『午前0時、キスしに来てよ』:2019、日本

綾瀬楓はアイドルグループ「FANNY BONE」を2年前に脱退し、イケメン俳優として大活躍している。鎌倉西高等学校に通う2年の女子たちは、楓が出演するコマーシャルをスマホで見て騒いでいる。しかしクラスで一番の真面目キャラである花澤日奈々は、全く関心を示さない。彼女が休み時間も熱心に勉強しているので、友人の磯山光は呆れ果てた。日奈々は規則正しい生活を送り、朝は妹のすずを幼稚園へ送り届け、放課後は両親が営む洋食屋まで彼女を迎えに行。両親が仕事をしている間、妹の面倒を見るのが彼女の日課だ。だが、本当は王子様のような人と恋したいと思っており、自宅のテレビで楓を見ると憧れの眼差しを送った。
日奈々は光からの電話で、楓が映画のロケで学校に来ること、数名のエキストラ募集の話が生徒会に来たことを知らされる。日奈々は本心を隠し、エキストラの仕事を引き受けた。翌日、彼女は撮影現場で楓と出会い、目が釘付けになった。休憩中、日奈々は楓がチアダンス部の女子たちを観察して「JKのケツはムチムチしてたまんねえな」と言う姿を目撃した。驚いた彼女が誤って転倒するとパンティーが露出し、楓は「86」とヒップサイズを言い当てた。
次の日、日奈々は鎌倉市政図書館へ古い名画を見に行くが、かなり早く着いてしまった。彼女はすずの欲しがっていた熊のヌイグルミを持っている幼女を目撃し、クレーンゲームに挑戦した。しかし何度やってもヌイグルミは取れず、最後の100円になった。すると背後から男が助言し、そのおかげで日奈々はヌイグルミを取ることが出来た。礼を言った日奈々は、男が楓だったので思わず大声で名前を呼んでしまった。近くにいた女子たちに気付かれたため、楓は日奈々の手を取って逃げ出した。
日奈々は靴が壊れてしまうが、映画の時間が来たので図書館へ戻った。すると楓は付いて行き、一緒に映画を見た。日奈々は映画に感動し、おとぎ話のような恋に憧れていることを楓に打ち明けた。楓は壊れた靴と自分のスニーカーを交換し、「君ならちゃんと恋愛できると思う」と告げて立ち去った。後日、日奈々は学校で進路指導調査票を渡され、希望先に「国立平洋大学」と書く。「手堅くいきますねえ。勉強以外にやりたいこと無いわけ?」と光が言うと、彼女は「無い」と即答した。日奈々を密かに思っている幼馴染の浜辺彰が「ピアノは、もうやらなくてもいいのかよ」と訊くと、日奈々は「プロになれる保証が無い」と語った。
楓が学校に現れたので、生徒たちは騒然となった。楓は落し物を届けに来ただけだから静かにしてほしいと頼み、日奈々に歩み寄って修理した靴を履かせた。彼は微笑で日奈々を見つめ、「あれ、今ちょっとおとぎ話みたいかも?」と口にした。日奈々は学校を去る楓を追い掛け、スニーカーを返した。すると楓は、彼女の手に携帯番号を書いて立ち去った。日奈々は帰宅してから電話を掛けてみるが、使われていない番号だった。
楓は元恋人で女優の内田柊からホテルのバーに呼び出され、今度の仕事で恋人役を務めることについて「嫌じゃない?」と問われる。楓は否定し、「役者として尊敬してるから心強い」と告げた。ロケの現場に入った楓は、歌手出身の自分を馬鹿にする関係者の言葉を耳にした。マネージャーの高橋茂雄は楓に、実績が無いのは事実だと指摘した。学校帰りの日奈々を見つけた楓は、後を追って声を掛けた。電話を待っていたことを彼が伝えると、日奈々は何度も掛けたと告げる。証拠を見せられた楓は、前の携帯番号だと気付いた。
