『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』:2009、日本

西暦2220年。宇宙空母ブルーノアとスーパーアンドロメダ級戦艦が護衛する地球人類の移民船団が、謎の大艦隊の待ち伏せを受けた。 激しい攻撃を受け、護衛艦隊は次々に破壊されていく。戦艦の一隻に船長として乗り込んでいた古代雪も、爆風にさらされた。地球から 1万688光年の位置にある宇宙開拓辺境では、深宇宙貨物船「ゆき」の船長・古代進が働いていた。彼の元に妻・雪からの荷物が届いた。 手紙には、帰りを娘の美雪と待っていることが綴られていた。
難破船発見の知らせが届き、古代は副長の大村耕作や船員の桜井洋一たちと共に生存者救出へ向かった。壊滅状態のブルーノアには、 生き残りの乗組員がいた。古代たちが駆け寄ると、彼は地球防衛軍の上条了だと名乗った。手当てを受けた彼は、アマールへ3億人の人々 を送り届ける途中だったと説明する。そこへ艦隊が襲撃してきた。激しい攻撃を受けても古代は全く動揺せず、自信に満ちた態度で見事な 操縦を見せ、上條にミサイルを発射させて敵を撃破した。
地球連邦科学局長官の真田志郎は、移民船団本部長・島次郎から第1次移民船団が襲撃された時の映像を見せられた。敵の正体が全く 分からないため、島は「事態の解明が出来るまでは、第3次移民船団の出発準備は見合わせるべきでは」と提案する。しかし真田は計画 通り進めるよう指示し、「今、この地球の危機を救えるのは古代しかいない」と口にした。直後、古代は3年ぶりに地球へ戻った。彼は 水没した地球を眺め、「アクエリアス」と呟いた。
古代は真田から、移動するブラックホール「カスケード・ブラックホール」の観測映像を見せられた。それに地球が飲み込まれることは 避けられず、到達まで残り3ヶ月だと真田は語る。初めて観測されたのは3年前で、対策が検討されたが、宇宙移民以外に方法は無いと いう結論に至ったのだ。現在は第2次移民船団がアマールへと向かっている。真田は古代に、第3次移民船団の護衛艦隊司令を務めて ほしいと依頼する。「かいかぶりすぎです。俺は地球を捨てて3年もさまよっていた男ですよ」と、古代は断った。
真田は古代に、「お前ならそうすると考えて、雪は第1次移民船団の団長を引き受けた」と語る。古代が帰宅すると、娘の美雪は無愛想な 態度を取った。彼女は「お父さんはヤマトに縛られてる。お母さんは物分かりがいいフリしてただけ。ホントは寂しかったのよ」と反発 した。そこへ、第2次移民船団が謎の艦隊の攻撃を受けて消息を絶ったという連絡が入った。それは第1次移民船団の時と同じ宙域だ。 映像を見た古代は、真田に「俺が遭遇したのとは別のフォルムだ」と告げた。
古代が第3次移民船団の護衛艦隊司令を引き受けると、真田は「もう船は用意してある。宇宙戦艦ヤマトだ」と述べた。古代がヤマトに 乗り込むと、航海長の小林淳はスパイだと勘違いして殴り掛かった。慌てて駆け付けた機関長の徳川太助は、古代との再会を喜び、ヤマト 再建に取り掛かっていることを話した。すると機関部制御担当の双子の兄弟・天馬走と翔が現れ、「機関室を再現したのは俺たちだ」と 得意げに言う。徳川は古代に新起動エンジンを見せ、波動砲も6連発が可能になったことを語った。
古代が電算室へ行くと、チェックしている桜井が興奮していた。チーフナビゲーターの折原真帆が、古代に挨拶した。古代は、彼女が 天才ナビゲーターだという噂を聞いていた。発進準備に入る中、小林が戦闘班長となった上条に「負けた帰った奴に波動砲を任せてもいい ものかと思ってな」と挑発的な言葉を吐き、険悪な雰囲気が流れる。徳川が制し、副艦長の大村が止めに入っても、小林は「副艦長だか 何だか知らないが、ヤマトをここまでに仕上げたのは俺や天馬たちだぜ」と反抗的な態度を取った。
ヤマトが発進した後、古代は艦内医の佐々木美晴にゴーグルを装着している理由を尋ねた。すると彼女は、本業はパイロットだと答えた。 ヤマト率いる護衛艦隊と移民船団は、ワープで惑星アマールを目指す。その頃、大ウルップ星間国家連合の会議が開かれていた。各国の 代表が集まる中、SUS国の代表メッツラーは「地球は平和を脅かし、宇宙を侵略しようとしている。連合の繁栄のために地球を滅亡 させるべきだ」と主張した。ベルデル、フリーデ、エトスの代表も同意した。
「地球からの大艦隊を発見次第、殲滅せよ」という星間国家連合軍の決議案は、エトス軍艦隊司令長官のゴルイ提督に伝えられた。真帆は 移民船団が襲撃された中間地点付近で探査プローブを射出し、敵のハニカムサーチネットが侵入を監視していることが判明した。その領域 は、驚くほど広大だった。それを回避するために迂回ルートを通ろうにも、移民船団のエネルギーでは難しかった。
真帆は、近くにあるブラックホールに向かって飛べば、重力を利用して加速を付けるフライバイが可能だと語る。ただし、失敗すれば ブラックホールに吸い込まれる。しかし他に道が無いため、古代はフライバイの決行を指示した。移民船団の第1グループは加速し、 ワープに成功する。それを見ていたゴルイは感服するが、全艦に突撃を指示した。古代は移民船団にワープを続けさせ、ヤマトを後方に 移動させて迎撃態勢に入る。すると別の2方向から、新たにベルデルとフリーデの艦隊が出現した。
