『コードギアス 復活のルルーシュ』:2019、日本
光和2年、悪逆皇帝のルルーシュがゼロに倒されてから1年が過ぎた。世界は再編成された超合集国を中心に、かつてない平和を謳歌していた。玉城が経営する「カフェ・ゼロ」2号店の開店パーティーが開かれ、カレンやラクシャータ、神楽耶や扇とヴィレッタの夫婦たちが参加した。WHA(世界人道支援機関)名誉顧問のナナリーはゼロとして黒の騎士団首席顧問を務めるスザクを伴い、難民キャンプの視察に赴いた。そこにシャリオが率いるテロリスト集団が現れ、ナナリーたちを連れ去った。
ミレイは取材のため、戦いの国として知られるジルクスタン王国を訪れた。ジルクスタンの最大の輸出品は軍事力であり、多くの兵士が世界中で傭兵として活躍している。親衛隊隊長のシェスタールはミレイから難民キャンプでの誘拐事件について問われ、情報は何も無いと答えた。難民キャンプがあるのは、ジルクスタンを含む5ヶ国の国境が絡み合う場所だった。C.C.はシャーリーの協力で身柄を引き取ったルルーシュを連れて、旅を続けていた。ルルーシュは記憶を失い、幼い子供のような状態になっていた。
ジルクスタンの宿でルルーシュの面倒を見ていたC.C.は、クジャパットの率いる暗殺部隊が乗り込んで来るのを目にした。彼らの目的は、シュナイゼルの要請でゼロとナナリーの捜索に来たカレン&ロイド&咲世子の抹殺にあった。カレンたちは暗殺部隊を迎撃し、C.C.と再会した。クジャパットは部屋から出て来たC.C.を単なる旅行客だと誤解しながらも、容赦なく射殺した。彼は対象の認識を入れ替えるギアスをカレンに使い、ロイドと咲世子を襲わせた。C.C.が復活して威嚇発砲し、クジャパットは驚いた。彼はC.C.にギアスを使うが効果は無く、正体に気付いて撤退した。
カレンたちはルルーシュを見つけ、生きていると知って驚いた。C.C.はルルーシュの心が行方不明になっていること、Cの世界で再構築するためにジルクスタンへ来たことを彼女たちに説明した。ジルクスタンにはギアス教団から分かれたファルラフという組織があり、管理するアラムの門はCの世界にアクセスするシステムになっているのだとC.C.は説明した。ジルクスタン王国の聖神官でファルラフの指導者でもあるシャムナはクジャパットから報告を受け、敵の狙いが神殿か嘆きの大監獄だと断定する。アラムの門がある大監獄には人質がいるため、シャムナは弟のシャリオを呼び戻して代わりにシェスタールを向かわせることにした。
シャリオは大監獄でスザクを拷問し、情報を聞き出そうとしていた。スザクは黙秘を貫いており、シャリオは姉の指令を聞いて大監獄を後にした。C.C.たちは大監獄に潜入して看守を倒し、囚人に牢を開けるカードキーを渡した。C.C.は地下でアラムの門を発見し、ルルーシュを連れてCの世界に飛び込んだ。獄長のビトゥルはシェスタールに外での待機を要求し、囚人たちを率いて侵入者の始末に向かう。カレンはロイドが持って来たナイトメアに搭乗して迎撃するが、ビトゥルに捕まってしまった。
C.C.はシャルルの欲望の残滓が障壁を作っていたと知り、衝撃を受けた。彼女はルルーシュを失い、連れ戻そうとするが、Cの世界から外へ放り出された。看守と囚人たちはロイドと咲世子を捕縛して待ち受けており、C.C.に何発もの銃弾を撃ち込んだ。C.C.たちは窮地に追い込まれるが、復活したルルーシュがギアスで看守たちを自害させた。咲世子はルルーシュに、カレンが地下の医務室に連行されること、捜索の指揮権が親衛隊に移ったことを知らせた。
