『ゴジラ対メカゴジラ』:1974、日本

沖縄海洋博の建築技師である清水敬介と弟の正彦は、安豆味城跡で安豆味王族の末裔・国頭那美が披露している伝統歌謡を見物していた。突然、那美の脳裏に啓示の映像が飛び込み、彼女は倒れ込んだ。祖父の天願が駆け付けると、那美は「怪獣が町を焼き払って、逃げる人々を踏み潰してるの」と語った。玉泉洞を訪れた正彦は、金属のかけらを見つけた。建設現場へ赴いた敬介は、不思議な洞穴が発見されたことを作業員たちから知らされた。
洞穴を調査するため、首里大学の考古学教室から金城冴子がやって来た。洞穴には多くの壁画が描かれており、その中には2頭の怪獣の絵もあった。怪獣の1頭は、洞穴内に鎮座している置物と似ていた。冴子は敬介に、安豆味王族の守り神であるキングシーサーだろうと話す。かつて本土の人間がが安豆味王族を滅ぼそうとした時、キングシーサーが現れて救ったという言い伝えが残されているのだという。
後日、休暇で東京へ戻ることにした敬介は、飛行機の中で冴子と再会した。彼女は置物を調べてもらうため、考古学の権威である城北大学の和倉博士を訪ねるのだと語る。すると前の席に座っていた南原という男が、2人に話し掛けた。警戒しながら素性を訪ねた冴子に、南原はトップ屋だと自己紹介した。窓の外には、山のような黒い雲が出現した。冴子が壁画から解読した予言によれば、それは世界を滅ぼそうとする怪獣が現れる前兆だ。その予言は、「赤い月が沈み、西から陽が昇る時、2頭の怪獣が現れて人々を救う」と続いていた。
敬介は冴子をタクシーで和倉の家まで送り、そのまま玄関へ向かった。実は、敬介は和倉の甥だったのだ。敬介から正彦のことを訊かれた和倉は、金属のかけらを分析してもらうために宇宙工学の権威である宮島博士の元へ行っていることを教えた。研究所で分析してもらった結果、正彦が玉泉洞で発見した物質が宇宙金属のスペース・チタニウムであることが分かった。正彦、宮島、宮島の娘・郁子は、軽い地震に襲われた。ここ10日ほど東京では地震が続いていた。また、北海道から地震が少しずつ南下する現象も起きていた。
柳川という男が和倉の家に銃を持って乗り込み、置物を渡すよう要求した。敬介が飛び掛かって銃を奪うと、柳川は逃亡した。富士山が爆発し、ゴジラが出現した。御殿場の宮島研究所へ向かった敬介は、アンギラスがゴジラを攻撃する様子を目撃した。アンギラスの攻撃を受けたゴジラの皮膚が少しだけ剥がれ、金属部分が見えた。ゴジラはアンギラスを圧倒し、退散させた。敬介はスペース・チタニウムの塊を発見し、宮島研究所へ持ち込んだ。宮島は彼に、電極を破壊する電磁波を起こす発明品のパイプを見せた。
敬介、正彦、郁子、宮島は車で出掛け、ゴジラがコンビナートを破壊する様子を目にする。その時、建物の中から、もう1頭のゴジラが出現した。その様子を秘密基地のモニターで観察していた黒沼という男は、「こう早く本物のゴジラが現れるとはな。地球人も驚いているだろう」と不敵な笑みを浮かべた。先に現れたゴジラの皮膚が剥がれて金属部分が見えると、宮島は「これで分かった。富士山から現れたゴジラはサイボーグだ。全身、宇宙金属で作られている。メカゴジラとでも呼んだらいいかな」と口にした。
