『ゴジラVSデストロイア』:1995、日本

サイキックセンター主任の三枝未希を乗せたヘリコプターが、バース島へ向かっていた。しかしバース島は消滅し、ゴジラとリトルゴジラの行方も分からなかった。1996年、香港。ゴジラが上陸し、街を破壊した。しかし背びれの発光や熱戦の色は、以前のゴジラとは明らかに異なっていた。そんなゴジラについて話し合うため、Gサミットの会議が開かれる。バース島が消えた原因については、地底に含まれた高純度の天然ウランが核分裂反応を起こした結果ではないかと言われている。それがゴジラに影響を与えたのではないかというのが、Gサミットの出した推測だった。
Gサミットのアメリカ情報官である小沢芽留は、チームの経過報告を行った。原子力エネルギーの専門家であるマービン博士は、「ゴジラの動力源は原子炉と言われている。その心臓部で何かが起きている。それを予測・分析した論文がある。日本の学生がインターネットで送って来た」と話す。国連G対策センター2代目長官の国友満は、論文を書いた山根健吉を尋ねた。留年学生の健吉は、山根博士の養子・新吉の息子だった。そして健吉の姉・ゆかりは、ニュースキャスターとして働いていた。
健吉は国友に、最初はG対策センターにアクセスしたが、反応が無かったので論文をアメリカに送ったのだと語った。国友から協力を要請 された彼は、「ゴジラはあくまでも趣味にしておきたいんで。それに会議って奴がどうも苦手で」と断った。しかし未希が重要メンバーであることを知った途端、健吉はコロッと態度を変えて「是非とも参加させて下さい」と口にした。同じ頃、ゆかりの番組には、酸素原子を微小化したミクロオキシゲンの研究で国際物理学賞を受賞した国立物理化学研究所の伊集院研作が出演していた。兵器利用の可能性について軽く考えている伊集院に、ゆかりは「楽観的な意見」と強烈な皮肉を述べた。
ゆかりは番組を見ていた叔母の恵美子に呼ばれ、ミクロオキシゲンが40年前に芹沢博士の作り出したオキシジェン・デストロイヤーと近い気がするのだと話す。ゆかりは伊集院の元を訪れ、そのことを指摘した。伊集院は「ミクロオキシゲンの先に、それがあることは予想しています」と認めたものの、「芹沢博士の意思に逆らってまで作るとは言っていない」と告げた。一方、東京湾の海底トンネル建設工事現場では、同じ地層で謎の事故が続発していた。その中には、シャフトが溶けて無くなるという奇妙な現象も含まれていた。
アメリカの衛星通信情報センターは、台湾沖で海水温が異常に上昇していることをキャッチした。現場へ向かった芽留は、ゴジラが海を移動する様子を目にした。Gサミットの会議に参加した彼女は、ゴジラの体内で冷却機能を遥かに超える核分裂が起きていることを話す。オブザーバーとして出席した健吉は、バース島の異変によってバランスを崩し、核分裂が飛躍的に活性化したのだと説明する。そして彼は、ゴジラが果てしなく暴走するか、あるいは核爆発を起こすかの二択だと述べた。
ゆかりは伊集院がトンネルを調査したことを知り、土を持ち帰ったと確信した。その場所は、芹沢博士がオキシジェン・デストロイヤーでゴジラを葬った海底の真下だった。ミクロオキシゲンの兵器利用に危惧を示す彼女に、伊集院は「あの地層から地球に酸素が無かった時代、先カンブリア紀のことが分かるんじゃないかという興味がある」と話す。持ち帰った土を伊集院が分析すると、生物反応があった。
国友がゴジラへの攻撃を控えると宣言し、司令官の麻生孝昭は反対する。だが、攻撃を加えればゴジラが核爆発を起こし、地球で大惨事が起きる可能性が高い。すると芽留は「物理的攻撃が駄目なら、化学的に消滅させるしかないでしょう」と意見を述べ、健吉はオキシジェン・デストロイヤーの使用を進言した。健吉の考えを聞かされた恵美子は、全面的に反対する。しかし健吉は全く揺るがず、「40年前と違って、地球が滅びるかどうかという瀬戸際なんです」と述べた。
健吉はゆかりに会議の内容を語り、伊集院とコンタクトを取ってほしいと依頼した。一方、深夜のしながわ水族館を警備していた田山孝夫は、水が魚を次々に食べる怪奇現象を目撃した。健吉はゆかりと共に伊集院を訪ね、オキシジェンデストロイヤーの作成を依頼する。だが、伊集院は「この海底の地層を徹底的に調べて、改めてオキシジェン・デストロイヤーの恐ろしさを知りました。もし地上で使っていたら、東京は生物の墓場になっていたでしょう」と否定的な態度を取った。
ゆかりはテレビ局からの連絡を受け、しながわ水族館の事件を知った。健吉、ゆかり、伊集院は水族館へ赴き、画像を解析する。その結果、水中に先カンブリア紀の微生物が生息していることが判明した。それはオキシジェン・デストロイヤーで無酸素状態になったことによって復活し、大気に触れて異常進化していた。魚が骨にされたのはミクロオキシゲンの破壊によるものだと、伊集院は説明した。その頃、沖縄の南方にゴジラが出現し、北上を開始した。
