『宇宙からのメッセージ MESSAGE from SPACE』:1978、日本

かつて生き物たちの平和な営みに満ち溢れていた惑星ジルーシアは、今や宇宙の侵略者であるガバナス人の要塞と化していた。ジルーシアの大酋長キドは60の部族を率いて戦ったが、ガバナス人の敵ではなかった。キドは聖なる8つの「リアベの実」を宇宙に向けて放ち、8人の勇者に救いの奇跡を起こしてもらおうと考えた。キドは孫娘のエメラリーダに、8人の勇者を連れ帰るよう命じた。勇猛な戦士のウロッコが同行を名乗り出たので、キドは2人を派遣することにした。
2人を乗せたジルーシアの宇宙帆船「プレアスター」が出発したことは、ガバナス要塞に暮らすガバナス皇帝のロクセイア12世に伝わった。「この宇宙に世に楯突くほどの者はおるまい」と余裕を見せるロクセイア12世だが、太公母ダークは「油断はなりませぬぞ」と警告する。彼女はリアベの実が光を放って飛んで行くのを見たことを語り、船を撃ち落とすよう指示した。直ちにガバナス巨大戦艦「グラン・ガバナス」が発進し、プレアスターを砲撃した。
大金持ちの令嬢であるメイア・ロングは、星間連絡船で惑星ミラゼリアの隕石ベルト地帯を飛んでいた。宇宙蛍を見て「ロマンチックだわあ」と感動していると、いきなり船が激しく揺れた。宇宙暴走族のアロン・ソーラーとシロー・ホンゴーに進路を妨害されたのだ。船長は「宇宙パトロールに通報して逮捕させろ」と激怒するが、メイアは興奮して「あの後を追っ掛けて」と頼む。アロンとシローは宇宙パトロール隊員のフォックス巡査に追われ、「チキンランで来い」と挑発した。
フォックスを軽く撒いたアロンとシローだが、それぞれの宇宙戦闘機「ギャラクシーランナー」「コメットファイヤー」が同時にエンジントラブルを起こし、2人は緊急着陸して消火する。彼らがエンジンを調べると、そこにはリアベの実が入っていた。しかし2人は、その実が何を意味するのか知らなかった。一方、ミラゼリア方面軍司令部では、司令官のゼネラル・ガルダが従者ロボットであるベバ1号の死を悼み、ロケットに積んで打ち上げた。勝手な行動に怒った連邦軍総司令官からクビを通告されたガルダは、「この堕落しきった軍に未練は無い」と言い放った。
ベバ2号を連れて司令部を去ったガルダがナイトクラブで酒を飲んでいると、いつの間にかグラスにリアベの実が入っていた。その店では、ギャングのボスであるビッグサムがカード賭博に興じていた。彼は手下のジャックに、預けておいた金貨を持って来るよう要求した。ジャックがアロンとシローに金を貸したことを聞き、ビッグサムは彼らが皿洗いとして働く厨房へ乗り込んだ。ビッグサムは「30分以内に持って来い」と怒鳴り、ジャックを投げ飛ばした。
アロンとシローは、宇宙戦闘機を作るために金を使い果たしていた。「どないしてくれんねや」と喚いたジャックがトマトを齧ると、中にリアベの実が入っていた。そこへアロンとシローの地球での仲間だったメイアがやって来た。メイアは軍の戦闘機をからかって事故を誘発したため、監視付きで追い出されていたのだった。金貨30枚を貸してほしいとアロンたちに頼まれたメイアは、宇宙蛍狩りを手伝うよう取り引きを持ち掛けた。隕石ベルトは立ち入り禁止区域であり、捕まれば懲役刑を食らうことになる。ジャックは反対するが、アロンとシローは迷わずに取り引きを了承した。
隕石ベルトへ赴いた4人は、幽霊船のようになっているプレアスターを発見した。中に入った彼らは、気を失って倒れているエメラリーダとウロッコを発見する。そこへグラン・ガバナスが出現し、攻撃を仕掛けて来た。アロンたちは意識を取り戻したエメラリーダとウロッコを連れ出し、その場から逃亡した。住み家に戻った4人は、ガルダとベバ2号が勝手に入り込んで寝ていることに気付かなかった。
ジャックは迷惑料として金を要求し、エメラリーダに掴み掛かる。投げ飛ばされた彼は、アロンとシローをけしかけた。ウロッコがアロンを殴り飛ばすと、3人の持っているリアベの実が転がり落ちた。エメラリーダはウロッコを制し、彼らがリアベの勇者だと説明した。自分の実を確認したガルダは、彼らの前に姿を現した。エメラリーダは事情を説明し、手助けを求める。しかしアロン、シロー、ジャックは興味を示さず、ガルダは「戦争に必要なのは若者たちだ。その若者たちがこの有り様では、とても無理だ。私一人かその気になっても、お役には立てない」とリアベの実をエメラリーダに返して立ち去った。
