緒に行く」と言うが、ムラマサは「迷惑だな」と冷たく告げた。卓子は、ムラマサが兄 ・鉄人の保釈金を稼いでいたことを知っていた。
卓子は「兄さんのことを気に病んで、お母さん、自殺なさったんでしょ」と言う。ムラマサが去ろうとするので、卓子は大声で叫んで道場 の門弟を呼んだ。ムラマサが3人の門弟をやっつけると、そこへ卓子の父・一剣が現れた。「娘を抱いたのなら嫁にせい」と要求する一剣 に、ムラマサは「断ります。やらねばならんことがあります」と告げた。2人は真剣で勝負することになった。結果は相打ちとなり、一剣 はムラマサを行かせた。ムラマサが母を自殺に追いやった兄を斬るつもりだと、卓子には分かっていた。
ムラマサが電車に乗っていると、車掌が検札に回って来た。ムラマサは隣で寝ていた中年男と自分の腕にオモチャの手錠を掛け、その男を 刑事に見せ掛けて検察を免れた。宮崎に到着したムラマサは、質屋で留守番していた娘・倉谷高子から古くて売れないカメラを借りた。 ムラマサはカメラを持って平和台公園へ行き、アベックの写真を撮影するフリをした。最初のカップルはムラマサの狙いとは違い、ごく 普通のカップルだった。ムラマサは写真を売ってほしいと言われ、キャップが付いたままだったと誤魔化して去った。
ムラマサは女と浮気している中年教師を見つけ、カメラを向けた。男に「写真を撮っただろう」と言われると、「埴輪を撮っただけです」 と告げた。「フィルムを売ってくれないか」と男が持ち掛けているところへ警官が現れるが、ムラマサは平然と「埴輪を撮影しただけ、金 も恐喝したんじゃなく、この人が出したんです」と言う。そこへムラマサを尾行していた高子が姿を現し、「嘘よ、この人は最初から アベックを狙ってたんです。カメラにはフィルムなんか入ってません」と警官に告げた。
ムラマサは冷静な態度で「フィルムが入っていなかったら恐喝になるんですか。それに、この人にフィルムを売ってくれと言われたが、 断ったんですよ」と説明した。彼は警官にカメラの弁償を要求し、アベックの男が支払うハメになった。ムラマサは高子を指差し、警官に 「この女を名誉毀損で告訴します」と告げた。高子の部屋に転がり込んだムラマサは、彼女を犯して陥落させた。
ムラマサは平和台公園で「新婚旅行のみなさん 記念写真のシャッター押します 一回千円」の看板を掲げ、商売を始めた。すると卑弥呼 に扮してスチール撮影をしていたモデルの朝野未来が、「代わりにシャッター押してよ」と持ち掛けてきた。彼女はカメラマンの古い センスに不満を持っていたのだ。未来は1万円をムラマサに渡し、カメラのシャッターを切らせた。
未来がマネージャーと一緒に屋外のレストランへ行くと、隣のテーブルではムラマサがライスと水だけを注文していた。博打をするガラの 悪いトラック運転手たちが未来のテーブルに現れ、因縁を付けた。彼らに食事を邪魔されたムラマサは、フォークを握ってケンカを要求 した。ムラマサは「慰謝料1万円を払って出て行け」と言い、殴り掛かって来た男たちを叩きのめして金を取った。ムラマサは未来の ボディーガードとして撮影クルーに同行し、彼女の体を海の中でまさぐって感じさせた。
ギャラを受け取ったムラマサは撮影クルーと別れ、団体客に紛れ込んでサンフラワー号に無賃乗船した。空腹で歩いていたムラマサは、 船内で親に反対された結婚式を挙げたアベックの言い争いを覗き見た。勝手に部屋に入り込んだムラマサに、アベックの女・吉本真理は 「貴方、タダ乗りでしょ。だけど簀巻きにされてドボンにならない方法があるわ」と持ち掛けた。
ムラマサは「二人きりで結婚式を挙げました。午后サロンのパーティーへ来て祝福してください」と書いた看板を身に着け、アベックの サンドウィッチマンになってデッキを練り歩いた。しかしアベックには気付かれないように、背中の方に「祝福しないで下さい 母より」 と書いておいた。パーティー会場には誰も現れず、ムラマサは一人だけでパーティーの御馳走をたいらげた。
姫路城の敷地で寝転んでいたムラマサは、フォークグループ「黙示録」のメンバーであるヨハネとジャンヌから声を掛けられた。ジャンヌ が「ここ、私たちのサウンドプラザなんです」と告げると、ムラマサは途端に立ち上がった。黙示録が野外演奏を始める中、ジャンヌが ムラマサにぶつかって走り去った。ジャンヌが所持金を掏ったと気付き、ムラマサは急いで後を追う。すると、その前に黙示録のメンバー が立ちはだかった。彼らは見物人から金を盗むのを目的とした連中だった。