古代は護衛艦隊を2手に分けて、左右の敵を攻撃するよう告げる。中央の敵はヤマトが迎え撃つ。古代はヤマトの操縦を引き受け、小林に コスモパルサー隊の指揮を命じる。ゴルイはヤマトの戦いぶりが他の艦にも勇気を与えていると気付き、ヤマトだけを集中攻撃するよう 命じた。敵の激しい攻撃にカッとなった上条が波動砲を発射しようとすると、古代は平手打ちを食らわせ、「バラバラの船団に波動砲を 撃っても効果は無い上、ヤマトはワープのエネルギーを失う」と諭した。
移民船を一隻も失うまいとする気高いヤマトの戦いぶりに、ゴルイは「あれが侵略者の戦いなのか」と疑問を抱く。葬るには惜しい敵だと 考えたゴルイは、砲撃の中止を命じた。今まで成り上がりのSUSに手を貸していたゴルイは、武人としての誇りを思い出したのだ。彼は 部下に「我々も誇りを取り戻そうではないか」と言い、全速前進を艦長に指示した。彼はヤマトに通信し、大ウルップ星間連合の議決で 攻撃したこと、連合の主導権はSUS国が握っていることを語った。
メッツラーはゴルイの旗艦シーガルに通信し、「二度と私の命令に逆らえばエトス星を殲滅する」と脅した。ヤマトや移民船団はワープに 成功し、アマールに到着した。古代は移民をまとめている士官に、雪のことを尋ねる。士官は、彼女が行方不明だと告げた。雪の軍艦は 無人でワープしてきたという。軍艦は残骸のようになっており、雪の遺留品はズタズタになった帽子だけだった。
古代は真田にアマール到着の報告を入れ、生存者は合計6億3千万人だと報告した。美雪は動物病院の院長・佐渡酒造から古代たちが無事 にアマールへ到着したことを教えられるが、「お母さん一人助けられないのに」と反発した。古代はアマールのイリヤ女王と会談し、彼女 から「SUSの呼び掛けで戦乱の日が終わり、星間連合が発足した」と教えられた。イリヤは「アマールはSUSに資源を提供しており、 その代わりに庇護を受けている。それが真の平和と呼べるのか」と悩みを口にする。
会談後、古代はパスカル将軍と部下たちに銃を突き付けられる。パスカルは「我が国から退去してくれ。我が国が地球人類を受け入れれば 、星間国家連合から武力制裁を受ける。この国を守るためだ」と要求した。だが、そこへメッツラーが指揮する星間国家連合軍が攻撃して きた。パスカルは古代に「手出しはしないで頂きたい。これ以上、我々を窮地に追い込まんでほしい」と頼み、出撃した。
一次攻撃を終えた連合軍が立ち去り、上条は出撃命令を望む。しかし古代は、「我々の判断がアマール国に大きく影響を与えてしまう。 不用意には飛べない」と言い、戦闘配備のまま待機するよう指示した。そこへ戦闘機が飛来し、第二次攻撃が開始される。ゴルイは メッツラーに、同盟国への攻撃が誰の指示なのかと尋ねた。メッツラーは「SUS国だ。SUS国の決定は、星間国家連合の決定だ」と 言い、アマールを攻撃するよう命じた。
ゴルイはメッツラーの命令を拒否し、ヤマトに通信して「エトス人民としての決断だ。我々は平和と引き換えに抑圧されてきた。それが 星間国家連合の正体だ。そのくびきを絶つ」と語った。シーガルはメッツラーが乗り込む旗艦マヤに特攻し、ゴルイたち命を落とした。 メッツラーはマヤから脱出した。アマール民衆は王宮に押し寄せ、「ヤマトと共に戦おう」と声を上げる。
心の中で雪と会話を交わした古代は、移民船団を地球に帰還させることを大村に指示した。彼はイリヤに通信し、星間国家連合に宣戦布告 することを告げる。するとイリヤは「私も貴方と同じように決意しました」とSUSと戦う意志を示す。ヤマトが発進すると、パスカルが 「我が艦隊も戦列に加えていただきたい」と申し出た。古代は攻撃目標を要塞に定め、小林のコスモパルサー隊を出撃させる。ヤマトは 中央突破を目指して前進した。
メッツラーは部下に、ハイパーニュートロンビームを発射するよう指示した。連合艦隊も巻き込むことになるが、彼は「構わん」と冷徹に 言う。ヤマトを守るため、パスカルの艦は犠牲となった。それを見た他の国の艦隊が去っていく。SUSのバルスマン総司令官は、全ての 砲門を開いてヤマトを攻撃しようとする。危機を察知した古代は反転上昇を指示し、ヤマトは敵の攻撃を回避した。
SUSの要塞は、ヤマトの攻撃を全て弾き返した。真帆はエネルギー流を解析し、磁場が防壁となっており、砲身がシールドの役割も 果たしていることを告げた。大村は古代に、ヤマトに格納されている重攻撃艇・信濃を借りたいと申し出た。信濃には波動エネルギーを 装備したミサイルが24発積載してある。それを使ってシールドを破壊しようというのだ。まだテストは終わっておらず、古代は危険だと 考える。しかし大村は「他に方法がありません」と言い、出撃の承諾を求めた。
大村は1人で信濃に乗って出撃し、特攻してシールドを破壊した。徳川は古代に、「波動砲を全て要塞に撃ち込みましょうか」と提案する 。しかし古代は、残り6発の内の1発だけ残すよう指示した。波動砲によって敵を撃滅したかに思えたが、要塞は次元を利用して移動する 形態に変貌して攻撃して来た。古代は太陽に向かうよう指示を出した。それが太陽にカモフラージュしたエネルギー供給源だと、古代は 見抜いていたのだ。
波動砲で太陽を破壊すると、それに巻き込まれたSUSの要塞も崩壊した。するとヤマトのメインバネルにメッツラーが姿を現した。彼は 不敵に笑い、異形の生物に変身する。そして「人よ、我々はお前たちとは違う生命体。この小惑星を支配するため遣わされたに過ぎん」と 語り、「この世界はお前たちにくれてやる」と告げて姿を消した。ヤマトはアマールを離れ、ワープを繰り返して地球へ帰還する。地球 では人類の避難が進められるが、美雪の乗った救命艇が落雷によって墜落してしまう…。

