『告白 コンフェッション』:2024、日本

東慶大学の体育会登山部に所属していた西田さゆりは大学最後の春に遭難した。降り始めた雪と山深い地で、彼女の遺体が見つかることは無かった。部長だった浅井啓介と留学生のリュウ・ジヨンは彼女の面影を追うように、卒業後も同じ時期に同じルートを辿り、慰霊登山をしていた。16年後、ジヨンが猛吹雪の中で左足に怪我を負い、浅井は応急手当を施した。ジヨンは「もう助からない。置いて行け」と言うが、浅井は「俺たちは助かる」と口にした。
ジヨンは「自分は死ぬべきだった」と言い出し、「最後に聞いてくれ。さゆりは俺が殺した。首を絞めた」と告白した。浅井が驚くと、彼は「さゆりを愛していた」と告げた。浅井は山小屋を発見し、ジヨンを運び込んだ。ストーブで火を起こした彼は救助隊に連絡しようとするが、携帯が見つからなかった。ジヨンは浅井から携帯を持っているかと問われ、「無い」と答えた。調理場に入った浅井は、玉ねぎがあったのでスープを作ろうとするが、包丁が見つからなかった。
調理場から戻った浅井は、ジヨンが携帯で救助隊に「1人だけです」と連絡する様子を目撃した。「持ってたのか」と彼が言うと、ジヨンは「ポケットに入ってた。救助は明日だ」と述べた。浅井はジヨンが告白を後悔しており、自分を殺すかもしれないと不安を覚えた。彼が包丁が無いことを話すと、ジヨンはナイフを貸した。スープを作った浅井は、「1人だけ」という言葉の意味を尋ねた。するとジヨンは、「怪我してるのは俺だけだ」と答えた。
浅井が「家族に連絡したいから携帯を貸してくれ」と頼むと、ジヨンは「バッテリーが切れた」と告げた。ナイフを返してくれとジヨンが言うので、浅井はポケットから出して渡した。彼が「さゆりは遭難だった。それでいいだろ。16年も経ってる。聞かなかったことにする」と語ると、ジヨンは「俺はお前に告白した」と呟いた。浅井は就寝しようとするが、ずっと起きたままのジヨンが気になった。浅井は隙を見てナイフを盗もうとするが、ジヨンが戻って来たので「体調が悪いので薬を探してた」と誤魔化した。
ジヨンは「お前はおかしいな。なんで聞かなかったことに出来る?さゆりと付き合ってたよな」と話し、言っていないことがあるだろうと詰め寄った。「ナイフで俺を殺す気だったな」と言われた浅井は慌てて否定し、取り上げたかっただけだと釈明した。彼は「お前のことは誰にも喋らない」と約束するが、ジヨンは隠し持っていた包丁を構えて「お前も重い罪を告白しろ」と要求する。浅井が「無いよ」と言うと、彼は「考えろ」と怒鳴った。
浅井は改めて「お前のことは誰にも喋らない」と訴えるが、ジヨンは秘密を告白しろと凄んだ。浅井は高山病で視界が怪しくなり、ジヨンは「俺の告白を聞いたお前が悪い」と襲い掛かった。浅井は慌てて隣の部屋に避難し、隙を見て反撃を狙った。ジヨンはショベルで携帯を破壊し、「最後の登山、お前はさゆりを俺に押し付けた」と声を荒らげる。浅井は「さゆりはお前とペアになりたがっていたんだ」と言うが、ジヨンは「お前がさゆりを突き放すから、俺ら来るしか無かったんだ」と喚いた。
ジヨンは浅井の左腕を突き刺し、「さゆりはお前を好きだった気持ちを俺で紛らわせてた。俺は物に過ぎない。お前の代用品だ」などと怒鳴りながら、浅井の命を狙い続けた。浅井は身を隠しながら、薪を削って武器を作った。ジヨンは喚き散らしながら暴れ続けるが、左足を捻って転倒した。ジヨンは浅井に向かって、「正直に言えよ。さゆりが死んで、ホッとしただろ」と言う。さゆりの妊娠をジヨンが口にすると、浅井は16年前の出来事を振り返った…。