楓が今の番号を教えようとすると、日奈々は「もういいですから。からかわないでください。もう期待するのはやめます」と拒否して立ち去ろうとする。楓は彼女を追い掛け、「してもいいのに、期待」とマスクを付けたままキスをしてデートに誘った。後日、彼は車で日奈々を迎えに行き、豪邸へ案内して一緒に昼食を取った。高橋が来ると、楓は日奈々を「俺の彼女」と紹介した。高橋が「何考えてんだ。大事な時期なんだぞ」と説教しても彼は全く悪びれず、邪魔をしないよう頼んだ。
翌日、日奈々は楓から彼女と呼ばれたことを思い出して浮かれるが、主演する連続ドラマの撮影でしばらく会えなくなるというメールが来たのでガッカリした。彰は母がギックリ腰で倒れたため、実家の花屋で働いた。日奈々が手伝っていると、顔見知りの老女が「若い夫婦みたいね」と評した。日奈々は微笑を浮かべ、「あーちゃんのお嫁さんになれる人は幸せ者ですね」と言う。彰は「だったら、日奈々が俺と結婚すればいい」と口にするが、日奈々は冗談としか受け取らなかった。
彰はドラマの撮影現場からの電話で配達の仕事を受け、日奈々が自転車で赴いた。撮影現場に入った日奈々は、楓と柊のキスシーンを目撃した。楓に気付かれた日奈々は、慌てて逃げ出した。楓が急いで追うと、日奈々は芝居が素敵でドキドキしたこと、邪魔をしてはいけないと思って逃げたことを語った。「私の初めては綾瀬さんがいいな」と彼女が言うと、楓は鼻を軽くかじって「キスの予約完了」と告げた。その様子を、楓が密かに見ていた。
楓は撮影が休みになり、日奈々に電話を掛けてデートに誘った。しかし日奈々は家族が帰省中で、自宅で彰の誕生パーティーをすることになっていた。それを知った楓は、日奈々の家へ花束を持って赴いた。彰と光は日奈々の家へ行き、彼女が楓と交際していることを知った。彰は楓と2人きりになると、「日奈々のことを諦めない」と宣戦布告した。楓は日奈々と2人になり、「今度は2人で会いたい」と告げた。マンションを訪れた日奈々は、楓が映画のためにピアノの練習中だと知った。彼女は少しだけ習っていたこと、お金が掛かるので辞めたこと、自分が養女であることを話した。楓は部屋の合鍵を渡し、「息抜きしたくなったら、いつでもおいでよ」と告げた。
楓はFANNY BONEの中条充希&森川あやみ&有村優太&桐谷ナオトを目撃し、すぐに視線を逸らした。充希も楓に気付くが、何も言わずに通り過ぎた。日奈々は柊が彰の元カノだと知り、不安になった。相談を受けた光は、日奈々には色気が足りないと指摘した。日奈々は口紅を塗り、マンションのインターホンを押す。ちょうど楓の部屋を訪れていた柊が無視したため、日奈々は合鍵で中に入った。楓が柊とキスする姿を目撃した彼女は、ショックで逃げ出した。楓が慌てて追い掛けると、日奈々は「綾瀬さんが分かりません。私とは住む世界が違い過ぎます」と告げて去った。
柊は楓に、今でも好きだからやり直そうと持ち掛けた。彰は塞ぎ込んでいる日奈々を心配し、ずっと前から好きだったと告白した。柊は日奈々を呼び出し、楓とヨリを戻したので二度と会わないでほしいと告げた。しかし日奈々が「こんな気持ちになるのは初めてなんです。やっぱり私は綾瀬さんが好きなんです」と話すと、彼女はヨリを戻したのが嘘だと教えて立ち去った。日奈々は彰の元へ行き、「私が好きなのは、やっぱり綾瀬さんなんだ」と告げた。
日奈々が自宅にいると、楓がやって来た。彼は「柊とは何でもないんだ。俺が好きなのは日奈々なんだ」と言う。日奈々も愛する気持ちを口にすると、楓は彼女を強く抱き締めた。楓は遊園地を貸し切りにして、日奈々とのデートを楽しんだ。高橋はキグルミに入り、2人のデートを心配しながら見守った。日奈々は楓に恋人繋ぎをしてほしいと頼み、ネックレスをプレゼントされて喜んだ。誕生日に会う約束を交わした日奈々は浮かれるが、楓に女子高生の新恋人がいるという記事が女性誌に掲載されてしまう…。

