『キングコング対ゴジラ』:1962、日本

テレビ番組『世界驚異シリーズ』の視聴率が低迷しており、パシフィック製薬の宣伝部長・多胡は頭を悩ませていた。番組を放送するTTVの局員・桜井修は、多胡に視聴率アップを命じられた同僚の古江金三郎と共に、南海へ行っていた牧岡博士に会う。そして桜井達は、ソロモン群島にあるファロ島に、巨大な魔神がいることを聞かされる。
桜井と古江は2人だけの調査隊を編成し、ファロ島に向かうことになった。多胡はライバル会社のセントラル製薬が、QTVを通じてソ連の調査艇シーホーク号の海底探検シリーズを製作していることを知り、今回の魔神の話に必死になっている。
桜井と古江がファロ島に向かっている頃、北極海ではシーホーク号が行方不明となり、アメリカの救助ヘリが冷凍冬眠から甦ったゴジラを発見する。テレビも新聞も話題はゴジラ一色となり、多胡の苛立ちは募る。そんな中、ファロ島に到着した桜井と古江は原住民の協力でキングコングを眠らせ、イカダを作って日本へ持ち帰ろうとする。
東京にいる桜井の妹・ふみ子は、函館港に向かっていた第二新盛丸がゴジラの潜行波によって遭難したことを知る。第二新盛丸には、ふみ子の恋人・藤田一雄が、開発した強力な糸の実験のために乗り込んでいるのだ。ふみ子は急いで北海道に向かうが、根室で下船していた一雄が入れ違いで東京に戻ってくる。
南下を続けたゴジラは日本に上陸し、列車に乗っていたふみ子も非難する。救助トラックに乗り遅れたふみ子は、駆け付けた一雄に助けられる。一方。キングコングは搬送中に目を覚まし、鎖をちぎって日本へと上陸し、ゴジラの元へと向かう。
ゴジラと戦うキングコングだが、放射熱線を浴びて退散する。自衛隊はゴジラ撃退作戦を実行し、高圧電流で退散させる。一方、キングコングは高圧電流のショックで帯電体質になり、ふみ子を捕まえる。桜井達はキングコングを眠らせ、ふみ子を救出する。政府はキングコングをゴジラのいる富士山麓に運び、対決させることにした…。

監督は本多猪四郎、脚本は関沢新一、特技監督は円谷英二、製作は田中友幸、撮影は小泉一、編集は兼子玲子、録音は藤好昌生、照明は高島利雄、美術は北猛夫&安倍輝明、音楽は伊福部昭。
出演は高島忠夫、佐原健二、藤木悠、有島一郎、田崎潤、平田昭彦、浜美枝、若林映子、根岸明美、小杉義男、田島義文、沢村いき雄、松本染升、三島耕、堺左千夫、松村達雄、大村千吉、山本廉、加藤春哉、大友伸、桐野洋雄、堤康久、中山豊、古田俊彦、草川直也、津田光男、東郷晴子、田武謙三、熊谷二良、土屋詩朗、小川安三、鈴木和夫、三井紳平、橘正晃ら。


『ゴジラの逆襲』から7年後に作られたシリーズ第3作。
東宝創立30周年記念作品の1本として製作された。
アメリカを代表するモンスターであるキングコングの著作権を購入し、日本を代表するモンスターであるゴジラと戦わせている。桜井を高島忠夫、一雄を佐原健二、古江を藤木悠、多胡部長を有島一郎、ふみ子を浜美枝が演じている。

これは怪獣アクション・コメディーである。
人間はコメディーを演じ、怪獣は着ぐるみプロレスを披露している。
たった2人だけで南海の原住民の島へ向かう桜井と古江は、ほとんど底抜け珍道中といった感じ。もちろん、2人ともコミカルな芝居を見せている。

コミカルなキャラクターの中でも最も活躍するのは、オーバーなアクションや表情によって喜怒哀楽を表現する多胡部長だろう。
「活躍」といっても、怪獣退治に活躍するわけではなくて、コメディーの匂いを生み出すための貢献度が最も高いということだ。

どれだけ怪獣が暴れていても、どれだけ危機的な状況に陥っても、すっとぼけた態度によって、多胡部長がキッチリとコメディーに仕立て上げてくれる。
コメディーだからこそ、多胡部長が最大の肝になっている。
もしも今作品を、「観客に怪獣の脅威を見せようとする映画」としてしまったら、逆に多胡部長は最大のガンになってしまう。

そんなギャグ・キャラクターが活躍する一方で、マジメな連中は精彩を欠いている。
例えば平田昭彦が演じている重沢博士などにしても、ウンチクを語る重要なキャラクターのはずだが、何のために登場したのか分からないぐらいの影の薄さだ。

コミカルなタッチの作品にしたことで、ゴジラの不気味さ、恐ろしさ(もちろんキングコングもそうだが)は完全に消え去っている。
最初は“恐怖映画の怪物”として登場したゴジラだが、早くもシリーズ3作目にして、“笑いの世界に迷い込んだ、でっかい奴”に様変わりしている。

そんなゴジラとキングコングは、怪獣プロレスで観客のご機嫌をうかがう。
スライディング・キックに背負い投げ。
ぶちかまし、マウント・パンチ、足払いなど、様々な技を見せている。
しかし、どれだけ怪獣が頑張ろうとも、真の主役の座は奪えない。
この映画の真の主役は、間違い無く多胡部長である。

 

*ポンコツ映画愛護協会