監督は西崎義展、総監修は舛田利雄、原案は石原慎太郎、企画・原作・製作総指揮は西崎義展、脚本は石原武龍&冨岡淳広&西崎義展、 アソシエイトプロデューサーは山本暎一、エグゼクティブプロデューサーは西ア彰司&西崎義展&中沢敬明、 絵コンテ・チーフディレクターは白土武、キャラクターデザインは湖川友謙&国友やすゆき&高橋信也、CGプロデューサーは貞原能文、 衣裳デザイン協力はMIHARA YASUHIRO、メカニックデザインは小林誠、総作画監督は湖川友謙、作画監督は宇田川一彦&高橋信也、 撮影監督は加藤道哉、美術監督は竹田悠介、演出は高山秀樹、メカニック演出は羽原信義、音響監督は吉田知弘、 スペシャルアドバイザーは田代敦巳、効果は倉橋静男、編集は西崎義展&坂本雅紀、録音は井上秀司、副監督は小林誠、音楽監督・指揮は 大友直人、演奏は日本フィルハーモニー交響楽団、ヤマト・オリジナルスコアは宮川泰&羽田健太郎、ピアノは横山幸雄。
主題歌『この愛を捧げて』THE ALFEE、作詞・作曲は高見沢俊彦、編曲はTHE ALFEE。
挿入歌『宇宙戦艦ヤマト2009 with Symphonic Orchestra』THE ALFEE、作詞は阿久悠、作曲は宮川泰、編曲は高見沢俊彦、 オーケストラアレンジは山下康介。
声の出演は山寺宏一、伊武雅刀、伊藤健太郎、浪川大輔、茶風林、野島健児、古谷徹、阪口大助、山口勝平、鳥海浩輔、高瀬右光、 藤村歩、柚木涼香、大浦冬華、由愛典子、青野武、置鮎龍太郎、永井一郎、緒方賢一、家中宏、飯塚昭三、田中敦子、井上和彦、子安武人、 小林修、小野塚貴志、小上裕通、小菅真美、高階俊嗣、沢口千恵、芦澤孝臣、櫛田泰道、千々和竜策、尾崎千瑛、樋口千穂、池田一敬、 増島愛浩。
ナレーターは羽佐間道夫。