監督は新城毅彦、原作は みきもと凜「午前0時、キスしに来てよ」(講談社「別冊フレンド」連載)、脚本は大北はるか、製作は石原隆&大角正&角田真敏、プロデューサーは木由佳&八尾香澄、共同プロデューサーは村山えりか、ラインプロデューサーは杉原奈実、撮影は小宮山充&川口次男、美術は金勝浩一、照明は保坂温、録音は鶴巻仁、編集は穂垣順之助、音楽は林イグネル小百合、主題歌「One in a Million -奇跡の夜に-」はGENERATIONS from EXILE TRIBE。
出演は片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、橋本環奈、眞栄田郷敦、八木アリサ、岡崎紗絵、遠藤憲一、酒井若菜、鈴木勝大、野田理人、宇佐卓真、内藤秀一郎、アヤカ・ウィルソン、長原ゆう、野田美桜、中川可菜、しゅはまはるみ、野田あかり、吉田ウーロン太、吉倉あおい、池田大、足立智充、西原誠吾、三上真奈(フジテレビアナウンサー)、佐分利眞由奈、椚ありさ、水木淳子、宮崎結希乃、渡辺優奈、松元飛鳥、市野倖大、永田竜司、浅野まど香、Lily、天野はな、柚木美音、奥田こころ、手塚麗奈、黒木麗奈、小貫莉奈、眞嶋優、白井真緒、杉本愛莉鈴、堀本雪詠、日又琉、成瀬天馬、竹田光稀、加藤峻也、西塚郁哉、奥田夢叶、石川雷蔵、永岡拓真、大西翼、小原滉平、栗原航大、白石拳大、吉田昴平、道仙拓真、山中志歩、善雄善雄、琴子ら。


みきもと凜の同名漫画を基にした作品。
監督は『四月は君の嘘』『ひるなかの流星』の新城毅彦。
脚本はTVドラマ『グッド・ドクター』や『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』を手掛けた大北はるかで、これが映画デビュー。
楓を片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、日奈々を橋本環奈、彰を眞栄田郷敦、柊を八木アリサ、光を岡崎紗絵、高橋を遠藤憲一、陽子を酒井若菜、充希を鈴木勝大、あやみを野田理人、優太を宇佐卓真、ナオトを内藤秀一郎が演じている。

日奈々のクラスメイトの女子たちは楓のコマーシャルでキャーキャーと騒いでいるのに、彼が学校へ映画撮影に来ても誰も騒いでいない。
もちろん撮影が行われている教室にキャーキャー騒ぐような女子高生が入って来ることは出来ないだろうけど、「楓が見たくて学校に押し掛ける」という女子たちもいない。校庭にいる女子たちも、誰も楓を気にしている様子が無い。
だから楓は平気でバルコニーに出て、女子を観察できている。
しかし楓が関係者から馬鹿にされるロケの現場では、若い女子が大勢押し掛けてキャーキャー騒いでいる。
その辺りの表現が、まるで徹底されていない。

日奈々は楓を「憧れの王子様」と思っていたのに、そんな彼がJKを覗いて「ケツがムチムチ」とエロいことを言っていても全く幻滅する様子が無い。
自分のパンティーを見られてヒップサイズを言い当てられても、憧れの眼差しが消えることは無い。
美少女フィギュア目当てでゲームセンターに来ていたことを知っても、それをキモいなんて微塵も思わず好意的に捉える。
日奈々の中の「王子様」に対する理想像がサッパリ分からないのだが、どうやら「顔がイケメンなら中身は何でも有り」ってことのようだ。

楓がJKに対する性欲を剥き出しにしても、ロリコンってわけではない。ただ、そんなに好意的に受け取れるキャラとは言えない。
だけどJKからすると、自分たちを「ガキだから」ってことで眼中に入れてくれないようでは困るのだ。
少女漫画の王子様としては、女子高生に対してムラムラするような奴ってのは、決してマイナス材料ではないのだ。
あまりにもプラトニックすぎると、ストーリーを進める上では色々制約が出ちゃうしね。