その正体を明確にしたメカゴジラは、ゴジラに襲い掛かった。メカゴジラの光線とゴジラの放射能熱線が、真っ向から激突した。ゴジラは海に落ち、メカゴジラはヘッドコントロールが故障した。黒沼は手下に対し、攻撃を一時中止してメカゴジラへ基地へ戻すよう命じた。修理に時間が掛かると知って「グズグズしてると我々のミスが本部に知られることに」と危惧する手下に、黒沼は「心配するな。地球人の宇宙工学の専門家を使えばいい」と告げた。
和倉は置物の象形文字を解読し、「西から陽が昇る時、この置物を安豆味城の石の祠の上に置け」と記されていることを知った。黒沼は手下に、「R1号に、一刻も早くキングシーサーの置物を奪うよう伝えろ。敵が暗号を解いた以上、いつキングシーサーが目覚めるとも限らん。それをきっかけに、他の怪獣どもが騒ぎ始めると面倒だからな」と告げた。宮島は宇宙から来た惑星人がメカゴジラを動かしていると確信し、手掛かりを得るために玉泉洞へ行くことにした。
宮島が正彦と郁子を伴って玉泉洞を調べていると、黒沼の手下たちが現れて銃を向けた。玉泉洞の奥に作られた機密基地に連行された3人は、黒沼たちが地球征服を目論むブラックホール第3惑星人だと知った。地球征服司令官である黒沼は正彦と郁子を人質に取り、宮島にメカゴジラの修理を要求した。敬介と冴子は、フェリーで沖縄へ向かう。R1号である柳川は船室に忍び込んで置物を盗み出そうとするが、気付いた敬介が飛び掛かった。敬介の銃撃を受けた柳川の顔面は、その一部が猿人の容貌に変化した。
敬介は置物を持って逃走する柳川を追い掛けるが、銃を向けられて窮地に陥る。しかし物陰にいた南原の発砲を受け、柳川は海に落下した。だが、彼の盗み出した置物は偽物だった。敬介は冴子にも内緒で、本物を船長に預けていたのだ。沖縄へ到着した敬介と冴子はホテルへ行き、2日前から正彦たちが戻っていないことを知った。敬介は冴子をホテルに残し、玉泉洞へ向かった。宮島が修理を終えると、黒沼は正彦と郁子を閉じ込めていた部屋に彼も押し込み、3人を蒸し焼きにして抹殺しようと目論んだ。
玉泉洞を調べていた敬介は、黒沼の手下に襲われた。しかし敬介を追って来た南原が発砲し、敬介を救った。彼はインターポールの捜査官で、半年前から黒沼たちを調査していたのだ。南原は手下を脅し、基地まで案内するよう要求した。基地に乗り込んだ敬介と南原は、3人を救い出す。黒沼は車に爆弾を仕掛けていたが、罠を察知していた南原の機転で一行は難を逃れた。地上へ出た5人が空を見上げると、赤い月が出ていた。
南原は敬介に安豆味城跡へ行くよう指示し、自分は秘密基地へ戻って黒沼たちを退治しようと考える。すると正彦と宮島は、南原に同行を申し入れた。敬介は冴子と共に、置物を持って安豆味城跡へ向かった。すると黒沼の手下2人が那美と天願が人質に取っており、置物を渡すよう要求した。そこへ黒沼の同僚である田村が駆け付け、手下2人を退治した。直後、一行は太陽が西から昇るように見える蜃気楼を目撃した。祠に置かれた置物の両眼から光線が放出され、万座岬の岩山に向かう。岩肌が崩れると、眠っているキングシーサーが姿を現した。黒沼は手下に「手始めにキングシーサーを倒せ」と命令し、メカゴジラを出撃させる…。

