『宇宙戦艦ヤマト 完結編』:1983、日本

創成期の太陽系。40数億年の昔、地球が誕生して間もない頃。遥か銀河系大星雲の外から回遊してきた水の惑星アクエリアスは、まだ命を 持たぬ地球の傍を通り、その時、引力の干渉で地球に水をもたらした。アクエリアスからもたらされた水には、命の芽が含まれていた。 そこから誕生した生物は進化し、人類を誕生させた。そして西暦2203年、アクエリアスは地球へ迫りつつあった。だが、地球はその事実に 気付いていなかった。
その頃、銀河系の彼方で大きな異変が起きようとしていた。我々の銀河系に、異次元の空間から現れた銀河系星雲が交差した。これにより 、銀河系中心に多くの星々の衝突が発生した。白光星系の中にあるガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦は、共に壊滅の危機を迎えた。 地球防衛軍司令部は調査のため、宇宙戦艦ヤマトを向かわせた。ヤマトは無数の障害物を回避しながら、ガルマン・ガミラス帝国を目指す 。ヤマトはガルマン・ガミラス帝国の総統デスラーに通信するが、応答は無かった。
ヤマトがガルマン・ガミラス帝国に到着すると、壊滅的な被害を受けていた。艦長の古代進は、宿敵であると同時に友人であったデスラー の死を悼み、花を手向ける。乗組員がヤマトに戻ると、赤色銀河に襲われた。このままでは逃げ切れないと考えた古代は、航海班長の 島大介にワープを指示した。座標が計算できない状況であったが、古代は命令を変えず、ヤマトは無差別ワープに入った。
水惑星アクエリアスはディンギル星の前に出現し、あっという間に惑星を水没させた。無差別ワープでヤマトが辿り着いたのは、その ディンギル星の近くだった。メインパネルで異様なスケールの洪水を知った古代は、溺れている人々を救おうと考える。しかしヤマトは 制御を失い、救うことが出来たのは1人の少年だけだった。大勢の犠牲者を出し、ヤマトは星から離脱した。
古代は、自分の判断が間違いだったのかと悩んだ。そんな古代に、工場長兼技師長の真田志郎は、ディンギル少年の体の仕組みが、皮膚の 組成を除けば地球人と全く同じだと告げる。ヤマトは、水惑星が太陽系に進みつつあることをキャッチした。古代は地球防衛軍の司令長官 ・藤堂平九郎に通信を入れ、アクエリアスが地球へ向かっていることを伝えた。ただし衝突するのは6千年後であり、それまでに人類は 水没の危機を回避する方法を考え付くだろうと、彼は付け加えた。
ディンギル帝国の戦艦は、地球に帰還しようとするヤマトを発見した。指揮官のルガールII世は、ハイパー放射ミサイルで撃滅せよと命令 を下した。ヤマトは攻撃を受け、乗組員は放射性汚染を防ぐために宇宙服を装着する。だが、古代はヘルメットを被る前にミサイル攻撃を 受けた。乗組員は意識を失い、ヤマトは航行不能となる。しかし自動操縦システムが働き、ヤマトは地球へ向かった。一方、ルガールII世 は都市衛星ウルクに到着し、父親のルガール神官大総統に面会して母星の消滅を報告した。
ルガールは自分たちの移住先として、地球に目を付けた。彼はアクエリアスを超エネルギーでワープさせ、地球を水没させて人類を全滅 させようと企んだ。ルガールは地球に人類を封じ込めるため、息子を太陽系制圧艦隊の指揮官に任命した。1回のワープで移動させられる のは150光年が限度で、次のワープのエネルギー補充には24時間が必要だ。地球に到達するまでは20日間掛かる。ルガールはアクエリアス、 続いてウルクをワープさせた。
藤堂や参謀たちは、アクエリアスの接近について話していた。そこへ軍医の佐渡酒造が現れ、博物館で借りてきたバビロニアの粘土板文書 の一部を見せた。そこには、40数億年前に地球へ水をもたらしたのがアクエリアスだということが記されていた。冥王星基地は、ワープで 出現したヤマトを確認した。ヤマトは応答が無いまま地球に帰還し、佐渡たちが行くと全ての乗組員が倒れていた。佐渡は「宇宙服を着用 している連中は大丈夫だ」と言うが、藤堂の秘書官・森雪はヘルメットを着用せずに倒れている古代を見つけて絶叫した。
連邦政府により、地球防衛軍所属の艦隊と民間の宇宙船を使用した第一次避難船団が組織された。全ての人類を、一時的に太陽系の植民地 やスペースコロニーに避難させるためだ。地球水没まで、あと15日に迫っている。古代は恋人である雪の看護を受け、一命を取り留めた。 大艦隊が太陽系に侵入したとの連絡を受けた藤堂は、全地球艦隊を土星空域の避難船団へ向かわせるよう命じる。
地球艦隊が到着する前に、ルガールII世の率いるディンギルの太陽系制圧艦隊は避難船団を攻撃し、全滅させた。さらに地球艦隊も攻撃を 受けて壊滅した。雪は藤堂に、古代から預かった辞表を渡す。古代は判断ミスで大勢の乗組員を犠牲にした責任を取り、艦長を辞めると 決めたのだ。藤堂は雪に、「この人に電話を入れてくれ」と指示した。渡されたメモを見た雪は驚愕する。
ディンギル機動艦隊の攻撃艦隊は太陽系の主要惑星を制圧し、本隊の待つ冥王星に帰還した。古代はヤマトが修理されているドックへ足を 向け、翌日の発進命令が出たことを知った。古代が第一艦橋で「一乗組員でいい、もう一度、地球のためにヤマトと戦いたい」と願って いると、「それほどヤマトに戻りたいか」という元艦長・沖田十三の声が、彼のレリーフの方から聞こえてきた。
