『悲しい色やねん』:1988、日本
夕張組組長の1人息子である夕張トオルは、浪花銀行に勤めている。父はこれまでの懺悔と称してお遍路に出るが、元三池組の山田にバットで殴られて負傷する。トオルは友人である三池組の桐山と、どちらの組からも手出しはしないと約束を交わす。
トオルが担当していたゲーム会社クリスは、社長が夕張組のカジノで負け続けたことが原因で、株券の大半を夕張組に譲渡していた。トオルはクリスの社長に就任することを決め、夕張組を解散させて組員を会社で働かせる。トオルはカジノハウスを広げ、日本のラスベガスを作ろうと考えていた。
夕張組の解散と同時にヤクからは完全に手を引いたはずだったが、幹部だった盛山は黒浜温泉で密かにヤクを流し始める。それを知った桐山は盛山を殺害する。トオルは黒浜温泉に日本のラスベガスを作る計画を立てるが、それを知った三池組はその計画を潰そうとする…。監督&脚本は森田芳光、原作は小林信彦、監督補は原隆二、助監督は鈴木元、企画は藤峰貞利、プロデューサーは黒澤満&青木勝彦、撮影は前田米造、編集は冨田功、照明は矢部一男、録音は橋本文雄、美術は中澤克己、衣裳は山田実、音楽は梅林茂、音楽プロデューサーは高桑忠男。
出演は仲村トオル、高嶋政宏、藤谷美和子、小林薫、江波杏子、高島忠夫、石田ゆり子、橘ゆかり、森尾由美、秋野大作、イッセー尾形、上田正樹、加藤武、北村和夫、阿藤海、松居一代、加藤善博、津村鷹志ら。
小林信彦の同名小説を映画化した作品。
ハッキリ言って、シナリオも演出も酷いのだが、どちらも担当しているのは森田芳光氏なので、完全に彼の失敗作だということになってしまう。
ちなみに、石田ゆり子の映画デヴュー作品である。作品を貫くような、強い芯が無い。
芯が無いから、当然のことながら肉付けも出来ない。
ボンヤリとした世界観の中で、フラフラとさまようだけのストーリー。
人間関係の描写はヘナヘナで、消化不良に終わってしまう無駄な登場人物も多い。
主題歌となった上田正樹の「悲しい色やね」が、とても勿体無く感じられてしまう。トオルと桐山の友情と対立にも、全く深みが無い。
熱い台詞も、虚しく響くだけ。
なぜなら、2人の関係が薄っぺらいから。
その部分だけではなく、とにかく全てが薄っぺらい。
キャラクター描写も、人間関係の描写も、シナリオも演出も、全てが薄っぺらい。トオルがクリスの社長に就任しようと考えるきっかけも弱い。
仲村トオルと石田ゆり子の恋愛劇もお粗末だ。
とにかくストーリーがモッチャリとしていて、なかなかスッキリと動いてくれない。
どうやら、この映画はポンコツのエンジンしか積んでいないらしい。どのキャラクターに焦点を当たるのかという部分で、迷いが見える。Aかと思えばB、Bかと思えばCへと焦点が移動するのだが、全てが行き当たりばったりに感じられる。
小林薫や江波杏子が演じるキャラクターの造形には、それなりに凝っているようだが、そういったキャラクターを生かすことは出来ていない。序盤のムードは、スカしたコメディタッチの作品にも思える。
しかし、そのスカし方が中途半端だし、シナリオのポイントをスカしているのは問題だ。
もっとスピード感と軽快さを重視して、ノリのいいコメディタッチの作品にしたら、もう少し面白くなったのかもしれない。大阪を舞台にしている作品ということで、役者は揃って関西弁を話す。
しかし、関西出身者である高島忠夫など、一部を除けば見事なぐらいヘタクソだ。
ヘタクソな関西弁が飛び交うことが、さらに作品の質を下げる結果になっている。下手な関西弁を喋らせるぐらいなら、最初から標準語で喋らせた方がいい。
別に、舞台を東京に変更しても構わないのだ。
それで内容が変わるようなタイプの作品ではないのだし。
ただし、下手な関西弁を差し引いたとしても、一部の役者は芝居が大根なのかもしれないという気はする。特に、藤谷美和子は別の意味で凄い。