『ういらぶ。』:2018、日本
高校生の春名優羽は幼馴染である和泉凛のシャツのボタンを止めようとして、極度に緊張していた。睨んでいる凛の顔を見てしまった彼女は、思わず手を離した。凛は「お前ってマジ、ゴミだな」と罵り、優羽が謝罪すると「もういい。15分後に玄関前、遅れんじゃねえぞ」と告げて部屋を去った。自分の部屋に戻った凛は、「またやっちまった」と後悔する。優羽は飼っている文鳥の文乃助に向かい、「やっぱり私、ダメダメです。凛くんといると心臓がドキドキして。最近、何だか変なんです」と漏らした。
[第2章 ライバル出現]
凛は優羽が好きすぎて悶絶していたが、幼馴染の藤蛍太から告白するよう促されると「言えたらとっくにチュッチュしてるわ」と口にする。「そんな好きなのに、良く毎日イジメるよねえ」と蛍太が言うと、彼は「イジメてねえ。けどしょうがないだろ、目が合うだけで心臓ヤバいし」と告げる。「普通に優しくすればいいだろ」と言われた彼は、「出来るわけねえだろ、そんなカッコ悪いこと。今さらキャラ変えられっかよ」と述べた。
優羽が幼馴染の坂下暦に誘われて学校へ向かおうとすると、凛が部屋から出て来た。彼は鞄を優羽に渡し、「行くぞ」と荒っぽく言う。暦が「嬉しそうに鞄持ちしないの」と告げると、優羽は「凛くんはダメな私を直そうとしてくれてるだけだから」と凛を擁護した。4人は同じマンションの同じ階に住んでおり、美男美女グループとして高校でも有名だった。しかし凛のせいで自己肯定感が極端に低くなっている優羽は、自分だけ3人と違ってゴミだと思い込んでいた。
凛や優羽たちが科学の授業に出ると、教師は「来週は実験だから、それまでにまでペアを決めておくように」と告げた。凛は優羽に「実験のペア、誰と組むか決めた?」と訊かれ、「お前以外に誰がいるんだよ」と抱き締める妄想を膨らませた。しかし実際の彼は、「お前以外の誰か。お前と組むと、ろくなこと無さそうだし」と冷たく言い放った。後で彼は「またやっちまった」と漏らし、蛍太は呆れて「なんで素直になれないかな」と告げた。
優羽は暦の前で、「凛くんに嫌われないように変わりたい」と漏らす。「凛のどこがそんなにいいの?」と問われた彼女は父から「私に優しくする男の人は悪い人だ」と言われていたこと、凛だけは厳しくしてくれたことを語った。凛は最初に会った日から優羽のことが好きだったが、その頃から彼女をイジメていた。引っ越しの挨拶に来た優羽が緊張していると、「しっかり喋れ、ゴミ」と罵った。だが、そのことを蛍太に指摘されると、彼は「イジメてねえ」と否定した。彼は優羽の父が「優羽に優しくする人は悪い人だ」と教えていることを知り、調教しているのだと説明した。
夜、優羽が部屋で鏡に向かって笑う練習をしていると、ベランダに来ていた凛が凝視した。気付いた優羽が慌てると、凛が窓を開けて「何してんの、お前?」と呆れたように言う。変わろうとしているのだと優羽が説明すると、凛は「人前で上手く笑えるようになりたいんだろ。やってみろよ、俺がガン見しててやるから」と命令する。優羽は緊張し、顔が強張って上手く笑えなかった。凛は「どんな変顔したって、俺はお前だけだから」とキスする妄想を膨らませるが、実際はヌイグルミにキスしていた。彼は「さっきの顔、マジで引いたわ」と罵倒して部屋を去り、優羽は「ごめんね」と謝罪の言葉を口にした。
次の日、学校で男子生徒が優羽に声を掛け、実験のペアにならないかと誘った。優羽は「すみません、組みたい人がいるんです」と詫びて走り去り、凛と遭遇すると「実験のペア、組んでください」と頭を下げた。凛は彼女を罵りつつも、「仕方がないから組んでやる」と承諾した。実験の当日、凛は風邪を高熱を出すが、気付いた蛍太に早退するよう勧められると「優羽、実験楽しみにしてたから」と内緒にするよう頼んだ。彼はプリントに「失敗したら許さない」と書き込み、優羽が顔を引きつらせるのを見てニヤニヤした。失敗できないと考えた優羽は緊張して薬品をこぼし、火が燃え移りそうになった。凛は慌てて彼女を庇い、右手に火傷を負う。優羽を風邪で寝込んだ凛に付き添い、懸命に看病した。しかし凛は彼女を可愛いと思いながらも、礼の一つも言わないどころか悪態を浴びせ続けた。
