『ゴルゴ13 九竜の首』:1977、日本&香港

香港の海に、男の他殺体が浮かんだ。現場にやって来たスミニー刑事は、また同じ手口による殺人が行われたことを確信した。マイアミでは、麻薬組織のボスであるロッキー・ブラウンが船でゴルゴ13の到着を待っていた。そこに現れた殺し屋のゴルゴは、500メートル先のビルから観察しているロッキーの部下2名をライフルで狙撃した。「人目を避けろと言ったはずだ」とゴルゴに鋭くにらまれたロッキーは、慌てて平謝りし、報酬を追加した。
ロッキーはゴルゴに、組織の香港支部長である周雷峰を始末する仕事を依頼した。東南アジアから集めた薬を精製し、本部に送るのが周の役目だ。だが、雷峰が薬を横流ししているという情報が入り、本部が送った殺し屋3人を返り討ちにした。麻薬のスミニーと呼ばれる香港の主任刑事が動き出したため、雷峰の殺害を急いでほしいとロッキーは語った。組織とスミニーの両方から責められると周はスミニーに命乞いするかもしれないから、捕まる前に始末してほしいというのだ。
スミニーは複数の麻薬密売ルートを摘発するが、その頂点にいるのは全て周雷峰だった。周は香港の名士だが、スミニーは殺しにも関与していたという確信を署長に話す。被害者がアメリカの麻薬組織の一員だったからだ。今が香港から麻薬を一掃する絶好のチャンスだと訴えるスミニーだが、周を逮捕するための証拠は何も得られていない。署長は「彼の表の顔は各種の観光事業を運営する実業家だ。捜査は、くれぐれも慎重にな」と釘を刺した。
スミニーの部下である女刑事の林玲は、周の経営するナイトクラブにナイフ投げの芸人として潜入していた。周は本部が4人目の殺し屋を差し向けたと聞かされるが、彼は余裕の態度で手下の入道やチャイに「頼んだぞ」と言う。周の一味が車で出発したので、林玲はスミニーに連絡して尾行する。林玲は麻薬精製工場を突き止めるが、撃たれて負傷し、一味に捕まってしまった。スミニーはナイトクラブへ行くが令状が無いので周を引っ張ることも出来ず、「必ず化けの皮を剥がしてやるからな」と告げて立ち去った。
ゴルゴは香港のホテルにチェックインし、届いた電気ドリル見本とガスバーナー見本の箱を開ける。中にはライフルの部品が入っており、それをゴルゴは組み立てた。ナイトクラブでは、ポーラニア領事のポランスキーと娘のマリアを歓迎するパーティーが開かれた。その様子を、店に来たゴルゴが観察していた。店を出たゴルゴは、江蘭という女が妹を売り飛ばして自殺に追い込んだ男を射殺する現場に遭遇した。警官隊が駆け付けると、ゴルゴは「犯人は向こうに逃げた。派手な服を着た若い男のようだった」と嘘をついて江蘭を庇った。
スミニーが現場に来ると、ゴルゴは江蘭とカップルを装って立ち去った。するとナイフを持った男たちがゴルゴを取り囲み、「女を渡せ。殺されたのは俺たちの仲間で、その女は奴のスケだ」と言う。ゴルゴは一味を蹴散らして入道を射殺し、その場を後にした。周の一味が林玲を拷問して情報を吐かせようとしているところへ、ゴルゴに蹴散らされた一味の2人が戻って来た。「カミソリみたいな目の日本人か中国人にやられた。新しく来た殺し屋に間違いありませんよ」と言われ、周は徹底的な捜索を命じた。
スミニーは部下を連れて麻薬工場に乗り込み、周の一味と銃撃戦になる。しかし林玲を人質に取られたため、拳銃を捨てざるを得なかった。林玲はスミニーを撃とうとした男を蹴り飛ばし、銃弾を浴びて死んだ。逃げ出そうとした一味の男が誤ってレバーを操作してしまい、工場は大爆発を起こした。周は黒幕の男に「マズいことになったねえ」と言われ、「工場が爆発したので証拠は残しておりません」と釈明した。すると情婦の麗花は、「警察の手は貴方の喉元まで伸びていると考えるべきよ」と告げた。
「まだ本部から来た殺し屋の始末も付いてないんでしょ」と言われた周は、殺し屋の特徴について語る。すると黒幕は「そいつはゴルゴ13以外に考えられん。超一流のプロだ。簡単に正体を割るような男じゃない。狙った獲物は外さない」と警戒心を強める。彼は周に、「君はしばらく外国へ行って隠れていなさい。ほとぼりが冷めてから組織を立て直せばいい」と言い、寄付したプール開きの式典が終わったら飛び立てる手はずを整えることを約束した。
