『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』:2003、日本

ぶっさんは21歳の若さにして余命半年と医者から診断されたが、1年を過ぎても元気に暮らしていた。彼は仲間のバンビ、うっちー、マスター、アニという5人組で、バンドをやったり野球に興じたりしていた。ただし、ぶっさんは野球チームではキャプテンなのに補欠である。バンビは昨年に引き続き、今年もミスター木更津に選ばれた。ぶっさんは、一次審査で落選している。
山口先輩は韓国パブを出店し、猫田を店長に据えた。ぶっさんは仲間と共に店へ行き、愛想の悪いホステスのユッケと出会った。その夜、ぶっさん達は1年前に死んだはずのオジーを河原で発見した。素っ裸で倒れていたオジーだが、急に起き上がって騒ぎ出した。ぶっさん達はオジーの復活を大歓迎し、山口先輩は住処として船をプレゼントした。
ぶっさん達は氣志團から、ロックフェスティバルの運営委員とマスコット・ボーイに任命された。さらに氣志團は、ぶっさん達のCDをプロデュースした上、前座も務めさせると告げる。ただし、ぶっさん達にはブルーハーツをパクった曲しか無いので、ラブソングを書き下ろすよう求められた。ユッケに恋をしたぶっさんは、その気持ちを歌にした。
ユッケと結婚を考えているというぶっさんに、美礼先生は学生時代の恋愛を語った。恋の相手である村田ジョージは、やっさいもっさいが大得意だったという。ジョージについて調べ始めたぶっさん達は、彼が偽札作りの名人だったと知る。そのジョージは、実は特殊メイクでオジーの姿になって木更津に現れていた。ぶっさん達が河原で出会ったのは、ジョージだったのだ…。

監督は金子文紀、部分演出は片山修&宮藤官九郎、脚本は宮藤官九郎、製作は近藤邦春&藤島ジュリーK&椎名保、企画は濱名一哉&那須田淳、プロデューサーは磯山晶、撮影は山中敏康、映像は木部伸一郎、編集は新井孝夫&米山美由紀、照明は田淵博、美術デザインは永田周太郎、美術プロデューサーは中嶋美津夫、音楽は仲西匡、音楽プロデューサーは志田博英。
出演は岡田准一、櫻井翔、酒井若菜、岡田義徳、佐藤隆太、塚本高史、阿部サダヲ、山口智充、内村光良、哀川翔、綾小路翔、早乙女光、西園寺瞳、星グランマニエ、白鳥松竹梅、白鳥雪之丞、ユンソナ、古田新太、森下愛子、小日向文世、薬師丸ひろ子、嶋大輔、三宅弘城、平岩紙、宮地雅子、須之内美帆子、中尾彬、伊佐山ひろ子、渡辺哲、岩松了、渡辺いっけい、ケーシー高峰、船越英一郎、坂井真紀、袴田吉彦、下村彰宏、金剛地武志、破我抜作、怒鬢魂力也、堀江秀尚、芳岡謙二、森山直樹、島津健太郎、武井秀哲、小山裕達、伊藤丈典、金原泰成、サチコ・ジュディ・福本、照屋貴子、神里梨絵、砂川智恵、田中雄士、中村陽介、青木淳、井口蓮二郎ら。


TBSで放送された連続ドラマの映画版。
ぶっさんの岡田准一、バンビの櫻井翔、モー子の酒井若菜、うっちーの岡田義徳、マスターの佐藤隆太、アニの塚本高史、猫田の阿部サダヲ、山口先輩の山口智充など、主要キャストはTV版と同じ。
ゲストとして、ジョージ役の内村光良、ユッケ役のユンソナ(映画初出演)、モー子の父役の船越英一郎らが登場。また、TV版でもゲスト出演した哀川翔や氣志團が、本人役で登場している。

TV作品を映画化する場合、少なくとも日本では、わざわざ世界観や登場キャラクターを説明するという作業は、必ずと言っていいぐらい省かれる。「TV版を見ていた人は既に分かっていることだし、繰り返しになるだけ。そんな無駄なことで時間を費やすぐらいなら、映画版の物語を描くことに時間を使った方がいい」という考え方に基づいているのだろう。
もちろん、その手の映画を見る人の大半は、TV版のファンだった人だろう。だから、基本設定の説明を省略するのは、そういった人々に対しては正しい選択と言える。しかし一方で、TV版を見ていなかった人も、その手の映画を見ることはある。そして、そういった予備知識の無い人にとって、基本説明が無いまま話がどんどん進んでいくと「ワケが分からん」ということになる。

だから基本設定の説明を省くというのは、最初からTV版のファンだけに向けて作られた映画だという証拠だ。「TV版を見ていなかった人にも楽しんでもらいたい。この映画だけを見た人にも楽しんでもらいたい」という考えがあれば、そこは適切な配慮をするはずだからだ。

この作品の場合、そもそもTV版の視聴率は、それほど良いとは言えなかった。しかし番組終了後、熱烈なファンから続編を望む声が高まった。それを受けて、この映画が作られている。
つまり、大勢の人々に支持された大ヒット作品の映画化ではなく、少数のコアなファン、マイノリティーの声に押されて製作された映画ということだ。
ということは、「ファンだけに向けた映画」として作った場合、それほど多くの観客動員は見込めないはず。
しかしながら実際は、この映画はヒットしたらしい。
結果を出せば、それでOKだろう。
「コアなファン限定のサービス用作品、つまり内輪受けのモノを全国規模で劇場公開するってのはどうなのか、テレビのスペシャル版で充分じゃないのか」という疑問など、結果の前には吹き飛ばされる。
「あのノリで連作コントを2時間も見せられるのはキツいんじゃないか」とか、「スピーディーというより慌ただしいんじゃないか」とか、「ドラマ性が無いのは構わないが、遊びが過ぎるので疲れるんじゃないか」とか、そういう疑問も、ヒットすれば問題無し。
内輪受けであっても、ちゃんとヒット映画は作れるということを見事に証明した作品だ。

 

*ポンコツ映画愛護協会