『50回目のファーストキス』:2018、日本

ハワイ旅行から帰国した女性は喫茶店で友人と会い、ツアーガイドの男が最高だったと語る。他にもハワイ旅行から戻った多くの女性が、ツアーガイドと深い関係になったことを楽しそうに話していた。全員が弓削大輔という男に口説かれ、ハワイで幸せな時間を過ごしていた。しかし大輔は連絡先を問われると必ず、適当な理由を付けて断っていた。「ゲイだから」「神に仕える身だから」「スパイだから」など、その度に彼は異なる嘘をついて女性の元を去っていた。
大輔は食堂を営む友人のウーラ山崎に頼み、新しい観光スポットとして宇宙人の置いた石を用意してもらった。彼は日本からの観光客を騙して稼ぐため、その石を用意したのだ。大輔が勤務するカイワレツアーガイドは、社長の味方和彦と事務員の高頭すみれを含む3名しかいない小さな観光会社だった。すみれは大輔のアイデアに呆れるが、味方は喜んだ。すみれはノースショアの星空が見える絶景ポイントを観光客の女性たちに見せるよう勧めるが、大輔は「客になんか見せねえよ」と拒否した。枕営業で悪い評判が広まっていることをすみれは指摘するが、大輔は全く気にしなかった。
車が故障した大輔はレッカーを待つ間、近くのカフェ「KENEKE'S GRILL」に立ち寄る。店長のスーは卵を食べるよう言い、料理人のニックにスパムエッグを注文した。大輔はワッフルで山を作っている藤島瑠衣という女性に気付き、目を奪われた。夜、大輔は天文台で助手のグリフと恒星の研究をしながら、ウーラに瑠衣のことを話す。彼は「気になる女性」とだけ言うが、ウーラは「一目惚れだ」と冷やかした。大輔は日本からの観光客にしか手を出さないポリシーを持っていたが、瑠衣はハワイ在住だろうと推測していた。
大輔は恒星の新しい天体を発見して興奮し、論文を執筆することにした。なぜ腕がいいのにツアーガイドをしているのかとグリフに質問された彼は、大きな夢があるので金が必要なのだと答えた。大輔は瑠衣について、ウーラに「研究の邪魔だから二度と会わない」と告げる。しかし翌日、大輔は再びカフェへ赴いた。彼はワッフルで家を作っている瑠衣に声を掛け、爪楊枝をドアの蝶番代わりに使う方法を提案した。瑠衣は大輔を受け入れ、同じテーブルで食事をするよう持ち掛けた。
大輔は瑠衣に、アルバイトでツアーガイドをしていること、天文学を勉強していることを話す。彼が星について詳しく語ると、瑠衣は熱心に聞き入った。瑠衣は父の誕生日なので家に戻らないといけないと言い、明日も同じ時間に朝食をどうかと誘う。彼女は大輔に、美術教師として働いていることを明かした。大輔と瑠衣は、どちらも一緒に朝食を取る約束を大喜びした。しかし次の朝、大輔がカフェへ出向いて声を掛けると、瑠衣は気味悪がって「アンタなんかに会ったことが無い」と口にした。
瑠衣はニックに助けを求め、スーは大輔を外へ連れ出した。スーは大輔に、瑠衣が事故で短期記憶を失っていることを教えた。父の健太が運転する車でパイナップル畑へ出掛けた時、その事故は起きた。健太は道路に飛び出した牛を避けようとしてハンドルを切り、車が木に激突したのだ。健太は軽傷で済んだが、瑠衣は頭部に大怪我を負った。彼女は事故前夜までのことを全て覚えているが、新しいことは毎晩寝る度に忘れてしまう。朝になって目が覚める度、去年の10月9日に戻ってしまうのだ。健太は特注した新聞を玄関に置き、瑠衣に同じ日だと思わせているのだとスーは大輔に説明した。
帰宅した瑠衣は、健太や弟の慎太郎と会話を交わす。彼女は健太の52歳の誕生日を祝福し、プレゼントを渡した。健太と慎太郎は何度も同じことを繰り返しているが、初めてのように振る舞った。瑠衣が執心した後、2人は彼女がガレージで描いた絵を塗り潰し、10月9日が繰り返されるように隠蔽工作を施した。翌朝、大輔はカフェへ赴き、初対面として瑠衣に声を掛けた。しかし瑠衣が気味悪そうにしたので、すぐに退散した。次の日、彼は別の方法で話し掛けるが、また拒絶された。