優羽は自宅が改装される1ヶ月間、マンションを離れて一軒家で暮らすことになった。隣に住む高校1年生の佐伯和真は、彼女を見つけて挨拶した。和真が引っ越しを手伝っていると、凛がやって来た。凛が敵対心を剥き出しにすると、和真は笑顔で対応した。凛は登校した優羽に話し掛けられると、冷淡に「お前って案外、ビッチなんだな」と突き放す。彼は帰宅してから優羽に電話を掛けるが、「間違えた」と切ってしまった。
優羽は母から、和真に仮住まいの間の家庭教師を頼んだことを告げられた。自分のことを卑下する優羽に、和真は「ダメじゃないよ。顔だけじゃなくて、奥手な所も全部」と優しく告げた。優羽が和真を見送る様子を目撃した凛は翌日、彼女に冷淡な態度を取って距離を置く。和真は学校へ優羽を迎えに行き、凛と遭遇すると家庭教師を務めていることを話す。凛が「ゴミ漁りが趣味なのか」と口にすると、彼は「ゴミとか言うの、やめたら?自信を失わせるために、わざとやってるよね。俺は褒めて伸ばすタイプ」と述べた。
凛が「あいつをイジメていいのは俺だけで、好きになっていいのも俺だけだ。あいつは俺の物」と睨むと、「大事なのは、優羽ちゃんがどう思ってるかでしょ」と和真は告げた。彼は優羽を学校から連れ出し、「俺は優羽ちゃんのしたいこと、させてあげたいな」と微笑んだ。凛は家庭教師として優羽の仮住まいに乗り込み、暦と蛍太も同行した。数学の問題がなかなか解けない優羽に凛が苛立って「そんなん解けないなんてダメダメだな」と代わりに解こうとすると、和真が「やってあげちゃ意味が無いでしょ」と制止した。
しばらくすると和真の妹の実花が部屋に来て、凛たちに挨拶した。イケメンの凛と蛍太を見て、彼女は興奮した。和真は問題を解いた優羽を手放しで褒め、「いい子だなあ。凛くんが束縛レベルで溺愛するのも分かるよ」と言う。凛が「してねえし」と鼻で笑うと、彼は「ならいいよね、俺が優羽ちゃん好きになっても。っていうか、もう好きだし」と口にした。和真は優羽が常にビクビクしていることを指摘し、「俺だったらゴミ扱いしないし、わざと自信無くさせたりしない」と凛を責めるように告げる。凛は腹を立て、その場を去った。 [第3章 かのじょ(仮)]
凛は優羽への無視を続けて暦と蛍太から注意されるが、ノートには無意識の内に何度も「優羽」と書いていた。凛は彼に好意を寄せている女子生徒から「話したいことがあるんだけど」と言われると、「昼休み、体育館裏に来て」と告げた。凛は優羽に電話を掛けて、昼休みに体育館裏へ来るよう命じた。暦が呼び出した理由を尋ねると、彼は「優羽をモノにするためだよ」と答えた。凛は体育館裏で女子生徒から「ずっと和泉くんのことが好きで。出来れば付き合ってほしいなって思って」と告白された、「付き合ってる奴がいて」と優羽の名前を出した。
凛は物陰から見ていた優羽の元へ行き、「お前は今日から俺の彼女だ」と言う。優羽は困惑するが、「告白される度に振るのがキツくてさ。優羽を彼女にしておけば向こうが諦めるし都合がいいだろ」と凛が説明すると納得した。「彼女のフリをすればいいのね」と彼女が確認すると、凛は「まあ、そうだな。彼女、カッコ仮だな」と抱き寄せた。優羽は暦に「普通に彼女で良くない?」と言われるが、「凛くんの役に立てるなら、彼女カッコ仮でいい」と嬉しそうに告げた。
凛は学校で優羽の手を握り、帰り道で和真が通り掛かると「俺たち、付き合うことにしたから」と告げた。その後も彼は優羽と一緒に下校し、デートにも出掛けた。優羽の部屋に入った凛はベッドで服をはだけ、「来いよ」と横に座らせる。彼は優羽を押し倒して目を閉じるよう指示し、キスしようとする。しかし優羽が顔を強張らせていると、「次はこの程度じゃ済まさないからな」と離れた。部屋を去ろうとした彼は、優羽が大事にしていた写真を見つけた。それは幼少期、一緒に星の村へ行った時の写真だった。
