『ウルトラQザ・ムービー 星の伝説』:1990、日本

山梨の古墳近くで、男の変死体が発見された。刑事たちが現場検証を行っていると、TTVのディレクターである万城目淳が押し掛けた。彼は額に大きな穴のある奇妙な死体を確認し、助手の戸川一平がカメラマンに現場を撮影させる。死体の右手には、古代人が使っていた銅剣らしき物が握られていた。死体の衣服と周囲は、なぜか濡れていた。刑事は殺されたのが盗掘していた男であり、内輪揉めが起きたと考えていた。
万城目は刑事から、TTVのロゴが刻印された鉛筆が現場に落ちていたことを知らされた。それは取材協力者や番組出演者に、お礼として渡している物だった。その先端に噛まれた跡があるのを見た戸川は、万城目班の報道部員である浜野哲史の所持品ではないかと考える。しかし浜野は『古代史スペシャル』という番組の取材で奈良へ行っているため、万城目も山根報道部長も全く同意しなかった。万城目たちは一の谷博士に取材した映像を見てもらい、意見を求めた。一の谷は濡れていた液体が海水であると突き止めたものの、それ以外は検討が付かないと話す。
栃木の古墳近くでも男の死体が発見されたという報告が入り、万城目と戸川は急行する。刑事に質問した2人は、現場が東京の不動産会社に売却されたリゾート予定地であること、殺されたのは測量技師であることを知った。その現場も、やはり海水によって濡れていた。戸川は浜野らしき後ろ姿に気付いて追い掛けようとするが、そこには誰もいなかった。一の谷の総合研究所を訪れた万城目は、2つの事件が同一だと聞かされる。傷口に硝煙反応は無く、一の谷は「強い力で噴射する水に打たれたのではないか」という推測を口にした。
浜野は新人の江戸川由利子を含む報道部員3名を伴い、奈良の取材を続けていた。由利子が新しいビデオテープを取り出すと、なぜか海水で濡れていた。4人が車へ戻るとタイヤに穴が開いてパンクしており、地面が濡れていた。車に積んでおいた撮影済みのVTRを確認すると、そちらの被害は出ていなかった。取材クルーは奈良から九州へ向かう予定だったが、テープが足りない状況になっていた。そこで浜野は先にロケハンへ行くと決め、3人には東京へ戻るよう指示した。
テレビ局へ戻った由利子たちが撮影済みの映像を確認すると、乱れて使い物にならなくなっていた。吉野ヶ里遺跡のロケハンを終えた浜野が去ろうとすると、走って来た車に危うくひかれそうになった。浜野は椿塚遺跡を見に行くが、工業団地予定地になっていた。作業員の工事が進められる現場を浜野が立ち去る様子を、車に乗った謎の女が観察していた。女の車が走り去った後、工事現場では地割れが発生した。作業員が慌てて逃げ出す中、地面から巨大生物の尾が出現し、作業用機械を叩き潰して破壊した。
浜野は漁村の民宿に泊まり、古墳の取材をしていること、村の向こうにある常世島へ行くつもりであることを女将に話す。常世島は昔から神の島と呼ばれており、誰も渡る者はいなかった。それを聞いた女将の顔色が一瞬だけ変化したが、浜野は気付かなかった。女将は夜中に外出し、1人の漁師に「マリア様が、目覚めなさったそうです」と伝える。「それじゃあ、すぐにお祈りを」と言われた彼女は、その場を後にした。浜野は外の様子が気になり、民宿を出た。彼は白装束の村人たちが浜へ向かう様子を密かに観察するが、背後から現れた謎の女に手刀で気絶させられる。女は浜野を見下ろし、「ワダツミの心、知って欲しいの」と呟いた。
浜野から10日間も連絡が無いため、山根は苛立ちを示す。戸川が深夜に1人で残業していると、浜野が現れた。浜野が「話があるんだ。これから時間ある?」と尋ねると、戸川は出掛ける用事があることを告げる。すると浜野は、「お前が駄目なら、しょうがない。竜宮城へ行って、天女の舞でも見てくるよ」と言う。戸川が冗談だと思って笑うと、彼は「俺のウチは、アマ族の流れだったらしいからな。遠い祖先は、海に生きる人々だったってことさ」と告げる。彼が去ったので戸川は慌てて後を追うが、廊下に出ると消えていた。
万城目が食堂で営業部員の笹本毅と話していたので、戸川は浜野が来たことを知らせた。次の日、戸川は由利子と共に神奈川県へ出向き、浜野のマンションを探す。その地域が浦島町だと知った由利子は驚くが、戸川は軽く笑っただけだった。寺で聞き込みをした由利子は、その地域に伝わる浦島伝説が町名の由来になっていることを知った。2人は隣の新町で浜野のマンションを見つけるが、10日ほど前から見掛けないことを隣人に聞く。万城目、戸川、由利子は浜野の一族が途絶えてしまったこと、彼と親しかった人物は村に残っていないこと、実家は竜宮島の見える場所にあったことを知る。
