『怪獣大戦争』:1965、日本

196X年、銀河系宇宙に新しい謎が生まれた。X星の出現である。宇宙飛行士の富士一夫とグレンは宇宙ロケットのP1号に乗り、調査のためにX星へ向かっていた。定期連絡の時間になり、2人はWSA(世界連合宇宙局)と通信して現在の座標を知らせる。富士は桜井博士と話し、妹のハルノと代わってもらおうとする。だが、桜井はハルノに頼まれ、今は不在だと富士に嘘をつく。富士は桜井に「僕が戻るまで早まったことはするな、片は僕が付けてやると言ってやって下さい」と伝言を依頼した。彼はハルノの恋人・鳥居哲男を嫌っていた。ハルノは桜井から恋人が何をしているのか問われ、「発明に凝ってるんです」と答えた。
哲男は下宿の部屋で、新案小型護身器のレディ・ガードを作っていた。警報音がうるさいので、彼は下宿のおばさんから文句を言われる。そこへ電話が入り、哲男は相手から契約したいという旨を告げられた。WSAでは桜井が報道陣の質問に答えていた。X星は木星13番目の衛星だ。今まで発見されなかった理由を問われ、桜井は「非常に暗い星だったので望遠鏡では確認できなかった」と説明した。さらに彼は、宇宙電波の発信先がX星であることを明かす。宇宙人の存在する可能性があるため、記者たちは色めき立った。
哲男はレストランにハルノを呼び、レディ・ガードが売れたことを話す。相手は世界教育社という教育玩具の会社だ。そこへ世界教育社の波川女史が現れ、「製品化の際に5千万円を支払う」という契約を哲男と交わした。ハルノは不審を抱くが、哲男は得意げな態度を取った。P1号は木製の裏側にあるX星に着陸し、富士とグレンは地下施設で暮らしているX星人と出会った。X星人の統制官は、「色々と相談したいことがあります」と2人に告げた。
その時、怪物ゼロが出現したという知らせが統制官に届いた。統制官は防備体制を取るよう命じる。彼は富士たちに、怪物ゼロは恐ろしい宇宙怪物であり、そのせいで地表に住むことが出来ないのだと語った。モニターに写し出された怪物ゼロは、地球人がキングギドラと呼んでいる怪獣だった。X星人には撃退する方法が無いため、立ち去るのを待つしか無い状況だという。酸化水素工場が破損したという連絡が届くと、統制官はX星の言葉で指示を出した。
富士とグレンの周囲がシールドで封じられて何も見えなくなり、外の音声も聞こえなくなった。2人は、X星人にとって聞かれてはマズいことがあるのだろうと考える。しばらくするとシールドが解除され、統制官は戻って来て「キングギドラは去りました」と言う。彼は「キングギドラを撃退するため、ゴジラとラドンをお借りしたい」と富士たちに持ち掛けた。富士は困惑し、グレンは「第一、ゴジラとラドンがどこにいるのか、どういう方法で宇宙を運ぶのか」と質問した。統制官は「ゴジラは日本の明神湖。ラドンは鷲ヶ沢にいます。貴方がたは、ただ地球での我々の行動を認めてくださればいいのです」と語った。
統制官は「もちろん、我々もそれに報いることを考えています。ガンの特効薬を提供したいと思っているのです」と富士たちに述べた。富士とグレンがP1号でX星を発進し、それを見送る統制官は含んだ笑みを漏らした。富士たちは地球に帰還し、議会でX星人からの提案を報告する。各分野の代表者が集まって会議を開き、X星人に協力することで意見は一致した。明神湖と鷲ヶ沢にゴジラとラドンが本当にいるのか、現地に調査団が派遣された。
哲男は世界教育社を訪れるが、波川は出張中だということで、別の社員が応対した。企画検討中だと言われて製品化が全く進まないため、哲男は社長に会わせてくれと要求した。社長室で報告を受けた社長は「適当に追っ払え」と指示し、レディ・ガードの図面を燃やした。富士とグレンはレストランにいた。富士はハルノと哲男を待っている。そこへ2人がやって来た。富士は哲男に「妹を任せるには、君は頼りなく思える」と率直に言う。グレンは「これからデートなんだ」と退席。窓の外に目をやった哲男は、グレンが波川を車に乗せて去る様子を目撃し、「出張中だなんて嘘ついてやがったんだな」と腹を立てた。
明神湖を調査していた自衛隊のガイガーカウンターが反応し、ゴジラの存在は確実視された。グレンは富士を誘って明神湖へ向かい、途中で「僕が波川とドライブした道だ。その時、統制官に会った。彼女とバンガローに泊まった時、確かに統制官が入って来た気がするんだ」と語る。「何か言ったのか?」と富士が訊くと、彼は「我々の準備は完了している。つまらんことは忘れた方がいい」という言葉を耳にしたという。
「彼女は見なかったのか」と富士が尋ねると、グレンは「僕が夜通しうなされていたので、気味が悪かったらしい。どうやら我々はX星人を少し信用し過ぎたんじゃないか」と言う。富士が「地球に対して野心があると考えられなくも無いな」と口にすると、彼は「水の欠乏。X星は決して住みやすい場所じゃない」と告げる。2人はバンガローの方へ行こうとするが、自衛隊から「あれをごらんなさい」と双眼鏡を渡される。すると、明神湖から3機の円盤が出現して上空に静止した。「やっぱり奴らは来てた」とグレンは言う。
大勢の野次馬やマスコミ、WSAの面々などが湖畔に集まる中、1機の円盤が着陸した。統制官と部下たちが円盤から現れ、桜井たちと湖畔での交渉に入った。統制官は桜井から「ゴジラとラドンをどうやって運びますか」と質問され、「私たちには地球人の想像し得ない科学力があります。質量がどんなに大きくとも宇宙圏に運び出すことは簡単です。あの2つの円盤が輸送機です」と説明した。
