『カイジ ファイナルゲーム』:2020、日本

2020年。 国を挙げて盛大に開かれた東京オリンピックを機に、日本の景気は恐ろしい速さで失速していった。国の借金は1500兆円を超え、インフレで物価は上昇した。失業率は40%に上り、疲弊しきって安売りされた日本の技術を外資が買収していた。カイジは良善興業の派遣社員として日雇いの肉体労働をしているが、安月給の上に7割も搾取される。元時計職人の杉山志帆子も派遣社員として働いているが、1ヶ月以上も咳が止まらずにいた。それを知ったカイジは休むよう促すが、夫に先立たれた志帆子は幼い子供を女手一つで育てている上に両親の介護もあるため、簡単に仕事を休むことは出来なかった。
カイジは社長の黒崎義裕に対し、「弱った時ぐらい面倒見てやれよ」と抗議する。黒崎は冷徹な態度で、「じゃあ辞めろ。クズは黙って従っていればいいんだよ」と突き放した。カイジは缶ビールが1本1000円に値上がりしているのを知って驚くが、我慢できずに購入した。彼が缶ビールを飲んでいると、かつて地下強制労働施設で一緒だった大槻太郎が声を掛けてきた。大槻はカイジを居酒屋へ連れて行き、夕食を御馳走した。
カイジは大槻に何か目的があると分かっており、詳しく話すよう要求した。すると大槻は手を組みたいと持ち掛け、「バベルの塔」というイベントの存在を教えた。それは金持ちの老人が主催していると言われる救済イベントの1つで、高層ビルの屋上に設置された棒の先にあるカードを最初に掴んだ者が大金を入手できるゲームだ。しかし設置される高層ビルの場所が直前まで分からないため、カイジは「作戦の立てようが無い」と言う。すると大槻は、次の場所が横浜第四埠頭第十三倉庫だという情報を教えた。カイジが乗ると、彼は軍資金を出す代わりに取り分は5割という条件を提示した。
イベント当日、他の参加者がビルの屋上へ向かって走る中、カイジは隣のビルへ向かった。ビルの屋上に辿り着いた参加者たちは、棒の先にカードに群がった。カードの表は約1億円が手に入る「電卓」で、裏は特別な情報が手に入る「魔法のキー」だ。どちらを選ぶのかは、勝者の判断に任されている。カイジは鉄骨を目的のビルに渡し、そこを歩いてカードを手に入れようとする。気付いた連中は隣のビルへ走り、カイジを鉄骨から落下させようとする。しかしカイジは指紋認証のカードにいちばんで触り、勝者となった。映像を見ていた大槻は喜ぶが、カイジが電卓ではなく魔法のキーを選んだので愕然とした。
日本で唯一の娯楽場である地下の帝愛ランドでは、経済産業大臣の小宮山公彦が公費でギャンブルに興じていた。彼は首相首席秘書官の高倉浩介と部下の西野佳志からギャンブル狂を報じる記事を見せられるが、まるで気にしなかった。高倉は小宮山にゴールドジャンケンを持ち掛け、大臣の座を賭けるよう提案した。ゴールドジャンケンは3回勝負で、1度は必ず金塊を握ってグーを出さなければならない。ただしグーで勝てば、その金塊は手に入れることが出来る。快諾した小宮山は全てグーを出して敗北し、大臣を辞任した。
総理大臣の渋沢総一郎は有識者会議を開き、経済の立て直し政策について意見を求めた。高倉が「消費税を30%に増税、年金受給額は40%カット、生活保障費の支給廃止」と提案すると、2人の有識者が国民への負担が多すぎると反対する。しかし黒崎は賛同し、高倉は「国の借金は1500兆円。国民の資産を使えば相殺できる」と説明した。カイジが魔法のキーで指定された家へ行くと、大阪の第2回イベントで勝利した桐野加奈子も来ていた。彼女から情報を選んだ理由を問われたカイジは、「大金を選んだ人間は殺されている。情報は金になる」と説明した。加奈子は運だけで第2回イベントに勝利しており、自分はラッキーガールだと得意げに語った。
カイジと加奈子の前に、救済イベント主催者の東郷滋が秘書の廣瀬湊を伴って現れた。彼は政府が預金封鎖と新しい通貨の発行を画策していることを教え、一部のエリート層が事前に情報を得て勝ち逃げするつもりだと話す。東郷は余命わずかと宣告されており、最後ぐらい国のために尽くしたいのだと語った。彼はタイムリミットが10日後に開かれる会議だと言い、キーとなる政治家に賄賂を送って法案を廃案にする計画を説明した。
東郷は500億円を所有していたが、賄賂には1000億円が必要だと告げる。彼は足りない500億円をギャンブルで手に入れようと考えており、カイジと加奈子に協力を要請した。加奈子は迷わず快諾するが、カイジは拒否して去ろうとする。しかし帝愛ランドで黒崎と勝負すること、良善興業が帝愛の傘下にあることを聞かされたため、カイジは手を貸すことにした。廣瀬はカイジと加奈子を帝愛ランドへ連れて行き、黒崎と対決する「最後の審判 人間秤」というゲームの宣伝映像を見た。そこではキャバ嬢のアリサがホスト王のケンヤと対決し、勝利を収めて大金を手に入れていた。
廣瀬はカイジと加奈子に、最後の審判のルールを教えた。それは互いの総資産で競うゲームで、追加で融資する支援者を用意できる。その支援者とは、「FRIEND(友人)」「FIXER(出資者)」「FAMILY(家族)」「FAN(ファン)」という4つのFだ。当日に相手の支援者を説得し、取り込むことも可能だ。最終的に勝負を決めるのは、現場で対決を見守るファンだと言われている。ファンは観客のことであり、勝った方に賭けていれば倍の金額が戻って来る。