未希は四国沖でクジラの大量死体が発見されたニュースを知り、リトルゴジラの通った形跡ではないかと考える。リトルゴジラにクジラを食べるような狂暴さは無かったが、バース島の異変で何か影響を受けた可能性があると推測したのだ。彼女はヘリコプターを飛ばしてもらい、リトルゴジラの捜索を再開した。深夜の臨海副都心で正体不明の生物が発生し、特殊部隊がプレミアム・ビルに乗り込んだ。だが、複数の生物は特殊部隊に襲い掛かり、ゆかりを含むマスコミが待機しているビルの外にも出現した。
ゆかりは逃げ遅れてパトカーに避難するが、謎の生物に追い込まれて窮地に陥った。そこへ伊集院が駆け付けて彼女を救い出し、特殊部隊が火炎放射器で生物を攻撃した。一方、ゴジラは豊後水道に現れ、原発を狙う。しかし攻撃すれば核爆発を誘発しかねないため、国友や麻生たちは何も手出しできない。歯軋りする麻生の元に防衛庁から連絡が入り、スーパーXIIIを出撃させることが伝えられた。XIIIは自衛隊が開発した新兵器で、冷凍兵器を搭載している。
防衛庁特殊戦略作戦室室長の黒木翔が指揮官に任命され、スーパーXIIIを出撃させた。XIIIはゴジラに冷凍弾とカドミウム弾を撃ち込み、超低温レーザーで動きを止める。ただしゴジラの体温が異常に上昇しているため、効果は6時間しか保てないことを黒木は国友たちに告げる。6時間後、ゴジラは太平洋を東へ進み始める。しかしカドミウム弾の影響で、核分裂は制御され始めていた。一方、伊集院は実験を行い、冷凍兵器を使えば謎の生物の体内にあるミクロオキシゲンは無効化できることを確認した。
未希はリトルゴジラの存在を感知できないことから、能力の衰えを感じて落ち込んでいた。すると芽留は、超能力など早く消えてほしいと考えていることを軽い口調で明かす。普通の女性に戻って、恋も結婚もしたいのだと芽留は話す。御前崎にリトルゴジラが出現し、未希は「生きていてくれた」と喜んだ。ただしリトルは成長してゴジラと良く似た姿に変貌しており、麻生は「もはやリトルではない。ゴジラジュニアと呼ぶべきか」と口にした。
国友はゴジラの移動ルートを確認し、ジュニアに向かっていると推察した。ゴジラジュニアが北へ向かったため、未希は生まれ故郷であるベーリング海のアドノア島を目指していると悟った。芽留は国友たちに、アメリカのGサミットからの緊急報告を伝える。ゴジラの心臓部の温度を探査衛星が解析した結果、900度を超えているというのだ。それを聞いた健吉は、「ゴジラは内部から溶け出している。1200度を超えるとメルトダウンを起こし、地球に穴を開ける」と言う。その期限は、長くても1週間だと彼は語る。
臨海副都心では陸上自衛隊陸将の後藤が指揮する自衛隊が火炎攻撃から超低温レーザー攻撃に切り替え、謎の生物の出現に備えていた。そこへ生物の群れが現れ、自衛隊は一斉攻撃を浴びせた。すると生物は一ヶ所に集結し、巨大な1体に変貌して暴れ出した。自衛隊の攻撃は全く歯が立たず、その様子を見た伊集院は「あれだけの破壊力はミクロオキシゲンでは考えられません。オキシジェン・デストロイヤー。全てのものを破壊してしまう、とんでもない破壊生物。デストロイア」と口にした。
デストロイアの出現を知った健吉は、ゴジラと戦わせてメルトダウンを阻止する作戦を提案する。国友は難色を示すが、芽留は賛同した。健吉は「メルトダウンまで、あと3日。いや、24時間も無いかもしれない。我々に残された唯一の方法なんです」と訴えるが、国友は「どうやってゴジラをデストロイアに向かわせる?」と問題点を挙げる。すると芽留が「ジュニアをデストロイアに向かわせれば、ゴジラも必ず」と意見を述べた。
未希はジュニアを囮にすることに大反対するが、芽留は「世界に目を向けて。今は何としてもゴジラのメルトダウンを阻止することだけを考えようよ」と説き、「貴方が行かないなら、私一人だけのパワーでもジュニアの方向を変えてみる」と語る。未希は仕方なく、ジュニアの囮作戦に協力することにした。国友は健吉のアイデアを承諾し、麻生に都心から半径200キロ以内の避難命令を出すよう指示した。
未希と芽留はヘリコプターでゴジラジュニアの元へ飛び、超能力を使って進路を変える。ジュニアが東京に入ると、デストロイアは攻撃を仕掛ける。未希と芽留が見守る前で、ジュニアは反撃を開始した。戦いの最中、未希はゴジラの存在を感知した。ゴジラは東京湾に出現し、羽田方面へと向かう。ジュニアがデストロイアを倒した直後、ゴジラがやって来た。だが、デストロイアは死んでいなかった。炎の中から完全体に変身して復活したデストロイアは、ジュニアを易々と始末する…。