ルルーシュは個室に閉じ込められていたスザクの元へ行き、協力を求めた。彼はロイドがハッキングしたシステムでシェスタ−ルに通信し、立ち去るよう告げて挑発した。咲世子はカレンを救い出し、ロイドの警護に向かった。スザクはナイトメアで囮になり、シェスタ−ルを大監獄の地下へ誘い込んだ。ルルーシュはシェスタ−ルを爆死させ、ナナリーを救出するための作戦に取り掛かった。シェスタールの父であるフォーグナー将軍はシャムナと面会し、仇討ちの命令を求めた。シャリオがギアスを使う敵への不安を漏らすと、シャムナは「私が予言をすれば、どんな相手にもでも勝てる」と語る。彼女はCの世界の先へ行くため、ナナリーを使った計画を進めていた。
超合集国本部では、シュナイゼルとカノンがロイドと咲世子からの報告を受けていた。彼はラクシャータが集めた天才児のシャンティたちを呼び、フレームコートを送らせた。ルルーシュは生存を隠蔽するため、仮面を被ってゼロとして行動することにした。シャーリーは帰国したミレイとリヴァルに、ジルクスタンでは海外の人間が次々に幽閉されているというネットの噂を教えた。ルルーシュは国境の村へ行き、特殊チームとして駐在しているコーネリアや扇たちと会った。ルルーシュがナナリー救出のための協力を求めると、コーネリアは激しい怒りを示した。しかしルルーシュが「力を貸してほしい」と頼むと、コーネリアは承諾した。
ジェレミアとアーニャは民間の立場で、ルルーシュへの協力を快諾した。スザクはルルーシュに、「君が戻ったのなら、君がゼロをやるべきだ」と話す。しかしルルーシュは「俺はかりそめだ。明日また、いなくなっているかもしれない」と言い、その求めを拒否した。翌日、ルルーシュはギアスを使い、ジルクスタンの列車の乗員たちを支配した。彼はロイドやセシルたちに、作戦を説明した。首都近郊にある4ヶ所の基地で反乱を起こし、コーネリアを中心とした部隊が敵を混乱させる。その間に咲世子の部隊が、ナナリーの囚われている場所を捜し出すというのがルルーシュの立てた計画だ。
スザクとカレンはナイトメアで配置に就き、敵の先行部隊を全滅させた。ニーナは神殿に電力が優先して回されていることを突き止め、ルルーシュに知らせた。ルルーシュはシャムナを捕まえて人質にするため、神殿へ乗り込んだ。彼は神殿の侍女たちを始末し、シャムナに降伏を要求した。シャムナは拒否し、ナナリーを閉じ込めている装置のスイッチを入れた。激高したルルーシュは、シャムナを射殺した。するとシャムナのギアスが発動し、6時間前にタイムリープした。シャムナは約6時間後に反乱がおきることをフォーグナーに「予言」として知らせ、ルルーシュたちを待ち受ける部隊を展開させた…。監督は谷口悟朗、脚本は大河内一楼、企画は佐々木新&河野聡、プロデューサーは土屋康昌&湯川淳、企画プロデューサーは谷口廣次朗、ストーリー原案は大河内一楼&谷口悟朗、キャラクターデザイン原案はCLAMP、キャラクターデザインは木村貴宏、ナイトメアフレームデザイン原案は安田朗、ナイトメアフレームデザインは中田栄治、メカニカルデザイン/コンセプトデザインは寺岡賢司、総作画監督は木村貴宏&千羽由利子&中田栄治&中谷誠一、美術監督は菱沼由典、色彩設計は柴田亜紀子、撮影監督は千葉洋之、編集は森田清次、絵コンテは谷口悟朗、演出は秋田谷典昭&三宅和男&居村健治、音響監督は井澤基&浦上靖之、音楽は中川幸太郎&黒石ひとみ、音楽プロデューサーは黒田学&石川吉元、オープニング主題歌『この世界で』は家入レオ、エンディング主題歌『リバイブ』はUNIONE。