監督は山下敦弘、原作は福本伸行(原作)&かわぐちかいじ(作画)『告白 コンフェッション』(講談社『ヤンマガKC』刊)、脚本は幸修司&高田亮、製作は宮川朋之&小林智&依田巽&永山雅也&高見洋平&中村浩子、エグゼクティブプロデューサーは小川英洋&田中智則&松下剛、チーフプロデューサーは小西福太郎&高橋亮、プロデューサーは佐治幸宏&山邊博文、アソシエイトプロデューサーは松崎薫、撮影は木村信也、照明は石黒靖浩、録音は反町憲人、美術は清水剛、編集は今井大介、協力プロデューサーは根岸洋之、音楽は宅見将典、主題歌『殺意vs殺意(共犯:生田斗真)』はマキシマム ザ ホルモン。
出演は生田斗真、ヤン・イクチュン、奈緒、吉岡睦雄、服部竜三郎、賀家勇人、宮原尚之、サトウヒカル、内藤聖羽、水沢伸吾。


福本伸行が原作、かわぐちかいじが作画を担当した同名漫画を基にした作品。
監督は『ハード・コア』『1秒先の彼』の山下敦弘。
脚本は『劇場版 リケ恋 理系が恋に落ちたので証明してみた。』の幸修司と『死刑にいたる病』『グッバイ・クルエル・ワールド』の高田亮による共同。
浅井を生田斗真、ジヨンをヤン・イクチュン、さゆりを奈緒が演じている。山岳救助隊員の役で、吉岡睦雄や服部竜三郎、水沢伸吾らが出演している。

原作から幾つかの改変ポイントがあるのだが、その中で最も分かりやすく、映画が始まる前の段階から分かっているのが「石倉がジヨンになっている」ってことだ。原作では浅井と一緒に遭難するのが日本人の石倉だったが、映画版では韓国人に変更されているのだ。
しかし、わざわざ人種や国籍を変更している理由がサッパリ分からない。
日本で活動し、日本語がペラペラの韓国人であれば、シンプルに「人気俳優の起用」ってことかもしれないし、分からんでもない。
しかしヤン・イクチュンは『あゝ、荒野』など日本の作品にも出演しているが、基本は韓国で活動している人だ。そして、決して日本語が達者というわけでもない。

ヤン・イクチュンを起用するのは、ひょっとしたら韓国の資本が入っているからなのかとも思った。ハリウッド映画だと、「中国資本が入っているから中国人俳優を起用する」みたいなケースは良くあるしね。
しかし、そういうことではなさそうだ。
「その国のマーケットを狙うための戦略」として考えるのも無理があるだろう。韓国の市場は、決して広いわけじゃないしね。
なので、わざわざ日本語の台詞を覚えてもらってまで韓国から呼ぶ意味が、どうにも良く分からないのだ。

「ほぼ二人芝居」という作品なので、やはり会話劇が重要になって来る。にも関わらず、言葉の部分でハンデを背負わせて、何のメリットがあるのだろうか。
日本語が拙いせいで、肝心な「さゆりは妊娠中だった」という台詞が聞き取りにくいし。むしろ韓国語で喋らせて、字幕を付けてくれた方がいい。「上手く言葉が通じない」ってことによるコミュニケーション不全を、大きな要素として使っているわけでもないし。
ジヨンが韓国語を喋るシーンも結構あるが、ご丁寧に字幕を出して観客に内容を教えてくれるだけでなく、どうやら浅井は意味を理解している様子だし。
ジヨンは留学生として大学に来ていたのに、その後も日本に残って登山しているのも不可解だし。