3人は竜宮島を訪れ、竜宮神社に足を踏み入れる。浜野の名を呼んでいると「浜野さんを捜さないで」という声が聞こえ、光と共に大きな土偶が出現した。万城目は何者かが操っているロボットだと考えて凄むが、口から水を噴射する攻撃を受けたので3人は逃走した。万城目は天女伝説の伝わる場所に浜野が現れると確信し、伊豆の竹取塚へ向かう。万城目は『古代史スペシャル』の打ち合わせをした際、浜野から産まれた村の近くに竹取塚があると聞かされていたのだ。
竹林にも観光業者の手が伸びていると知った万城目は、「あいつらは自然の心が分かってない」と憤りを示す。万城目は土偶ロボットが現れるのを待ち、浜野のことを聞こうと考える。戸川は襲われることを懸念し、百合子を連れて車で待機する。しばらくすると浜野を気絶させた女が竹林に出現し、万城目に話し掛けた。女は星野真弓と名乗り、もう浜野のことは捜さないでほしいと頼んだ。万城目が浜野の居場所を尋ねると、彼女は「もう捜さないで」と告げて姿を消した。
戸川は「人が殺されてる」と叫び、観光業者の死体が転がっている現場へ万城目を案内する。その手口は、これまでの事件と同じだった。万城目は一の谷の元を訪れ、目撃した土偶ロボットを描いた。すると一の谷は縄文時代の遮光器土偶だと言い、目の形が宇宙人に似ているという説があることを話す。さらに彼は、椿塚で巨大生物が出現したという噂があること、土を分析すると弥生時代の物としか思えない花粉を含んでいたことを話す。
一の谷は万城目に、日本書紀には海の生きる安曇族について記されていることを教える。安曇族は海の神であるワダツミノトヨタマヒコの子、ワダカミノミコトの子孫と言われている。彼らは時の権力に追われて内陸へ住むようになったが、海を渡った渡来人であろうとされている。それを聞いた万城目は、浜野も渡来人の子孫という可能性が高いと考える。翌日、万城目は山根から、浜野の社員手帳が丹後半島で発見されたことを知らされた。
山根から調査を指示された万城目、戸川、百合子の3人は、手帳が届けられた毎朝新報宮津通信部を訪れた。通信部員は3人に、手帳が発見されたのは浦島神社の境内であること、その地域には浦島伝説と天女伝説があることを話す。3人が神社を訪れると、真弓が現れた。「やめて下さいとお願いしたはずです」と真弓が言うと、戸川は「浜野さんをどこへ隠した?」と非難する。真弓は万城目に「2人だけで話したい」と言い、常世橋へ連れて行く。そして彼女は、古代の人々は常世の国があると信じていたこと、浦島伝説も天女伝説も常世に憧れた人々が生み出した話であることを語る。
万城目が改めて浜野の居場所を尋ねると、真弓は「常世の国を信じる人たちと一緒にいます」と答えた。真弓は万城目を常世の浜へ連れて行き、「浜野さんを捜すのを辞めるか、常世の国を信じる人たちと一緒に暮らすと約束すれば彼の居場所を教える」と告げる。彼女は憤慨する万城目に、昔から常世の国を信じる人たちは迫害され続けて来たのだと話す。万城目は真弓に、常世の国を信じる人たちの元へ連れて行ってほしいと持ち掛ける。すると真弓は、「何もかも捨てることが出来ますか。現在の生活も」と問い掛けた。
そこへ戸川が呼んだ警官隊が駆け付け、真弓を連行しようとする。真弓が逃げようとしたので、警官たちは彼女を捕まえる。真弓は警官たちの手を振り切り、「ナギラ」と叫ぶ。すると古代怪獣の薙羅が出現し、近くの建物を破壊して暴れ始めた。警官たちが逃げ惑う中、万城目だけは薙羅に近付こうとする。真弓は万城目の危機を感じ、薙羅を退却させた。真弓は万城目に歩み寄り、無事だと知って安堵した。彼女は「このままの2人じゃいけませんか。お互い、過去も何もかも忘れて」と言い、万城目に抱き付いた。
「古代史スペシャル」は『バック・トゥ・ザ・ワンダーランド』という番組名が付けられ、スタジオ収録が行われることになった。番組スポンサーは企業イメージを理由に掲げていたが、実際はリゾート開発のために古代史を利用したいだけだった。しかし収録が始まった途端、ライトが次々に火花を散らしてセットは崩壊した。後日、万城目、戸川、百合子の3人は取材のため、吉野ヶ里墳丘墓展示館を訪問した。そこに真弓が現れため、3人は後を追う。彼女は3人に怒りを示し、「古代人の眠りを覚まし、ただ物珍しさからテレビで放送する。そんな地球人の仕業」と口にする。彼女はミラーメタルの姿に変身し、3人に襲い掛かった…。