1983年の『宇宙戦艦ヤマト 完結編』以来、26年ぶりに製作されたヤマトシリーズの劇場版。
完結編の17年後を舞台にしている。
古代の声を山寺宏一、ゴルイを伊武“デスラー”雅刀、上条を伊藤健太郎、小林を浪川大輔、大村を茶風林、桜井を野島健児、徳川を 古谷徹、天馬兄弟を阪口大助、美雪を藤村歩、真帆を柚木涼香、美晴を大浦冬華、雪を由愛典子、真田を青野武、島を置鮎龍太郎、佐渡を 永井一郎、アナライザーを緒方賢一が担当している。
かつてのシリーズから引き続いて登場するキャラクターは、古代、徳川、美雪、雪、真田、島、佐渡、アナライザー。
この内、声優が以前と同じなのは、徳川、真田、佐渡、アナライザー。
島と美雪は子供だったのが成長しているから理解できるし、古代に関しては富山敬さんが死去したので仕方が無いのだが、なぜ雪の声優 まで変えたんだろうか。麻上洋子(現・一龍斎春水)さんがオファーを断ったのかなあ。

まずキャラクターデザインが今までと全く異なるので、その段階で拒絶反応が出る。
そりゃあ、西崎義展プロデューサーと松本零士氏が裁判沙汰になるぐらい険悪な関係になっちゃったから、松本キャラじゃないのは 仕方ないんだけどさ。
西崎氏は「ヤマトは俺の物だ」と主張して、裁判でそう認められちゃったしね。
ただ、ワシの中では、ヤマトは「松本キャラありき」のモノなのよね。

なんせ今までのキャラと顔が全く違うので、過去の作品と頭の中で上手く結び付かないのよね。
幾ら年を取ったからといっても、古代も真田も、まるで別人だもんなあ。
しかも新しいキャラクター・デザインが冴えない上、動画のクオリティーも低い。表情の変化に乏しく、ドラマを盛り上げてくれない。
あと、CGの質が悲しくなるぐらい低い。2Dと3Dが全く馴染んでないし。ホントに2009年の作品なのかと。
宇宙船を外から写しているカットがあって、次に船内の人物のカットになると、その質感の違いが露骨に出てしまう。

ヒロインを真帆という若い女にしているんだけど、なぜ雪じゃないのか。
38歳のオバサンではヒロインにふさわしくないということなら、美雪でいいじゃねえか。
若い新キャラをたくさん登場させているけど、これを若いアニメファンにも見てもらおうという考えだったんだろうなあ。
でも実際に映画館に足を運んだのは、かつてヤマト世代だった中年ばかり。
それは当然だと思うよ。
だって「ヤマト復活」という時点で、若い人の触手は伸びにくいでしょ。

