『ゴジラ2000 MILLENNIUM』:1999、日本

北海道根室の納沙布岬。ゴジラ予知ネット(GPN)を主宰する篠田雄二と娘のイオ、そして取材で同行する科学雑誌記者・一ノ瀬由紀の3人は、海から上陸するゴジラを目撃する。ゴジラは発電所を破壊し、街は炎に包まれた。何とか逃げ延びた篠田は、ゴジラが人間の作り出すエネルギーを憎んでいるのだと考える。
一方、茨城県鹿島灘沖の日本海溝では、巨大な岩塊が発見された。危機管理情報局(CCI)の科学者・宮坂四郎は、岩塊が6000万年以上前の隕石であり、地球外の鉱物で出来ていることを突き止める。その岩塊は、自力で海上へ浮上した。
ゴジラが東海村へ上陸した。CCI局長・片桐光男の指示によリ、自衛隊は新兵器フルメタルミサイルを使用してゴジラを攻撃する。その頃、岩塊がUFOの姿を現し、鹿島灘沖から飛び立っていた。東海村に飛来したUFOは、波動攻撃でゴジラの体を吹き飛ばす。だが、UFOもゴジラの攻撃によって墜落してしまった。
篠田と宮坂は、ゴジラ細胞とUFOの調査を開始した。篠田は、ゴジラ細胞の中に復元能力を持つ物質を発見し、オルガナイザーG1と名付けた。そんな中、UFOが再び飛行し、新宿副都心に出現する。UFOはコンピューター網を占拠し、ゴジラに関するデータを収集する。さらにUFOは、地球上の大気を無酸素化しようとする。
篠田とイオは、新宿のシティ・タワーに残る由紀を助けるため、現場に駆け付ける。篠田は由紀とイオを非難させ、UFOの収集しているデータをコンピューターにコピーする。一方、片桐は新型爆弾ブラスト・ボムを使うが、UFOにダメージを与えられない。
新宿に現れたゴジラを、UFOから伸びた触手が襲撃する。UFOを操る宇宙人ミレニアンは、オルガナイザーG1を吸い取って、失われていた元の姿を取り戻そうとする。だが、細胞の暴走により、ミレニアンは宇宙怪獣オルガに変貌してしまう…。

監督は大河原孝夫、脚本は柏原寛司&三村渉、製作は富山省吾、アソシエイトプロデューサーは鈴木律子、撮影は加藤雄大、編集は奥原好幸、録音は斉藤禎一、照明は栗木原毅、美術は清水剛、特殊技術は鈴木健二、ビジュアルエフェクトスーパーバイザーは大屋哲男&岸本義幸&小野寺浩、音楽は服部隆之、音楽プロデューサーは北原京子、GODZILLAテーマ曲は伊福部昭。
出演は村田雅浩、西田尚美、阿部寛、佐野史郎、鈴木麻由、中原丈雄、大林丈史、並樹史朗、木村栄、ベンガル、なぎら健壱、石井愃一、中村方隆、篠塚勝、榊原利彦、近藤芳正、西村雅彦、上田耕一、二瓶鮫一、新納敏正、木澤雅博、大森嘉之、中沢青六、大久保運、児玉徹、本田大輔、阿知波悟美、でんでん、有薗芳記、村松利史、温水洋一、安斎肇、吉田照美、小俣雅子、笠井信輔、こはたあつこ、松重豊、デンジャラス、喜多川務、伊藤慎ら。


シリーズ第23弾。
篠田を村田雅浩、由紀を西田尚美、片桐を阿部寛、宮坂を佐野史郎由が演じている。監督は『ゴジラVSモスラ』『ゴジラVSデストロイア』の大河原孝夫。ミレニアムを迎えて1発目のゴジラということで、“新生ゴジラ”を意識しているらしい。

ハリウッド版ゴジラの製作が決まった時、日本でのシリーズは一旦休止という形を取った。ところが、ハリウッド版ゴジラが散々な出来映えだったことで、「これなら日本でもシリーズを続けられる」ということで、シリーズ続行が決定したという次第。
というわけで、ハリウッド版ゴジラを受ける形で“ゴジラ”シリーズを復活させた最初の作品が、この映画である。
そして見事なまでに、ハリウッド版を超える作品が出来上がった。
そう、これはハリウッド版を遥かに超越した、デタラメな作品に仕上がっているのだ。

序盤から、いきなりゴジラが姿を現す。勿体付けるとか、焦らすとか、そんな面倒なことはしない。あけすけな態度である。「どうせゴジラなんて見慣れてるから、引っ張っても意味が無いでしょ」とでも言わんばかりにの、潔い開き直りである。
どれだけゴジラが暴れても、恐怖の対象にならない。ゴジラに追われた人々がカメラに向かって逃げ惑っても、「ああ、いつものパターンね」と思うだけ。ゴジラが「人を殺した」と明確に示されるのは、たった1人だけ。ゴジラは“お子様のマスコット”なので、あまり残酷に人を殺すシーンは見せられないという配慮なのだろう。

ゴジラは身長55メートルという設定らしいが、シーンによって大きさを変化させるという柔軟な姿勢を見せる。さらに、放射能汚染の脅威を持っているはずのゴジラだが、この作品では全く見せず、そういう人間に優しい所もアピールしている。
由紀は科学雑誌記者のはずだが、記者らしい行動はほとんど無い。巨大な岩塊が猛スピードで水面に浮上したのに、大津波が起きて近くにいた船が転覆するようなことは無い。CCIは、根室にゴジラが上陸したのに全く気にせず、日本海溝で岩塊を調査している。片桐は局長なのに、わざわざ現場まで来て指揮を執る。

どういう根拠なのかは分からないが、復元能力を持つ物質はオルガナイザーG1と名付けられる。CCIはコンピュータシステムをブロックしようとするが、エイリアンのハッキングをどうやったらブロックできるのかは良く分からない。
なぜかエイリアンは漢字のメッセージを発信する。で、数千万年も海底にいたのに、たった千年の王国が目的らしい。篠田は命を危険にさらしてまでファイルをダウンロードしていたが、そんな行動は全く役に立たないままで映画は終わっている。

篠田がゴジラ予知ネットを主宰していて車でゴジラを探し、そんで逃げるというのは、ちょっと『ツイスター』を感じさせる設定だ。で、『ツイスター』と同じく、ゴジラ予知ネット主宰というのは、ゴジラと関連付けるためだけの設定。全国のネットワークが協力して何かゴジラに対する行動を起こすとか、そういった話の広がりは無い。
篠田は「ゴジラを生かして役立てよう」という考え方の持ち主で、ってことは人間とゴジラの共存がテーマとして描かれるのかと思いきや、そんなことは全く描かれない。どの登場人物も、その場その場で適当なことを言っているだけで、あまり深く考えていないようだ。

話は完全に知能停止状態となっており、さっき示されたことは次の瞬間に忘れ去られる。一方で篠田は異常に知能が優れているらしく、わずなヒントから明確な推理でズバズバと謎を解き明かす。さすがは天才科学者である。

前だけを向いて突き進む。
後ろは振り返らない。
過ぎたことは気にしない。
伏線?過程?そんなの知らない。
ブルース・リーは「考えるな、感じろ」と言ったが、この映画は上を行く。
「考えるな、感じるな」というメッセージを発信しているのだ。


第23回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【誰も要求していなかったリメイク・続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会