監督は実相寺昭雄、脚本は佐々木守、特技監督は大木淳吉、製作は円谷粲、プロデューサーは穴倉徳子&野村芳樹、振付は田中泯、撮影は中堀正夫、特殊撮影は大岡新一、照明は牛場賢二、特撮照明は市川元一、怪獣デザインは池谷仙克、美術は水野伸一、特撮美術は藤田泰男、録音は木村暎一、編集は井上治、特撮編集は高野隆一、視覚効果は中野稔、助監督は北浦嗣巳、特撮助監督は服部光則、絵コンテは樋口真嗣、特殊メークは原口智生、音楽は石井眞木。
出演は柴俊夫、荻野目慶子、風見しんご、中山仁、寺田農、田中泯、高樹澪、堀内正美、山内としお、加賀恵子、佐野史郎、円谷浩、小林昭二、毒蝮三太夫、西條康彦、黒部進、岡村春彦、高野浩幸、筒井由美子、二階堂美穂、小澤幹雄、広瀬昌助、山本竜二、池島ゆたか、まさき博人、谷口敦、加藤茂雄、打出親五、岩本勲、小島邦彦、三ツ矢真之、吉沢眞人、大野雅之、平工秀哉、日高俊樹、弓家保則、藤岡好美、小人のマーちゃん(深沢政雄)、川上登美子、中島正、森本浩、実相寺ちな坊、堀川久子、玉井康成、小栗直之、長塚世、児玉冬樹、岡村美枝ら。
ナレーションは石坂浩二。