帝愛ランドを去ろうとしたカイジは、ドリームジャンプというギャンブルを見つけた。それは一発逆転の死のギャンブルで、生き残るのは1本しか無い繋がれたロープを引き当てた10人の内の1人だけだ。カイジと加奈子は廣瀬に案内され、ドリームジャンプを見物した。一方、黒崎と高倉は東郷にカイジが付いたことを知った。カイジと加奈子は東郷の元へ戻り、弟の義信を紹介された。義信は港区に50億円の価値がある土地を所有しており、最後の審判で兄を支援することを約束した。廣瀬はカイジと加奈子に、最大の支援者はIT企業を経営する堂本雅治だと説明した。
廣瀬はカイジを外へ連れ出し、東郷に愛人と子供がいることを教えた。東郷は手切れ金として愛人に絵画を贈っており、それが高値になるはずだと彼は語る。ただし支援者として呼ぶことを東郷は望まないだろうと廣瀬は言い、極秘裏に見つけ出してほしいとカイジに依頼する。カイジは廣瀬に教えられた情報提供者と会うが、「愛人は病死し、子供の行方は分からない」と言われる。情報提供者を含む貧困層が寝泊まりしていた陽だまりコロニーに高倉と西野が現れ、警察を使って強制退去させた。
カイジはバベルの塔で敗北した菅原太一と3人の仲間たちに襲われ、工場へ連行された。彼らはカイジが大金を持っているという匿名の情報を知り、それを奪おうと目論んだのだ。カイジは金を持っていないと明かし、杜撰な計画に呆れて菅原たちを罵った。父が残した工場を潰したくないだけなのだと菅原が泣くと、カイジは「金が欲しいなら俺に協力しろ」と告げた。志帆子は良善興業の高瀬強士に「仕事を下さい、なんでもします」と懇願するが、ドリームジャンプのチラシを渡されて突き放された。そこへカイジが現れ、志帆子に「貴方にしか出来ない仕事がある」と持ち掛けた。対決の前夜、カイジは東郷に「話がある」と告げて2人きりになった。
翌日、東郷と黒崎は会場に現れ、観客への演説で自分をアピールした。ルーレットによって、最初のFが「FRIEND(友人)」に決定した。黒崎は良善興業の複数の派遣社員に「リストラする」と脅して借金させ、友達として大金を持って来させた。東郷の方は、高校の同級生で美術品コレクターの町村が貴重な象牙と珊瑚を提供した。しかし東郷が手を回したため、「登録されていない」ということで0円の鑑定結果が出た。堂本は粉飾決算で脅されたため、東郷に付いた。
ルーレットが回され、セカンドステージは「FIXER(出資者)」になった。銀行は東郷に10億円の融資を約束していたが、黒崎の差し金で寝返って「3千万円まで」と通告した。続く「FAMILY(家族)」のステージで、黒崎は3日前に結婚した資産家令嬢の麗香を呼び寄せた。麗香は彼のために、10億円の小切手を持参した。さらに黒崎は政府を抱き込み、義信の土地の価格を暴落させていた。カイジは高倉が関与していること、東郷の情報を黒崎に流している内通者がいることを確信した。
東郷に協力していた内通者は、東郷に恨みを抱く廣瀬だった。彼は母の宏美を捨てた東郷を憎み、復讐のために秘書として近付いたのだ。廣瀬は母が残した絵画を持参し、東郷の側に付く。だが、その絵画は一銭の価値も無いと鑑定された。なぜなら、作者は東郷だったからだ。東郷は廣瀬に、詳細を語った。彼の妻は金遣いが荒く、大勢の男と浮気していた。そんな中で東郷は宏美と出会い、本当の恋を知った。東郷は結婚を考えたが、体の弱かった宏美が出産時に死んでしまったのだ。
ラストステージを前にした計量で、黒崎の総資産が東郷を約10億円上回った。黒崎の勝利を確信した観客が彼の秤に近付き、次々にコインを投げ入れた。カイジは東郷から万が一に備えて預かっていた10億円を菅原たちに運ばせ、「残り30分で倍にして帰ってくる」と告げる。しかし黒崎が手を回し、帝愛ランドのギャンブルはドリームジャンプを除いて終了していた。ドリームジャンプだけ残したのは、カイジを始末するためだった。
カイジは遊びに来ていた遠藤凛子に協力を要請し、特別ルールが採用されるドリームジャンプに挑戦した。ドリームジャンプは運営側で当たり番号を変更することが出来るため、必ずカイジが負けて死ぬ手筈になっていた。しかし廣瀬が配電室に潜入してブラックボックスの敗線を切断し、変更できなくした。ドリームジャンプの責任者は東郷が負けても損をしないので、ゲームを続行することに決めた。加奈子は外れ券を調べ、前回の当たり番号を突き止めた。
加奈子はカイジに当たり番号を知らせようとするが、警備員に連れ出される。カイジは加奈子の口の動きを見るが、9か10かで迷う。一度は10に決めたカイジだが、連行される加奈子が指で示したサインに気付き、ギリギリで9に変更した。東郷は発作に倒れ、救急搬送された。そこへドリームジャンプで金を増やしたカイジが戻り、対決を引き継ごうとする。黒崎は既に大時計が17時10分を過ぎていることを教え、勝負は終了したと告げる。しかしカイジは「まだ5分ある」と言い、大時計が5分進んでいることを指摘した…。