監督は大河原孝夫、特技監督は川北紘一、脚本は大森一樹、製作は田中友幸&富山省吾、アソシエイトプロデューサーは鈴木律子、撮影は関口芳則、美術は鈴木儀雄、録音は宮内一男、照明は望月英樹、編集は長田千鶴子、音楽監督は伊福部昭。
出演は辰巳琢郎、石野陽子、篠田三郎、河内桃子、小高恵美、林泰文、大沢さやか、高嶋政宏、中尾彬、神山繁、村田雄浩、斉藤暁、平泉成、藤巻潤、小野武彦、上田耕一、二瓶鮫一、荻原賢三、菅原大吉、中沢青六、青島健介、川崎博司、鳥木元博、桜井勝、ロナルド・ヘアー、ジョン・ギャロック、方洛奇、張紹興、岡田和子、小寺大介、秋元榮治郎、坂井義雄、名倉得二、笠原鉄郎、井上千恵子、ヒサクニヒコ、脇浜紀子、徳山順子、結城豊弘、井出勝己、小柳千夏、浮穴英知、白根将太、シェリー・スウェニー、三井三太郎、植村なおみ、菅野達也、佐藤太三夫、松本龍彦、木下徳和、島野雅夫、細野哲弘、安食剛、坂間健司、江連健司ら。


“ゴジラ”シリーズの第22作。
監督は『ゴジラVSモスラ』『ゴジラVSメカゴジラ』に続いて3度目の登板となる大河原孝夫。脚本は『ゴジラVSビオランテ』『ゴジラVSキングギドラ』で監督を務めた大森一樹が担当。
伊集院を辰巳琢郎、ゆかりを石野陽子、国友を篠田三郎、恵美子を河内桃子、未希を小高恵美、健吉を林泰文、芽留を大沢さやか、黒木を高嶋政宏、麻生を中尾彬、後藤を神山繁が演じている。
小高恵美は『ゴジラVSビオランテ』から6作連続で、三希を演じている。中尾彬は『ゴジラVSメカゴジラ』から3作連続で、麻生を演じている。河内桃子は第1作『ゴジラ』以来の復帰で、その時と同じキャラクターを演じている。
黒木は『ゴジラvsビオランテ』で高嶋政伸が演じていたキャラクターで、今回も彼にオファーが行ったがスケジュールの都合が付かず、兄の政宏が演じることになった。国友は当初、細川俊之が演じていたが、急病で途中降板し、篠田三郎が代役を務めた。

今回の作品がシリーズ第1作『ゴジラ』へのオマージュを捧げていることは、誰の目にも明らかだ。
ただ、せっかく登場させた山根恵美子が前半のわずかな時間だけで御役御免となるのは、ちょっと勿体無い。
それと、オマージュを捧げるのであれば、山根家に眼帯をしている芹沢博士の顔写真が飾られているのは納得しかねる。芹沢は片目を失ったことをコンプレックスに感じていたはずだ。
それと、山根博士と芹沢の写真が飾られている一方、1作目で恵美子の恋人だった尾形の存在が完全に無視されているのは、どうなのかと。