まず1機の円盤が電磁波を使い、明神湖のゴジラを引き上げた。続いて別の1機が岩壁を破壊し、鷲が沢のラドンを引き上げた。国賓として招待された富士とグレン、桜井は、円盤に同乗することになっている。しかしグレンは波川から「行ってはいけない。すぐ私と結婚しなけりゃいけないわ」と引き留められる。グレンは「すぐ帰って来るんだよ?」と軽く言い、彼女と別れる。波川が車で走り去ると、哲男がタクシーで尾行した。
富士たちは円盤に乗り込んだ。桜井が操縦室に行きたいと申し入れると、統制官は「ここが操縦室です。宇宙船の運行に関しての決断は全て脳波によって電子計算室に指示されるのです」と述べた。円盤は発進し、桜井が驚くほどの速度でX星へ向かった。波川は目倉島にあるX星人地球基地に顔を出した。彼女は地球植民地挺身隊の隊長である世界教育社社長から、「君はグレンという地球人に必要以上に興味を持ち始めたみたいだな。命じられたことだけやっていればいい。統制官の命令だ」と釘を刺された。
哲男はボートに忍び込み、島に到着していた。それに気付いた世界教育社の社員は、社長に報告を入れた。哲男は基地である屋敷に近付くが、玄関の落とし穴に落下した。X星に到着した円盤は、ゴジラとラドンを降ろす。そこへキングギドラが現れ、戦いとなった。だが、キングギドラは劣勢になり、すぐに飛び去った。富士とグレンは密かに席を外し、X星内部を調べようとする。エレベーターで到着した場所には、X星人の格好をした波川と瓜二つの女が2人もいた。
富士とグレンはX星人に包囲されて拘束されるが、統制官は2人を解放した。統制官は富士たちに、ガンの特効薬データの記録したテープを渡した。X星人はP1号のデータを分析し、全く同じ宇宙ロケットを製造していた。富士たちはレプリカに乗り、X星を出発した。ハルノは世界教育社を訪れ、波川と会った。彼女が行方不明になった哲男のことを訊くと、波川は「近頃は私もお会いしていませんのよ」と答えた。地球基地の牢に監禁されている哲男は、社長から「今に分かる。地球の歴史が変わる」と告げられる。社長は統制官からの通信を受け、計画の実施を指示された。
富士たちは地球に帰還し、代表者が集まる会議の場でテープを再生した。すると統制官の声で「地球は今後、X星の支配下に入り、植民地となる。従わぬ時は地球人類を抹殺するであろう」というメッセージが吹き込まれていた。このメッセージが世界に伝わると、各地で暴動が起きるなど大混乱に陥った。グレンが世界教育社へ行くと、X星人のユニフォームを来た波川がいた。波川は電子計算機通りに動いていたことを語るが、「貴方の監視を続けている内に、貴方は計算機以外の人となったのです」と言う。
波川は「貴方がX星人となって私と結婚するの。計算機に出ました。それ以外に助かる方法は無いんです」と告げるが、グレンは「僕たちはロボットじゃない。機械に支配されて、どこに幸福があるっていうんだ。君たちの良心は電子計算機に取り上げられてしまったのかい」と反発する。しかし波川は「私は地球人にはなれない。もう遅いんです」と口にした。そこへX星人たちが現れ、グレンは連行されることになった。波川は「行っちゃいけない、貴方は実験台にされる」とグレンに言い、こっそり上着のポケットに手紙を差し入れる。その直後、彼女は仲間たちによって処刑された。
WSAで富士や桜井たちが今後の対策を話し合っていると、X星人の円盤が襲来してP1号のレプリカを爆破し、衛星アンテナを溶かした。統制官は円盤から「返答が無かったことを拒否と判断する。これから地球制圧の方法を説明する。我々はキングギドラを東半球に配置した。キングギドラは元々、我々が電磁波でコントロールしていのだ。ゴジラもラドンも電磁波で自由に操られる。地球はこれら3怪獣に制圧されるのだ。しかし我々は24時間の猶予を与える。最後のチャンスだ」というメッセージを発信した。
桜井は資料ケースから「電磁波に対するAサイクルの影響」という報告書を取り出し、富士に「至急、やってみてくれ」と指示した。グレンは目倉島に連行され、哲男と同じ牢に入れられた。桜井は会議の席で「ゴジラとラドンを取り返すことを考えています。電磁波を中断できれば取り返すことが可能です。現在、最終的な実験を行っています」と述べた。富士はAサイクル光線で電磁波を遮断する実験を関係者に見せる。ゴジラやラドンを操っている電磁波の幅は分からないが、時間が無いため、装置を作り始めることになった。
グレンのポケットから手紙が落ち、それを哲男が発見した。その手紙には、「X星人はある種の音に対して非常に弱い盲点があるのです」と記されていた。すぐに哲男は、世界教育社が自分の発明を買った理由がそれだと察知する。レディ・ガードを鳴らすと、警備のX星人が苦しみ始めた。グレンと哲男は鍵を奪い、牢から脱出した。WSAに戻ったグレンは事情を説明し、レディ・ガードの警報の音響を拡大してX星人に聴かせる準備が開始された。統制官は「計算に異常が生じました」という知らせを受け、攻撃時間を繰り上げることに決めた。彼は「計画変更。直ちに地球攻撃を開始」と命令を出し、ゴジラとラドンを暴れさせる…。