監督は佐藤東弥、原作は福本伸行(講談社ヤンマガKC刊)、脚本は福本伸行&徳永友一、製作は沢桂一&堀義貴&市川南&菊川雄士&角田真敏&石川豊&山口雅俊、エグゼクティブプロデューサーは伊藤響、企画・プロデュースは藤村直人、プロデューサーは渡邉浩仁&小泉守、撮影は小原崇資、照明は木村明生、録音は菊地啓太、美術は樫山智恵子、編集は佐藤崇、音楽は菅野祐悟。
出演は藤原竜也、福士蒼汰、新田真剣佑、関水渚、山崎育三郎、前田公輝、吉田鋼太郎、伊武雅刀、金田明夫、松尾スズキ、生瀬勝久、天海祐希、瀬戸利樹、笠松将、渡辺佑太朗、小平大智、宮本裕子、斉木しげる、小林勝也、酒向芳、工藤俊作、たかお鷹、篠田麻里子、矢野聖人、大空ゆうひ、福本伸行、村本明久、結城洋平、山川和俊、山根和馬、パク・ジョンミン、岡本智礼、塚本幸男、花戸祐介、足立智充、渡邊りょう、木村靖司、秋夢乃、山口眞司、山崎美貴、早坂直家、中平義良夫、高瀬哲朗、小野洋子、西原誠吾、平原テツ、後藤洋央紀、BOB、矢島学(日本テレビアナウンサー)、奈良徹ら。