1966年に放送された特撮テレビ番組『ウルトラQ』をリメイクした作品。
円谷プロ出身の円谷粲によって設立された円谷映像が、初めて製作に携わった作品。そして、これが円谷映像の製作した唯一の映画でもある。
監督の実相寺昭雄と佐々木守は、「ウルトラ」シリーズの『ウルトラマン』『ウルトラセブン』で何度もコンビを組んだ2人だ。ただし両者とも、『ウルトラQ』で仕事をしたことは1度も無い。
他のスタッフも、「ウルトラ」シリーズに携わっていた面々が多く参加している。

万城目を柴俊夫、由利子を荻野目慶子、戸川を風見しんご、一の谷を中山仁、山根を寺田農、真弓を高樹澪、浜野を堀内正美、笹本を山内としお、宿の女将を加賀恵子が演じており、ナレーションは『ウルトラQ』の石坂浩二が担当している。
『ウルトラマン80』のオオヤマ役だった中山仁を始めとして、『ウルトラマン』のムラマツ役だった小林昭二&アラシ役の毒蝮三太夫&ハヤタ役の黒部進が刑事として、『ウルトラQ』の戸川役だった西條康彦が山根の同僚として出演している。
また「ウルトラ」シリーズ以外でも、柴俊夫は『シルバー仮面』の春日光二だし、『超人バロム・1』の白鳥健太郎役だった高野浩幸が報道部員、ミニラのスーツアクターだった小人のマーちゃん(深沢政雄)が漁師として出演している。
この辺りは、特撮ファンならニヤリと出来るポイントだろう。

企画が立ち上がった当初は、監督の金子修介、脚本の伊藤和典&じんのひろあきという顔触れで製作される予定だった。
人気怪獣が登場する3話構成のオムニバス形式として企画が進められたが、そこに問題があった。
映画の製作にセガ・エンタープライゼスが参加しているが、ウルトラ怪獣の商品化権を持っていたのはバンダイだ。つまりセガとしては、何の旨味も感じられない内容だったのだ。そのため、この企画は没になってしまった。
しかし困ったことに、企画は没になったのに公開スケジュールは確定していたのである。

そこで製作した松竹や円谷映像が目を付けたのが、「ウルトラ」シリーズのファンから人気の高い実相寺昭雄だった。
実相寺監督は1982年に、佐々木守が脚本を執筆した『ウルトラマン怪獣聖書』をATGと円谷プロの共同製作で撮る予定になっていた。
この企画は潰れていたが、それを『ウルトラQ』の劇場版に転用することにしたのである。
そのまま使ったわけではないが、『ウルトラマン怪獣聖書』を下敷きにした内容となっている。

公開当時は酷評を浴び、興行的にも失敗に終わった。
「本当に『ウルトラQ』のリメイクなのか」「むしろ『怪奇大作戦』のリメイクじゃないのか」と思った人は、どうやら少なくないようだ。
TV版と同じく石坂浩二がナレーションを務めているものの、宮内國朗のテーマ曲は使われていないし、メイン3人の職業設定も変更されている。
ただし、それらの変更については、そんなに気ににならない。出来ればテーマ曲は使ってほしかったが、職業の問題は関しては時代の変化を考えると仕方が無いだろう。テレビ版では星川航空のパイロットが万城目で助手が戸川だったが、1990年だとセスナ以外の移動方法を使うことの方が多いだろうしね。

一番の問題は、「怪獣がの出番が少ない」「怪獣を登場させる意味が全く無い」ってことだ。
この映画、一応は薙羅という怪獣が登場しているが、まるで存在意義が無いのである。
真弓は自分の特殊能力だけで目的を遂行することが充分に出来るので、薙羅の存在をバッサリとカットしたところで、物語を進める上で何の支障も無いのである。
せっかく「ウルトラ」シリーズの池谷仙克がデザインしているのに、「必要性を感じないどころか、むしろ邪魔」という状態なんだから、勿体無いったらありゃしない。

