『コドモ警察』:2013、日本

横浜を拠点とする犯罪組織“レッドヴィーナス”を逮捕するため、神奈川県警大黒署に特殊捜査課が組織された。しかし一網打尽というところで罠に掛かった特殊捜査課のエリート刑事たちは、特殊ガスを吸って子供の姿になってしまった。姿が変わっても、特殊捜査課のデカ長、マイコ、ナベさん、イノさん、スマート、エナメル、ブルは刑事の仕事を続け、その後もレッドヴィーナスの犯罪を追っていた。最近、レッドヴィーナスの実行犯は犯行現場に組織のカードを残すようになっていた。そのために容易に捕まることが多くなっていたが、スマートは模倣犯の仕業ではないかと疑問を抱いた。
電話を受けたデカ長は、女子高にレッドヴィーナスのカードが添えられた爆破予告状が届いたことを聞かされた。マイコたちは非番だった新人の国光信を連れて、女子高へ聞き込みに行く。しかし、特殊捜査課は何の手掛かりも得られなかった。明日は休みにした方がいいと考えるスマートだが、名門である女子大はスキャンダルになることを嫌がった。「明日は朝から大学と近辺を張り込みだ」とデカ長が言うと、イノさんは学校で逆上がりテストがあることを申し訳なさそうに打ち明けた。さらにブルがお楽しみ会があることを話したため、残りのメンバーで警備に当たることになった。
その夜、スマートは、仮の両親である武藤弘康&千種の家へ帰宅した。千種から子役オーディションを受けるよう勧められたスマートは、呆れた様子で無理だと答える。弘康もスマートの肩を持つが、千種は聞く耳を貸さない。彼女が「来週のオーディション、絶対に連れて行くからな」と強硬な態度を見せたので、スマートは「仕事の邪魔だけはしないで頂きたい」と鋭く言い放って食卓を去った。
翌日、特殊捜査課の面々は女子高を張り込んだ。一方、デカ長は鑑識課職員の松田凛子と会い、「最近のレッドヴィーナス絡みの事件は杜撰すぎる」というスマートの意見について語る。「この女子高爆破事件も、案外、簡単に片付いたりしてね。奴ら、壊滅状態なのよ」と言うが、デカ長は楽観的になれず、これまでの事件で使われた拳銃を調べるよう要求した。ナベさんとイノさんは職員室に爆弾を仕掛けた女子高生を捕まえ、警察署で取り調べた。
特殊捜査課の面々が「やはりレッドヴィーナスは壊滅したのではないか」と話し合っていると、本庁の間聖四郎がやって来た。彼は来日するカゾキスタンのハザフバエフ大統領の暗殺予告が届いたこと、その送り主がレッドヴィーナスであることを話す。間はデカ長たちに、本庁の警備課と合流するよう告げた。しかし警護課のリーダーでナベさんの元部下でもある吉住は上層部からの電話で、特殊捜査課を外すよう命じられた。国光たちが来たので、吉住は冷徹な態度で追い払った。
間から抗議を受けた上司は、暗殺予告を公にすることは恥をさらすことになると語る。特殊捜査課が動けば、マスコミはレッドヴィーナスが絡んでいることをすぐに嗅ぎ付ける。それを避けるために、本庁は特殊捜査課を大統領の警備から外したのだ。特殊捜査課の面々は怒りを覚え、先手を打って捜査すべきだと考える。しかしデカ長は、「ここは本庁に従おうじゃないか。本庁と警護課がやりたいと言っているんだから、やらせてやったらいいんだ」と部下たちを制した。
デカ長は部下たちに、大統領の警護よりも、女子高の爆破事件を丹念に調べようと告げる。しかし部下たちは反発し、ブル、エナメル、マイコ、スマートが次々に彼の元を去った。街を歩いていたエナメルは、かつての恋人である神崎絵里子と出会った。エナメルは子供の姿なのに、絵里子は彼の正体に気付いて声を掛けて来た。エナメルは彼女に、今までの経緯を詳しく語った。エナメルは「誰にも言っちゃダメだよ。俺たち、子供の内は身内と知り合いに会っちゃダメって言われてるから」と絵里子に告げた。