ムラマサが竹刀を振って脅すと、黙示録のメンバーは腰を抜かした。ムラマサが走っていると、一人の女がジャンヌを取り押さえようと していた。しかしムラマサが竹刀を振り下ろすと怯み、その間にジャンヌは逃げてしまう。その女・征木牧子は「私は婦人警官よ」と言う が、ムラマサは「あの子からピンハネしようとしたくせに」と信じない。そこで牧子は黙示録の溜まり場を教えた。
ムラマサが教えられたライブハウスへ行くと、ジャンヌがいた。「アタシの分け前、全部よ」と彼女は金を差し出すが、まだ1割だ。残り を取り返すため男たちの元へ行こうとすると、ジャンヌは「待って。その代わりにアタシの一番大切なモノあげる」と下着姿になった。 ムラマサは「女の子の頼みは断らないのが俺の主義だ」と告げ、上半身裸になって彼女を抱こうとする。
そこへメンバーのユダが現れ、金を差し出して「ジャンヌを助けてやってくれませんか」と告げた。そこへ他のメンバーであるペドロや マタイたちが現れ、ユダを「裏切り者」と批判した。ムラマサは男たちから金を取り上げるが、まだ1割足りない。牧子がくすねたのだと 決め付けたムラマサは、公園へ戻った。牧子に「公然わいせつ罪よ」と言われると、ムラマサは「共犯にさせていただきます」と告げた。 彼はブランコを漕いで牧子を自分の上に乗せ、騎乗位の体勢で彼女を感じさせた。
舞台は変わって京都。一条高校の男子剣道部員3人は、「今日の試合に勝たないと新学期から予算をくれないと、生徒会長の静御前が 言っていた」と困ったように話しながら歩いていた。そこへムラマサが現れ、「お手合わせ願いたい」と言う。あっさり3人をやっつけ、 彼は防具一式を持ち去ろうとする。3人が止めると、ムラマサは「一式二千円で引き渡す」と告げた。
そこへ静御前が現れ、ムラマサに「それを差し上げる代わりに条件がある。これから新入部員として戦ってちょうだい。貴方が負けたら 返してあげるわ。貴方が勝ったら私のキスをあげるわ」と持ち掛けた。ムラマサは承諾し、あっさりと優勝した。剣道部員3人が「彼女は 学校の名誉が欲しかっただけで、剣道部に予算をくれっこない」と愚痴をこぼす。ムラマサは「予算を取ってやったら1割よこすか」と 持ち掛ける。静御前が現れ、目を閉じて唇を出した。ムラマサは部費を要求する書類を唇に付け、部員たちに渡した。
関ヶ原でダンプの荷台に乗って東名高速を移動していたムラマサは、隣を走るダンプの女運転手・志賀千秋に目を付け、そちらの荷台に 飛び移った。千秋がレストランに立ち寄ると、ムラマサは勝手に相席する。彼は情緒と表情について小難しい講釈を垂れて、ペラペラと 喋った。千秋がトイレへ行っている間に、ムラマサは彼女の注文した料理を勝手に食べてしまった。
千秋はムラマサに、大型二種は無免許で、ダンプは無断拝借したものだと明かした。どこまで捕まらずに東名高速を走れるか、試している のだという。ムラマサは助手席に移動し、千秋のドライブに付いて行った。そのまま何事も無く横浜に到着すると、千秋は「何のスリルも 無かったわ」と言う。ムラマサは「スリルを味あわせてやろうか」と言い、千秋を押し倒した。ムラマサは「終わるまでに見つかるか、 見つからないか」と言って千秋の服を脱がせ、彼女と関係を持った。
千秋と別れたムラマサは、ある場所で3人の男と共に車に乗って移動していた。金髪女の相手をするだけで金が貰える仕事だと、彼らは 聞かされていた。車で待っていると「お前の番だぜ」と呼ばれ、前金として2万を受け取った。ムラマサが原っぱへ行くと、先に仕事を 終えた2人が疲労困憊で倒れていた。そこにはバイクに乗って無知を持った金髪女4人組が待ち受けていた。金髪女4人組はバイクを 走らせ、無知でムラマサを襲ってきた。彼女たちは日本人の男を痛め付けて楽しんでいたのだ。
ムラマサは一人をバイクから振り落とし、馬乗りになった。「こんなことして何が面白いんだ」と訊くと、女は「感じたいの。これ一番 いいよ」と言う。ムラマサは「だったら裸になれよ。感じるってのは裸になって初めて分かることなんだ。君たちはマシーンに乗せられて いる。人間として恥ずかしいと思わないのか」と語る。彼はフンドシ姿になり、服を脱いだ金髪女と関係を持った。東京に到着した彼は 地裁へ行くが、既に兄は保釈されていた。身許引き受け人は、渋谷にある示現流東京道場の師範だった…。