上映時間は74分であり、長編映画としては短い。しかしコンパクトにスッキリとまとめている印象は皆無で、むしろ短編で済むような話を無理に引き伸ばして長編にしているように感じられる。
そのせいなのか、ジヨンがただのサイコキラーとして襲って来るホラー映画みたいな時間帯が長い。
原作はかなり前に読んだだけなので詳しい内容は覚えていないけど、こんな内容だったかな。
いや正直、原作漫画だって、手放しで大絶賛できる傑作だったという記憶は無いんだけどさ。

開始から20分ぐらいで、浅井の「あいつは告白したことを後悔している。俺を殺すかもしれない」というモノローグが入る。状況を説明する冒頭のナレーションを除くと、浅井のモノローグが入るのは、その1度だけだ。
モノローグの多用は邪魔になることも少なくないし、芝居で心情を説明した方がいいケースもあるだろう。
しかし本作品の場合、もっとモノローグに頼った方がいい。
そこを活用しないと、息詰まる心理ドラマが全く描けていないんだよね。

終盤のネタバレを書く。
浅井が必死に隠れていると朝が訪れ、救助隊がヘリコプターでやって来る。しかし小屋に入った救助隊は、ジヨンだけ見つけて去ろうとする。浅井が呼び掛けても気付いてもらえず、なぜか隠れている部屋のドアも開かない。
救助隊が出て行った後、浅井はドアを壊して部屋から脱出する。すると視界がボヤけて、そこにジヨンが現れる。浅井はジヨンに襲われ、必死で逃げ惑う。
この「朝が来て救助隊が現れて」という一連のシーンが、全て幻覚か夢だってことはバレバレだ。
ジヨンが救助隊の服を着ているし、2階に救助隊員の死体が転がっているしね。

そんな夢の中、浅井がジヨンに首を絞められると、16年前の回想シーンが挿入される。
ジヨンがさゆりの首を絞めている時、浅井は木陰に隠れて観察していた。ジヨンが逃げた後、浅井がさゆりに歩み寄ると、彼女は息を吹き返す。しかしさゆりが邪魔だった浅井は、彼女の首を絞めて殺害する。
ここで「実はさゆりを殺したのが浅井だった」という真実が、明らかにされる。
そしてジヨンに首を絞められた浅井は、さゆりの幻影を見る。その直後、彼は目を覚ます。
浅井は就寝しており、ジヨンは襲っていなかったのだ。

この話って、本来なら息詰まる心理ドラマと「実は殺人犯がジヨンではなく浅井だった」という逆転劇が肝になっているはずなんだよね。
だけど、ぢっとも雑に処理して、台無しになっている。
そして目を覚ました浅井は、現実の世界でもジヨンから告白を求められる。
しかしジヨンが「さゆりと付き合ってたんだろ」と言うので「そのことか」と安堵し、さゆりが妊娠していたことまで喋る。
すると妊娠が初耳だったジヨンの表情が変化し、「さっき、そのことって言ったな。そのことって何だ?」と追及する。

浅井が焦っていると、ジヨンは「お前、おかしいな」と口にする。浅井が顔を引きつらせていると、シーンが切り替わって救助隊の様子が映し出される。そして救助隊が小屋に入ると、浅井がジヨンを殺して何度も遺体を突き刺している。
ようするに、夢オチの2連発になっているわけだ。
もちろん、これは真剣に「シリアスなスリラー」としての結末だ。しかし残念ながら、もはやギャグみたいに見えちゃうよ。
ちなみに、これは原作とは全く異なるエンディング。完全ネタバレだが、原作の場合は浅井が石倉を殺害して遺体を放置し、自分だけが救助される。石倉が「告白を聞いたお前が悪い」と浅井を殺そうとしたが、最後は「浅井の告白を聞いた石倉が殺される」という形だ。
つまり「殺人犯は石倉ではなく浅井」に加えて、「立場の逆転」が2つ重なる形にしてあるわけだ。

(観賞日:2025年4月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会