ハザフバエフ大統領の来日をテレビのニュースで知ったブルは、単独行動を開始した。一方、電話を受けたデカ長は、八百屋の店主に殺害をほのめかすレッドヴィーナスからの予告が来たことを知らされる。大統領に近付こうとホテルの地下駐車場で待ち受けていたブルは、何者かに睡眠薬を嗅がされて捕まった。エナメルは絵里子と待ち合わせて、デートに出掛けた。小学校に登校したマイコは、クラスメイトの平岡翔太から「体育館の舞台まで来ちゃいなよ」という手紙を受け取った。
商店街へ赴いた国光、ナベさん、イノさんの3人は、ボーリング大会の恨みで八百屋店主に襲い掛かろうとした肉屋店主を捕まえた。体育館へ出向いたマイコは、翔太からデートに誘われる。スマートは武藤夫婦と共に、子役オーディションの会場へ来ていた。しかし本人にオーディションを受ける気は無く、すぐに逃亡した。夜、デートを終えたエナメルは、絵里子から「早く大人に戻ってね」と言われる。彼女と別れた後、尾行して来たレッドヴィーナスの男を待ち伏せて捕まえたエナメルは、「少しばかり情報をくれるだけで、大人に戻してあげますよ」と取引を持ち掛けられた。
デカ長が飲んでいると、間がやって来た。間から「どうして本庁の命令を押し退けて、暗殺予告の捜査に乗り出さなかったんです?」と質問されたデカ長は、「俺にも考えがあってね」と口にする。デカ長が暗殺事件に対して全く関心を示さないので、間は苛立ちを示した。次の日、マイコは翔太とのデートに出掛けた。しかし待ち合わせ場所に赴いた彼女は、翔太がレッドヴィーナスに電話を掛けて「林舞子に関しては、捜査に動いている様子は無いですね」と報告しているのを盗み聞きした。翔太もマイコたちと同様、子供の姿に変えられた大人だったのだ。マイコは慌てて、その場を立ち去った。
マイコは特殊捜査課へ行き、レッドヴィーナスが子供に化けて自分を監視していたことを話す。そこへスマートが来て、警護課のデータに潜り込んだことを告げた。スマートは「奴らの警護は隙だらけですよ」と教える。そこへ間からの電話が入り、デカ長は大統領が誘拐されたことを聞かされる。間は「緊急事態です。本庁からの正式な命令はありませんが、すぐに動いて下さい」と要請した。
デカ長はマイコとスマートを待機させ、他の3人と共に出動した。レッドヴィーナスは大統領の車をジャックし、中央自動車道をひたすら西へ向かっていた。途中で警護課が仕込んだGPSの通信が途絶えたため、それ以上の追跡は不可能になった。通信が途絶えた山で車は発見されるが、大統領の姿は無く、警護課に配属されたばかりの運転手が殺されていた。現場検証をしていたデカ長の携帯に、ブルからの連絡が入った。しかし「しくじりました。奴らに捕まって」とブルが言ったところで、通話は切れてしまった。
特殊捜査課の面々が捜査に当たる中、レッドヴィーナスと取引して大人に戻ったエナメルは絵里子とデートしていた。デカ長は凛子から、ここ最近の事件で使われた武器が全てお話にならない爆弾やモデルガンばかりであることを聞かされる。デカ長は「俺の読み通りだよ」と口にする。デカ長はレッドヴィーナスの倉庫に乗り込み、自分と引き換えにブルを解放させた。特殊捜査課に戻ったブルは、そのことを仲間たちに話した。
国光やマイコたちが出動しようとしているところへ、大人になったエナメルが現れた。彼は悪びれた様子も見せず、レッドヴィーナスに情報を売って取り引きしたことを話す。激怒したブルは彼を殴り倒し、デカ長が監禁されたことについて「お前のタレコミのせいだ」と告げる。国光たちは同行を拒否したエナメルを残し、デカ長の救出に向かう。その直後、エナメルの携帯に絵里子から電話が掛かって来た。絵里子は「助けて」と告げるが、すぐに電話は切れてしまう…。