監督は江崎実生、原作は小池一雄(現・小池一夫)&芳谷圭児、脚本は佐々木守&足立正生、企画は寺山修司&中山千夏&赤塚不二夫& 鈴木明&藤岡豊、製作は川野泰彦、撮影は山田一夫、編集はエディ編集室(辻井正則は間違い)、録音は瀬川徹夫、照明は大石弘一、美術 は片桐健之、擬斗は足立伶二郎、 音楽は佐藤允彦。
主題歌『高校生無頼控』作詞は小池一雄、作曲は藤本卓也、歌は村木正人、コーラスはくらい・まっくす。
出演は沖雅也、夏純子、宍戸錠、八並映子、中川加奈、沢知美、進千賀子、川村真樹、木村由貴子、集三枝子、長谷川照子、南利明、 岸田森、杉山俊夫、レナッタ・ヘラルド、岡崎二朗、丘寵児、久野聖四郎、杉江広太郎、柳瀬志郎、海野かつを、うえずみのる、 玉川長太、溝口拳、川野耕司、畠山麦、大橋二郎、江戸家子猫、神有介、小池正史、一の瀬謙、佐藤明彦、大塚崇、多田藤憲、 秋元京子、池上臣功、三上剛、脇平政一ら。


週刊漫画アクションに連載されていた小池一雄&芳谷圭児の漫画を基にした作品。
監督は日活出身の江崎実生で、配給は東宝。製作会社は、かつて新東宝だった国際放映。企画には寺山修司、中山千夏、赤塚不二夫という 異色の顔触れが揃っている。
正人を演じた沖雅也は、これが初主演映画。そして唯一の主演作となった。卓子を夏純子、一剣を宍戸錠、ジャンヌを中川加奈が演じて いる。
なお、ムラマサは序盤で退学してしまうので、それ以降は高校生ではない。つまり「高校生無頼控」というタイトルと中身は合致して いない。

ムラマサは冒頭、林の中で首吊り死体となっている母に「これから東京へ行って兄貴を貰い受け、ぶった斬る」と言っているが、既に自殺 しているのなら、そのまま木に吊るしたままになってるわけがない。
だけど、今までもずっと金を巻き上げていたってことは、かなり前に母親は自殺しているはず。その後もずっと母親は吊るされたまま なのかよ。
そんで彼は母親を原っぱで火葬するが、今さら火葬なのかよ。もう死体も腐りかけてきてんじゃねえか。
そこは中途半端に原作とは設定を変更したせいで、おかしなことになっているのだ。
原作では設定が違っており、兄は東大の全共闘幹部で全国指名手配中で、その恋人が病気なので「兄を見つけて自首させ、稼いだ金で保釈 し、恋人に会わせる」ということになっている。目的が大きく異なっているのだ(まあ、その目的はあっという間に忘れ去られるん だけど)。
だから、ムラマサが冒頭のシーン以前から金を稼いでいても、変なことにはならない。

