『ゴジラVSモスラ』:1992、日本

NASA宇宙監視センターが、大きな隕石を観測した。隕石は小笠原海溝に落ち、インドネシア南方に大型の台風が発生した。インファント島では大豪雨の影響で山崩れが発生し、土の中に埋まっていたモスラの卵が露出した。1ヶ月後、トレジャーハンターの藤戸拓也は、タイにあるアユタヤの遺跡に忍び込んだ。拓也は秘宝のガネーシャ像を発見し、盗み出そうとする。遺跡が崩れ始めたので、彼は慌てて脱出する。無事に外へ出た拓也だが、地元警官隊に包囲されてしまった。
留置所に入れられた拓也の元に、別れた妻で東都大学環境情報センター所員の手塚雅子、丸友観光社長秘書の安東健二、内閣安全保障室長の土橋竜三がやって来た。土橋は隕石落下による地球環境への影響を調査したことを語り、探査衛星から送られてきた写真を見せる。その写真には、巨大な卵らしき物体が写っていた。土橋は拓也に、それがインドネシアの某島であること、政府の援助で丸友観光が開発していることを語った。そして彼は、発掘調査と引き換えに釈放することを持ち掛けた。
東都大学環境情報センター主任の深沢重樹は国家環境計画局を訪れ、局長の南野丈二や土橋と会った。Gルームに所属する三枝未希は、土橋から「奴は見つかったか?」と問われて「隕石が激突した海底は未だに海流が大きく動いていて、マーキングしていたゴジラも消えたままです。隕石は、あの巨大生物までも起こしてしまったようです」と答えた。拓也、雅子、安東は船に乗り、目的の島へ向かっていた。拓也は2人から、目的地がインファント島であることを聞かされた。
インファント島に上陸した拓也たちは、ジャングルを進む。吊り橋を渡っている途中で綱が切れたため、3人は川へ飛び込んだ。ボートで上流へ向かった3人は、滝の近くでキャンプした。雅子は拓也に、娘のみどりが書いた手紙や写真を見せた。翌朝、拓也は滝の奥に洞窟を発見し、雅子と安東を連れて中に入った。すると洞窟には、古代の壁画が描かれており、その中には二匹の蛾のような生物が向き合っている絵もあった。
天井の飾り窓から太陽の光が差し込み、さらに奥へと洞窟が続いていることが判明した。3人が奥へ進むと、洞窟の外へ出た。そこから足を進めた先に、巨大な卵らしき物体があった。それが何なのか分からずにいる3人は、「モスラの卵です」という声を耳にした。声のする方向に目をやると、小さな女性2人の姿があった。彼女たちは「私たちはコスモスです。皆さんが、この地球に姿を現す前から住んでいた者です」と自己紹介した。
コスモスの2人は、「1万2千年前、私たちはモスラを地球の守り神と崇め、高度の文明社会を作っていました。でも一部の科学者が気候を自由に操る装置を作り出して、地球生命の怒りを買ったのです。地球も、それ自体、生きている生命体です。そして地球生命は、黒いモスラを出現させました。バトラです。破壊本能だけのバトルモスラ。地球生命を脅かす者を徹底的に攻撃、破壊します。モスラは私たちのためにバトラと戦い、北の氷の海へ沈めました。でもバトラも気象装置を破壊しました。そのために大洪水が起こり、私たちの大陸は海へ沈みました」と語った。
雅子が「今だって私たちは充分に地球生命を脅かしてるわ」と口にすると、コスモスは「そう思います。そして、あの隕石です。大豪雨、山崩れ。隕石も森林破壊も無ければ、モスラはまだ土の中で眠っているはずでした。私たちが恐れているのは、バトラもまたどこかで目を覚ましているのではないかということです」と述べた。その頃、国家環境計画局では、深沢や南野たちが海中を進む巨大な生物を観測していた。だが、それが何なのか、彼らには見当も付かなかった。
丸友観光は富士山麓でゴルフコースの建設計画を進めており、地元では激しい抗議運動が起きていた。視察に赴いた社長の友兼剛志は、ゴルフ場開発プロジェクトの主任である大前実に「インドネシアの方は未だに再開発の目途が立たない。富士の方まで遅れたら、私の顔が丸潰れだ」と苛立ちをぶつけた。安東からの電話でモスラの卵について聞かされた彼は、「政府の方には私が話を付ける。どんなことがあっても持って帰るんだ」と命じた。