監督は本多猪四郎、特技監督は円谷英二、脚本は関沢新一、製作は田中友幸、撮影は小泉一、美術は北猛夫、録音は小沼渡、照明は小島正七、監督助手は中野昭慶、整音は下永尚、編集は藤井良平、音楽は伊福部昭。
出演は宝田明、ニック・アダムス、水野久美、沢井桂子、田崎潤、土屋嘉男、久保明、佐々木孝丸、村上冬樹、田島義文、田武謙三、千石規子、松本染升、清水元、伊吹徹、鈴木和夫、堤康久、桐野洋雄、塩沢とき、津田光男、熊谷卓三、宇野晃司、橘正晃、岡豊、緒方燐作、岡部正、清水良二、古河秀樹、坪野鎌之、伊藤実、中島春雄、篠原正記、広瀬正一ら。


“ゴジラ”シリーズの第6作。『フランケンシュタイン対地底怪獣』に続いて東宝がベネディクト・プロと合作している。
富士を宝田明、グレンをニック・アダムス、波川を水野久美、ハルノを沢井桂子、桜井を田崎潤、統制官を土屋嘉男、哲男を久保明、自治代表を佐々木孝丸、医学代表を村上冬樹、移動司令を田島義文、世界教育社社長を田武謙三、下宿のおばさんを千石規子、宗教代表を松本染升、防衛代表を清水元が演じている。
1971年春の東宝チャンピオンまつりでは『怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ』と改題されてリバイバル上映された。
ちなみに、オープニングから流れて来る怪獣大戦争マーチは、かなり有名な曲だ。映画を見たことが無くても、曲は聞いたことがあるという人は多いんじゃないかな。流れて来るだけで、ちょっとテンションが上がる。
この曲だけは、ホントにいい。

X星人は「キングギドラがいるから地下に住んでいる」と説明しているが、後になって、キングギドラは自分たちが操っていることを明かす。
キングギドラが理由じゃないのなら、地下に住んでいる理由は何なのか。
彼らは地球を征服する計画を立てて、地球に偵察部隊を送って基地を設置している。
そこまでやっているのに、自分たちからは何も行動を起こさず、P1ロケットが調査に来るまで待っていたというのは、どういうことなのか。