楓はクレーンゲームで日奈々に助言した後、自らサングラスとマスクを外して正体を明かす。それでバレたら逃げ出すが、わざわざ素顔を晒しているんだから、「みんな気付いてね」と言っているようなモンだ。
ホントは楓にだけ分かればいいはずだから、自らサングラスとマスクを外す必要なんて無いからね。
後日、楓は素顔を晒して教室に来るが、女子たちが騒ぐと静かにするよう頼む。だけど、騒がれたくないのなら、素顔を晒して学校に来なけりゃいいわけで。靴を渡すだけなら、他の場所や方法が幾らでもあるわけでね。
自分から騒がれるための行動を取っているとしか思えないし、かなりカッコ悪い。

ただ、それも少女漫画の王子様としては、何も間違っちゃいない。若い女子たちにキャーキャー言われることが、楓の存在意義だからだ。
積極的に目立つような行動を取って、読者(この映画では観客)にキャーキャー言われる行動を取ればいい。
ただ、残念なことに片寄涼太の演技力が不足しているため、王子様としての振る舞いが全く体に馴染んでいない。
王子様キャラを自分の中に取り込めておらず、「自然に王子様として振る舞える男」である楓に成り切れていないのだ。

日奈々は楓から電話を待っていたと言われると、驚いた様子で「何度も掛けました」と告げる。この段階では、まだ幻滅したり怒ったりしている様子は無い。
しかし楓が「前の携帯番号だった」と気付いて今の番号を教えようとすると、「もういいですから。からかわないでください」と拒絶する。
それは順番がおかしいでしょ。
楓が「前の携帯番号だった」と気付いたのに、なぜ「からかっている」と思うのか。それが分からないから「からかわれた」と感じ、前の番号だったと分かって誤解が解けるという流れにすべきでしょ。

このシーンでは楓が日奈々を追い掛け、マスクを付けたままキスをするのだが、これが陳腐そのものだ。
何しろ、その直前まで彼はマスクを外しているのだ。それなのに、日奈々を追い掛けてキスする時だけマスクを装着し、その直後に再び外す。
たぶん「マスク越しのキス」を「壁ドン」みたいな「胸キュンの定番」にしたかったんだろうけど、カッコ悪いだけだ。
楓が日奈々の鼻をかじって「キスの予約完了」と言うシーンも同様だ。普通にキスすりゃいいだろ。鼻をかじられたら、かなり臭くて嫌だろ。

楓は周囲に見られたら困るからという理由で、日奈々を自宅に呼んでデートしている。しかし、彰の誕生パーティーには呼ばれてもいないのに、ノコノコと出掛けて自分と日奈々の交際をバラしている。
いやアホすぎるだろ。あまりにも不用意だろ。
なぜ彰と光から交際の情報が広まるリスクを全く考えずに、そんな行動を取るのか。「日奈々の親友だから信用できる」と楓は言うけど、甘すぎるわ。
あと、楓がそんな風に言ったとしても、日奈々がリスクを考えて断れよ。親友に自慢したいのかと。

あとさ、そこまで楓が出掛けているのに、マスコミに全くバレていないのは不可解だわ。
彼は若い女子にキャーキャー言われてアイドル的な人気を誇る役者なんだし、どう考えたって芸能マスコミに狙われているはずでしょ。
それなのに、日奈々と何度も2人きりになったり、日奈々の家へ来たりしても全くバレていないのは、なかなかの御都合主義だわ。
後半に入ってから女性誌に記事が出るけど、それまで普通に交際できていたことが不思議なぐらいなのよ。

日奈々が養女という設定は、物語の中で何の意味も持っていない。それが恋愛関係に絡んで来ないのは余裕で予想できることであり、普通に考えれば家族との関係を描く中で絡んで来る要素だ。
ところが日奈々と家族の関係ってのは、ほとんど描かれていない。そもそも家族が登場するシーンは少ないし、父親に至っては「ほぼ背景」と化している。
恋愛映画なので、家族との関係が軽視されるのは別に悪いことでもない。ただし、「マトモに使わないのなら養女の設定って邪魔だよね」と言いたくなる。
意味ありげに持ち込んでおきながら使わずに投げ出しちゃうので、余計なノイズになっている。