翌日、ヤマトに搭乗することを決めた古代は、乗組員として島や真田たちと並んでいた。そこに藤堂が現れ、「新艦長は昨日からヤマトに 乗り込んでおられる」と告げる。そこへ沖田の「総員、配備に就け」という声が響いた。雪も生活班の乗組員として、古代たちに加わった 。第一艦橋へ駆け込んだ古代たちは、沖田の姿を見て驚く。沖田は「説明は後だ」と言い、発進準備のための指示を出す。古代は沖田から 、戦闘班長に任命された。
ヤマトは発進し、宇宙空間に出た。沖田は古代たちに、当面の敵艦隊を撃滅し、アクエリアスに到達してワープを止める任務を説明する。 駆逐艦の艦長・水谷は、残存艦9隻と共に同行することを通信してきた。佐渡は沖田が生きていることについて、古代たちに「ワシの誤診 でな、まだ脳死に至っておられなかった。そこで長官の命令で特別医師団が編成され、宇宙放射線病の手術が行われた。安全が確認されて 、初めて長官から知らされた」と説明した。
ヤマトは戦闘空間に突入し、コスモゼロに乗り込んだ古代はコスモタイガー隊を発進させる。敵の激しい攻撃を受け、ヤマトを守ろうと した駆逐艦が壊滅的なダメージを負った。しかし圧倒的に優位だったディンギルの太陽系制圧艦隊は、なぜか途中で撤退する。沖田は 古代たちに、戻って乗組員の救助に当たるよう命じた。古代は「救助の時間を与えてくれているのかもしれん」と考えるが、そうでは なかった。救助艇が出て来たところで、ディンギルの艦隊が戻り、攻撃して来た。
しかし、ディンギルの艦隊は、またすぐに撤退した。それを不審に思った古代は、負傷しながらも敵を追尾することにした。すると、雪が ナビゲーターとしてコスモゼロに乗り込んできた。敵の本隊を発見した古代は、ハイパー放射ミサイル搭載母艦が発進直前だとヤマトに 報告し、そこで気を失ってしまう。雪が敵の座標を沖田に伝えた。ヤマトの攻撃でディンギルの母艦と機動部隊は壊滅的ダメージを受け、 ルガールII世は逃亡を余儀なくされた。
冥王星での戦いは終わり、ヤマトは地球に帰還した。だが、まだハイパー放射ミサイルの防御は解決されていない。乗組員は次の
戦闘に 備え、整備に万全を尽くした。雪はディンギル少年から「駆逐艦がヤマトを守って自分からミサイルに当たっていった。なぜ地球人は他人 のために死ぬの?」と尋ねられ、「地球では他人の幸せのために尽くすのが一番大切なことなのよ」と答えた。
既にアクエリアスは、残り2回のワープで地球を通過するところまで来ていた。3時間後には19回目のワープを終える。それに先んじて ワープを阻止するため、沖田はヤマトの発進を指示した。一方、息子を神殿へ連れて来たルガールは、「地球は我らの祖先が住んでいた星 だ」と教える。水惑星の接近によって祖先が生み出した文明は壊滅し、そこへ宇宙人が乗った円盤が救出に降り立った。そこで救われた 面々は、ディンギルで新たな王国を築いたのだと彼は説明し、息子に「ヤマトを討て。全艦隊を率いて発進せよ」と命じた。
発進してアクエリアスへとワープしたヤマトは、広大な海に着水した。滅び去った文明の跡はあるが、人の姿は無い。その時、「私は アクエリアス」という声がして、空に女性の姿が浮かんだ。彼女は「アクエリアスは地球に恵ばかりを与えたわけではありません。 気象異常の原因となって、洪水で人類の文明を押し流したりしました。それでも人類は試練を乗り越え、文明を発展させてきたのです。 試練も愛なのです。人は戦わねばなりません。勇気を持って試練と戦ってください」と語った。
彼女は古代たちに、ディンギル星人がアクエリアスの接近を早めていること、この星に敵がいないことを教える。南半球を偵察していた コスモタイガー隊は、海上に巨大な建造物を発見する。その時、彼らは敵機動部隊がヤマトへ向かっているのを捉えた。一方、ヤマトは アクエリアスの後方に、巨大な敵の要塞を発見した。真田はハイパー放射能ミサイルの防御装置を完成させ、沖田はヤマトを発進させる。 ルガールII世は後方からミサイルで攻撃してくるが、ヤマトは防御のためのビーム砲を発射した。
沖田は波動砲を発射し、ルガールII世を敗走に追い込んだ。ルガールは息子を切り捨てることに決め、ニュートリノビーム防御幕を放射 するよう部下に指示した。ルガールII世の船は、ニュートリノビームを真正面から浴びて爆発した。ヤマトは急いで離脱するが、ルガール はニュートリノビームを発射してきた。ヤマトは速度が上がらず、ビームに包まれて絶体絶命の危機に陥った。真田は波動エネルギーが 漏れて出来たスクリーンに気付き、「ニュートリノビームをストップさせる性質を持っているらしい」と口にした。
沖田は敵の衛星中心部に着陸するよう命じる。ニュートリノビームから脱出したヤマトは、ウルクに着陸した。その直後、古代たちは、 ワープエネルギー装置を発見した。ヤマトは、そこに主砲を集中させて破壊しようとする。古代はコスモタイガー隊を出撃させ、システム を停止させる。しかしルガールは、神殿にあるサブコントロールシステムによってアクエリアスをワープさせてしまった…。