声の出演は福山潤、ゆかな、櫻井孝宏、小清水亜美、名塚佳織、戸田恵子、大塚明夫、高木渉、津田健次郎、島ア信長、村瀬歩、若本規夫、堀内賢雄、白鳥哲、井上喜久子、新井里美、千葉紗子、真殿光昭、檜山修之、皆川純子、幸野善之、成田剣、後藤邑子、保志総一朗、井上倫宏、倉田雅世、三戸耕三、黒沢ともよ、高田裕司、渡辺明乃、かないみか、折笠富美子、大原さやか、杉山紀彰、石上静香、柳沢栄治、河口博、浅倉杏美、蓮池龍三、原由実、石井未紗ら。
TVアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』と続編『コードギアス 反逆のルルーシュR2』のネクスト・プロジェクトとして製作された劇場版。
監督の谷口悟朗や脚本の大河内一楼など、主要なスタッフがTVシリーズから続投している。
ルルーシュ役の福山潤、C.C.役のゆかな、スザク役の櫻井孝宏、カレン役の小清水亜美、ナナリー役の名塚佳織、ロイド役の白鳥哲、セシル役の井上喜久子、咲世子役の新井里美、ニーナ役の千葉紗子など、TVシリーズの声優陣も続投。
他に、シャムナの声を戸田恵子、フォーグナーを大塚明夫、ビトゥルを高木渉、クジャパットを津田健次郎、シェスタールを島ア信長、シャリオを村瀬歩、シャンティを黒沢ともよが担当している。ルルーシュはTVシリーズの最終話で死んでいるので、そのままだと新作映画で登場させることは出来ない。
どうすればいいのかと考えて、すぐ思い付く選択肢は3つ。その1、TVシリーズのプリクエルにする。その2、TVシリーズで描かれなかった時期の出来事を描く。その3、ルルーシュを生き返らせる。
この内、まずプリクエルってことになると、まだルルーシュがC.C.と出会わずギアスを得ていない頃の話になるので、それは有り得ない。TVシリーズで描かれなかった時期はほとんど無いし、そのミッシング・リンクに面白い物語があるとも思えない。
そして最後の「生き返らせる」ってのも、有り得ない。復活の魔法が存在するような世界観でもないし、あれぐらい綺麗な死に方を描いておいて「実は生きていた」と言われてもファンを呆れさせるだけだろう。なので普通に考えると、ルルーシュを主人公とする新作映画なんて作ることは不可能だ。それでも製作サイドは、どうしてもルルーシュの主演映画で稼ぎたかったのだろう。
そこで彼らが選んだのは、「ルルーシュを蘇らせる」という方法だった。
しかし前述したように、TVシリーズでルルーシュは綺麗に死んでおり、そこから「実は生きていた」とするのは無理がある。
そこで製作サイドは、この映画のためにルルーシュ復活作戦を立て、それを実行したのだ。具体的に作戦の内容を書くと、まず完全新作ではなくTVシリーズの出来事を追う劇場版3部作を製作した。そして、その中で歴史を改変し、ルルーシュが生きていることを匂わせる結末に書き書き換えたのだ。
そして本作品は、その3部作の続編という扱いで公開されている。
だけど、そんな手順を踏んだからって、「それならルルーシュが復活しても問題ないよね」とは微塵も思わないぞ。
勝手に歴史を改変して、TVシリーズの最終回を無かったことにするなよ。
TVシリーズのファンから「最終回で感じた、あの時の気持ちを返してくれよ」と怒りを買っても仕方が無いような所業だぞ。TVシリーズのルルーシュは復讐のために悪となり、様々な苦悩を抱えながらも目的のために突き進んだ。
悲劇に見舞われながらも真実を知り、ゼロ・レクイエムを遂行すると誓った。
そして彼は見事にゼロ・レクイエムを成し遂げ、全ての罪を背負って死んだ。
ルルーシュについて何かしらの謎が解明されていないわけでもなければ、やり残したことがあるわけでもない。
