『GONIN2』:1996、日本

鉄工所を営む外山正道は、妻・陽子の誕生日に彼女を連れて宝石店に出向いた。陽子は498万円の猫目石を吸い込まれたように見つめていたが、鉄工所の資金繰りに苦しんでいる外山には、安いイヤリングしか買ってやれなかった。
外山が陽子と共に自宅に戻ると、金を借りた中嶋組の相原達がいた。彼らは借金を返さない外山を殴り倒し、陽子を弄ぶ。その日の深夜、外山が目を覚ますと、陽子が首を吊って死んでいた。外山は鉄工所で鉄板を加工し、日本刀を作る。
フィットネスクラブを経営していた蘭は、パトロンに捨てられた。38歳のサユリはセーラー服姿でテレクラで知り合った男と会うが、冷たく追い払われる。早紀は性的虐待のトラウマに苦しんでいる。志保は浮気した夫と愛人の元に乗り込むが、追い返される。
護身グッズの店で蘭が強力なスタンガンを購入するのを目撃した早紀は、彼女を尾行する。夫から貰った指輪を切るため、志保は宝石店に入る。蘭が宝石店に入り、続いて早紀も入る。店員のちひろは、隙を見て監視カメラのスイッチを切る。そこへ、サユリもやって来る。一方、外山は中嶋組に乗り込んで組長を殺すが、相原達はいなかった。
宝石店には覆面姿の梶や直子らが押し入り、客や店員を銃で脅して宝石を集め出す。梶は奥の部屋に恋人のちひろを連れて行き、セックスを始めようとする。蘭は強盗グループの1人を倒し、銃を奪う。早紀やサユリも、強盗グループに襲い掛かる。
蘭、早紀、サユリ、志保の4人は強盗グループを銃で脅し、宝石入りのリュックを奪い取る。4人はちひろが犯人とグルだとは知らず、彼女を連れて店から逃走する。中嶋組から500万円を奪った外山は店に現れるが、目当ての猫目石は無かった。
5人の女達は、閉鎖されたフィットネスクラブに入り、宝石を山分けする。中嶋組への上納金が払えずに強盗を計画した梶達は、ちひろからの連絡を待つ。中嶋組の上部組織のボス・野崎は、ヒットマンの代市を呼んで外山の抹殺を指示する。
外山は強盗グループのアジトに現れ、そこにいた連中を斬る。別の部屋でセックスしていた梶と直子だけは、殺されずに助かった。ちひろは蘭達に見つからないようにアジトに電話を掛け、外山を中嶋組の人間と勘違いして居場所を教える。やがてフィットネスクラブには、外山、梶と直子、さらに相原や代市といった連中までが駆け付ける…。

監督&脚本は石井隆、製作は奥山和由、プロデューサーは室岡信明、撮影は佐々木原保志、編集は奥原好幸、録音は北村峰晴、照明は牛場賢二、美術は山崎輝、アクション・コーディネイターは柴原孝典、音楽は安川午朗。
出演は緒形拳、大竹しのぶ、余貴美子、喜多嶋舞、夏川結衣、西山由海、多岐川裕美、松岡俊介、片岡礼子、山口祥行、永島敏行、鶴見辰吾、左とん平、佐藤浩市、根津甚八、竹中直人、椎名桔平、寺田農、飯島大介、寺島進、中山俊、城明男、鈴木覚、速水典子、伊藤洋三郎、阿部雅彦、山口剛、安藤泰助、神谷英男、那須正成、中村浩二、秋水政之、清水一彦、中川智史、久保田康夫、浦野眞彦ら。


『GONIN』の続編。
外山を緒形拳、サユリを大竹しのぶ、蘭を余貴美子、ちひろを喜多嶋舞、早紀を夏川結衣、志保を西山由海、陽子を多岐川裕美、梶を松岡俊介、直子を片岡礼子、相原を永島敏行、代市を鶴見辰吾、野崎を左とん平が演じている。また、佐藤浩市、根津甚八、竹中直人、椎名桔平、寺田農が友情出演している。

『GONIN』の続編と書いたが、メインとなる登場人物が同じく5人というだけで、話としての繋がりは無い。前回が男5人で今回は女5人という辺り、今までに名美を演じた大竹しのぶ、余貴美子、夏川結衣の3人を主要キャラクターとして勢揃いさせた辺り、エクスプロイテーション魂を見せたのかとも思ったのだが、どうやら違ったらしい。

