『カラダ探し』:2021、日本
白い服を着た少女は手斧を持った男に追われ、ぬいぐるみを抱きながら夜の森を走った。少女は屋敷に逃げ込み、ドアを封鎖した。しかし男は窓を破って部屋に乗り込み、少女を惨殺した。現在の7月5日火曜日。私立アカシア学園高校2年生の森崎明日香は母が作ってくれた弁当を鞄に入れ、学校へ向かう。母には内緒にしているが、明日香はG組の女子全員から嫌われ、男子からも無視されている。学級委員長の鳴戸理恵は男子から人気があり、伊勢高広と仲良くしている。柊留美子は恋人のバイクから降り、学校へ向かう。野良猫が走って来たバスにひかれて死亡し、登校していた生徒たちが一気に注目した。
学校に着いた明日香は高広が落としたネクタイピンに気付き、少し迷ってから拾おうとする。しかし先に理恵が拾い、高広に渡す。明日香が教室に入ると、いじらめれっ子の浦西翔太は文化祭の集金袋を盗んだ言い掛かりを付けられて責められていた。昼休み、明日香は1人で弁当を食べるため、改修工事中の礼拝堂前にあるベンチへ赴いた。古井戸から無数の手が出現したので彼女は怯えるが、工事関係者が来ると全て消えた。明日香が古井戸を除くと、特に異常は無かった。
明日香は教室へ戻る途中、猫の死骸を入れた黒いゴミ袋を埋めている図書室司書の八代友和を目撃した。突風が吹いて棚の植木鉢が落ちた後、八代は立ち去った。明日香の背後に白い服の少女が出現し、「お願い、私の体を探して」と口にした。しかし明日香が振り向くと、誰もいなかった。その日の23時59分、明日香が自室にいると、携帯に文字化けした相手からメッセージが届いた。「赤い人って、どうして赤い人だと思う?」「血を浴びてるかららしいよ」「追いつかれたら血まみれになる」「ねえどうする?」などと立て続けにメッセージが入り、最後は「読め」という言葉が連続で届いた。
明日香は携帯を机に置くが、バイブ音が鳴って動くので怖くなった。彼女は布団を頭から被り、目を閉じた。しかし深夜0時になって彼女が目を開けると、礼拝堂に移動していた。そこには明日香だけでなく高広、留美子、翔太、理恵、さらに不登校の清宮篤史も来ていた。翔太が「やっぱり、あの女の子だ」と言うと、留美子は「アンタも女の子、見たの?」と言う。篤史は高広の質問に答えず、帰ろうとする。その後ろ姿を見ながら、翔太は「ホントにカラダ探しが始まるのか」と呟いた。
校庭に出た篤史は、何者かに襲われた。悲鳴を耳にした明日香たちが駆け付けると、篤史は胴体を真っ二つに切断されて死んでいた。理恵、翔太、留美子も立て続けに殺され、高広は明日香を連れて保健室に隠れた。しかしドアを破って乗り込んで来た何者かに高広が殺され、ベッドの下に隠れていた明日香は引きずり出された。彼女が顔を上げると、ぬいぐるみを抱いた血まみれの少女が立っていた。少女は生気の無い様子のまま、明日香を惨殺した。
ところが明日香は7月5日火曜日の朝、前回と同じように目を覚ました。彼女は前回と同様に母の弁当を持って学校へ向かい、前回と同様に野良猫がバスにひかれて死んだ。明日香が教室にいると高広が駆け込んできて、翔太に「カラダ探しって何なんだ?」と尋ねた。彼が翔太を教室から連れ出すと、その様子を見た明日香と留美子と理恵が後を追った。翔太は「指名された者たちは、バラバラにされた体を全て探し出さなければならないんです」と話し、詳しいことは解読中だと言ってロシア語の文献を見せた。