統制官は富士とグレンに「キングギドラを倒すためにゴジラとラドンを貸してほしい」と相談を持ち掛け、それを地球に持ち帰ってもらう。で、ゴジラとラドンを貸してもらう交渉を締結してからゴジラとラドンを星に連れ帰り、キングギドラを撃退してもらう様子を富士たちに見せる。
それはX星人の芝居だ。
で、わざわざ「キングギドラのせいで困っている」と嘘をつき、「ゴジラとラドンがキングギドラを撃退する」という芝居を富士たちに見せる意味は何なのか。
いきなり地球へ来てゴジラとラドンを電磁波で操れば良かっただろ。その計画をWSAが事前に察知して阻止することなんて、まず不可能なんだし。

X星人が地球の支配を企むのは、X星が水の欠乏した住みにくい場所だからだ。
ってことは裏を返せば、水さえあれば何とかなるはず。
で、統制官はゴジラとラドンを運ぶ方法について問われた時、「質量がどんなに大きくても宇宙圏に運び出すのは簡単」と説明している。
だったら、水を運べばいいんじゃないの。
っていうか、嘘をついて「ゴジラとラドンを貸してほしい」と持ち掛けるより、「こういう事情で困っているので水を分けてほしい」と持ち掛ければ、たぶん地球人はOKしたと思うぞ。

X星人が世界教育社を装ってレディ・ガードを製品化する契約を結ぶのは、そこから発する警報が弱点だからだ。
でも、だったら哲男を抹殺するか監禁するかすれば済むことだろ。
「契約を結んで製品化の話を引き延ばし、飼い殺しにする」って、どんな計画だよ。
大体さ、正式な製品化を引き延ばしたところで、哲男はレディ・ガードを作っているんだから、ブツは既に存在しているんだし。
あと、高度なテクノロジーを持っているんだから、その音を防ぐような対策を取ればいいじゃないか。

X星人は富士たちを地球に帰還させる際、P1号のレプリカを与えているけど、てめえらの円盤で送ればいいじゃねえか。
わざわざP1号のレプリカを地球人に与えておいて、後から円盤で飛来して破壊するって、無駄な手間だろ。
で、X星人が渡したテープには「地球はX星の支配下に入り、植民地となる」という脅しのメッセージが入っているが、それを「世界連合宇宙局」と称しながらグレン以外は日本人しかいない組織だけに告げてどうすんのって話だよな。
とりあえず、アメリカとソ連か、国連に言うべきだよな。

グレンたちはレディ・ガードの音をラジオから流すことに決め、「只今から緊急放送を行います。皆様の受信機にこれから不協和音が流れますが故障ではございません。またどうぞスイッチをお切りにならないで、ボリュームを最大に上げて鳴らしていただきたいのです」とアナウンサーが頼んでいる。
だけど、どういう目的なのか理由は何なのか説明しないと、指示に従ってくれる国民は多くないと思うけど。
あと、円盤や島の基地に、ラジオの音は届くのか。
それと、その音をX星人が嫌がるのはともかく、電子計算機が故障するって、どういうことだよ。そもそも、防音にしておけよ。っていうか、哲男を拘束する時、身体検査をしておけよ。
そんな風にX星人はおバカな行動が多いんだけど、電子計算機の指示通りにしか動かない連中という設定だから、その計算機がポンコツってことだね。

円盤が故障した後、統制官は「我々はまだ未来に向かって脱出する」と言って自爆を選んでいるんだけど、まだ星には仲間たちがいるはずでしょ。
ひとまず脱出して、救援を待てばいいんじゃないの。そんだけ高度な技術があるのなら、通信手段も用意しているはずだし。
この終わり方だと、「地球基地と円盤の面々だけが全てのX星人」みたいになっているんだよね。
そんなに人数が少なかったら、高度なテクノロジーと整合性が取れないよ。

もはやゴジラは脅威の対象ではなくなり、完全に人類の味方という扱いだ。
しかも、かなり子供向けになっており、すっかりガメラと同類になった。
だからX星でキングギドラを撃退した後には、イヤミの「シェー」のポーズを平気でやらせている。
ただ、子供向けにしては、怪獣の出番が少ないのは、いかがなものか。
タイトルに「ゴジラ」の名前が付いていないものの、ゴジラやラドンって完全に脇役だよね。前半にチラッと顔見世程度の戦いがあって以降、終盤まではバトルシーンどころか、出番さえ無いのよね。

終盤のゴジラ&ラドン対キングギドラによる戦いなんて、完全に付け足し状態になっているもんな。
なんせ残り3、4分になってから、ようやく戦うんだぜ。それも、わずか2分程度のバトルで終わる。
「それがゴジラ映画として良いのか悪いのか」という問題は置いておくとして、明らかに内容が子供向けになっているんだから、だったら怪獣プロレスを存分に見せた方がいいんじゃないのかと。
もちろん、新しい怪獣も登場させてね。

(観賞日:2012年7月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会