黒幕の指示を受けた麗花は匿名でスミニーに電話を掛け、ゴルゴが香港に来ていることを教えた。スミニーはゴルゴと会ったことは無いが、因縁があった。3年前、ある国の外交官の警護を頼まれた。ゴルゴが狙っているという情報が入ったため、スミニーは付きっ切りで警護した。しかし帰りの飛行機に乗るためにタラップを上がっていた時、外交官はゴルゴの狙撃によって殺された。スミニーはゴルゴに殺害される前に周の逮捕状を出してほしいと課長の王徳明に頼むが、式典が終わってからだと告げられた。
プール開きの式典が行われる中、ゴルゴは周を狙撃しようとする。だが、彼より先に、金髪の白人女性が周を射殺した。ロッキーはゴルゴからの連絡を受け、自分が他の殺し屋を雇っていないことを告げる。ゴルゴは「俺の標的は香港のボスだったな」と言い、周の上にボスがいることを示唆した。するとロッキーは「そいつを殺ってくれ」と言い、報酬を10万ドル上積みすることを約束した。ゴルゴは調達屋の重宗千造を訪ね、金を渡した。
ゴルゴはナイトクラブへ行き、麗花に接触した。その様子を、金髪の女殺し屋・火喰い鳥のキャサワリーが密かに観察していた。麗花が色目を使って来たので、ゴルゴはベッドで彼女を抱く。ゴルゴは部屋の隅に隠れて狙撃を目論んでいたキャサワリーを射殺し、「今度、殺し屋を雇う時は、アンタと同じ香水を使わせるんだな」と麗花に言う。ゴルゴは「電話をするんだ。報告を待っている男がいるはずだ。終わったと言えばいい」と彼女に命じた。情婦は隙を見て銃撃しようとするが、ゴルゴに眉間を撃ち抜かれた。
スミニーはゴルゴらしき男が東京行きの飛行機に乗ったという情報を知らされ、空港に電話を掛けて出発を止めようとする。だが、既に飛行機は離陸した後だった。同じ便には、ポランスキーとマリアも搭乗していた。組織の黒幕だったポランスキーはアメリカ大使館の一等書記官であるアーノルドに電話を掛け、「会って相談したいことがある」と告げる。ゴルゴは電話を盗聴し、ポランスキーがアーノルドと会うために出掛けることを知った。
スミニーは東京へ飛び、警視庁国際捜査共助課の立花と美木に会う。さらに空港には、東京に留学している妹の葉連が出迎えに来た。立花と美木はゴルゴの行方について、アジアホテルにいたことまでは突き止めたが、今朝早く出発してしまったことをスミニーに話す。そして立花は、ゴルゴと同じ便に乗り、同じホテルに宿泊した人物が、ポランスキーとマリアだけだったことを告げる。そのポランスキーは、マリアを残して京都へ向かったという。
ゴルゴは京都へ行き、ポランスキーとアーノルドの密談を撮影した。読唇術のプロに映像を見てもらったゴルゴは、「身辺に危険が多いからアメリカに亡命したい。土産は期待してほしい。アメリカと香港を結ぶ麻薬シンジケートのリストだ」とポランスキーが言い、「事は重大だ。本国にも相談しなければならないから、時間が要る。香港で連絡を待ってほしい」とアーノルドが話していることを知った。部屋を出ようとしたゴルゴの前に、スミニーが現れた。スミニーが日本の警察に電話を掛けようとしている間に、ゴルゴは出て行こうとする。ゴルゴはスミニーと戦い、姿を消す。スミニーは慌てて捜しに行くが、実はゴルゴは部屋に残っていた。
ポランスキーはマカオへ飛び、配下のアンドレ・ガストンが用意した石霊島の要塞に行く。要塞には監視カメラが完備してあり、ガストンは警備体制に自信を見せる。スミニーは課長に頼んで人員を用意してもらい、香港に戻ったゴルゴを徹底的に捜索する。ゴルゴを発見したスミニーは、逮捕状が無いにも関わらず、職務尋問を名目にして引っ張ろうとする。街を逃げ回ったゴルゴは、江蘭と遭遇した。ゴルゴが拳銃を預けると、江蘭は黙ってうなずいた。ゴルゴはスミニーたちの元へ赴き、手錠を掛けられた。
警察署でスミニーの尋問を受けても、ゴルゴは黙秘を貫いた。周の殺害犯がキャサワリーだと判明したこともあり、ゴルゴは証拠不十分で釈放された。スミニーは部下から、ポーラニア領事が動き出したという情報を知らされる。『尾行して行き先を突き止めろ」と指示するスミニーに、ゴルゴは「行き先はアメリカ大使館だ」と言う。警察署を出たゴルゴは、ポランスキーの差し向けた殺し屋に襲われる。敵を倒したゴルゴだが、自らも怪我を負う。一方、スミニーはポランスキーを追うが、アメリカ総領事館に逃げ込まれてしまう…。