翌日、大輔は泣く芝居で瑠衣の気を引き、会話を交わすことに成功した。大輔が別れを告げて去ろうとすると、瑠衣は「それで終わり?あんな嘘ついて電話番号も聞かないの?」と呆れたように告げる。彼女が車で去ったので、大輔は急いで後を追い掛けた。スーはニックに「ゲームは終わりよ」と言い、健太に電話で事情を説明した。大輔が藤島家に着くと、健太が立ちはだかった。彼は「娘には会うな。あのカフェには行くな。娘が苦しむのは耐えられない」と話し、大輔を追い払った。
大輔はカイワレツアーガイドの事務所に戻るが、すみれから客を迎えに行くよう言われても動こうとしなかった。彼は味方に、「好きな女との交際を親に反対されたら、どうします?」と質問する。味方が「親の言うことなんて聞く必要ねえ」と答えると、大輔は事務所を飛び出した。彼は「カフェに行かなきゃいいんだろ」と考え、瑠衣の車を道で待ち伏せした。彼は自分の車が故障で動かなくなったように装い、瑠衣と楽しく話すことに成功した。
翌日と翌々日は大輔の作戦が失敗に終わり、瑠衣の車を停めることは出来なかった。3日目に大輔はウーラの力を借り、彼に殴られている芝居で瑠衣の車を停めることに成功した。しかし瑠衣が金属バットでウーラを殴打して追い回したので、大輔は狼狽した。そこへ健太が慎太郎と共に車で現れ、大輔に「見せたい物がある」と告げて家へ招いた。健太はガレージで鼻歌を歌いながら絵を描いている瑠衣の姿を大輔に見せ、「君と会った日だけは歌う」と告げた。
健太は大輔の気持ちを確かめ、彼がカフェに通うのを黙認する。瑠衣はカフェで大輔に話し掛けられるが、警官が自分の車を見ていたので慌てて外へ飛び出した。警官から「車検が5月で切れている」と指摘すると、瑠衣は「来年の5月よ。まだ10月」と反論する。しかし近くにいた人の新聞で年月日を確認しようとした彼女は、去年の10月9日ではないことを知って動揺する。彼女は他の新聞を調べ、全て同じ日付になっていることを知った。
家に戻った瑠衣は健太を問い詰め、真実を知らされた。ショックを受ける彼女に、健太は事故の記録とカルテを見せた。主治医に会って話を聞きたいと彼女が訴えると、健太は「何度も聞いてるよ」と告げる。大輔は同行を希望し、瑠衣たちとキャラハン研究所へ行く。主治医の名取は病気について瑠衣に解説し、「君の状態は一生変わらない」と厳しい現実を教えた。彼は「君はマシな方だ」と言い、わずか10秒しか記憶を保てないトムという患者に会わせた。
瑠衣は大輔に礼を言い、明日は自分が大好きな百合の花について話すよう助言して家に戻った。健太は大輔を「一杯付き合え」と酒に誘い、ハワイに滞在している理由を尋ねる。大輔は恒星を研究していることを話し、滞在期間を訊かれると「ワシントンの近くにあるゴダード宇宙センターの研究チームが、発表した論文に目を留めるまで」と答えた。彼は瑠衣を騙すための面倒な生活を変えるべきだと持ち掛け、「少し考えさせてほしい」と告げた。
翌朝、大輔は藤島家へ行き、瑠衣に隠れファンからの贈り物と称して百合の花束とDVDを差し出した。瑠衣がDVDを再生すると、それは大輔が彼女に今までの経緯を説明するために作成した映像だった。翌日以降は、瑠衣が目を覚ますとベッドの傍らに貼られた「DVDを見て」というメモが見えるようにした。瑠衣は大輔とビーチに出掛け、彼が話す様子を動画に収めた。大輔は瑠衣の質問を受け、彼女への愛を語る。そんな彼の姿を撮影しながら、瑠衣は微笑を浮かべた。
大輔は瑠衣とデートを重ね、その度にキスをする。彼にしてみれば同じ行為を繰り返しているのだが、瑠衣にとっては毎回がファースト・キスだった。大輔は瑠衣をノースショアの星空が見える絶景ポイントへ案内し、一緒に夜明けの星空を見ようとする。瑠衣は絶対に眠らず、そのまま2人で朝を迎えようと決意する。大輔が不意に「結婚してくれる?」とプロポーズすると、彼女は「もちろん」と即答した。しかし2人は眠り込んでしまい、翌朝を迎える。目を覚ました瑠衣は何も覚えておらず、悲鳴を上げて大輔を殴り付けた…。