ベースになった企画のタイトルは『ウルトラマン怪獣聖書』なのだから、怪獣の出番は多く、重要な意味を持つ存在として扱われていたのではないかと推測される。
ただし気になるのは、ATGとの共同製作だったってことだ。
そうなると、かなりクセの強い映画だったはずだ。そこから大幅に改変されているとは言え、根幹の部分は引き継がれているだろう。
そうなると、大勢の人々に楽しんでもらえる娯楽映画には不似合いな内容になるのは、仕方が無いのかもしれない。

そもそも「ウルトラ」シリーズにおける実相寺昭雄監督ってのは、本流から外れた演出をすることで注目された人だ。そんな彼の持ち味が、良くも悪くも出ているのだ。
これがシリーズ作品の内の一篇として作られたのなら、「異色のエピソード」としてカルト的な人気を得た可能性はあるだろう。
しかし、1本の長編映画しか製作されないリメイク作品なのだから、ド真ん中のストレートを投げ込むべきだったと思うのだ。
それを考えると、そもそも人選に問題があったと言わざるを得ない。

『ウルトラQ』のリメイクとして適切か否かという問題を抜きにしても、色々と問題は多い出来栄えだ。
まず序盤、戸川が「浜野」という名前を出す。だが、その時点で浜野は画面に登場していない。
なので、栃木の殺人現場で戸川が男の後ろ姿を見て「浜野さんだ」と口にしても、こっちはピンと来ない。そもそも浜野がどういう見た目なのかを知らないからだ。
また、「浜野いたか?」と万城目に問われた戸川が「違ってました。と言うより、誰もいませんでした」と答えて軽く終わらせるのは、処理が雑だ。
そこは「戸川が後を追うが、男は姿を消してしまう」という映像を入れておくべきじゃないかと。

栃木の事件が起きた後、TTVの女性報道部員が山根に「2つの事件とも、古墳の近くで起こったんですよね。被害者の1人は、古墳の近くで盗掘していた男。もう1人は、古墳の近所を買収してリゾート地を建設しようとしている会社の測量技師でした。私、浜野さんのことが心配になって来たんです」と言い出す。
だけど、2人の被害者の身許について語った後、その流れで「だから浜野のことが心配」という理屈になるのは、「どういうこと?」と尋ねたくなる。
「古墳に関わった人間が殺されているから、浜野も危ないのでは」ってことなんだろうけど、方程式が分かりにくいぞ。
そういうことを言いたいのなら、被害者2名の職業に触れる意味が無いだろ。むしろ、そこに触れたせいで、何が言いたいのか分かりにくくなっているぞ。

椿塚の工事現場で怪獣の尾が出現する様子を描いた後、浜野が民宿の女将に「驚きました、椿塚の工事現場で、何やら怪獣みたいな物が現れたとか」と話すシーンがある。
ってことは、その騒ぎは、すぐに広まっているってことなのね。
どういうルートで広まり、浜野の耳に届いたのかは知らないけど、だったら取材に行くべきじゃないのか。そりゃあ怪獣が出たなんて怪しい情報かもしれないけど、浜野が取材に行かず、ノンビリと旅館で泊まっているのは変だろ。
っていうか、その出来事に対して主要キャストが何の対応も取らないのなら、怪獣出現の情報が広まっているという設定自体が要らないわ。いっそのこと、地割れが起きるだけで済ませて、怪獣の尾が出現する描写を排除してもいいぐらいだわ。

深夜にテレビ局へ戻った浜野が再び姿を消すと、その翌日には万城目たちが捜索を開始する。
だけど、そんなに気になるなら、とりあえず警察に相談するべきじゃないかと思うぞ。警察に相談しないのなら、そもそも自分たちで捜索する必要も無いんじゃないかと。
捜索するにしても、なぜ浜野の過去について調べるのかは良く分からん。
普通なら、まずは「現在の浜野が立ち寄りそうな場所」という観点から捜索するんじゃないかと。
いきなり「彼の故郷が関係しているのでは」と考えるのは、かなり飛躍していると感じるぞ。