凛は全く覚えていなかったが、優羽は星の村で宝探しをした思い出を語る。凛は大切な森を森に隠し、優羽に「見つけたらダメダメじゃないって認めてやる」と告げた。しかし優羽は見つけられず、大事な物が何なのか気にしていた。凛は「何を隠したのかも、隠した場所も覚えてねえ」と軽く言い、次のデートについて相談しようとする。優羽は「覚えてないんだ」とショックを受け、「今の凛くん、何だか知らない人みたい。嬉しくない」と泣き出した。
優羽が「戻りたい、幼馴染に」と言うと、凛は激しく苛立った。彼は「どうしても戻りたいんだな。望み通りにしてやるよ」と声を荒らげ、部屋を出て行った。暦は優羽から話を聞き、「優羽は何も悪くない。凛が子供なだけ」と慰めた。家に戻ろうとした彼女は和真と遭遇し、連休の予定について訊かれる。冷たく突き放して去ろうとした暦だが、和真が「ウチの爺ちゃんさ、星の村でペンションやってて。そこ行かない?」と誘うので立ち止まった。 〔第4章 凛の宝物〕
凛と優羽は暦と蛍太から話を聞いて承諾し、和真&実花と6人で星の村へ向かった。凛は蛍太から来る気になった理由を問われ、「優羽に俺を振ったことを後悔させてやる」と答えた。6人はペンションに到着し、和真&実花の祖父から流星群が見える日だと教えられた。凛と蛍太がバーベキューの準備に向かうと、実花は付いて行く。優羽は和真たちの祖父から、バーベキュー場の手前の森に大きなホテルが建つことを聞かされた。彼女は「凛の大事な物を見つけられなくなる」と焦り、バーベキュー場に行っても気になった。
ランチの最中、凛は暦から優羽と正式に付き合わなかったことを咎められる。和真が「ちゃんと付き合って嫌われたらって、ビビってたんでしょ?」と指摘すると、凛は「はっ?それじゃまるで本気で好きみたいじゃん」と反発する。「違うの?」と問われた彼は、「当たり前だろ。こんなヘタレに俺が本気になるわけないじゃん」と吐く。黙っていた優羽は凛に「お前は何がしたいんだよ」と非難され、実花から「凛さんのことが好きなら付き合ってくださいよ」と言われる。凛が「こんなヘタレに何言ったって仕方ないよ」と冷たく言うと、優羽は行って来る。絶対見つけるから」と森へ向かった…。監督は佐藤祐市、原作は星森ゆきも「ういらぶ。 -初々しい恋のおはなし-」(小学館「Sho-Comi フラワーコミックス」刊)、脚本は高橋ナツコ、製作は佐野真之&吉田尚子&久保雅一&藤島ジュリーK.&港浩一&吉野達也&吉川英作&山本浩&田中祐介&高橋誠、エグゼクティブプロデューサーは豊島雅郎、プロデューサーは田辺圭吾&橋本芙美、企画協力プロデューサーは備前島幹人、ラインプロデューサーは坂本忠久、撮影は小宮山充、照明は保坂温、美術は寒河江陽子、録音は金杉貴史、編集は田口拓也、音楽は佐藤直紀、主題歌「High On Love!」はKing & Prince。
出演は平野紫耀(King & Prince)、桜井日奈子、玉城ティナ、磯村勇斗、桜田ひより、伊藤健太郎、小野莉奈、小林舞、藤本走、浦宗航、中嶋裕、佐野ひろゆき、八木景子、池春奈、八木陸、佐藤菜々歩、山本雅則、山本佳恵、池上友達弥、佐藤みゆき他。
小学館『Sho-Comi』で連載された星森ゆきもの少女漫画『ういらぶ。 -初々しい恋のおはなし-』を基にした作品。
監督は『ストロベリーナイト』『脳内ポイズンベリー』の佐藤祐市。
脚本は『戦国BASARA -MOONLIGHT PARTY- Remix』『映画はなかっぱ 花さけ!パッカ〜ん♪ 蝶の国の大冒険』の高橋ナツコ。
