『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』:2003、日本

米太平洋航空軍団指令部のハワイ・ヒッカム基地で、日本へ向かう謎の飛行物体が観測された。特生自衛隊の習志野駐屯地分析中隊にも連絡が入り、高速飛行隊が出撃した。高速飛行隊の隊員は、飛行物体の近くで女性の歌声を聞いた。
特生自衛隊の整備士・中條義人は、休暇で軽井沢に来ていた。彼は、伯父の言語学者・中條信一の孫・瞬に、自分が整備している機龍について語る。機龍は1年前のゴジラとの戦いで傷付き、今は修復作業が行われている最中だった。
信一らの前に、マナとヒオとという小美人が現れた。信一は43年前、インファント島を訪れた際に2人と会っていた。その時、信一は興行主に連れ去られた小美人を助けるためにインファント島の紋章を空港に描き、怪獣モスラを呼び出したのだ。
マナとヒオは、人間がゴジラの骨から機龍を作り出したことを過ちだと批判した。そして信一に、ゴジラの骨を海に返してほしい、そうしなければモスラは人間の敵になると語った。そして、機龍の代わりにモスラがゴジラと戦うことを約束した。
義人は休暇を終えて、第一機龍隊指令部での仕事に戻った。機龍の整備作業は着実に進んでいたが、防衛予算の関係でアブソリュート・ゼロの修復は不可能な状態にあった。整備班の班長・神崎は、防衛庁長官の土橋から機龍の修復状況について尋ねられる。神崎は、現時点で出撃は可能だが、損傷すれば機龍は終わりだと告げた。
機龍隊では、1年前の戦いに参加した家城茜、関根健二、葉山進の3名がアメリカへ研修に行くことになった。その一方で新人の隊員、如月梓や秋葉恭介が着任してきた。梓は、かつて義人と一緒に整備士として働いた仲間だった。
信一は五十嵐総理大臣の元を訪れ、小美人のことを語って機龍プロジェクトの凍結を依頼する。しかし五十嵐は信一の言葉を受け入れつつも、かつて東京を破壊したモスラが日本を守るという話を、完全に信用することは出来なかった。
千葉の九十九里浜に、怪獣カメーバの死体が漂着した。富樫隊長率いる機龍隊のメンバーや、特殊作業隊の二階堂らが現場に駆け付けた。カメーバには、別の巨大生物に襲われた傷跡があった。二階堂は、それがゴジラだという可能性を示唆した。
義人は恭介の父である防衛庁の政務官・秋葉功に呼び出された。秋葉は息子を危険な戦闘に送り出すことを嫌がり、機龍プロジェクトに反対の立場を取っていた。彼は小美人とモスラの話を聞き付け、そのを理由にプロジェクトを凍結しようと考えていた。信一が五十嵐に語った話が本当かどうか尋ねられた義人は、明確な答えを避けた。
ゴジラが太平洋上に出現し、東京へと向かった。日本政府は、ゴジラを品川付近へ誘導しようとする。人々が逃げ惑う中、瞬は学校の運動場へと向かった。信一が駆け付けた時、瞬は机を使ってインファント島の紋章を完成させていた。
紋章に呼び出されたモスラが飛来し、ゴジラと戦い始めた。しかし、鱗粉攻撃を目撃した信一は、それがモスラの最後の武器だと知っていた。モスラの戦いを見ていた五十嵐は、機龍の出動を命じた。彼は、ゴジラを倒した後に機龍を廃棄すると決意していた。一方、義人は機龍を送り出した後、信一と瞬を探しに出た。
モスラは次第に弱っていくが、そこに小笠原諸島で誕生した双子の幼虫モスラが現れる。成虫モスラが最後を迎えた後、2匹の幼虫モスラは機龍と共にゴジラと戦う。しかし、戦いの途中で機龍は制御不能に陥ってしまう。信一と瞬を自衛隊の基地に送り届けた義人は、機龍を修復するため、たった1人で戦いの現場へと向かった…。

監督は手塚昌明、脚本は横谷昌広&手塚昌明、製作は富山省吾、プロデューサーは山中和成、撮影は関口芳則、編集は普嶋信一、録音は斉藤禎一、照明は望月英樹、美術は瀬下幸治、特殊技術は浅田英一、特美は三池敏夫、造形は若狭新一、視覚効果プロデューサーは小川利弘、視覚効果スーパーバイザーは泉谷修、音楽は大島ミチル。
出演は金子昇、吉岡美穂、虎牙光揮、長澤まさみ、大塚ちひろ、大森樹、益岡徹、高杉亘、釈由美子、小泉博、中尾彬、中原丈雄、上田耕一、升毅、清水紘治、六平直政、本郷慎一郎、佐藤亮太、水野純一、友井雄亮、峰岸徹、朝岡聡、飯星景子、渡辺典子、山田辰夫、新藤栄作、彦麿呂、並樹史朗、湯江健幸、倉敷保雄、江蓮健司、坂田雅彦、阿部祐二、内浦純一、服部沙智子、赤川蓮、林田河童、宮下敬夫、青木淳、三宅法仁、中江寿、高木博安、飯島壮、喜多川努、中川素州ら。