安東は拓也と雅子に社長の命令を話し、「卵を保存することを考えれば、日本の方がより良い環境を作れるでしょう」と告げる。コスモスは3人を信用し、同行することにした。深沢たちは雅子から送られてきた報告書を読み、能登半島へ向かう海中の生物がバトラだと推測した。撃破命令を受けた自衛隊の戦闘機が出撃するが、ミサイル攻撃は全く効果が無かった。丸友観光はタグボートをインファント島へ差し向け、モスラの卵を曳航した。
地中へ姿を消していたバトラは、名古屋に出現した。バトラは戦車隊の攻撃を受けても全くダメージを受けずに暴れ、また地中へと消えた。タグボートの前にはゴジラが現れ、拓也はモスラの卵を切り離そうとする。安東が阻止しようとしたため、2人は格闘になった。安東を殴り倒した拓也がロープを外した直後、卵が割れてモスラの幼虫が孵化した。ゴジラとモスラが戦っていると、そこにバトラがやって来た。ゴジラとバトラが海中で激しく戦っている間に、モスラはインファント島へと戻って行った。海底で火山が噴火し、ゴジラとバトラはマグマの中へと姿を消した。
拓也、雅子、安東の3人は、マニラのホテルで一泊する。翌朝、拓也と雅子が目を覚ますと、安東はコスモスを連れて姿を消していた。友兼は安東から持ち帰ったコスモスを見せられ、丸友観光のイメージ・キャラクターにしようと目論んだ。拓也と雅子が帰国すると、空港には雅子の姉で深沢の妻・真由美がみどりを連れて出迎えに来ていた。深沢も一緒にいたが、彼は富士山の火山観測所にヘリコプターで向かうために空港へ来ていたのだった。拓也はみどりと顔を合わせる前に、空港から姿を消した。
コスモスは歌でモスラを呼び寄せ、丸友観光の本社から姿を消した。モスラが海を泳いで日本へ向かう様子を、南野や土橋たちが観測する。拓也はクローン生物研究所の所員と接触し、コスモスを百万ドルで売る取り引きを持ち掛けた。モスラの上陸を止めるために自衛隊の戦闘機が出撃するが、まるで効果は無かった。モスラは日本に上陸し、街を破壊しながら歩みを進めた。未希は雅子とみどりに同行して車に乗り、超能力でコスモスが赤坂のホテルにいることを突き止めた。
雅子とみどりがホテルに到着すると、拓也がコスモスの入ったバスケットを持って出発しようとしていた。ミドリはコスモスを雅子に渡すよう頼み、そこへ未希が駆け付けた。モスラは赤坂に入り、ホテルを攻撃した。みどりはコスモスに、「もうモスラさんに暴れないよう言って。パパにはもう悪いことしないよう良く言って聞かせるから」と頼んだ。コスモスはみどりに、モスラが見える場所へ自分たちを連れて行くよう促した。
モスラはコスモスの指示を聞き入れ、日本を去るために方向転換する。だが、そんな経緯を知らない戦車隊の隊長は、一斉攻撃を命じた。しばらく戦車隊の砲撃が続いた後、土橋の連絡を受けた隊長が中止命令を出した。モスラは国会議事堂へ向かい、そこで動きを止めた。同じ頃、深沢は2時間でマグマの圧力が急上昇していることを知り、急いで避難することにした。コスモスはみどりから「モスラさん、死んじゃうの?」と問われ、「死ぬのじゃありません。幼虫の時間が終わっただけです」と答えた。
モスラは口から糸を放出し、繭を作り始めた。富士山は激しく噴火し、マグマの中からゴジラが出現した。ヘリからゴジラの様子を確認した深沢は、同乗している観測員に「フィリピン海溝の裂け目から地中奥深くのマントルに入り、マントルの流れを通って富士山のマグマに来たんだろう」という推測を述べた。モスラは成虫へと変態し、空へと舞い上がった。コスモスは拓也や雅子たちに、「モスラはもう一度バトラと戦いに向かいます」と言う。その頃、バトラも海で成虫へと変態し、空を飛んで日本へ向かっていた…。