凛を平野紫耀(King & Prince)、優羽を桜井日奈子、暦を玉城ティナ、蛍太を磯村勇斗、実花を桜田ひより、和真を伊藤健太郎が演じている。少女漫画の場合、ヒロインの相手役となる男が生意気だったり自己中心的だったりするケースは良くある。むしろ、それが多数派と言った方がいいかもしれない。
「身勝手で横暴な男がヒロインに酷い言動を取るが、次第に惹かれ合うように」というパターンの作品を挙げたら、キリが無いぐらいだ。
そういう作品では大抵の場合、ヒロインは「第一印象だと男は最悪な奴」という描き方をする。
そして、最初は嫌っていたが、男の意外な一面を見て惹かれるようになっていくという展開が王道になっている。少女漫画に出て来るようなオレ様主義の傲慢な男が実際にいたとしたら、「単に不愉快な奴」になる可能性が高い。その手の漫画でキュンと来ている読者の女性も、きっと実生活で同じような男に惚れることは無いんじゃないだろうか。
そこは「少女漫画だから成立する」という絶対条件がある。
そして、漫画だと男が「キュンキュンさせてくれる恋の相手」として成立しているのは、2つの大きな要因がある。
1つはコミカルなテイストで描いていること、もう1つはヒロインに反発させていることだ。
男の横暴さにヒロインがヘコまずに反発する様子をコミカルに描くことによって、不快感は大幅に緩和されるのだ。この作品の場合、そこに違いがある。
ヒロインは男から酷い扱いを受けているのに、最初から彼に従順で心酔している。ほぼ洗脳状態にあると言ってもいいだろう。
それは男に対する不快指数を序盤から一気に上昇させる力を持っている。
凛が優羽にやっているのは、完全に精神的虐待であり、陰湿なイジメであり、DVと言ってしまってもいいだろう。直接的に暴力は振るっていないが、言葉による暴力だ。
コミカルには描いているが、それが何の効力も生まないぐらい酷いこと凛は繰り返している。凛は「優羽が可哀想と思わない?凛がダメ扱いを続けたせいで、もう病んでるレベルのヘタレになっちゃったじゃん。あのままじゃ恋一つ出来ないなあ」と注意されても、「そりゃいいなあ。他の男に恋するぐらいなら、一生病ませとく。そしたら一生、俺のモンだしな」と平気で高笑いを浮かべる。
幼少期からイジメていたことを蛍太に指摘された彼は否定し、「調教しているだけだ。お前はダメダメだと言い続けて自信を失わせれば、知らない奴と話せなくなるので悪い虫が付かなくなる」と自身の正当性を主張する。
自己肯定感が極端に低くなっている優羽は、「1人だけゴミが混じっている」と陰口を叩かれていると思い込んでいる。もちろん、彼女がそんな風になったのは、全て凛が原因だ。
しかし暦に批判された凛は優羽の様子を見て「いい仕上がりだ」と満足し、耳元で「気にすんな。誰もゴミなんか見てねえよ」と告げる。そんな凛に優羽は「ありがとう」と礼を言い、彼に付いて行く。
そんな様子を何度も描く中で、コメディーとして笑えってのは無理がある。凛が「またやっちまった」と後悔する様子を見せたり、「嫌われるかな」と心配したりする様子は見せている。
だけど凛の言動の醜悪さは、それで和らぐようなレベルなど遥かに超越している。
凛は「好き過ぎる自分が怖い」と言っているけど、「好きだから許される」というレベルを遥かに逸脱している。
誰でも分かることだろうけど、「好きだったら相手をゴミ呼ばわりして精神的に追い込んでも許される」なんてことは絶対に無いからね。13分ぐらい経った辺りで暦が優羽への熱い気持ちを語り、蛍太から「暦も病んでる」と言われるシーンがある。
この時、暦がカメラを向くと、画面に雨雲が出て「病んでる」と文字が表示される。
こういう漫画的な表現を入れるなら、なぜ今までさんざんチャンスがあったのにやらなかったのか。それを最初にやるのが暦のシーンって、どういうセンスなのか。