福本伸行の漫画を基にしたシリーズの9年ぶりとなる第3作。監督は3作連続で佐藤東弥が担当。
今回は原作に無いオリジナルストーリーになっており、脚本は原作者の福本伸行と『翔んで埼玉』『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の徳永友一が共同で担当している。
カイジ役の藤原竜也と大槻役の松尾スズキは、1作目からのレギュラー。遠藤役の天海祐希は1作目、坂崎役の生瀬勝久は2作目に続いての登場。吉田鋼太郎が演じる黒崎は2作目にも登場していたキャラクターだが、その時は嶋田久作が演じていた。
他に、高倉を福士蒼汰、廣瀬を新田真剣佑、東郷を伊武雅刀、渋沢を金田明夫、加奈子を関水渚、西野を山崎育三郎、高瀬を前田公輝、菅原を瀬戸利樹が演じている。

これまでの2作と本作品は、世界観が大きく異なっている。
これまでの2作だと、カイジは多額の借金を抱えて地下強制労働施設で働いていた。しかし今回の場合、日本という国が大不況の真っ只中で、失業率は40%もある。
つまり、カイジが最下層で苦しんでいるのは本人のせいではなく、国が不況だからだ。
だから彼の周囲で貧困にあえいでいる面々も、酒やギャンブルなどで身を持ち崩したクズばかりではなく、不況のせいで失業した哀れなケースも少なくない。

「バベルの塔」のゲームでは、カイジは大槻から事前に会場を教えてもらっている。他の参加者に比べて圧倒的な優位な立場にあるわけだ。
これまでの2作だと、むしろカイジは不利な立場にあって、そんな中でも必死で知恵を凝らして逆転勝利を掴み取っていた。
ジリジリするような空気の中で、ヒリヒリするような勝負が繰り広げられていた。
この第3作は、もはや「カイジ」シリーズの根幹を為す要素を全否定しているかのようだ。

「バベルの塔」に参加したカイジは、「正攻法で攻めても潰し合って終わりだ」と言う。
でも、だからって隣のビルから鉄骨を渡すという方法を選ぶのは、バカにしか思えない。それだと潰し合いは避けられるかもしれないけど、転落死のリスクが生じるだろ。
もはや、それは1作目の「ブレイブ・メン・ロード」を連想させるためだけに用意された方法にしか思えないのよ。チープなセルフ・パロディーにしか見えないのよ。
目的のための手段じゃなくて、それ自体が目的になっているとしか思えないのよ。カイジが「事前に場所を知っている」というアドバンテージを、充分に活用しているとは到底思えない。
実際、カイジはピンチに陥っており、ギリギリで勝者になっているし。しかもラッキーだっただけであり、戦略によって高度な知能戦に勝ったわけじゃないし。

「バベルの塔」のルールについては、カイジが大槻から協力を求められた時に台詞で簡単に説明している。
でも実際にどんなゲームなのかは、始まってみないと良く分からない。
奪い合うカードに表裏があって「情報」を選ぶことが可能なのも、ゲームが始まった後に初めて明かされる。それはタイミングが遅いよ。
あと、ドローンを飛ばしている奴がいるけど、そんな物を買えるなら貧困層じゃないだろ。貧富の差の描写が、ものすごくヌルいのよ。

ゴールドジャンケンで小宮山が全てグーを出して敗北するってのは、アホすぎて呆れてしまう。
もちろん小宮山を「金に目がくらんだバカな男」として描きたいのは分かるけど、それにしてもだ。
グーで勝てば金塊のボーナスは手に入るが、最終的に3回勝負で勝てなきゃ意味が無いわけで。それを考えると、むしろグーを避けようとするんじゃないかと。
このゴールドジャンケンは終盤にカイジと高倉も対決しているけど、ここも高倉がバカにしか見えないし。