総監修は舛田利雄、監督は勝間田具治&西崎義展、企画・原作・製作・製作総指揮は西崎義展、原作・設定・監修は松本零士、脚本は 山本英明&笠原和夫&山本暎一&舛田利雄&西崎義展、アソシエイト・プロデューサーは山本暎一、製作担当は佐伯雅久、チーフ・ ディレクターは白土武、絵コンテは白土武&遠藤政治、作画監督は高橋信也&金田伊功&角田紘一、 SF設定は豊田有恒、設定デザインは辻忠直、設定は山木泰人&小塚憲夫、戦略・設定制作は鶴見和一、 エフェクト・ディレクターは高山秀樹、メカニック・デザイナーは辻忠直&板橋克己&出渕裕、キャラクター・デザイナーは宇田川一彦& 高橋信也、ブンゲイは横山和夫、総作画監督は宇田川一彦、美術監督は勝又激、撮影監督は清水政夫、編集は千蔵豊、録音は林昌平& 宮内栄一、音響監督は田代敦己、音響効果は柏原満、音響は小山光弘、作詞は阿久悠、音楽は宮川泰&羽田健太郎。
主題歌「古代(おれ)とヤマト」歌:ささきいさお/作詞:阿久悠/作曲:宮川泰。
「ラブ・シュープリーム〜至上の愛〜」歌:八神純子/作詞作曲:八神純子 作曲:八神純子/編曲:宮川泰 。
挿入歌「明日に架ける虹」歌:トランザム 桑江知子/作詞:阿久悠/作曲:井上大輔/編曲:トランザム。
「二つの愛」歌:桑江知子/作詞:クニ・河内/作曲:井上大輔/編曲:宮川泰。
声の出演は富山敬、麻上洋子、納谷悟朗、ささきいさお、仲村秀生、青野武、野村信次、安原義人、林一夫、永井一郎、緒方賢一、 古谷徹、寺島幹夫、神谷明、伊武雅刀、小林修、筈見純、石田太郎、津嘉山正種、伊倉一恵、納谷六朗、田島令子、伊武雅刀。 ナレーターは仲代達矢。