どう考えたってメイン2人のやり取りで持ち込むべきだろ。そういう飾りを多く持ち込めば、少しは不快感が紛れた可能性もあるだろうに。幼少期のシーンが何度か挿入されるが、ここでは子役の顔の部分だけを平野紫耀や桜井日奈子に入れ替えている。
でも、こんな演出にしている意味が全く無い。
コミカルなテイストだから、その変なノリが全く合わないってわけではないよ。ただ、普通に子役でもいいでしょ。それで何か問題があるかと考えた時、何も思い浮かばないし。
ただ、もっと言ってしまうと、そもそも幼少期の回想シーンは全く要らない。そこって、丸ごとカットでもいいよね。25分ほど経過した辺りで「第2章」と出た時に、これがチャプター形式の構成であることが明らかになる。
だが、この形式にしている効果は全く感じられない。
それと、その時までチャプター形式だと全く気付かなかったのには理由があって、「第1章」の表記が無かったのだ。
そこを表記していない理由がサッパリ分からない。まさかとは思うが、単純に忘れたわけじゃないだろうな。
だけど、それぐらいしか第1章の表記が無い理由って思い付かないんだよね。笑う練習をしていた優羽を凛が罵るエピソードの後、凛と優羽が画面に向かって「ういらぶ」と声を揃えるアイキャッチが入る。映画開始から15分ぐらい経過した辺りなので、TVドラマならコマーシャルが入るぐらいのタイミングだろうか。それ以降も、何度か同じようなアイキャッチが挿入される。
最近では見られないが、昔のドラマだとアイキャッチを入れるケースもあった。もしかすると、そういうのを意識した演出なのかもしれない。
ただ、それが成功しているかと問われたら、完全に外していると断言できる。それが無くても充分すぎるほど醸し出されている寒々しさを、さらに助長する演出になっている。
あと、2つ目のアイキャッチは1つ目から約6分後なので、入れる間隔やタイミングもメチャクチャだ。幼馴染の暦と蛍太は、その存在意義がほとんど感じられない。
一応、メイン2人が異常であることを指摘して観客の代弁者になっていたり、「2人に変化が見られた。具体的にはこういうこと」などの解説役を担当していたりするのだが、ドラマとしての絡みは皆無に等しい。
なので、実は同じ役目をナレーションに任せてしまえば、この2人は要らなくなるのだ。
ナレーションで何もかも説明すると不細工になる恐れもあるし、それを登場人物に担わせるのが悪い判断だとは思わない。でも、ただの解説役だけで終始するのは、「幼馴染の美男美女4人組」として配置しているキャラの使い方としては、あまりにも貧相じゃないかと。あと、こいつらが凛を責めつつも結局は優羽との恋を応援するスタンスは変わらないので、「お前らも優羽が病んだ原因を作った加害者の一味だぞ」と言いたくなる。
優羽に「その歪んだコミューンから今すぐ逃げ出して」と言いたくなるわ。
暦が和真&実花を嫌悪して優羽から遠ざけようとするのも、「幼馴染4人組」だけで世界を完結させてしまおうとする厄介な女にしか見えないし。
凛と優羽だけじゃなく、暦と蛍太も不愉快な連中になっているんだよね。凛は女子生徒から告白されると悟り、優羽を呼び出して「優羽と付き合っている」という説明を聞かせる。これって蛍太も指摘するように、女子生徒に大しても失礼な行動だ。でも、もちろん凛が反省することなんて無いし、映画としても正当化されている。
そんな彼は「彼女カッコ仮」だと優羽に告げ、恋人のように振る舞い始める。相変わらず高慢ではあるが、今までよりはマシになっている。
ところが優羽は「今の凛くん、何だか知らない人みたい。嬉しくない」と言い、幼馴染に戻ることを望む。
でも、それって凛に対して「自分をゴミ扱いして罵倒するDV男に戻ってくれ」って言っているようなモンだぞ。
で、もちろん最終的には「2人が正式に付き合い始める」という形に落ち着くけど、優羽は凛に依存する洗脳状態から全く抜け出せていないので、「ホントにそれでいいのか」と言いたくなるわ。(観賞日:2021年10月21日)