脚本・監督は福田雄一、製作は今村司&井上肇&谷和男&高橋誠&弓矢政法&荒波修&吉羽治&本田晋一郎、エグゼクティブプロデューサーは伊藤響、プロデューサーは北島直明&松橋真三、アソシエイトプロデューサーは平野宏治、撮影は工藤哲也&鈴木靖之、照明は藤田貴路、録音は高島良太、美術は遠藤善人、編集は栗谷川純、音楽は瀬川英史、主題歌『トドカナイカラ』は平井堅。
出演は山田孝之、長澤まさみ、勝矢 、太賀(現・仲野太賀)、山崎紘菜、大和田伸也、ムロツヨシ、佐藤二朗、生越千晴、小宮有紗、青山めぐ、桜井ユキ、想乃、逢沢りな、可知寛子、福田えり、小林万里子、安田カナ、尾畑美依奈、保坂聡ら。


アダム・サンドラーとドリュー・バリモアが共演した2004年のアメリカ映画『50回目のファースト・キス』を日本版としてリメイクした作品。
脚本&監督は『銀魂』『斉木楠雄のΨ難』の福田雄一。
大輔を山田孝之、瑠衣を長澤まさみ、味方を勝矢 、慎太郎を太賀(現・仲野太賀)、すみれを山崎紘菜、名取を大和田伸也、ウーラをムロツヨシ、健太を佐藤二朗が演じている。
複数の女性が大輔との思い出を語る冒頭シーンでは、小宮有紗や青山めぐ、桜井ユキ、想乃、逢沢りな、小林万里子らが出演している。

どうやら巷では、オリジナル版が傑作として評価されているらしい。まあ、だからこそ日本版リメイクの企画が立ち上がり、ゴーサインが出たんだろうしね。
しかし私はポンコツ映画愛護協会で取り上げているぐらいなので、「オリジナル版は良かったのに」という観点から比較検証するつもりは無い。
ただ、どっちにしても、このリメイク版がポンコツであることは断言できる。
それに関しては、オリジナル版を傑作だと思っている多くの面々とも意見が合致するんじゃないかな。

日本人キャストが大半で、多くの台詞は日本語なのに、作品の舞台は日本じゃなくてハワイだ。
しかし、これは時代遅れの観光映画でもなければ、トンチンカンなバブリー感覚で製作されているわけでもない。
「1年を通して季節が変わらない場所」ってのが話を成立させるための必須条件で、だから常夏のハワイが舞台なのだ。
日本だと四季があるので、「今日が10月9日じゃないと瑠衣が気付いてしまう」という問題が起きるのだ。

なので事情は理解できるのだが、それでもバリバリの日本人である面々が芝居をしている姿を見ていると「ハワイという舞台が似合ってないなあ」と強く感じてしまう。
何とか方法を見出して「季節が変化する」という問題を解決し、日本を舞台に出来なかったのかなあと。
舞台をハワイから日本に置き換えるだけでも、この作品が醸し出す強烈な安っぽさが少しは薄まるんじゃないかと。
あくまでも「少し」でしかないので、それでも充分すぎる安っぽさは残るんだけどね。
でも、それは福田雄一作品だから仕方が無いでしょ。