「宇宙戦艦ヤマト」の劇場版第4作。「完結篇」と表記されているデータが多いようだが、オープニングで表記される漢字は「完結編」と なっている。
1981年に『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』が『ヤマトよ永遠に』の併映作品として上映されているが、テレフィーチャーだったものを 劇場公開しており、劇場版とは言い難いので、これを第4作と数えている。
ただし「新たなる〜」を第4作、これを第5作とする数え方もある。
古代役の富山敬、雪の麻上洋子、沖田の納谷悟朗、真田の青野武、佐渡の永井一郎、デスラーの伊武雅刀といった声優陣は、シリーズでは 御馴染みの顔触れ。島の担当声優は仲村秀生だが、彼が体調不良だったため、ささきいさおがダブルキャストで担当している(たぶん大半が彼 の声だ)。他に、ルガールの声を石田太郎、ルガールII世を津嘉山正種、ディンギル少年を伊倉一恵が担当している。

当初は70mmでの上映が予定されていたが、撮影や録音が間に合わず、封切りの際は35mm版が公開された。その後、手直しを施した70mm版が 公開されている。
この映画の前作に当たるTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマトIII』の時代設定は2205年で、この映画は2203年の設定だが、別にパラレル ワールドということではない。このシリーズでは良くある、御都合主義の強引な設定変更の1つである。
シリーズの最終作品として製作されたが、後にOVAや『復活篇』が作られたため、結果的には最終作という肩書きが外れた。
まあ、これが作られた時点で、もうシリーズが終結すると信じていた人は、少なかったかもしれないけどね。
なんせ、プロデューサーは悪名高き西崎義展だからさ。
これまでも、『さらば』とか『永遠に』とか題した映画を作っておきながら、「まだヤマトで金儲けがしたいし、まだ甘い汁が吸えるはず 」ということで、ズルズルと続編を作り続けてきた人だからね。

ゆったりとした仲代達矢のナレーションから、映画は始まる。たっぷりと間を取りながら、彼は地球とアクエリアスの関係が説明する。
そこで3分ほどを使っている。
その後、タイトルが表示されるので、そこから本編に入るのかと思いきや、まだナレーションが続くので、すげえタルい気持ちに させられる。
で、「ガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦は共に壊滅の危機を迎えた」というのは、1分半程度の説明で終わらせる。
『ヤマトIII』で描かれたガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦という銀河二大勢力の対立を、「その2つの国家があると話を作りにくい 」という理由で、簡単に壊滅させちゃってるわけね。

ガルマン・ガミラス帝国に到着した古代は、「やはりデスラー総統の命運は尽きていたのか」と漏らし、空にデスラーの姿が写る。そんで 古代と乗組員が花を手向ける。
実はデスラーは死んでおらず、後で登場するんだけど、その段階では「おいおい、デスラーの死というすげえ大きなイベントを、そんなに 淡白に処理しちゃうのかよ」とツッコミたくなる。
そこでは一応、観客にデスラーが死んだと思わせておきたいんでしょ。だったら、悲劇として大々的に盛り上げるべきでしょ。
古代がデスラーの死を確信して、1分足らずで、すぐに次のシーンへ移るって、どんだけ軽い扱いなんだよ。