これまでゴジラは、なぜか日本ばかりを襲撃して来た。それが続くことで、もはや「なぜ日本ばかりを狙うのか」というツッコミを入れること自体が野暮な行為になってしまい、それは暗黙のルールとして確立された。
ところが今回、ゴジラが最初に襲うのは香港だ。
一応は「日本を目指すルート上に香港があったから街を破壊した」という設定になっているが、それでも日本以外の都市を襲うのはダメだわ。
それをやったら、「じゃあ今まで日本しか襲わなかったのは何なのか」という部分を蒸し返すことになる。
東宝が自分たちで長年に渡って構築してきた暗黙のルールなんだから、そこはキッチリと守ろうよ。

前作に引き続いて、編集や構成が粗い。
ゆかりが伊集院に皮肉を言った番組の出演を終え、恵美子から電話があったことを知らされた後、シーンが切り替わると、健吉が未希に「リトルゴジラは死んだのではないか」と意見している様子が写る。そのシーンを挟んで、ゆかりが恵美子の家を訪れ、ミクロオキシゲンへの不安を吐露されるシーンになる。
でも、ゆかりが恵美子から電話があったことを知らされたら、その次に2人が会って話すシーンへ移った方がいい。健吉と未希のシーンは挟まない方がいい。それは後回しにするか、いっそ無くても構わない。
そこに限らず、あるシーンと続きに当たる繋がるシーンを直接的に結ばず、別のシーンを挟むという構成が多いのだが、それが物語のテンポを悪化させている印象を受ける。

未希が重要メンバーだと知ってコロッと態度を変えた健吉だが、それ以降、彼女に対してアプローチするわけでもなく、質問攻めにするわけでもない。
あれほど態度を大きく変えるぐらいだから、未希に恋愛感情を抱いているか、研究対象として強い興味があるか、どっちかでしょうに。
それにしては、Gサミットに参加してからの彼女に対する接し方は、ものすごく淡白だぞ。
もっと分かりやすく、そして積極的に行動すべきでしょうに。

健吉と芽留は、たぶん「いかにも現代的にドライな考え方をする若者たち」というキャラクター造形にしてあるんだろう。
ただ、ゴジラやリトルゴジラへの思い入れが強い未希と対照的なキャラとしての位置付けがある芽留はともかく、健吉に関しては、ただの疎ましい奴でしかない。主要キャラの1人としては、あまりにも軽薄すぎる。
そもそも、ただの留年学生がGサミットの重要メンバーとして普通に関与しているのが引っ掛かる。国友が評価したとしても、他の連中も揃って健吉を受け入れるのは不可解だ。激しく反発したり、冷淡な対応を取ったり、懐疑的な態度を示したりする奴がいてもいいんじゃないかと。
しかもオブザーバー参加のはずなのに、みんなが健吉の意見を全面的に信用し、彼が主導的な立場になってるんだぜ。

健吉が「地球を救うためなら、多くの生物を滅ぼしてでもオキシジェン・デストロイヤーを使用すべき」と主張しても、ものすごく無責任で軽々しい意見にしか聞こえない。
それが「責任ある立場にいる者が、苦渋の末に出した答え」ではないからだ。
だから重みが無いのだ。
そのため、「地球を救うためにはオキシジェン・デストロイヤーの使用も止む無し」と頭では分かっていても、健吉の意見に賛同したいとは思えない。どうしても拒絶反応が出てしまう。

物理化学の専門家である伊集院に「地質学にも関心が深い」という設定を用意し、土の生物反応を調べたり水族館の現象を起こした微生物の説明をさせたりしているが、ちょっと無理があるように思えるなあ。
それと、彼のミクロオキシゲンに関する考えがボンヤリしているように感じられる。
ゆかりからオキシジェン・デストロイヤーへの転用について訊かれた時には「ミクロオキシゲンの先に、それがあることは予想しています」と堂々と認めており、「芹沢博士の意思に逆らってまで作るとは言っていない」とは言うものの、「兵器利用されなきゃ別に構わないでしょ」ぐらいの考えに見える。そこが、ちょっとボンヤリに感じるのだ。
もっと徹底して、「兵器利用の恐れはあるが、それでも科学は先に進むべきだ」という強い信念を抱いており、ゆかりから指摘された時も「芹沢博士の意思に逆らってまで作るとは言っていない」という釈明なんぞ入れずに堂々と持論を主張するぐらいのキャラにしておいても良かったんじゃないかと。
で、その上で、オキシジェン・デストロイヤーへの転用について本格的に研究した結果、その恐ろしさを知って考えが変化する、という流れにした方が、その変遷がクッキリするんじゃないかと。