監督は福田純、原作は関沢新一&福島正実、脚本は山浦弘靖&福田純、製作は田中友幸、撮影は逢沢譲、美術は薩谷和夫、録音は矢野口文雄、照明は森本正邦、編集は池田美千子、特技監督は中野昭慶、音楽は佐藤勝。
主題歌「ミヤラビの祈り」作詞:福田純、作曲:佐藤勝、唄:ベルベラ・リーン。
出演は大門正明、青山一也、田島令子、ベルベラ・リーン、松下ひろみ、平田昭彦、小泉博、睦五郎、岸田森、佐原健二、草野大悟、鳥居功靖、小川安三、今福正雄、渡辺高光、遠矢孝信、鹿島信哉、柳沢優一、北川陽一郎、久須美護、図師勲、森一成ら。


“ゴジラ”シリーズの第14作。1974年春期「東宝チャンピオンまつり」の一篇として公開されたゴジラ誕生20周年記念映画。
監督は3作連続となる福田純。脚本は『マグマ大使』『パンダの大冒険』の山浦弘靖と福田純の共同。
これまで特殊技術のスタッフとして携わって来た中野昭慶が、シリーズでは初めて「特技監督」として表記されている(このシリーズ以外だと『日本沈没』で先に特技監督として表記されている)。
敬介を大門正明、正彦を青山一也、冴子を田島令子、那美をベルベラ・リーン、郁子を松下ひろみ、宮島を平田昭彦、和倉を小泉博、黒沼を睦五郎(現・睦五朗)、南原を岸田森、クイーン・コーラル号船長を佐原健二、柳川を草野大悟が演じている。

公開翌年には沖縄国際海洋博覧会が開催されることになっていたため、それに合わせた内容になっている。
沖縄の観光産業とのタイアップが積極的に行われており、そのために用意されている描写も多く含まれている。
例えば、敬介と冴子がフェリーで沖縄へ向かうのは「敵の裏をかくため」という説明があるが、実際はタイアップだ。
敬介たちが宿泊する場所も、別にどこだっていいのだが、そこはタイアップしている那覇東急ホテルが使用されている。

“ゴジラ”シリーズは東宝チャンピオンまつりに組み込まれてから製作費が一気に減らされ、それに伴って出演者のランクも落ちた。新人俳優や知名度の低い役者ばかりが起用されるようになり、主要キャストの人数も減らされた。
前作の『ゴジラ対メガロ』では、とうとう主要キャストが佐々木勝彦、林ゆたか、川瀬裕之の3人だけになっていた。
しかしゴジラ誕生20周年記念なので、相変わらず製作費が潤沢とは言えない中でも少しだけ頑張ったようで、かつてシリーズに出ていた平田昭彦、小泉博、佐原健二が出演しているし、主要キャストに女優が3人も含まれている。
ただし、相変わらず予算は少なかったようで、コンビナート破壊シーンはあるが都市破壊のシーンは無いし、だから住民が避難する描写も無い。また、今回は防衛隊が全く登場しない。

このシリーズは第12作『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』から、は怪獣タッグマッチをやるようになっている(今回は2対1の変則タッグマッチだが)。
この第14作は前作に引き続いて、新登場のキャラクターとゴジラがタッグを組む形になっている(第12作でゴジラと組んだのはアンギラスだった)。
しかし前作のジェットジャガーと同じで、新しいキャラクターを正義の味方(人間の味方)として登場させると、そこに問題が生じる。
この頃のゴジラは正義のヒーローとしての扱いだったので、“ゴジラ”シリーズである以上、新キャラは主役ではなく引き立て役に回されてしまうのだ。

キングシーサーは「安豆味王族の守り神」というモスラ的な設定になっているんだし、「キングシーサーが人間を守るために悪の怪獣と戦う」という話にすればスッキリする。
だから、本当は「キングシーサー対ゴジラ」という図式にすればいいのだ。
しかし前述したように、この頃のゴジラは正義の味方なので、どうしても「ゴジラとキングシーサーがタッグを組む」という関係性にせざるを得ないのだ。

壁画を分析して「この世を滅ぼそうとする怪獣が現れる」とか「2頭の怪獣が現れて人々を救う」という予言が判明した時、そこに出てくる「怪獣」は何かの例えではなく、最初から「本物の怪獣」として受け止められている。
つまり、これは怪獣の実在が確認されている世界観の映画ったことだ。
だったら前作までの世界観と共通しているのかと思ったら、ゴジラは怪獣島におらず富士山の噴火で岩石の中から飛び出してくる。
それは偽者なんだけど、敬介や宮島が「ゴジラは怪獣島にいるはずなのに」と驚いたり首を傾げたりすることはない。
ってことは、ゴジラが怪獣島にいる設定は引き継がれていないってことだ。劇中に怪獣島は登場しないし。