で、この映画のムラマサは「過激派の兄が捕まって母が自殺した。だから母を死に追いやった兄を叩き斬る」という目的で旅に出るのだが 、もうメチャクチャである。
もっとメチャクチャなのは、その目的はあっという間に忘れ去られてしまい、単にムラマサが色んな女とヤリまくるだけという『俺の空』 のバッタモンになってしまうってことだ。
ただし、これは映画だけが狂っているのではなく、そもそも原作からして、兄のことなんて放っておいて、金儲けと女を犯すことだけに 意欲を燃やす物語になっているのだ。
さすがは小池先生、やりたい放題である。

ムラマサは冒頭で「兄貴を貰い受け、ぶった斬る」と物騒なことを言っているので、ちょっとイッちゃったぐらいシリアスな奴なのかと 思ったら、すぐに卓子の寝室へ行って彼女を抱くようなナンパな奴になっている。
しかも最初は彼女を強引に犯して関係を持っているという設定だ。
さらにムラマサは、卓子だけを愛するならともかく、彼女を面倒に感じて捨ててしまい、色んな女と遊びまくるという スケコマシ野郎だ。
一剣と真剣で勝負する辺りはマジなテイストなんだが、それは長続きしない。

ムラマサは電車で検札を免れるが、そういう作戦のために、わざわざオモチャの手錠を用意している辺り、ワル知恵の働く奴だ。
しかも、それを見ていた向かいの女子学生たちに笑ってウインクするプレイボーイぶりは、先程の真剣勝負のモードとはガラリと変わって いる。
そして音楽も急にノンビリしたモノになる。
さらに、そこでは唐突に「たまにゃニヒって夕陽に背むけ なにを好んでさすらいぐらし けんか剣法 親なし仁義」という詩が表示され 、それをムラマサが語る。
なんだ、その自由奔放すぎる構成は。

ムラマサは平和台公園へ行くと、「うひょー、いるいる」と、一剣の道場の時とは別人のような軽い口調になる。さらには、「でもこんなに大っぴら じゃ、商売にならないのデース」と、急に取って付けたような変な語尾まで付けている。アベックの撮影を始めると、「頑張るんだわー」 と、また語尾を伸ばす変な言葉遣いになる。ちょっとオカマちゃんが入っている感じだ。
その場面に留まらず、その後も彼は「目指す獲物はこれデース」「女を発見するには、レンズなんか覗いたってダメなんだわー」「俺の 食事を邪魔したのはオジサンたちなんだわー」「いいこと言うんだわー」「腹が減って戦が出来ないのデース」「こういう車は意外に 忍び込みやすいのデース」と、変な言葉遣いを続行する。
こいつのキャラクターは、まるで捉えどころのない状態になっている。
それはミステリアスで底知れないという意味ではなく、デタラメだという意味だ。

平和台公園のシーンでは、高子に恐喝を指摘されたムラマサが「そこまで分かっているのなら、今晩、君んちに泊めてくれるんだろうな」 と言い出すが、どういう論理かサッパリ分からない。
ところが、なぜか高子も簡単に泊めている。じゃあ心を許したのかと思ったら、バットで襲い掛かるというワケの分からなさ。
で、ムラマサが服を脱がせて襲うと、あっさり高子は陥落する。
未来から撮影を依頼されたムラマサは、10枚目の時に唐突に「チェストー!」と叫び、未来を驚かせてシャッターを切る。
完全にキチガイである。
この男、やたらと「チェストー!」と叫びたがる。未来に因縁を付けたオッサンたちを返り討ちにする時も、一人を担ぎ上げて 「いやぁー、チェストー!」と意味の無い叫び声で投げ捨てる。
何がチェストなんだか、まるで分からん。