楓と充希が互いに視線を逸らしてやり過ごすシーンの後、柊が彰の元カノだと知った日奈々が光に相談するシーンがある。その後で、帰宅した楓がFANNY BONE時代を回想するシーンが描かれる。
でも、そこは構成として上手くない。
楓がFANNY BONEと遭遇したら、他のシーンを挟まず回想に入った方がいい。
っていうか、そもそも楓がFANNY BONEに所属していた設定って、ほとんど無意味なのよね。その要素を排除したとしても、メインの恋愛劇には何の影響も及ぼさないんだよね。

楓は日奈々の家を訪れて「柊とは何でもない」と否定した後、「君に普通をあげられない。外で堂々とデートも出来なければ、手を繋ぐことも出来ない」と言う。
でも、そんな奴が玄関前で大きな声で日奈々に愛を伝えているのは、どういうつもりなのか。
あと、彰の誕生日パーティーに出向いた後、神社で2人きりになっているでしょ。それは堂々と外でデートしているってことになるんじゃないのか。
それと、遊園地で貸し切りデートしているけど、ってことは職員には絶対にバレるわけで。そこから外部に漏れるリスクは大きいのに、そういうことは全く考えちゃいないのね。

楓は遊園地デートの途中、急に「ホントはまだやりたいんじゃない、ピアノ?やりたいことを諦めるのって辛いよな。言えるのは、日奈々が何を選ぼうが、俺は日奈々を応援する」と語る。
でも、そんなヘンテコなタイミングで言う台詞じゃねえだろ。
そこに向けて、「日奈々が本当はピアノをやりたくて悩んでいる」という様子でも見せていれば、「それに気付いた楓が助言する」ってのは流れとして分かるよ。でも、日奈々は楓と付き合えて浮かれまくっているだけで、ピアノのことなんて全く頭に無いからね。
だから、そこから「日奈々が楓の言葉で再びピアノに向き合う」みたいな展開を用意されても、乗れないからね。
しかも、そんな流れも無いし。

女性誌に記事が掲載されて楓が「JKと付き合うなんて気持ち悪い」などとバッシングを浴びていることを知った日奈々は、「私のせいだ。謝らないと」と言い出す。
だけど、もしバレたら楓がバッシングを受けることなんて、容易に想像できたはずでしょうに。
なので、記事が出てから「こんなことになるなんて予想外」みたいな反応で軽いパニック状態に陥るのは、「いやアホか」と言いたくなる。
日奈々は楓と付き合えて浮かれポンチになっていて、「バレたら迷惑を掛ける」ってことでのブレーキが全く無いのよね。

蒔終盤、高橋が日奈々に語る台詞によって、「楓が役者に転身するためFANNY BONEを裏切って脱退した」という噂が嘘で、実際は喉を酷使したせいで声帯結節になって歌を断念したことが明らかにされる。
だけど歌うのはダメになったのに、俳優として大声を出したりするのは平気なのか。あと、声帯結節って治る病気じゃないのか。
それと、そんな理由で脱退したのなら、ファンに隠しておく意味が無いだろうに。真実を明かした方が、ずっと応援していたファンに対する誠実な対応になるだろうに。
楓とメンバーが互いに冷たい態度で無視するのも、理由がサッパリ分からないし。

完全ネタバレだが、楓と日奈々は報道が原因で別れを選び、映画のラストは3年後になる。楓はバルセロナ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞し、帰国して日奈々と映画館で再会する。彼は日奈々に、「3年前に別れた時、誰にも文句言わせない男になって必ず君を迎えに行くと決めたんだ」と語る。
でも、それは彼が勝手に決めたことであって、2人で誓い合った約束ではない。
日奈々は変わらず楓への思いを持ち続けていたけど、3年で気持ちが冷めたり他の男と付き合ったりする可能性もあったわけで。
なので、結果的には両思いのままで3年後を迎えたけど、そこを「純愛を貫いてのハッピーエンド」として描かれると、なんか引っ掛かるモノがあるなあ。

(観賞日:2021年5月25日)

 

*ポンコツ映画愛護協会