脚本・監督は福田雄一、製作は寺田篤&新坂純一&三宅容介&岩原貞雄&宮田一幸&松田陽三、プロデューサーは蔵本憲昭&山内章弘、アソシエイトプロデューサーは花田聖&棚橋裕之&東信弘&竹園元、ラインプロデューサーは的場明日香、撮影は早坂伸&工藤哲也、照明は小西章永、録音は山田幸治、美術は松塚隆史、編集は栗谷川純、音楽は瀬川英史、主題歌『High!! High!! People 〜movie remix〜』はSexy Zone。
出演は鈴木福、吉瀬美智子、勝地涼、マリウス葉(Sexy Zone)、本田望結、鏑木海智、青木勁都、秋元黎、相澤侑我、竜跳、鈴木亮平、宍戸開、小野寺昭、北乃きい、上地春奈、本田力、野添義弘、山本裕典、神尾佑、有村架純、坂田聡、指原莉乃、佐藤二朗、半海一晃、ムロツヨシ、柳原可奈子、飯田基祐、永岡卓也、竹井亮介、田中聡元、田中理勇、鎌倉太郎、和田正人、足立理など。
声の出演はゆうたろう、平野綾、平泉成、平田広明、野島裕史、浪川大輔。
ナレーションは森山周一郎。


2012年4月から6月まで深夜ドラマ枠で放送された同名のTVドラマの劇場版。
脚本&監督はTVシリーズに引き続き、『大洗にも星はふるなり』の福田雄一。
デカ長役の鈴木福、凛子役の吉瀬美智子、国光役の勝地涼、間役のマリウス葉(Sexy Zone)、マイコ役の本田望結、ナベさん役の鏑木海智、イノさん役の青木勁都、スマート役の秋元黎、エナメル役の相澤侑我、ブル役の竜跳、千種役の上地春奈、弘康役の本田力、鑑識役の野添義弘、本庁の管理官・木島、同じく管理官・羽川といった面々は、TVシリーズのレギュラー陣。
他に、間の上司を小野寺昭、レッドヴィーナスの幹部・川辺を宍戸開、同じく幹部・山崎を鈴木亮平、絵里子を北乃きい、大人のエナメルを山本裕典、吉住を神尾佑が演じている。また、爆弾を仕掛けた女子高生役で有村架純、肉屋の店主役で坂田聡、スマートが出演するドラマの主演女優・槇原莉乃役で指原莉乃(ドラマ版でも同じ役でゲスト出演していた)、ドラマのプロデューサー役で佐藤二朗、八百屋の店主役で半海一晃、ドラマの監督役でムロツヨシ、オーディション会場の係役で柳原可奈子が出演している。

TVドラマの方は、たまたまチラッと見ただけで、1回の放送分を最後まで視聴したことも無い。
だが、この映画版を見ただけで、これが「『名探偵コナン』のネタを拝借して、『太陽にほえろ!』を中心とした往年の刑事ドラマのパロディーをやる」という作品であることは分かった。
で、やるならやるでキッチリとやってほしいんだけど、どうもパロディーを舐めているような印象を受ける。
「パロディーだから、この程度でもOKでしょ」という感覚が、全編に渡って見えてしまうのだ。

これがバラエティー番組のコントであれば、この程度の出来栄えでも構わないのかもしれない(実はコントとしても決して質が高いわけではないのだが)。
しかし全国規模で劇場公開される映画として、これじゃあダメでしょ。
そう、これってパロディー映画っていうより、まるでパロディー・コントなんだよな。
しかも、「刑事ドラマのパロディー」ってのをキッチリとやっているわけじゃなくて、余計な要素も持ち込んでいるんだよな。