シリーズ27作目。
義人を金子昇、梓を吉岡美穂、恭介を虎牙光揮、マナを長澤まさみ、ヒオを大塚ちひろ、瞬を大森樹、神崎を益岡徹、富樫を高杉亘、五十嵐を中尾彬、土橋を上田耕一、二階堂を升毅、秋葉政務官を清水紘治が演じている。

このシリーズとしては珍しく、前作と話が繋がっている。
そのため、『ゴジラ×メカゴジラ』から引き続いての出演者も少なくない。前作に主演した釈由美子も、顔を見せている。
また、前作だけでなく、1961年版の『モスラ』とも話が繋がっている。だから『モスラ』に中條信一役で出演していた小泉博が、同じ役で登場している。
この作品では、1970年の『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』の怪獣カメーバを登場させるというマニアックなことをやっている。
そんな部分でマニアックな配慮をするのもいいが、その前に併映作品がハム太郎だという問題を配慮すべきだろう。

さて、話を順に追いながら、内容について色々と語ることにしよう。
まずは冒頭、信一の前に小美人が現れる。「お久しぶり」と言うからには、この2人は34年前のザ・ピーナッツと同一人物らしい。
どうやら整形手術を受けた上、薬か何かで若返ったようだ。
さて、その小美人、「ゴジラの骨を海に返してくれ」と要求する。
そもそも前作において、シリーズ第1作で溶けてしまったはずのゴジラの骨が溶けていなかったことにしてしまった設定に無理があるのだが、そんなことは今さら言っても仕方が無い。

小美人はゴジラの骨を海に返すべき理由として、「人間が死者の魂に手を触れてはいけない」と語るのだが、何の説得力も無い。それに、なぜ「ゴジラの骨を海に返さなければモスラが人間の敵になる」のか、その理由が全く分からない。
小美人は「機龍が廃棄されたら、その代わりにモスラがゴジラと戦う」と言うが、それは妙な話だろう。
1961年版『モスラ』と話が繋がっているのなら、モスラはインファント島の守護神であるはずだ。
それなのに日本を守るために戦うのは、筋が違うだろう。

で、実際にモスラが戦い始めてみると、ゴジラと勝負できるほどの強さは持っていない。つまり、機龍の代役をこなすのは無理だ。
ってことは「ゴジラへの対抗手段は他に無いけど機龍を廃棄しろ」と要求するのだから、そりゃムチャな話だろう。
しかも、まるで小美人は自分達がモスラを操る権限を持っているように語るが、モスラはガキンチョの作った紋章で簡単に登場してしまうのだ。
紋章を作れば誰でも呼び寄せることが出来るのだから、もはや小美人の言葉には何の説得力も無い。

本気でゴジラの骨を海に返してほしいのならば、何の権限も無い信一に話をしただげは意味が無い。小美人は総理大臣にも会うべきだろう。
しかし、総理を説得する作業は信一に任せてしまう。だから、なかなか信用してもらえない。
小美人も同行しろよ。
五十嵐が「モスラがゴジラと戦うなんて信用できない」と語っているので、どうやら1961年版『モスラ』は「あった話」になっているが、1964年の『モスラ対ゴジラ』は無かったことになっているようだ。
もちろん、1992年の『ゴジラVSモスラ』も無かったことである。

当たり前の話だが、劇中で機龍は必ず「機龍」と呼ばれている。誰一人として、それを「メカゴジラ」と呼ぶ者はいない。
これでタイトルに「メカゴジラ」と付けるのは、反則じゃないと思ったりするのだが。
まあ、前作もそうだったし、これも今さらの話だが。

家城茜らの壮行会シーンで、初めて義人と機龍隊の新人メンバーが顔を会わせる。
ここでは、義人が梓との旧交を温めたり、義人と恭介が対立したりする。
まあ簡単に言うと、機龍隊の新人による学芸会の芝居が行われるということだ。

ゴジラが出現すると、前述したようにガキンチョの瞬が紋章を作ってモスラを呼び出す。
わずかな時間で、たった1人で、100台ほどの机を運動場に移動させて巨大な紋章を作る瞬。
劇中では触れられていないが、どうやら特殊な能力の持ち主らしい。

機龍が制御不能になった後、政府は立候補した義人を1人だけ修復作業に向かわせる。
いやいや、近いんだから、他の整備班メンバーも行かせろよ。
そりゃあ戦闘の真っ只中だから危険はあるだろうが、そんなこと言ってる場合じゃないはずだし。
機龍の損傷が、たった1人で短時間に修復できるモノかどうかも分からない状況なのだし。

色々と問題はあるが、その大半はモスラに関係している部分だ。
結局のところ、「“必ずモスラを登場させねばならない”という製作上の制約に対して、シナリオが上手く適応できなかった」というのが致命的な欠陥だろう。
どれだけ頭を回転させても、この映画のモスラは特に意味も無く登場しただけにしか思えないのである。

 

*ポンコツ映画愛護協会