カイジが東郷に協力する動機が、ものすごく弱い。
彼が協力を承諾する理由は、「黒崎が敵だから」ってだけなのよね。でも黒崎との間に、そこまで強い因縁があるわけじゃないでしょ。
あと、カイジは何のリスクも背負わず、他人の金でギャンブルをしているだけなのよね。
そもそも東郷の「ギャンブルで金を増やす」という計画は超が付くほどバカバカしい上に、「国を救うためにカイジが奮闘する」という枠組みも「そんなのカイジじゃないやい」と言いたくなる。

「最後の審判」では金塊交換機を使い、その場で絵画など金目の物を査定して金貨や銀貨に交換する。そのために最新鋭の鑑定システムを導入していると、カイジは加奈子に説明する。
でも、その査定が正しいかどうかなんて、ほとんどの人には分からない。
つまり、その場で鑑定して金銭に交換するシステムは、ゲームとして破綻していると言ってもいい。
何しろ金塊交換機を使っているのは帝愛ランドだし、黒崎は帝愛傘下の会社の社長なので、そこでイカサマを働くことは用意に予想できるしね。

カイジは「最後の審判」が始まってから「イカサマだ」と腹を立てるけど、そんなのは事前に察知して対応策を考えておくべきなのよ。今までの経験から、何も学習していなかったのかよ。
そこに限らず、例えば黒崎が「フレンド」として実際に親友じゃない連中を呼ぶのも簡単に予想できる。黒崎が指摘するように、脇が甘すぎるのだ。
これが「全て芝居で、カイジはイカサマも全て見抜いた上で作戦を進めていた」ってことならともかく、そうじゃなくてホントに焦っているだけだからね。黒崎たちが狡猾と言うよりも、カイジのボンクラっぷりが引っ掛かって応援したい気持ちを削ぐわ。
ただし黒崎も利口とは言い切れず、絵画に一銭の価値も無いことなんて、ゲームの前に鑑定させておけば簡単に分かることでしょ。そういう準備を怠ってゲームの当日を迎えるって、隙があり過ぎるだろ。

カイジは東郷から力を貸してほしいと頼まれて承諾していたけど、いざゲームが始まってみると、ずっと傍観しているだけ。何もやることが無いので、まるで解説役みたいになっている。
カイジに身を削るようなヒリヒリするギャンブルをやらせないなんて、どうかしてるぞ。
ようやくラストステージになってカイジが動くけど、「最後の審判」に直接的に関わるわけではない。別のギャンブルで金を増やすために動くのだ。
でも「万が一のために10億円を預かっていた」と言うけど、最初から10億円をギャンブルに突っ込んで増やしておけば良かっただろ。どっちにしても、東郷はカイジのギャンブルの能力を買って協力を求めたんだし。
ラストステージになってから金を増やそうとするから黒崎がドリームジャンプ以外は全て終了させているわけで、カイジがボンクラにしか思えないわ。

カイジが最後の審判で勝利しても、それは本当の勝利ではない。高倉が預金封鎖を一日前倒しにしていたので、政治家たちは新通貨のあるコンテナへ押し寄せる。
ここで、東郷がギャンブルで金を増やしたのは政治家を買収するためでなく、「入口」「コンテナ」「トランク」のパスワードを入手するためだったことが判明する。そしてカイジはパスワードを変更して政治家たちを閉じ込め、焦った渋沢は高倉に電話を掛けて「このままなら預金封鎖を廃案にある」と告げる。
この時点で、もうカイジは勝ったも同然だよね。そのまま放っておけば、預金封鎖は廃案にせざるを得ないはずだよね。
ところが、なぜかカイジは高倉にパスワードを賭けたゴールドジャンケンを持ち掛けるのだ。
これって、その必要性が全く分からないんだよね。

あと、根本的な問題として、「それが蛇足にしか思えない」ってことがあるんだよね。
カイジは東郷から「最後の審判」での協力を依頼され、そこに向けて準備を進めて来た。そして「最後の審判」が始まって、そこでの勝利に向けた戦いが長く描かれていた。
なので、その対決が終わった後に別の勝負を用意されても、「さっきのトコで実質的にクライマックスを迎えていたじゃねえか」と言いたくなるのよ。
そこでギャンブル対決自体は、スッキリと終わるような流れにしておいた方が良かったんじゃないかと。

(観賞日:2021年10月3日)


2020年度 HIHOはくさいアワード:第11位

 

*ポンコツ映画愛護協会