大輔は日本からの観光客について、「日本人はハワイに来て浮かれてるから、何でも信じる」などと馬鹿にしている。単なるプレイボーイではなく、そうやって無駄に好感度を下げる要素が追加されている。
そんな彼はカフェで瑠衣に一目惚れしたのに、その場で声を掛けずに去る。「観光客しか口説かない」ってのがポリシーという設定だからだ。
でも翌日にカフェを訪れて瑠衣に話し掛けるってのは、もちろん誰でも簡単に予想できる展開だ。
ただ、コメディーであることに頼りまくって、「行きずりの関係としか女を見ていなかった大輔が初めて本気で恋をした」という部分の処理は超が付くぐらい雑だ。

大輔に声を掛けられた瑠衣は、自分からも積極的に彼を受け入れている。同じテーブルで食事を取るよう促し、翌日の朝食デートに誘っている。そして彼女は、「今まで出会った日本人て一番イケてる」と興奮して大喜びしている。
だけど、そういう反応はヒロインとしての魅力を削りまくっているぞ。
コメディー描写として、そういう反応を持ち込んでいるんだろうってのは分かるよ。でも、尻軽っぽさが半端無いのよ。
彼女は大輔にとって、「今まで遊んできた相手とは全く異なる女性」であり、「一生を共にしたくなる運命の相手」じゃなきゃダメなはずで。
そういう相手が、今まで出会った日本人と大輔を比較してガッツポーズするような奴ってのはマズいでしょ。

何しろ脚本&監督が福田雄一なので、コントをやりたがって色々とネタを持ち込んでいる。
オリジナル版もコメディーではあったので、明るく楽しい雰囲気で進めるのは間違っちゃいない。
ただ、福田監督は物語のスムーズな進行よりも、笑いを取りに行くためのネタを優先しちゃうんだよね。常連組のムロツヨシや佐藤二朗のアドリブを積極的に採用しているんだけど、そのせいでダラダラと間延びしてテンポが悪くなっている。
メインの恋愛劇を飾り付けて盛り上げるための演出じゃなくて、ただ邪魔なだけになっている。

大輔のキャラが、「ウーラと一緒に船の準備をしており、完成したらセイウチの生態を研究するため1年の予定でアラスカへ行く計画がある」という設定から「天文学を勉強しており、論文を発表してゴダート宇宙飛行センターに招聘されることを夢見ている」という設定に変更されている。
これは大きな改変であり、オリジナル版だと自らの努力だけで実現できる計画だったのが、リメイク版では「願望」でしかない。
アラスカへ行くのは船を完成させれば可能だけど、ゴダート宇宙飛行センターで働くのは自分の努力だけでは不可能だ。
優秀な論文を執筆し、認められる必要がある。

大輔が抱いているのは途方も無い夢に思えるのだが、そのために彼がやっているのは「天文台で恒星を観測して研究する」という作業だけ。
そりゃあ、個人で星を研究しているアマチュア研究者は大勢いるし、その中には新しい発見をする人もいる。ただ、宇宙飛行センターに招聘されるってのは、それとは全く次元の違う話であって。
大輔が本気でそこを目指しているのなら、もっと他に頑張る方法はあるんじゃないかと。彼が夢に向かって、真剣に取り組んでいるようには到底思えないんだよね。そこの情熱が全く見えない。
あと、天文学について何の知識も無く、専門家の助力も求めなかったのか、具体的な描写にも欠けているんだよね。
そこのディティールがスカスカなので、余計に大輔の浅薄さが増しているぞ。

オリジナル版でも思ったことだけど、瑠衣が「毎晩寝たら忘れてしまう。目が覚めたら昨日のことは忘れている」という障害なら、もしも徹夜して翌朝を迎えたら昨日のことは覚えているのかな。そうじゃなくて忘れてしまうのなら、どのタイミングで記憶は消えるのかな。
あと、健太と慎太郎は瑠衣を騙し続けている設定だけど、それって無理があるよね。2人は特注の新聞を用意したり、DVDで同じ日の映像を流したりしてるけど、それだけで誤魔化せるモンじゃないでしょ。
もし瑠衣がテレビのチャンネルを変えようとして、それを無闇に邪魔したら怪しまれるだろうし。それに彼女が外出した先で、色んな情報が入る可能性もあるし。
あと、瑠衣はスマホとか持ってないのかよ。ネットも利用してないのかよ。