翔太は「カラダ探しは夜中の12時に始まり、赤い人から逃げる」というルールの解読を終えており、カラダ探しが終わるまで明日は来ないと述べた。階段を下りて来た八代は、高広たちに気付かれると早々に立ち去った。夜中の12時になり、再び明日香たちは礼拝堂に集まった。棺を開けると人型があり、翔太は「集めた体を入れるんだと思います」と話す。篤史は「やってられるかよ」とカラダ探しを拒否するが、他の面々は校内を調べ始めた。
明日香が暗い美術室を探していると、高広が来て電気を付けた。赤い人に見つかることを不安視する明日香に、高広は全ての教室の電気を付けたことを教えた。美術室では何も見つからず、2人は美術準備室に入った。電気が付かないので暗闇の中で調べていると、水槽の中に右腕を発見した。赤い人が来たので高広は右腕を取り出し、明日香と共に隠れた。彼は明日香に右腕を渡し、逃がすために囮となって飛び出した。高広は殺され、掃除用具入れのロッカーに隠れていた翔太も始末された。廊下の非常シャッターを下ろして逃れようとした理恵と留美子も殺され、明日香は棺に右腕を入れた直後に襲われた。
3度目となる7月5日、女性3人はプールに隠れるが、赤い人に殺された。次の7月5日、翔太は明日香たちに、30年前に起きた事件との関連性を説明した。学校の近くで小学2年生の小野山美子が惨殺されるバラバラ殺人事件が起きたが、頭部は発見されていなかった。翔太は校内の見取り図を作成し、皆で連携して効率良く探していくローラー作戦を提案した。彼は大音量で音楽を流して自分たちの居場所が分かりにくくして、明かりを付けて赤い人をおびき寄せる作戦内容を説明した。
明日香たちはトランシーバーで連絡を取りながら作戦を実行し、着実にカラダを集める。当初は無視を決め込んでいた篤史も、途中から参加するようになった。残るカラダが頭だけになる中、明日香たちは海へ遊びに出掛けた。学校中を手分けして探しても頭が見つからず、6人は美子が殺された家へ赴いた。壁に打ち付けられた大量の板を剥がすと大きな穴があり、美子がエミリーと呼んで大切にしていた人形が置いてあった。しかし6人が目を離して再び視線を戻すと、人形は無くなっていた。
その夜、明日香たちは礼拝堂を捜索するが、やはり頭部は見つからなかった。そこへ赤い人とエミリーが合体した巨大な怪物が出現し、6人を次々に襲った。その中で理恵だけは、怪物に食われた。また朝が訪れ、明日香は学校へ向かった。すると今までとは異なる出来事が次々に発生し、理恵は存在自体が抹消されていた。彼女のことを知っているのは明日香たちだけで、クラスメイトは誰も覚えていないのだ。明日香は八代がカラダ探しを知っていると確信し、情報提供を求めた。すると八代は高校時代にカラダ探しを体験したこと、しかし詳細は全く思い出せないことを語った…。監督は羽住英一郎、原作はウェルザード『カラダ探し』(エブリスタ)、脚本は土城温美、製作は高橋雅美&池田宏之&藤田浩幸&伊藤功&竹澤浩&石垣裕之&藤倉尚&鎌田和樹&渡辺勝也&箕浦克史&渡辺章仁&池邉真佐哉&加太孝明&菊地修一&荒井ジョースケ&瓶子吉久&五十嵐淳之、エグゼクティブプロデューサーは小岩井宏悦、企画・プロデュースは原祐樹、プロデューサーは古屋厚、撮影は一坪悠介、照明は浜田研一、録音は小林圭一、アクションコーディネーターは藤井祐伍、VFXプロデューサーは長井由実、美術プロデューサーは小山大次郎、美術は小坂健太郎、編集は金田昌吉、音楽は菅野祐悟、主題歌はAdo『行方知れず』、挿入歌はAdo『リベリオン』。
