『餓狼の群れ』:2000、日本

警視庁本城署の刑事・唐木丈二は、単独で麻薬組織を捜査していた後輩刑事・倉橋の死に直面する。だが、刑事課長の田沼は、倉橋が押収した麻薬を組織へ横流ししていたと断定して捜査を打ち切ってしまう。そして倉橋と最後に連絡を取った唐木も、警察を追われることになった。
それから3年後、唐木は強奪屋の会田から一緒に仕事をしないかと持ち掛けられる。会田は元レーサーの水谷と共に、押収された麻薬の裏取引が行われている秘密カジノを襲撃し、取り引きに使われる金と麻薬を奪おうと考えていた。唐木は彼の誘いに乗ることにした。
計画通りにカジノを襲撃して金と麻薬を奪った唐木だが、会田に裏切られてカジノに取り残されてしまう。カジノでディーラーをしていた倉橋の姉・萌に助けられ、唐木は何とか脱出することが出来た。萌は弟に汚名を着せた犯人を探すため、カジノに潜入していたのだ。
唐木は会田と約束していた待ち合わせ場所に向かうが、会田は射殺死体となっていた。水谷が会田を射殺し、奪った麻薬を逃げて逃亡したのだ。その時、会田の携帯電話が鳴った。電話を取った唐木が聞いたのは、田沼の声だった。麻薬を横流ししていた黒幕は田沼だったのだ…。

監督は渡辺武、脚本は山田耕大&伊藤秀裕&江良至、製作は小野憲生&石井徹&伊藤秀裕、企画は加藤光夫 黒澤満、プロデューサーは瀬古隆司&前田茂司、撮影は小松原茂、編集は太田義則、録音は中山隆匡、照明は石丸隆一、美術は野尻均、衣裳は宮田弘子、音楽はTorsten Rasch。
主演は松方弘樹、共演は高島礼子、萩原流行、志賀泰伸、天宮良、神威杏次、根岸大介、諏訪太郎、後藤麻衣、奈良坂篤、和田圭市、リ・コウジ、山中猛、永井秀和、宮本風真、菊池かほり、伊藤勝利、熊谷淳二、鍬永新吾、中川喜裕、村澤隆司、レーイ・バーロン、海老原梢、清水優希、武野武則、中村公彦、斎藤秀和、倉田大樹、小西緩奈、神南哲也、松浦健城、出口正義、俵広樹ら。


離婚問題ですっかりイメージが悪くなってしまった松方弘樹が、騒動が一段落した直後に主演したアクション映画。
限りなくVシネマに近いが、一応は劇場映画である。
萌を高島礼子、田沼を萩原流行、水谷を志賀泰伸、会田を天宮良が演じている。

息も付かせぬスピードで引っ張っていけばそれなりに見られたかもしれないが、チンタラと歩きながらストーリーは進んで行く。
唐木がカジノ襲撃計画に参加する流れは不自然だし、カジノに大金が持ち込まれる様子はわざとらしい。
回想シーンは時間稼ぎの誤魔化しにしかなっていない。

そもそも、この作品に松方弘樹が主演すること自体に無理がある。
なぜなら、大物の風格が感じられてしまうからだ。
むしろ、悪役のボスや主人公のサポートを務めるような役の方がふさわしい。
この作品の主人公は、もう少し若い役者の方がいいだろう。

松方クラスか、それ以上の役者が悪役を演じているのならともかく、敵のボスは萩原流行である。どう考えたって、バランスの歪みがある。
明らかに主人公の方が最初から上に立っているのだ。
シナリオと配役のバランスがおかしいのだから、クランク・インの前の段階で失敗が始まっているのだ。

あまりに松方に迫力がありすぎる上に、彼自身が大物のオーラを出しながら芝居をしている。
そのため、カジノに取り残されたりシャブ漬けにされたりしても、ウソ臭さがものすごく見えてしまう。
ただし松方弘樹には迫力があるが、アクションには迫力が無い。

全く主人公が追い詰められたような感じがしないので、そこに緊張感は全く漂ってこない。
本来ならば、一匹狼の主人公がヒロインに助けられながら巨悪に挑むという図式が成立すべきなのだろう。
しかし、最も巨大な存在が主人公なので、どうしようもない。

 

*ポンコツ映画愛護協会