例えば、全員で聞き込みをやろうとしたら「逆上がりテストがあるから無理」とか「お楽しみ会でAKBを踊るから無理」と言い出すとか、それって刑事物のパロディーとは何の関係も無い。子役オーディションのネタとか、マイコがクラスメイトからデートに誘われるとか、エナメルが元カノとデートするとか、そういうのも同様だ。
ちゃんと刑事ドラマのパロディーをやった上で、そういうネタも散りばめているってことなら別に構わないのよ。でも肝心の刑事ドラマのパロディーという部分を疎かにして、そういう別のネタばかりで満腹にさせようってのは違うんじゃないかと。
しかも、まるで面白くないし。
「刑事として捜査をするはずが、アイスを食べたり川で遊んだりという子供としての行動を取ってしまう」というネタも、やはり笑えないし、それどころかイライラして来る。

序盤、特殊捜査課が女子高へ聞き込みに行くシーンがある。
ここ、少なくとも1つは笑いを取りに来るんだろうと思っていたら、刑事が聞き込みをしている様子を普通に描くだけ。
聞き込みをしているのが子供なので、学生たちの反応も刑事を相手にするのとは全く違うが、それがパロディーになっているとか、笑いを生んでいるとか、そういうことは無い。
しかも、「何の手掛かりもありませんでした」ということで、そのシーンは終わってしまうのだ。
だったら、そのシーンって何のためにあるのかと。

翌日、女子高を張り込んだ国光とナベさんは、不審な男を発見する。
でも、そいつを追及するようなシーンは無くて、他の刑事たちの様子が写し出された後、もう職員室に爆弾を仕掛けた女子高生が取調室にいる。「刑事が職員室で爆弾を発見し、それを仕掛けた女子高生を突き止める」という手順はバッサリとカットされている。
だから、捜査過程で喜劇を作ることもしていない。
そのように、刑事ドラマのパロディーを盛り込むことが出来そうな箇所を幾つもスルーしちゃってるんだよな。
そんで前述したように、刑事物のパロディーとは無関係なことで笑いを取りに行っている。
もう何がやりたいんだかサッパリだ。

子役俳優たちは子供としての演技ではなく、「大人の刑事」としての芝居をしている。
しかし、当たり前っちゃあ当たり前だが、「本当は大人」ということを全く感じさせない芝居になっている。
そこに「中身が大人だと感じさせる演技力」を求めるのは酷ではあるんだが、せめてセリフ回しぐらいはキッチリとこなしてほしい。明らかに噛んだり滑舌が悪かったりという箇所が幾つもある。
滑舌が悪いせいで、何を喋っているのか聞き取れない箇所も少なくないんだよな。

子役たちが真面目に「大人の刑事」としての芝居をしている様子をしばらく見ている内に、「ものすごく予算とスタッフを使って作られた、子供たちのお遊戯会」という感覚になってしまった。
たまに入る、わざとらしいリアクションや大げさな効果音なども、間違いなく意図的にやっているんだけど、ちっとも笑えないんだよな。
そもそも、それが喜劇映画としての演出ではなく、コントとしての演出になっている時点で問題があるし。
ただし、じゃあ普通に「大人の刑事」としての芝居をシリアスにやらせている部分が面白く感じられるかというと、そこも演技が子役たちの稚拙なせいでヘロヘロなんだけどさ。
他にも、絵里子のSOSを受けて出動したはずのエナメルが仲間たちの元に駆け付けるとか(その場面ではなく、後になって「彼女の家まで行ったら空っぽだった」ということが説明される)、監禁されていたはずのデカ長がいつの間にか脱出しているとか(そもそも監禁されているシーンも、そこから脱出しようとするシーンも描かれていない)、不満を挙げればキリが無いのだが、それらは全て「ちゃんとやろうよ」という一言に集約される。

これが深夜帯の30分枠のドラマであれば、「ボーッとしながら気楽に見ることの出来るユルい番組」として、楽しめたかもしれない。
でも、それをそのまんま映画にしちゃダメだわ。なんでもかんでも映画にすりゃあいいってモンじゃないのよ。
そもそも私は、ちょっと視聴率が良かったからってTVドラマを安易に映画化することに対して否定的な考えを持っているのだが、これは「TVドラマの映画化作品」ということを抜きにしても、映画にすべきモノではないよ。
でもレッドヴィーナスは壊滅していないし、特殊捜査課の面々も子供の姿のままだし、続編を意識していたんだろうなあ。

(観賞日:2013年9月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会