泣く芝居で気を引いた大輔が別れを告げた時、瑠衣は「それで終わり?あんな嘘ついて電話番号も聞かないの?」と呆れたように告げる。
この時の彼女の態度も、コメディーとして描いていることは良く分かるけど、ヒロインとしての魅力を失わせているだけだ。
根本的な問題として、彼女を笑いの発信源として使う必要性を全く感じないのよ。それどころか、むしろ避けるべきでしょ。
それは健太にも言えることで、彼が大輔に対して「娘には会うな」などと話すシーンでも、途中で余計な笑いを取りに行こうとするんだよね。でも、そこは父親が娘のことを思って真剣に話しているシリアスなシーンであって、笑いを持ち込むことで台無しになっているのよ。
そして、そこに限らず、健太も笑いの発信源としては使わない方が望ましいキャラなのよ。

健太が「見せたい物がある」と言って大輔を家に招くシーンは、瑠衣に対する双方の愛情を確認するための、とても大切なシーンのはずだ。
しかし大輔がボケを入れ、健太がノリツッコミをするという掛け合いを持ち込むことにより、そのシーンのリズムと空気を無雑作に破壊してしまう。
名取が大輔や瑠衣にトムを紹介するシーンでは、悲哀を感じさせる音楽が流れる。でも、10秒しか記憶が続かないトムの描写が滑稽でしかないので、そこで「マジに切なくなってね」と演出されても内容に全く合致していないので無理だ。
そういう方向でも、福田監督は演出を間違っているわけだ。

大輔は「面倒な生活を変えるべき」と主張し、瑠衣にDVDを見せる。それは大輔が彼女に真実を教えるためのメッセージ映像だが、その中には「再現ドラマ」のパートがあって、ウーラが瑠衣の役を演じている。
このパートでは、ムロツヨシが余計な笑いを取りに行く。
そのため、瑠衣は涙を流しているし、バックに山崎まさよしの『One more time,One more chance』まで流しているけど、まるで心に響かない。
感動させたいのなら、そっちの方向性で徹底しろと言いたくなる。
山崎まさよしの『One more time,One more chance』に関しては完全に無駄遣いだし、むしろ邪魔にさえ感じるほどだ。

絶景ポイントで星空を見上げた大輔と瑠衣は結婚を約束し、永遠の愛を誓う。しかし大半の観客が、「瑠衣が眠ってしまい、翌朝には大輔のことを忘れてしまう」という展開になることを予想するだろう。
その通りの展開になるのだが、そこの予定調和は一向に構わない。ただ、そこは絶対に、「切ない出来事」として描くべきだ。でも実際には、コメディーとして描かれている。
状況を考えれば、「記憶の無い瑠衣が悲鳴を上げて大輔を殴る」という内容になっちゃうのは分からんでもない。ただ、それだと恋愛劇として盛り上げた前夜の出来事が台無しになってしまう。
そこをフリにして笑いを取りに行っているのも分かるのよ。ただ、それによって得られる笑いより、失ったモノの方が圧倒的にデカいぞ。

大輔は別れを決意した瑠衣に対し、「子供を作ろう」と約束したことを語る。瑠衣は「そんなの絶対無理よ。自分の大きなお腹を見ても、身に覚えが無いのよ」と言うが、その通りなのよね。
しかし完全ネタバレを書くと、ラストシーンで2人は「結婚して子供がいる」という状態になっているのだ。
「自分の大きなお腹を見ても、身に覚えが無い」という問題は、どうやって解決したのか。
妊娠中の生活も出産も、どう考えたって無理があるだろ。そして出産後の生活を考えても、やはり無理があるだろ。
2人がそれでいいとしても、それは子供に対して無責任で身勝手な選択にしか思えないぞ。

(観賞日:2020年2月8日)

 

*ポンコツ映画愛護協会