浦島神社で土偶に襲われた万城目は、浜野は天女の伝説がある場所に現れると確信する。でも、なぜ浦島伝説じゃなく天女伝説になるのか、そこは不自然さが否めない。
また、その行き先として竹取塚を選ぶのも、「浜野は村の近くに竹取塚があると言っていたから」ってのを理由にしているが、強引さは否めない。
他にも色んなトコで、話の進め方に無理をしていると感じる。
浦島伝説と天女伝説の両方を盛り込んで話を進めたいのは良く分かるけど、そのための段取りが幾つも足りていない、もしくは間違っていると感じるのよ。
ぶっちゃけ、どっちか片方に限定しておいた方が良くないか。2つにしたことが、効果的に作用しているとも思えんし。

致命的な欠点は、浦島伝説だの、天女伝説だの、常世の国だのと言われても、「だから何なのか」としか思えないってことだ。
どうやら古代ミステリーをメインに据えて話を構築しようとしているようだが、そこに何の魅力も感じられないのだ。
それは、描こうとしているテーマ自体に魅力が乏しいってのも少なからず感じるが、それよりも見せ方の問題が圧倒的に大きい。
説明のための時間がダラダラと長く続くため、退屈になってしまうのだ。
おまけに、ちっとも話が前へ進んでいる気がしないし。

万城目と真弓の恋愛劇も持ち込まれているが、見事なぐらい陳腐でバカバカしい。万城目が真弓のどこに惹かれたのか、いつ頃から真弓が万城目に惚れたのか、それがサッパリ伝わって来ない。
2人が惹かれ合うという展開には、説得力が微塵も感じられない。
そもそも、肝心の古代ミステリーからして上手く描写できていないので、そこに恋愛劇まで盛り込んでしまうと、ますます互いが妨害し合ってしまう。
本来なら上手く絡み合ってドラマに厚みが生まれるべきなのに、どっかもスカスカな上にバラバラなのよね。

終盤に入ると、真弓が使命を帯びて地球に来た宇宙人であること、同じ志を持つ地球人を捜していたこと、それは常世の国を信じる人々だったことが明かされる。
「地球が昔の美しい姿を失っていくのを阻止する」ってのが、真弓の使命だ。日本に来たのは遠い昔に宇宙人が住んでいたからで、渡来人は宇宙人だと浜野が説明する。
つまり、「古代の伝説」と「宇宙人」と「環境破壊への警鐘」を組み合わせて、話を作っているわけだ。
その結果として出来上がったのが、「ただ退屈なだけのトンデモ映画」である。
それなりにトンデモ度数は高いのだから、「別の意味で面白い」という仕上がりになってもいいはずなのに、恐ろしいぐらい退屈なのだ。

とりあえずハッキリしているのは、「あいつらは自然の心が分かってない。ちょっとした手掛かりさえあれば、日本中を観光地にしたり、開発しようとしたりしてる」という万城目の台詞を言わせたかったってことだね。
自然破壊を批判するメッセージを発信するってのが作品のテーマなのは、そこだけを取っても痛々しいほど理解できる。
その主張自体の是非はどうでもいいけど、訴える手口がカッコ悪いわ。
そんなに真正面から、台詞でハッキリと語らせちゃうかね。だったらドラマなんて要らないでしょ。

それと、「環境破壊は良くない」ってのを訴えたいのなら、真弓の行為に共感できるような内容にしておく必要があるはずだ。
ところが、これっぽっちも賛同できないのよね。何しろ彼女は、大勢の人々を容赦なく殺害しているわけで。
そりゃあ環境を破壊しようとする連中は、真弓からすると悪人だろう。しかし「邪魔する奴は皆殺し」って、ただのテロリストじゃねえか。
そんな残忍な環境テロリストに共感できるのは、せいぜい環境保護団体のグリーンピースやシーシェパードのメンバーと、その支援者ぐらいじゃないかな。

(観賞日:2017年4月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会