監督は大河原孝夫、特技監督は川北紘一、脚本は大森一樹、製作は田中友幸、プロデューサーは富山省吾、撮影は岸本正広、美術は酒井賢、録音は斉藤禎一、照明は望月英樹、編集は米田美保、音楽監督は伊福部昭。
主題歌「モスラの歌」詞:田中友幸&関沢新一、本多猪四郎、曲:古関裕而、唄:今村恵子&大沢さやか。
挿入歌「聖なる泉」詞・曲:伊福部昭、唄:今村恵子&大沢さやか。
挿入歌「マハラ モスラ」詞・曲:伊福部昭、唄:今村恵子&大沢さやか。
出演は別所哲也、小林聡美、宝田明、篠田三郎、村田雄浩、大竹まこと、小林昭二、小高恵美、今村恵子、大沢さやか、田中好子、米澤史織、大和田伸也、上田耕一、黒部進、荻原賢三、辰馬伸、渡辺哲、沢村裕史、ジェームズ ヌージェント、秋吉信人、松藤将弘、武田俊彦、山口あらた、佐藤太三夫、一見直樹、根津茂尚、後藤和生、山口勝義、石川亜由美、ジュン オルティス、アンディ スミス、ジョシュア リバーマン、コービー ディドゥル、ジェミー コットン、ロバート ザーチャー他。


“ゴジラ”シリーズの第19作。
第17作『ゴジラVSビオランテ』と第18作『ゴジラVSキングギドラ』で監督&脚本を務めた大森一樹は、今回は脚本のみを担当。監督は前年の『超少女REIKO』に続いて2作目となる大河原孝夫に交代している。
拓也を別所哲也、雅子を小林聡美、南野を宝田明、深沢を篠田三郎、安東を村田雄浩、友兼を大竹まこと、土橋を小林昭二、未希を小高恵美、コスモスを今村恵子&大沢さやか、真由美を田中好子、みどりを米澤史織、船長を大和田伸也、航空幕僚長を黒部進、陸上幕僚長を荻原賢三、海上幕僚長を辰馬伸、戦車隊隊長を渡辺哲が演じている。
未希役の小高恵美は、第17作から3作連続での登場。小林昭二、黒部進、荻原賢三、辰馬伸は、前作と同じ役での連続出演となる。

NASA宇宙監視センターが隕石落下だけでなく台風発生まで観測してしまうことに少々の違和感を覚えるプレタイトルとオープニング・クレジットの後、拓也の登場シーンはモロに「インディアナ・ジョーンズ」シリーズの模倣。オマージュでもパロディーでもなく、ただ真似をしているだけ。
前作でも『ターミネーター』や『エイリアン2』などのハリウッド映画からネタを拝借していたが、そういうのを臆面も無くやってしまうセンスは、見ているこっちが恥ずかしくなる。
これが低予算のB級映画とか、あるいはコメディー映画とか、そういうことならともかく、ゴジラ映画でそれをやるかね。
しかも、その「インディアナ・ジョーンズ」を模倣したシーンのアクションは、ゴジラともモスラともバトラとも全く関係が無いんだぜ。

深沢が国家環境計画局へ来た時、南野は「二酸化炭素上昇による温暖化、オゾン層の破壊。ただでさえ地球が危ない方向だというのに、人間は平気で森林を伐採している」と語っているが、見事なぐらいに露骨な社会的メッセージだ。
それだけに留まらず、その後も登場人物の口を使って、「森林が守っていた島を人間がこうしてしまったのよ」だの、「確かに隕石が引き金になった。しかし危険な弾を込めていたのは、むしろ私たち人間なんだ」だのと、環境破壊を批判するメッセージが発信される。
それだけでも疎ましいのだが、もっと問題なのは、それだけ執拗にメッセージを発信しておきながら、ちゃんと消化せず中途半端に終わっているってことだ。