彼について語るべき物語は、もう無いと言ってもいいぐらいなのだ。それでも新作映画を作らなきゃいけないので、製作サイドはジルクスタンという新たな敵を用意し、「ナナリーの救出」という目的を用意している。
だけど、ルルーシュはTVシリーズで神をも超える力を行使し、世界のスクラップ&ビルドを完遂させた男なのだ。
そんな奴に今さら「ナナリーの奪還」というミッションを課しても、話のスケール感が比較にならないぐらい小さくなっている。
シャムナのギアスはチート能力っぽい扱いだけど、それでも厳しいよ。スザクはTVシリーズの最終回で、二代目ゼロを継承している。彼にとってゼロの仮面を被って生き続けることが、大罪を犯した報いになっているのだ。
しかし本作品では、その贖罪さえも台無しにしてしまう。
「シャーリーの死」という出来事も、劇場版3部作によって完全に「無かったこと」にされた。
TVシリーズのルルーシュは、シャーリーが殺害されるというショッキングな出来事を体験したからこそ、腹を括った部分もあったわけで。
そんな重大な出来事すら、無神経に抹消しているわけだ。ルルーシュが生きていると知ったカレンは「これはルルーシュが望んでいたこと?」とC.C.を責めるが、その通りだと感じる。
ルルーシュはゼロ・レクイエムで世界の悪を一手に引き受け、ゼロに殺されることで自分なりのケジメを付けたわけで。それなのに、「約束が残っているから」というだけでC.C.がルルーシュを空っぽの器として生き長らえさせるのは、あまりにも身勝手な行為ではないかと。
そのことでC.C.が葛藤しているならともかく、そんな様子も皆無だし。
映画の途中でルルーシュは完全復活を遂げているけど、「だったらOK」という問題でもないしね。
ルルーシュが何の罪悪感も抱かず、平気で復活を受け入れているのも、いかがなものかと思うし。ルルーシュの復活を盛り上げたいのは分かるが、そのために雑魚キャラ丸出しの連中を相手にしたカレンや咲世子たちが捕まるとか、C.C.が撃たれて追い込まれるとか、そういう状況を作るのはダメだろ。
「全てはルルーシュのために」って感じで、ルルーシュを崇めるためにC.C.たちを貶めるなよ。
ルルーシュが「中身が幼児の弱々しい人物」として動いている時間帯も、まるっとカットでいいよ。
復活シーンを初登場にして、そこまでは出さなくていいよ。シャムナがギアスを使って状況を逆転させると、そこからは「シャムナが何度もタイムリープし、ルルーシュが必死に考えを巡らせる」という展開になる。
このルルーシュがシャムナのギアスを見破って窮地を突破するまでの時間帯が、つまんないんだよねえ。
もう最終決戦に突入しているのに、動きが停滞しちゃうのよ。
その後にはCの世界でC.C.とシャムナが話したり、ルルーシュとナナリーが行動したりするシーンがあるけど、これも似たようなモンだ。
そんなことより戦闘シーンに集中すればいいのに、と思ってしまう。あと、ルルーシュが復活したら、そこからは「黒のカリスマであるルルーシュがギアスと知略を駆使し、圧倒的な強さで敵を駆逐する」という展開で最後まで畳み掛けてもいいと思うんだよね。
せっかく「ルルーシュの復活」で観客の気持ちを高めておきながら、「シャムナに先を読まれて焦りまくる」という様子を見せると、一気に萎えちゃうんじゃないかと。それは構成として上手くない。
「シャムナのギアスで黒の騎士団が窮地に陥る」ってのは、ルルーシュが合流する前に片付けておけばいいんじゃないの。
何なら、黒の騎士団のピンチに復活したルルーシュが駆け付けるという形でもいいだろうし。(観賞日:2024年7月28日)