それだけでなく、ゴジラの出現を知った天願が「ゴジラを倒せるのはキングシーサーだけじゃ」とゴジラを悪党扱いしている。
その上で「安豆味王族を滅ぼそうとしたヤマトンチュを、ワシに代わってやっつけろ」と応援しているが、つまりゴジラは「本土の人間を襲う恐ろしい怪獣」という位置付けになっているわけだ。
敬介も「アンギラスが仲間であるゴジラを攻撃するなんて」と驚いているが、ゴジラとアンギラスが仲間だという設定は踏襲されているのに、ゴジラが怪獣島に住む人間の味方という設定は踏襲されていない。

でも、こっちとしては、敬介が「アンギラスが仲間であるゴジラを攻撃するなんて」と驚いた時点で、「驚くべきポイントは、そこじゃないだろ」と言いたくなるんだよな。
そうじゃなくて、「ゴジラが我々の街を破壊するなんて。人間を襲うなんて」というところで驚くべきだと思うんだよな。
つまり、「ゴジラは人間の味方」という設定を受け継ぐべきだってことよ。そうじゃなかったら、メカゴジラがゴジラを偽装する意味が無くなるでしょ。
「人間の味方であるはずのゴジラが街を破壊する」というところに驚きを持たせるために、偽装しているはずじゃないのか。

黒沼は置物を手下に奪わせようとしており、キングシーサーが目覚めることを危惧している。
だが、なぜキングシーサーが目覚めることを恐れるのか、その理由が良く分からない。
というのも、彼はゴジラが出現しても全く動じず、余裕でメカゴジラを戦わせているのだ。ゴジラは地球で最も強い怪獣のはずで、それに対して余裕なのにキングシーサーを恐れるってことは、キングシーサーがゴジラより強いという解釈になってしまうぞ。
あと、「キングシーサーが目覚めると、それをきっかけに他の怪獣どもが騒ぎ始めると面倒だ」という考え方も全く理解できない。
キングシーサーって、そんなに影響力のデカい存在なのかよ。

ブラックホール第3惑星人は、ゴジラを徹底的に分析し、それより強い(と彼らは思っている)メカゴジラを作り上げる。
それだけ優れた科学力を持っていながら、なぜか宮島の力を借りないとメカゴジラの修理もマトモに出来ない。
ちなみに宮島はノーベル賞受賞者という設定で、たった一人で簡単にメカゴジラを修理してしまう。
その時に「バレないようにメカゴジラの機能を停止させる仕掛けをする」とか、それぐらいの機転が回れば良かったのに、バカ正直に修理してしまうのね。

キングシーサーは岩肌から姿を見せても、すぐに戦い始めるわけではない。なぜなら、まだ目覚めていないからだ。
で、目覚めさせるために、那美が歌い始める。これはモスラを目覚めさせるのに小美人が歌ったのと同じパターンだ。
しかしモスラの時は歌詞もメロディーも「インファント島っぽさ」を出そうとしていたのに対し、今回の歌は普通の昭和歌謡。沖縄っぽさはゼロだ。
だから、まるで雰囲気が盛り上がらず、むしろ脱力感に見舞われる。
しかもフルコーラスで歌うので、すげえダラダラしちゃうし。

そんなに勿体を付けて目覚めたキングシーサーだが、ちっとも強くないんだよな。勢いよくメカゴジラに飛び掛かるが、まるで歯が立たずにコテンパンにされている。
落雷を浴びてパワーアップしたゴジラが駆け付け、メカゴジラをやっつけている。
一応、ゴジラが羽交い絞めにしたメカゴジラにキングシーサーが体当たりを食らわせるという描写はある。
だけど、間違いなくゴジラだけでもメカゴジラに勝てていた。
キングシーサーは、ただの役立たずだ。ぶっちゃけ、雑魚キャラ扱いのアンギラスよりも弱いぞ。

(観賞日:2014年5月21日)

 

*ポンコツ映画愛護協会