監督は野田幸男、原作はさいとう・たかを&さいとうプロダクション『ビッグコミック』連載 小学館刊、脚本は中島信昭&松本功、企画は俊藤浩滋&杉本直幸&佐藤雅夫、撮影は赤塚滋&勝木勝夫、照明は金子凱美、録音は荒川輝彦、美術は井川徳道、編集は市田勇、助監督は土橋亨、擬斗は斉藤一之&黄樹棠、音楽は伊部晴美。
出演は千葉真一、嘉倫(ガルン(スティーヴ・リャン))、鶴田浩二、志穂美悦子、新藤恵美、ジェリー伊藤、エレーナ・スン(孫泳恩)、ダナ(丹娜)、林偉哲、李志中、陳耀林、黄樹棠、ジョアナ・トース、フィオナ・ハンフリー、宋錦成、ジム・ブルース、ビル・レイク、エドワード・ハート、唐天希、尹發、泰山、アラン 余、テリー・オブライエン、黎剣雄、クレイトン、ボブ・イングルス、杜偉全、笹木俊志、波多野博、スコット・タントニオ、ビリー・コスビー、高橋健二、高橋敏光、古賀弘文ら。


さいとう・たかを&さいとうプロダクションの劇画『ゴルゴ13』を基にした作品。
監督は『不良番長』シリーズや『ザ・カラテ』シリーズの野田幸男。
ゴルゴを千葉真一、スミニーを嘉倫(ガルン)、重宗を鶴田浩二、林玲を志穂美悦子、葉連を新藤恵美、ポランスキーをジェリー伊藤、江蘭をエレーナ・スン(孫泳恩)、麗花をダナ(丹娜)、周雷峰を林偉哲が演じている。
日本公開版では外国人キャストの台詞が全て日本語に吹き替えられており、嘉倫の吹き替えは広川太一郎が担当している。

千葉真一は『ボディガード牙』や『ウルフガイ 燃えろ狼男』『ドーベルマン刑事』といった作品で劇画や小説の主人公を演じて来たが、それらと同様で、この映画でも原作のイメージを守ろうという気は全く無い。
それは千葉真一が勝手に原作を無視しているということではなくて、当時の東映(というか日本の全ての映画会社)において、それが普通だったということだ。
特に劇画や漫画に関しては、含まれている要素をチョロッとだけ拝借し、ほぼ別物として作り上げてしまうことは、珍しくもなかったのだ。
それを全面的に「ダメな行為」と断言できないのは、出来る限り原作に似せようとして失敗した『ドカベン』のような例もあるからだ。

ゴルゴよりも先にスミニーが登場するが、それ以降も彼の出番は多い。千葉ちゃんの主演作というより、嘉倫とのダブル主演と言ってもいいぐらいの状態だ。
原作でも、ゴルゴの出番が少ないエピソードが無いわけではない。ただ、千葉真一の主演作ということを考えれば、彼の出番を圧倒的に多く用意すべきだろう。
しかし嘉倫がボスを務める嘉倫電影有限公司が制作に携わっているので、どうしても彼の扱いが大きくなっているという事情がある。
だから終盤には、彼がガンアクションや格闘アクションをする見せ場もある。