西崎氏は大きな勘違いをしていて、幾ら若い女をヒロインにしたところで、それだけで若い人を呼べるってもんじゃないのよ。
むしろ、かつてのヤマトのキャラを、もっと大勢出すべきだったのよ。
それなのに西崎氏は何も分かってないから、古代だけを活躍させて、後は扱いが悪い。
ヤマトのファンが見たいのは、「あのキャラはどうなっているのか」という後日談であって、新キャラの活躍じゃない。
新キャラを登場させるなら、せめて旧キャラと関連のある設定にしておけよ。ヤマトの若いクルーは疎ましいだけだ。

冒頭に「原案 石原慎太郎」というデカい文字が出るので嫌な予感はしていたが、どうやら脚本には彼の思想が盛り込まれているようだ。
だからSUSはアメリカ合衆国で、連合軍は多国籍軍、アマールはアラブの国で、ヤマトは大東亜共栄圏を目指した日本である。
しかし、石原の右翼思想がモロに投影された設定よりも問題なのは(いや、それも充分すぎるほど疎ましいのだが)、そういうアメリカ 憎しのルサンチマン的メッセージさえ、マトモに表現できていないってことだ。
とにかく説明不足が甚だしい。何が描きたかったのか良く分からない。骨格がマトモに出来てない。
建材の質と量を誤魔化した違法建築みたいな映画だ。

雪はワープを指示した直後、爆風を浴びて、なぜか服が全て脱げて不自然なヌードになる。
古代は辺境の土地で貨物船の船長をやっているが、なぜ伝説のヤマト艦長である彼が、そんな窓際族みたいな仕事をやっているのかは 不明。上に嫌われて飛ばされたわけでもないのに。
古代は真田から、雪が第1次移民船団の団長だったことを知らされるが、それで驚くかと思ったら、そうでもない。
リアクションからすると、それは知っていたのかな。だけど、それなら救助に行った時、彼女のことを気にするはずだよな。
っていうか、知っていようがいまいが、雪を心配する様子が薄いのは不可解だ。

真田は古代に「もう船は用意してある。宇宙戦艦ヤマトだ」と、わざわざ「宇宙戦艦」と付けて語る。
そこで17年前の回想シーンが挿入されるが、それは『完結編』のフッテージなので、デザインも質感も全く違う。
そんなの入れない方が良かったのに。そんなのを申し訳程度に挿入したところで、前作を見ていない人には何のことやらサッパリ 分からないんだし。
で、前作を見ている人は、セリフで軽く触れるだけで、水惑星アクエリアスのことは理解できるし。

新しいヤマトのクルーは、軍人としての規律が全く出来ていない。
どうして、そんなチャラいキャラばかりにしたんだろう。
小林は上条を挑発し、副艦長である大村が止めに入っても反抗的な態度を取るが、何の影響を受けたんだよ、その生意気な キャラ造形は。
それは「若い奴らは、こんな風だからダメなんだ」と言いたいのか、それとも若い観客層に受けるにはそういう今風のキャラ造形にした 方がいいだろうという狙いだったのか。
どうであれ、ただウザったいキャラになっていることは否めない。ただ不愉快で邪魔なだけ。
血気盛んなのと、上官に対して偉そうで言葉遣いがなってないのは、全く意味が違うぞ。

新しい乗組員の持つ軽薄さは、ヤマトの雰囲気に全くそぐわないんだが、残念なことに、今回の映画には合っている。
ようするに、そういう軽薄な映画だってことだ。小林も軽いノリで女を口説きまくるしね。
アナライザーや佐渡のコメディー・リリーフ的な使われ方とは全く異なる。あれと同じにしちゃダメだよ。
ひょっとすると西崎氏、最近のオタク向けSFアニメに感化されたのかね。

いよいよヤマトが発進しても、主題歌のアレンジが違うし、ささきいさおの歌唱じゃないので、全くテンションが上がらない。
おまけにヤマトが上昇する絵も冴えない。
ヤマトが浮上した後、古代は女医の美晴がパイロットだと知るが、なんで兼務してるんだよ。しかも、その設定の必要性は皆無だし。
だったら普通にパイロットということでいいでしょ。
この女、メカニックに「艦内に負傷者が出たら?」にと言われると「アンタが応急処置しときな」と告げて出撃するが、完全に職務放棄で ある。戦闘機に乗るのが好きだから医者としての仕事は無視するとか、もうサイテーである。