出演は橋本環奈、眞栄田郷敦、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠、柄本佑、西田尚美、柳俊太郎、安永星良、福山はな、Maari、石田夢実、古賀海、礒辺真史、長谷野悠斗、本田陽未里、石橋温子、大塚麟太朗、永山未来、沙葵、山手さくら、田中彩那、坂本桃花、小田啓司、宮田隼人、神ひまり、でんがん、リーピン、前田誠仁、池尻文、石井靖見、東慶介、久田悠貴、林本奈々、宍戸くみ子、和田有徳、内藤花恋、島フリオ太一郎ら。
ウェルザードによる同名のケータイ小説を基にした作品。
監督は『OVER DRIVE』『太陽は動かない』の羽住英一郎。
脚本は『そらのレストラン』『すくってごらん』の土城温美。
明日香を橋本環奈、高広を眞栄田郷敦、留美子を山本舞香、篤史を神尾楓珠、翔太を醍醐虎汰朗、理恵を横田真悠、八代を柄本佑、明日香の母親を西田尚美が演じている。他に、高広の友人の篤史を柳俊太郎、美子を安永星良、赤い人を福山はなが演じている。冒頭、少女が部屋に隠れていると窓が割れ、強風が吹き込んで物が倒れたり紙が飛んだりする。そして手斧を持つ男の影が壁に映り、少女が惨殺される流れになる(殺害の直接的な描写は無い)。
確かに屋外は風が吹いていたが、「強風が吹き込んで云々」という演出は、やり過ぎで寒いことになっている。
その後、「ソフィア当局 公開資料」「1発生日時 1947年8月12日深夜(推定)」「20世紀初頭 ソフィアで行われたカラダ探し」といった説明と共に記事や映像が挿入されるが、これも大きなマイナス。
なんでロシアで起きた出来事なんだよ。そこは「日本の不気味な因習」にしておいた方が恐ろしさが出るだろ。
ロシアの設定にして色々と情報を挟んだことで、始まってから5分も経たない内にバカバカしさが強くなっている。橋本環奈がクラスの女子全員から嫌われているってのは、まだ「女性の嫉妬心は恐ろしい」ってことを考えると分からんでもない。
しかし男子からも無視され、「あいつだけは無い」と好きな女子から完全に除外されているのは「いや無理筋だろ」と言いたくなる。
そんな彼女が演じる明日香が井戸を覗く時には、いかにも何かありそうなカメラワークとSEで不安を煽る。しかし実際に中が見えると何も無いので肩透かしになるわけだが、ここの演出は完全に逆効果。
篤史が襲われると悲鳴が上がるが、これが低い声で全く恐怖を煽らない。
そんな感じで、恐怖演出は序盤から空回り気味。なぜ翔太は最初からカラダ探しの存在を知っていたのか、その理由は教えてくれない。っていうか、それについて誰も疑問を抱いて質問することも無い。
なぜロシアで起きた事件が遠く離れた日本の高校でも発生するのか、その理由も全く分からない。
オリジンの事件が同じ学校で起きたとか、全員が高校生だったとか、そういう共通点があるなら分かるよ。
だけど、全く関係の無いロシアで起きた事件が発端なわけで。
あと大勢の学生がいる中で、なぜ明日香たちが選ばれたのかも不明。ただのランダムなのか。カラダ探しという突拍子も無い話を、最初から明日香たちが何の疑いも抱かずに受け入れるのは変だ。
バラバラの体は誰の物なのか、なぜカラダ探しが始まったのか、なぜ体が揃わないと同じ日がループして赤い人が襲って来るのか、色々と謎が多いのだが、「解読中」と翔太が説明しただけで、そういう疑問を誰も口にしないのも変だし。
あとロシア語なんだから、翻訳サイトを使ったりして何とかならないものかと。
あと、自分たちで調べようともせず、前回と同じような学校生活を送っているのも「バカなのか」と言いたくなるし。同じことが起きると分かっているのに、なぜ「準備できることは無いか」と考えないのか。ただ漫然と夜中の12時を待つってのはアホすぎるだろ。