さて、本作品だが、まずゴルゴの登場シーンからして、原作の熱烈なファンなら唖然とするか激怒するかの二択じゃないかと思うような内容になっている。
何しろ、ゴルゴの髪型が短いアイロンパーマなのだ。
あと、ロッキーの船に潜水用の呼吸器具を持って海中から現れるというのは、登場方法としては変だけど、それは受け入れるとしよう。だけど、初登場シーンでスーツ姿じゃなくて海パン一丁ってのは、ゴルゴの見せ方としては間違ってるよな。
サニー千葉の肉体アピールとしては正解だろうけど。

スミニーの部下として登場するスー・シホミは周を尾行して麻薬工場を突き止めるが、なぜか外にいる手下たちを次々に倒していく。
彼女の本来の目的からすると、麻薬工場を突き止めた時点で現場を離れるか、もしくはスミニーが到着するのを待つべきだろう。
ところが、警備している連中の元へ自分から乗り込んで倒していく。任務よりも、戦いたい意識が勝っているのだ。
そんなボンクラだから、簡単に捕まってしまう。

で、林玲は一味に捕まる前に無線機を車の下に残しているのだが、それでスミニーがすぐに彼女の居場所を知るわけではない。翌日になり、近所の少年たちが無線機を発見して操作し、スミニーと喋ることで、ようやく彼は麻薬工場の位置を知る。
かなりラッキーに頼っており、林玲の行動はお世辞にも利口だとは言えない。
ただし、無線機を残した時点で助かるフラグは立っている。
ところが、スミニーの目の前で殺されちゃうんだよな。
たぶん「スー・シホミはゲスト出演だから、その辺りで御役御免に」ということなんだろう。
で、一味の男が誤ってレバーに触れたら工場が爆発するんだが、そんなに簡単に爆発するような危険なレバーって何なんだよ。

ナイトクラブではポーラニア領事のポランスキーと娘のマリアを歓迎するパーティーが開かれるが、だったら店を貸し切りにすりゃあいいものを、一般の客も入れるようになっているらしく、平気でゴルゴが入り込んでいる。
で、ゴルゴと言えば「背後を取られることは死を意味する」という考えの持ち主だが、幼いマリアは簡単に彼の背後を取っている。
原作では背後に立とうとした娼婦の顔面を殴り付けたゴルゴだが、マリアに対しては睨むだけ。
そんでマリアは全く怯えず、「おじさん、このドラゴンの目に似てる」と言う。
そりゃあ幼女を殴るってのは、さすがにマズいだろうけど、そんなヤワなゴルゴは見たくないなあ。
そこのゴルゴは何となく滑稽なのよね。

その直後、店を出たゴルゴは、妹を売り飛ばした男を射殺した女と遭遇し、警官隊から彼女を庇う。
いや、だからさ、そういうヤワな姿を簡単に見せ過ぎだっての。
もっと徹底的にクールなプロフェッショナルとしての姿をアピールした上で、「珍しく優しいトコも見せる」という形なら別にいいのよ。でも、まだ映画が始まって20分ぐらいしか経過していないんだぜ。
っていうか、長く続いたシリーズ作品ならともかく、この1本だけなんだから、劇中にゴルゴの優しさを示すような描写は要らないわ。

女を連れて去ったゴルゴはナイフを持った連中に襲われるが、空手アクションで軽く叩きのめす。
そりゃあゴルゴも格闘能力は高いけど、その空手アクションを見て「いかにもゴルゴ」と感じる人は皆無だろう。
誰がどう見ても、いつもの千葉ちゃんの格闘映画である。
幾ら勘の鈍い人でも、そのシーンをみれば、さすがに「ああ、これってゴルゴ13の映画化じゃないんだ。サニー千葉のアクション映画なんだ」と気付くことだろう。

建設現場にやって来たゴルゴは、望遠鏡を新聞紙で覆い隠し、周を狙撃するために適したビルを探す。
でも、丸めた新聞紙をビルに向けて構えていたら、望遠鏡を隠している意味が無いだろ。もはや怪しさしか無いぞ。そんなことをするぐらいなら、堂々と望遠鏡で覗いた方が、むしろ怪しまれないと思うぞ。
で、プール開きの当日にゴルゴはビルの屋上から周を狙うんだが、堂々と立った状態でライフルを構える。
そこは隠れる気が無いのね。
離れた場所とは言っても、一応は低い姿勢で物陰に隠れるように構えた方がいいと思うんだけど。