未来のボディーガードとして撮影クルーに同行することになったムラマサは「よろしくお願いします。なーんちゃって」と笑うが、何が 「なんちゃって」なのかはサッパリだ。一言も冗談は言ってないのに。
で、彼は撮影の最中に、急にフンドシ一丁で「チェストー!」と叫びながら走ってきて、木刀を振るというキチガイっぷり。
未来に木刀を振り下ろすフリをしてビビらせ、「慣れきった仕事は心が弛緩します。心がダラけると肌まで疲れます。どうです、今のは。 心がピリッと引き締まりませんでしたか」と説教めいたことを言うが、お前みたいなスケコマシにそんなことを言う資格は無い。
ムラマサは未来を抱いて「冷たい水の中で肌と心の緊張と弛緩を繰り返す。それが人間を蘇らせてくれる方法かもしれないな」と真面目な 顔で言い放つが、ようするに女とヤリたいだけである。

サンフラワー号のエピソードの最後には、「人に言えない苦しみは胸にしまって涙をかくし 明日のことなど知らん顔 現在(いま)に 行きます 現在(いま)に賭けます ガクラン無宿」と、またムラマサがポエムを読む。
だが、エピソードの内容とは全く合っていない。
しかも、そのエピソードの時のムラマサはガクランじゃねえし。
で、ここで急に「姫路の巻」というテロップが表示されるが、いつの間に「〜の巻」という章形式の構成になってたんだよ。
今まで「〜の巻」なんて出てなかったじゃねえか。

姫路城では黙示録という連中が演奏を始めるが、フォークグループと書いてあるのに、演奏するのはサイケな演歌調ロック。
ジャンヌを追い掛けたムラマサは、牧子がジャンヌを取り押さえようとしているところへ「チェストー」と叫んで竹刀を振り下ろす。
牧子がビビっている隙に、ジャンヌは逃げ出してしまう。
そりゃそうだろ。
ムラマサは何がしたかったのか。

ジャンヌが「待って。その代わりにアタシの一番大切なモノあげる」と下着姿になると、ムラマサは「女の子の頼みは断らないのが俺の 主義だ」と言うが、序盤で卓子の頼みを断っているじゃねえか。
そこに男たちが現われると、ムラマサはやたらと竹刀を振って、また「チェストー!」と叫んでいる。
その後、ムラマサが夜の公園に戻ると、なぜか牧子はブランコを漕いでいる。
ずっと公園にいたのかよ。
どういう日常生活をしてるんだよ。

京都に場面が移ると、ムラマサは「チェストー!」の叫び声と共に登場する。
剣道部員をやっつけて防具一式を奪い、一式二千円で渡すと言い出す。
もう完全に恐喝である。
メチャクチャだ。
当初の目的は旅に出た瞬間から完全に忘れ去られており、恐喝とセックスを目的とするロード・ムービーと化している。
そもそも金が無いのなら、その金をちゃんと貯蓄してから東京へ向かえよ。なんでその日の食事代にも困るような金銭状態で旅に出てる んだよ。

なんだかんだで横浜で千秋と関係を持った後、場面が移ると、ムラマサはなぜか3人の男たちと同じ車に乗っている。
どういう経緯があったのかは全くの不明。
東京に到着すると、ようやく兄の保釈という目的が思い出させる展開になるが、それでも相変わらずムラマサは軽薄なスケコマシ野郎で 、もはやシリアスなモードに戻ることは無い。
兄の仲間を見極めるために「サツだ、ガサ入れだ」と叫ぶのだが、その前に兄の仲間である昌子のオッパイを揉むという、全く必要性の 無い行動を取っている。

その後、兄を引き渡してもらうため、昌子に勝負を持ち掛けるのだが、その勝負というのが野球拳。
なんでやねん。
女も律儀に脱いでるけど、ようするに裸を見せたいだけじゃねえか。
とにかく、最初から最後までデタラメな映画だ。
まあムラマサがメチャクチャな理屈を並べ立てるのも、やたらと女をナンパするのも、しかも女が簡単にその気になってしまう辺りも、 小池センセイらしいとは言えるが。
なお、この作品はシリーズ化されて第3作まで作られるが、2作目以降は主演が大門正明に交代している。

(観賞日:2010年5月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会