ルガールII世は「我らの前に現れるのは全て敵だ」というムチャクチャな論理で、ハイパー放射ミサイルでヤマトを撃滅せよと 命令する。
でも、こいつらが星を脱出するシーンは無かったよな。そこは描いておくべきなんじゃないのか。それとも、水没する前に、もう惑星の外 に出ていたのか。
で、こいつらにヤマトは攻撃を受けるんだが、真田はミサイルの放射能が広がる現場にいないのに、攻撃を受けたという連絡を受けただけ で「これは我々が今までに遭遇したことの無い放射性物質を含んでいるミサイルだ」と分かってしまう。
相変わらず、この男は何でも知っているんだな。

真田は「大至急、全員に宇宙服を装着させよう」と言うが、宇宙服には放射能を防ぐ能力があるらしい。
でも実際にはヘルメットを着用しただけだぞ。ヘルメットと宇宙服はイコールなのかよ。
で、古代はヘルメットを被る前にモロにミサイルで放射性物質を浴びるんだが、なぜか生き延びる。
おいおい、あんだけモロに放射性物質を浴びて、しかも爆風で吹っ飛んで、なんで生きていられるんだよ。
どうやら宇宙服を着ていても他に大勢の犠牲者が出ているらしいのに、一人だけ丈夫すぎるだろ。

ルガールは「この世は強い者が栄えるためにある。弱い老人や女子供など滅びて当然」と言う。
おいおい、組成以外は人間と同じ体の仕組みなんだろ。だったら、女が全滅して、どうやって祖先を残すつもりなんだよ。
大体さ、そんなに自信たっぷりで強気な態度なのに、アクエリアスによる母星の消滅は全く阻止できてないんだよな。それって情けない ことなんじゃないのか。
それに、アクエリアスを何度もワープさせるだけの科学力があるなら、母星に衝突する前に回避できたんじゃねえのか。

この映画だと、ディンギル帝国を登場させず、「他の星を水没させたアクエリアスが地球にも迫る」という、『メテオ』もどきの内容に して、地球を救うための協力者として、ディンギル少年やデスラーを絡ませた方がスッキリするんだよな。
ただし、宇宙海戦がシリーズの売りでもあるので、そうなると人間タイプの敵を配置しなきゃいけなくなるんだよな。
でも、どうしても生物としての敵が欲しいということなら、アクエリアスに宇宙人がいる設定にでもしておけばいいんじゃないの。

ルガールがアクエリアスをワープさせた後、藤堂たちは水惑星について「接近したらどうなる?」と話している。
もうアクエリアスの急激な接近について把握しているのね。情報が早いねえ。
で、そこに佐渡が来て、40数億年前に地球へ水をもたらしたのがアクエリアスだということを説明するが、そこで宇宙神話を説明するなら 、冒頭シーンのナレーションによる説明は全く要らないでしょうに。

大艦隊が太陽系に侵入したとの連絡を受けた藤堂は、全地球艦隊を土星空域の避難船団へ向かわせるよう命じるが、遅いよ。
そもそも、なんで避難船団に護衛が全く付いていないんだよ。
それと、これまでガミラス帝国に始まり、短いスパンで何度も人類滅亡の危機があったにも関わらず、ヤマト以外の戦力増強が全く出来て いない連邦政府のボンクラぶりには呆れるよな。
全地球艦隊が、あっという間に全滅するんだぜ。壊滅的なダメージを負ったヤマトを短期間で修復できる技術力があるんだから、ヤマトに 匹敵する宇宙船艦を建造することぐらい容易なはずなのに。

古代が第一艦橋で「もう一度、地球のためにヤマトと戦いたい」と願っていると、「それほどヤマトに戻りたいか」という沖田の声がする 。で、次のシーンは翌日で、平然と古代は乗組員として並んでいる。
だけど、そこは「沖田艦長、自分はヤマトに戻ります」という古代の決意の言葉があったり、島や真田たちの元へ戻って話をしたり、出撃 することを雪に告げたりするシーンがあるべきだろう。
そこに限らず、この映画、とにかく編集が粗い。この映画っていうか、ここまでのヤマトの映画版って、全て編集が粗いんだよな。
ってことは、時間的制約とかの問題じゃなくて、純粋に製作サイドの編集センスが無いってことなんだろう。
「長くなるから仕方なくカットした」という言い訳は成立しない。だって、肝心なトコはズタズタに編集して削ぎ落としているくせに、 無駄なとこでダラダラしてるし。だから150も掛かってるんだぜ。
ようするに、削ぎ落とすところを間違えてるのよ。
っていうか、削ぎ落としているんじゃなくて、こっちが必要だと思っているシーンを、最初から描いていない可能性も考えられるけど。