っていうかさ、軍医は佐渡さんじゃなきゃダメよ。
今回のヤマト、古代と徳川しか、懐かしい顔が乗っていないのよね。
それもテンションが上がらない理由の1つだ。
決して昔のヤマト映画が良い出来映えだったとは言わない。っていうか、むしろ駄作続きだったと言った方がいい。
それでも、やっぱり昔の顔を多く登場させるべきだったと思うのよね。それとこれとは全く別問題だからさ。
あと、デスラーは、どうなったんだよ。

なぜSUSが地球を敵視して滅ぼそうとするのか、なぜアマールは地球からの移民を受け入れる際に星間国家連合に連絡しなかったのか、 なぜ地球は移民を決めた段階でアマールと星間国家連合の関係を調査しなかったのか、色々と分からないことは多い。
星間国家連合の内輪揉めは本筋に全く影響をもたらさず、敵の要塞が変化しても全く戦闘は盛り上がらず、護衛艦隊は何の存在感も 示さない。
SUSが全ての砲門を開いた際、古代はヤマトの上昇を指示するが、護衛艦隊には何の指令も出さないので、あっさり全滅するし。

ヤマトのファンが見たがっているのは、戦艦ヤマトが華々しく活躍する姿じゃないと思うのよね。
西崎氏や石原氏は、そこを根本的に間違えている。
見たいのは、傷付きながらも強大な敵に向かって必死に戦いを挑む姿なのよ。
つまり、そこに必要なのは「悲壮感」なのよ。
だけど今回のヤマト、まるでピンチに陥らない。どんだけ激しい攻撃を受けても、ほとんどダメージが無いんだよな。見た目がすげえ キレイなまま。
もっとボロボロに傷付いてくれよ。

ゴルイがヤマトに感服して特攻するのは、アホらしさしか感じさせない。
だが、その後も、大村が特攻して死ぬ展開がある。
どうやら、「特攻を称えよ」ということを描きたいようだ。
でも死亡フラグを立てていない人間が勝手に死んでも、まるで心は揺れ動かされないよ。
最後に真帆は死んだっぽいけど、そこに悲劇性は全く感じない。
死亡フラグを全く立てず、急に死ぬので、唖然とするだけ。

要塞が崩壊した後、メッツラーは『ドラゴンボール』に出てきそうな異形の生物に変身するが、もう失笑するしかない。
この後も、フヌケな展開が目白押し。
たかが落雷程度で救命艇が墜落するとか、古代が美雪を救出しただけで他の搭乗員の安否を完全無視して帰ってしまうとか。
そもそも古代がヤマト艦長としての任務を放棄して救出に行っているのは、素直に賛同できないんだよなあ。

「この世界はお前たちにくれてやる」と古代に言って姿を消したメッツラーは、避難民を乗せて出発したヤマトに再び現れ、「この時を 待ち焦がれていた。地球側が世界となる瞬間だ。お前たちの目にはブラックホールに見える物は、我が世界への扉。次元転移装置が 生み出す巨大なエネルギーの本流が裂け目を作り出しているに過ぎない。その向こうにあるのは我々の次元。資源となる惑星や恒星が 少なく、生きるためにお前たちの世界を求めた」などと、長々と詳しい説明をしてから去る御都合主義を披露する。
そのメッツラーの口上は、古代にブラックホールを撃滅するヒントを与える。「次元転移装置を動かしている物があるはすだ」と彼は言い 、波動砲6連発を全て撃ち込んでブラックホールを破壊しようと考える。
そんで実際にブラックホールを破壊するんだが、そうなると、そこまで「地球が滅びるから他の惑星に人類を全て移民させなきゃ」という ことでヤマトは行動していたのに、その地球が助かってしまい、今までの話は何だったのかということになる。
まさに卓袱台返しである。

エンドロールの最初に「この映画を故 宮川泰、阿久悠、羽田健太郎、木村好夫(ギター)、富山敬、実相寺昭雄(交響曲ヤマト監督) に捧ぐ」と出た後、デカデカと企画・原作・製作総指揮の西崎氏の名前が出る。
その文字のデカさに呆れるが、それは昔もそうだった。しかも、その後で監督としても再びデカ表示。相変わらずアピールがウザいなあ。
で、まだ雪も見つからずに終わっているが、この映画、なんと「第一部 完」なのである。
だけど、この仕上がりで続きを作るのは厳しいだろ。
完全にコケた本作品より、さらに観客動員が減る可能性が濃厚だぞ。

(観賞日:2011年2月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会