まず、最初からして弱い。陽子がヤクザの連中に犯されそうになるのだが、そのシーン、かなりのロングショットでしか見せず、着衣の乱れも少ない。レイプシーンを持って来るなら、もっと徹底的に残酷に見せるべきだったと思う。
しかも、そのレイプシーン、約30秒ぐらいで終了して、ヤクザの連中は帰ってしまう。そんなわずかな時間で輪姦が済むとは思えないから、強姦未遂だと推測される。しかし、そうなると、何も自殺することはないんじゃないかと思ってしまうのだ。
そのレイプシーンが、なんなら目を背けたくなるほど残酷に描かれていればこそ、陽子が半狂乱になった後、首を吊って自殺するという悲劇の連鎖が、ナチュラルに成立する。レイプしたのか未遂なのかさえ微妙な程度では、中途半端と言わざるを得ない。

外山が5人と絡んだ後、そこから彼らの関係がいかに密接になっていくのかを描くのだろうと思ったら、すぐに外山は消える。代市は登場時のインパクトはあるが、その後は出番が少なく、急激に尻つぼみ。どうやら今作品、キャラを消すのが好きらしい。
それぞれのキャラクターの中身は薄いので、例えばサユリが死んでも、「ああ、1人死んだな」という事実があるだけで、何も感じない。志保なんて途中で姿を消しても、いつの間にか忘れてしまうぐらい存在感が薄い。数合わせのためだけの扱いか。

喜多嶋舞には裸のままでゴムチューブで拘束されるというシーンがあり、“体当たりの演技”などと言われたりもしたが、そこだけであり、ちひろというキャラクターには何の魅力も無い。というか、この映画で魅力的なキャラクターなど存在しない。
基本的に、石井監督は女優を苛めて脱がせたいだけなのかもしれない。喜多嶋舞がシャワーで血を洗い流すシーンには、無意味にたっぷりと時間を割いている。夏川結衣や片岡礼子も、絶対に必要というわけではなく、無駄にパイオツを見せている。というか、片岡礼子なんて、パイオツを見せるためだけに登場したようなものだ。

第1作でも、「とりあえずエキセントリックなキャラクターをたくさん登場させておけば、どうにかなるだろう」的な感覚は感じたが、この作品では前作にも増して、そういった印象が強くなっている。しかし、それだけでは、どうにもならないのである。
とにかく、登場する連中の行動には、理解可能な理由が存在しない。みんな揃ってキチガイにしか見えない。おそらく石井監督は、「キチガイに行動理由なんか要らない」と割り切っているのだろう。そうでなければ、連中の行動がデタラメすぎる。

メインとなる5人の女性は、「普通に生きて来た女性達が、ひょんなことから大事件に関わるようになる」という形ではない。最初からキチガイとしか思えないような5人が、キチガイじみた行動を取ったので、大事件に関わることになるという形だ。
サユリは自分が女子高生ではないことがバレてると知り(なぜ彼女がセーラー服姿なのかは不明)、なぜか「もう生きていけない」と口にする。早紀が蘭を尾行する理由は良く分からないし、サユリが宝石店に入った理由も分からない。

銃を持った強盗グループに人質となった3人が襲い掛かるという展開も無茶だし、5人で宝石を持って逃走するという行動にも付いていけない。すぐに宝石を山分けする話を始められる神経も理解不能。でも、みんなキチガイだから、しょうがないのだ。フィットネスクラブで宝石を山分けした5人、音楽に合わせて踊り出す。やっぱりキチガイだ。
一方、外山は外山で、自殺した妻の復讐に向かったはずが、なぜか猫目石を探して5人の女性の元へ。外山と5人の絡ませ方にかなりの無理を感じるが、たぶんシナリオ自体もキチガイなんだろう。他にも重傷を負った直子が急にプールで泳ぎ始めたり、早紀とちひろが陽子の遺体を外山の元に運んだりと、意味不明な行動が続く。

アクションシーンに冴えがあれば、それなりに見られた作品になったような気もするのだが、残念ながらキレもコクも無い。最初に蘭がサンドバッグを蹴っている様子を見せたのに、彼女が格闘アクションを披露するシーンは全然出てこない。
他の女性陣は、基本的にギャーギャーわめいてジタバタしてるだけ。銃を撃つシーンもあるが、もちろんカッコ良さなど無い。緒形拳には日本刀を持たせているが、モッチャリとした殺陣しか無い。おそらく、アクション映画として見てはいけないのだろう。

そんな中で、余貴美子サンだけは、その佇まい、雰囲気がカッコ良かった。
彼女のピンの主演で、ハードなガンアクション映画を作ってほしいと思った。
日本版の『グロリア』とか、いけそうな気がするんだけど。
ただし、監督は石井隆サン以外で。

 

*ポンコツ映画愛護協会