「死んだはずの沖田が実は生きていた」という復活劇には呆れた。
生き返らせる必要なんて無いのに。苦悩していた古代が、沖田の声に導かれて迷いを断ち切り、再び艦長として出撃する決意を固めると いう形でいいのに。
で、生きていたことについて、佐渡は誤診だったことを語り、「全国の皆さんに、坊主になってお詫びしなきゃならんな」とカメラ目線で 詫び、「それ以上、どうやって坊主になるの?」と雪がツッコミを入れる。
そのギャグシーンには、どうリアクションすればいいんだろうか。

ヤマトがワープエネルギー装置を破壊しようとすると、ディンギル帝国も総攻撃を仕掛けるのだが、なぜかルガールが乗るのは 機械の馬。
いやいや、撃たれたら防御できないでしょ。もっと体を隠せるような乗り物に乗れよ。
部下が空を飛ぶ円盤に乗ってるのに、普通に地面を走る馬って、なんじゃ、そりゃ。
しかも馬に乗るのはルガールだけでなく、彼は騎馬隊を率いている。
でも、なぜかルガールには、ヤマトの面々の射撃が全く当たらないという御都合主義。

それまでさんざん戦ってきて、ルガールと対面した途端に古代が「移住したいのなら我々は喜んで受け入れる」と話し合いで解決しようと するのは、アホにしか見えない。
「戯けたことを言うな」と言われるのは、もっともだぞ。
あと、そのウルクの戦いでは島が命を落とすが、別に死ななくてもいいのに、無駄に頑張ったせいで死んだようにしか思えない。
腹を撃たれた時点で治療を受けていれば助かったでしょ。そこで彼が怪我を隠して無理をする必要があったのかというと、真田でも代理は 務められたしなあ。

古代と沖田はアクエリアスを止めるため、ヤマトを爆破する案を考える。「アクエリアスから地球へ水柱が伸びる途中で波動エネルギーと トリチウムを融合させ、水柱を断ち切る。ヤマトはそこで自沈する」という作戦だ。
で、トリチウムを積んでいるせいで、ルガールを攻撃することが出来ず、デスラーに助けてもらうんだが、冴えない展開だなあ。
クライマックスの戦闘で、ヤマトは全く関与しないんだぜ。
そんで、さんざん苦労させられたルガールは、あっという間にデスラー艦隊の攻撃で滅びちゃう。

で、ヤマトは大爆発を起こしているのに、なぜか沖田のいる第一艦橋は水没しただけで全く壊滅しておらず、沖田も傷一つ無いキレイな体 で目を閉じているだけ。
なんでズタボロになって死んでいないのかと。しかも姿勢正しく座ってるし。
おまけに、ヤマトは水の中から一旦は浮上しているんだよな。
それから沈むことで滅びを強調しているみたいだけど、いやいや、爆発したんじゃねえのかよ。

35mm版では、エンドロールの後、ヤマト乗組員が砂浜を走り、古代と森のラブシーンがあり、その辺りで挿入歌2曲が流れ、クィーン・ オブ・アクエリアスの地球へのメッセージがあり、沈んだはずのヤマトが宇宙を漂い、「宇宙船艦ヤマトのドラマは終わった。永遠の彼方 へと去って行く」といった重厚すぎるナレーションが流れる。10分ほど蛇足が続くわけだ。
あっ、蛇足って言っちゃったね。
で、それでも、まだ映画は終わらない。
なんと恐ろしいことに、デカデカと「完」という文字が表示されるだけで1分ほど費やす。
すげえ間延びのセンスである。

(観賞日:2011年1月31日)

 

*ポンコツ映画愛護協会