伊集院が「あれほど僕がオキシジェン・デストロイヤーを作るんじゃないかと心配していた君が、今度は僕にそれを作れと」と言うように、ゆかりが健吉に協力して伊集院とコンタクトを取るのが、あまりにも簡単すぎる。
一応、悩んだような表情は浮かべているが、すぐに研究所へ健吉を連れて行っているからね。
ってことは、彼の考えに賛同したってことになるわけで。
そこはキャラの扱いが雑だと感じる。そういうトコは、もうちょっと丁寧に心理描写をやろうよ。

伊集院が「この海底の地層を徹底的に調べて、改めてオキシジェン・デストロイヤーの恐ろしさを知りました」と言って協力を断るのも、なんかキャラの動かし方として雑に思える。そもそも、土を調べて分かったのは「生物反応があった」ということでしょ。
色々と分析して、オキシジェン・デストロイヤーの恐ろしさに気付いたような様子は無かった。
それと、そこでオキシジェン・デストロイヤーの作成に難色を示すぐらいなら、そもそも「あと一歩で転用できると知りながらミクロオキシゲンの研究を平気で続ける伊集院。そんな彼を批判し、兵器への転用を不安視するゆかり」という図式を変えた方がいい。
むしろ、「その先にオキシジェン・デストロイヤーがあると気付いて悩む伊集院。それを知らず、最初は彼を持ち上げるゆかり」という初期設定にでもした方が、流れとしてはスムーズだ。

臨海副都心でデストロイアが暴れた時、なぜか1匹だけが都合良く外に出て来て、逃げ遅れたゆかりを追い回す。
ゆかりがパトカーに身を隠すと、特殊部隊や警官は一撃で始末していたデストロイアが、なぜか今回だけは時間を掛けて彼女を追い詰める。
目の前にいるんだから、その気になれば簡単に始末できるのに、パトカーを揺らしたり溶かしたりして甚振る。
そこは今までのシリーズでも洋画のネタを色々と持ち込んで来た大森一樹の悪癖が出ていて、どう見ても『エイリアン2』をやりたかったんだろう。

スーパーXIIIは冷凍兵器でゴジラの動きを止めるが、6時間しか保てないことを黒木は告げる。
で、そこから「その6時間で国友たちが対策を練る」という流れになるのかと思ったら、シーンが切り替わると6時間が経過している。
だったら、その6時間は無意味じゃねえか。
その後、今度はゴジラジュニアが御前崎の浜辺に現れるのだが、幾らゴジラより遥かにサイズが小さいとは言え、突如として浜辺に出現してビーチにいる人々を驚かせるってのは不可解だわ。その前に、浜辺へ近付いている動きを誰もキャッチできなかったのか。

とにかく話を詰め込み過ぎている。
今回は「ゴジラが核爆発を起こしそうになっている」ということだし、何しろ「ゴジラの最期」という作品なんだから、「対ゴジラ」という部分に集中すれば良かったのだ。
ところが、ゴジラが沖縄南方に現れたんだから早急に対策を取るべきなのに、それに対するGサミットの動きは見られない。
そして、そこに意識を向けるべき未希は、リトルゴジラの捜索に没頭している。
デストロイアが臨海副都心に出現するので、伊集院やゆかりはそっちに意識を向けなきゃいけなくなる。

国友や麻生たちはゴジラ対策に集中しており、伊集院やゆかりたちはデストロイアの方に意識を向けている。その2つの話が、バラバラのままで進行していく。
ゴジラがデストロイアを標的にしているとか、逆にデストロイアがゴジラを狙っているとか、そういう関係性が何も用意されていないので、1時間を過ぎて「デストロイアでゴジラのメルトダウンを防ごう」という作戦が提示されるまでは、全く交わることが無いのだ。
そういう構成にしている影響で、中盤以降、ゆかりの存在意義は皆無になる。
ただし、ゆかりに限らず、本作品の登場人物は総じて中身が薄いし魅力が無い。
前述のように、健吉が未希に興味を持っているという設定は全く使われない。伊集院とゆかりの関係も全く膨らまない。伊集院には科学者としての苦悩や葛藤も無い。『ゴジラVSビオランテ』の時はキャラが立っていた黒木も、今回は全く中身の無いデクノボー状態だ。

(観賞日:2014年6月29日)

 

*ポンコツ映画愛護協会