これが「カラダ探しの話を全く信じていない」とか半信半疑ってことならともかく、そうじゃないんだから。明日香が殺されて7月5日の朝が再び訪れた時点で、「これは同じ日を何度も繰り返すループ物になるんだな」ってことは、多くの人が簡単に気付くだろう。
これまでタイムループ物は『恋はデジャ・ブ』や『バタフライ・エフェクト』など、幾つもの映画が作られている。
そしてタイムループ物とスラッシャー映画の組み合わせでも、『ハッピー・デス・デイ』というヒット作があった。
それらは全て外国映画であり、日本映画だとそんなに使われていないのかな。タイムループ物の重要なポイントは、「同じ出来事が何度も起きて、そこで前回とは違う選択をすることで同じ失敗を回避し、新たな展開が描かれる」という部分にある。それが作品を面白くする肝になる。
なので本作品の場合、普通に考えればカラダ探しをする中での選択がポイントになる。
具体的には、「前回はAの行動を選んで赤い人に殺されたので、今度はBを選択して死を回避しようとする」って感じだ。
ところが本作品には、そういう意識が全く感じられないのだ。
「カラダ探しの最中に幾つもの分岐点を用意し、明日香たちが前回と違うルートを選んで云々」という作業は、完全に捨てている。「タイムリープを繰り返す中で前回と違う行動を選んで云々」ってのは、全てカラダ探しが始まる前のシーンで消化される。
しかも、それは最初の1回だけ。それ以降は、昼間のシーンですらループ物である意味を半ば放棄してしまう。
そして昼間に明日香たちが仲良くなるとか、恋愛模様が発展するとか、そういうのを見せられる。
そこで誰がどんな行動を取ろうが、ループから抜け出すことには繋がらない。
それに本人たちも、ループを抜け出すために異なる行動を取るわけではない。明日香たちが少しずつ仲良くなっていく様子なんて、ループしなくても描写できるし、何の問題も無く成立するドラマだ。
分岐点で異なる行動を取るから、そのおかげで仲良くなれるわけではないんだし。
これがループしない世界で、「日々が過ぎていく中で明日香たちが何か目的を果たすために一緒に行動する中、少しずつ仲良くなっていく」という物語だったとしても、何の支障も無い。
「一刻も早くループから抜けだしたい」という焦りや苛立ちも皆無なので、ホントにタイムループ物である意味が全く見えて来ないのだ。明日香たちは赤い人に襲われて怖い目に遭っても、朝になるとすっかり忘れて楽しそうにしている。それだけでなく、プールに隠れる時も楽しそうな様子だ。
作戦が開始されても、「前回の失敗を踏まえて異なる行動を取って云々」ってのが描かれるわけではない。歌が流れる中で、アクションを見せるだけ。しかも楽しそうにカラダ探しをしている。
何しろ殺されることへの恐怖が皆無なので、ホラーとしての色は完全に消えている。
どんな形で惨殺されても翌朝になれば復活することは分かっているので、そりゃあ恐怖や緊迫感は削がれるよね。
この作品って、そこに大きな弱みがある。「赤い怪物に食われたら存在が消される」という展開に突入し、ようやく真っ当なホラーっぽいノリになるが、あまりにも遅すぎる。
その後、最終決戦を前にして高広が「なんで俺たち6人が選ばれたか分かる気がする。あのバケモンは、俺たちの心の隙間が呼び寄せた孤独の塊だ」と語り、他の面々も納得するシーンがある。
それっぽいことを話しているつもりだろうけど、「なるほど」なんて微塵も思わない。
そして映画は青春恋愛モノのようなノリで終わるのかと思いきや、最後の最後で謎を残す。
そういうトコでは一応、ホラー映画っぽい体裁だけは整えているってことだね。(観賞日:2025年12月12日)