拓也は土橋からインファント島の発掘調査を依頼されるのだが、なぜ日本政府がタイ警察に逮捕されるような男を使おうとするのか良く分からない。
正式な調査じゃないから真っ当な人物を使えないとか、そういう事情があるわけでもない。拓也しか調査できないような危険な場所というわけでもない(そもそも拓也が調査員としてどれほど優秀なのかも分からんし)。
ちゃんと調査団を組織して島へ行けばいいだけじゃないかと思ってしまう。たった3人って、調査団として少ないと思うし。
しかも安東は調査の専門家じゃないし、スーツ姿なのもナメてんのかと思っちゃうし。

インファント島のジャングルを進んだ拓也たちは、森林が伐採されて山崩れが起きている場所に出る。
でも、周囲はジャングルが広がっている中で、その山だけ森林が伐採されているというのは、ものすごく不自然だぞ。
それに、禿山にしてしまうぐらい森林を伐採するからには、切った木を運び出すための設備も必要だし、人力だけでなく作業用の機械を運び込む必要もあるだろう。
でも、そういった設備や機械が使われていた形跡が全く無い。周囲にジャングルが広がる中で、ポツンと禿山がある。
まるで開発の匂いがしないのだ。

そもそも、ジャングルの奥地に入って、そこの山だけ森林を全て伐採して、何を作ろうとしているんだよ。
どうやらリゾート開発の計画らしいけど、ジャングルの奥地まで進まなきゃいけないような場所にリゾート施設を作っても、誰も来ないだろ。
リゾート施設を作るなら、そこへ向かうまでのルートを確保しなきゃいけないはずなのに、そういう部分に人の手が入っている気配が全く無いんだよな。どうも事前調査さえ行われていないような感じなのよ。
っていうかさ、そもそもインファント島って日本の領土じゃないでしょ。
それなのに日本政府の援助で丸友観光がリゾート開発を進めているってのは、どういうことなのかと。

コスモスが「私たちは皆さんが地球に姿を現す前から住んでいた」だの、「1万2千年前にモスラを地球の守り神と崇めて高度の文明社会を作っていた」だの「一部の科学者が気候を自由に操る装置を作り出して地球生命の怒りを買った」だのと説明すると、拓也たちは何の疑いも持たず、最初から全てを受け入れる。
すげえ信じやすい連中なんだな。会ったばかりの連中にそこまで突飛なことを言われても、すぐに受け入れるってのは難しそうな気がするけど。
しかも、ただ単に「全てを信じ、全てを受け入れる」というだけでなく、どうやらモスラについて最初から理解しているような雰囲気があるんだよな。
もしも知らなかったら、「私たちはモスラを地球の守り神と崇め」とコスモスが言った時点で、「モスラとは何ぞや」という部分に疑問を抱くはずだけど、何の質問もしていないのよね。
バトラにしても、まずモスラを理解できていなかったら「バトラとはバトルモスラである」という説明も意味不明のはずだし。

卵からモスラの幼虫が孵化した時も、「あれがモスラか」という反応は無くて、やっぱり最初からモスラを理解しているとしか思えない。
もしも壁画の絵がモスラだという理解だったとしても、壁画に描かれていたのは成虫だから、幼虫とはイメージが違うわけだから。
でも、そのように「拓也たちはモスラを知っている」という風にしか見えないのは、大いに疑問が残る。
1984年に復活した時、第1作以外は無かったことにされているはずだからだ。つまり、まだモスラは一度も出現していないはずなのだ。
だから、まだ一度も見たことの無いはずのモスラを、拓也たちが理解しているというのは不可解だ。

安東から電話を受けた友兼は、そんなにモスラの卵に対する関心が強くなさそうなので、なぜ必ず持ち帰るように命じるのか、そこに引っ掛かってしまう。
そもそも友兼は、モスラの卵が何なのかも良く分かっていないはずだし。
しかも、そこで「必ず持ち帰れ」と命令しているってことは、友兼も「それがモスラの卵である」ということを信じた上、しかもモスラが何なのか分かっているってことになるぞ。
それは不可解だわ。