周の狙撃を別の女に奪われたゴルゴだが、なぜか直後に「香港のボスは他にいる」と確信している。
そう思った根拠は全く分からない。
で、ナイトクラブにゴルゴが行くと麗花が誘惑するが、それはボスの仕掛けた罠。
でも、もうゴルゴがどいつか分かっているのなら、店で殺し屋が狙う形にしておいてもいいんじゃないかと思ったりするけどね。どうせ、その濡れ場はゴルゴが「性技で女をメロメロにする」というのをアピールするシーンじゃないんだし。

ゴルゴが急に飛行機で東京へ戻るのは、説明不足で分かりにくいかもしれないが、既に「ポランスキーが黒幕」と見抜いており、彼を追うための行動だ。
ちなみに、なぜポランスキーを黒幕だと見抜いたのかは分からない。
で、機内でマリアから声を掛けられた時には、笑顔で薔薇のブローチをプレゼントする。
また優しさの過ぎる行動を取っちゃうゴルゴだが、そこは一応、「ブローチに盗聴器が仕掛けてある」という言い訳が用意されている。

ゴルゴは京都へ行き、密談しているポランスキーとアーノルドをビデオカメラで撮影する。
今回は新聞紙で隠すようなことはせず、堂々とビデオカメラを回して2人を撮影している。でも、なぜかポランスキーとアーノルドは、全く気付かない。
そもそも、この2人の密談も奇妙で、観光地の駐車場で車を隣同士に停めて、そこから頭を出して会話を交わすのだ。
そんなことをするぐらいなら、片方が移動してもう一方の車に乗り、車内で会話を交わした方がいいだろ。

一方、スミニーも日本を訪れ、空港には妹の葉連が出迎えに来る。スミニーが京都へ行く時も、案内役ということで同行する。
ところが、京都へ到着すると、すぐにスミニーは「ここで別れよう」と言い、そこで葉連の出番は終わってしまう。
ハッキリ言って、何のために登場したのかサッパリ分からない。
っていうか、まあ特別出演だから、特に出て来る意味は無いってことなんだろう。
ただ、例え特別出演であっても、もうちょっと意味のある役割を与えてあげようよ。

ゴルゴとスミニーが香港に戻り、街での追跡劇が展開されるシーンは、完全に香港アクション映画の世界だ。
今さら言うまでもないが、そこにゴルゴらしさは微塵も無い。
街の中を走り回り、バスに飛び乗ったり、窓から外に出て屋根に上がったり、木に捕まって道路に着地したりという動きを見せるのはデューク東郷ではなく、パーマを当てたサニー千葉だ。
っていうか、これを言っちゃうと身も蓋も無いけど、どうせ登場した時点から、サニー千葉がゴルゴ13に見えるシーンなど1つも無い。

終盤、石霊島へ逃げ込んだポランスキーを始末するため、ゴルゴはスミニーに電話を入れて彼の居場所を教える。
悪党一味と香港警察の銃撃戦&格闘戦が展開される中、ゴルゴは潜水服で海から出現し、上陸して崖を登る。ガストンがクルーザーで囮になって香港警察を海に誘い出し、その間にFBIの迎えのヘリコプターが島へ飛んで来る。
スミニーが「ゴルゴだ。あのヘリコプターを待っていたんだ」と口にするが、その通りで、ゴルゴはロープで崖の途中に体を固定し、ロープを揺らして勢いを付け、ヘリコプターに乗って脱出しようとするポランスキーの眉間を撃ち抜く。
その隣にはマリアが乗っているんだけど、そこは容赦が無い。

「ゴルゴは、ポランスキーが香港警察の包囲網を突破して、この島から脱出するには、ヘリコプターしかないことを読んでいた。そして彼は、重宗から教わった、平均風速20メートル、北北西の風が吹く島の気象条件からして、ヘリコプターの帰る位置は、この絶壁の上しか無いことをも知っていた。殺しのプロフェッショナルの判断に、一瞬の狂いも無かった。全てが正しかった。そして、終わった」という大塚周夫のナレーションの後、カットが切り替わると空港でゴルゴとスミニーが対峙する。
スミニーがパンチを浴びせて「ついにお前の尻尾を掴むことは出来なかったが、今度、香港に現れたら、必ずひっ捕らえてやる」と言い放っても、ゴルゴは無言で立ち去るだけ。
でも殴られているので、あんまりカッコ良く終わっているとは言い難い。
そこは嘉倫に花を持たせたという感じなのかな。

(観賞日:2014年6月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会