コスモスは丸友観光本社に連れて行かれた後、歌でモスラを呼び寄せる(ようにしか見えない)。
モスラを呼ぶってことは、日本に上陸して街を破壊するということだ。それはコスモスだって最初から分かっているはず。
で、それを分かった上でモスラを呼ぶんだから、「自分たちが日本からインファント島へ戻るためなら、多くの犠牲が出ても構わない」と考えていると解釈せざるを得ない。
優しくて穏やかな連中に見えたけど、実は残酷な一面もあるのね。
っていうか、そんなキャラでホントにいいのかよ。ダメだろ。

ダメと言えば、拓也を「コスモスを金で売りとばそうとする」というキャラに設定しているのもダメだろ。
娘がママに返すよう頼んだり、コスモスに「もうモスラさんに暴れないよう言って」と頼んだりして、雅子に説教されて、ようやく売り渡すのを中止するけど、まるで売り飛ばそうと目論んだ時に生じたマイナス査定をリカバリーできていないぞ。
そこで行動を改めたからって、雅子が彼とヨリを戻すのもバカじゃねえかと思っちゃうし。
いずれ拓也は、またクソみたいな行動を必ず取るぞ。そういう奴にしか見えない。

バトラの「作り物感」が強いのは、ものすごく萎えるわ。顔のデザインが、あまりにも人工的なんだよな。
それと、顔付きは怖いのに、全体のフォルムや動きはモッサリしていて、なんかカッコ悪いんだよな。成虫に変態して少しはマシになるけど、やっぱり作り物感は強い。
ただ、作り物感に関しては、モスラの方も相当なんだよな。幼虫の時も、成虫になってからも、その質感が酷いわ。
空を飛ぶ時の操演も含めて、下手すると1961年版の『モスラ』よりレベルが落ちてるんじゃないかと思っちゃうぞ。
モスラが光線を発射しまくるのってのも、コレジャナイ感が強いし。

ゴジラとモスラが戦っているところへバトラが来て、バトラがゴジラと戦い始めると、モスラはさっさとインファント島へ戻っていく。
富士山からゴジラが現れた後、モスラが成虫に変態して飛び立つので「これからモスラはゴジラと戦いに行くんだな」と思っていたら、コスモスが「モスラはもう一度バトラと戦いに向かいます」と言い出し、ゴジラの存在は無視される。
「三つ巴の怪獣バトル」という図式は、上手く描写できているとは言い難い。

そもそも今回の映画って、ゴジラの存在意義が希薄なんだよな。
「バトラが地球生命を脅かす人間を滅ぼそうとして、モスラは人間を守るために戦う」という内容にした方が、対決の図式が分かりやすいし、スッキリするのだ。
そこへゴジラが絡んで来ると、本来ならモスラと戦うべきバトラが、ゴジラと戦うことになってしまう。
で、その2体が戦うと、モスラは出て来る意味が無い。ゴジラとモスラが戦うと、今度はバトラの登場する意味が無くなってしまう。

終盤、「ゴジラを倒すためにモスラとバトラが結託する」という展開になって、ようやく3体が登場した意味が生じる。
ゴジラは言ってみれば、「敵対していたモスラとバトラが同じ目的のために協力する」という流れを作るために利用されたようなものだ。
でも、「地球生命を脅かすような出来事が発生し、それを阻止するためにバトラが行動する。
一方、モスラも人間を守ろうとするので、目的が一致した2体が団結する」ということにすれば、ゴジラを登場させなくても成立するんだよね。

それに、「環境破壊を批判するテーマが中途半端で終わっている」と前述したけど、それは「バトラがモスラと結託してゴジラと戦う」という展開になることも大きく影響しているのよ。
本来なら、モスラとバトラの戦いを通して、環境破壊に対するテーマを表現していくべきなのだ。
ところが、バトラが「地球生命を脅かす存在は全て排除する」というところから宗旨替えしてしまい、「ゴジラを倒せばOK」ということになっちゃうので、「まだ地球生命を脅かす存在は一杯あるけど、いいのかよ」ってことになってしまうのだ。
そして、「ゴジラこそが環境破壊を生み出す大きな存在」という間違った答えが生じてしまうことに繋がるのだ。

(観賞日:2014年6月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会