ジャックは策略を思い付き、「残り4人には俺が会わしたろうやないか」とエメラリーダに持ち掛けた。彼はエメラリーダとウロッコを連れて、辺境地に住む老婆のカメササを訪ねた。カメササはリアベの実を見て、「酒を買いに来る猟師がお守りだと言って持ってたよ」と告げた。ウロッコがジャックと共に猟師を捜しに行こうとすると、カメササは息子のヒキロクに案内を指示した。カメササは「夜の山道は冷えるから」と言い、ウロッコに酒を飲ませた。
酒には薬が混入されており、ウロッコは山へ向かう途中でジャックに襲われる。反撃を試みたウロッコだが、ヒキロクに撃たれて崖から転落した。ウロッコはヒキロクから約束の報酬を受け取り、リアベの実を投げ捨てた。ヒキロクだけが戻ると、カメササは息子の嫁として買ったことをエスメリーダに明かした。そこへガバナス帝国の兵士たちが現れて銃撃し、エメラリーダとカメササを気絶させた。彼らは2人をグラン・ガバナスに連れ込むと、ヒキロクの残っている家を爆破した。
重傷を負ったウロッコは、アロンたちの元へ戻った。倒れて意識を失ったウロッコを、メイアは解放した。ウロッコかアロンたちと示し合わせてエメラリーダとウロッコを騙したことを、メイアは初めて知った。アロンたちは悪びれずに自分たちの行為を正当化し、リアベの実を捨てた。メイアは愛想を尽かし、彼らの元を去った。自身の宇宙船を操縦していたメイアは、船内でリアベの実を発見した。
その夜、アロンはロクセイア12世に自分たちの行為を非難され、目の前でエメラリーダを殺される夢を見た。シローとジャックは、目の前でジルーシア人の母親が射殺される夢を見た。目を覚ました3人が罪悪感を抱いていると、シローとジャックのリアベの実が窓から飛び込んで来た。そこにメイアが戻り、「私にも来たのよ、リアベの実が」と嬉しそうに言う。メイア、シロー、ジャックは喜んで抱き合うが、自分の実が戻らないアロンは苛立った。
ガバナス要塞へ連行されたエメラリーダは、ロクセイア12世に対して徹底的に戦う姿勢を示した。ロクセイア12世はエメラリーダを牢に幽閉し、カメササを装置に掛けて記憶を読み取る。幼少時代を過ごした地球の光景が機械に浮かび、カメササは「帰りたいよ」と漏らした。ロクセイア12世は、美しい地球を征服したいと考え、惑星大要塞を始動させた。ロクセイア12世は地球連邦に対し、属国として臣下の礼を取るようメッセージを送る。地球連邦は最新鋭の戦艦3隻を出撃させるが、惑星大要塞の相手ではなかった。
地球連邦首脳部は失態の責任を取って退陣し、代わって野党人民党のアーネスト・ノグチが評議会議長に就任した。ノグチは幼馴染であるガルダを見つけ出し、特命全権大使としてガバナス帝国へ乗り込んでほしいと依頼する。ガバナス帝国から無条件降伏を要求され、3日以内の返答を迫られたノグチは、それを出来る限り引き延ばしてもらいたいと考えていた。「時間稼ぎをしても勝てる相手ではない」と断ろうとしたガルダの元に、リアベの実が戻って来た。ガルダは全権大使としてジルーシアへ向かうことを決意した。
シローやメイアたちは戦いに向けて宇宙船を改造していたが、アロンは不貞腐れて手を貸そうとしなかった。アロンとシローが喧嘩をしていると、グラン・ガバナスが空爆を仕掛けて来た。ジャックが拉致され、追い掛けようとしたアロンの元にリアベの実が戻って来た。アロン、シロー、メイア、ウロッコは改造した宇宙船「リアベ・スペシャル」に乗り込み、ジルーシアへ向かう。しかしリアベの実の妨害で操縦が不能になり、船は小惑星のベラに不時着する。そこで彼らは、ガバナス帝国の正当な王位継承者であるハンス王子と出会う…。

監督は深作欣二、原案は石ノ森章太郎&野田昌宏&深作欣二&松田寛夫、脚本は松田寛夫、製作は植村伴次郎&渡邊亮徳&高岩淡、プロデューサーは平山亨&岡田裕介&サイモン・ツェー&杉本直幸&伊藤彰將、撮影は中島徹、特殊撮影は高梨昇、特撮監督は矢島信男、美術は三上陸男、照明は若木得二、録音は荒川輝彦、 編集は市田勇、 擬斗は菅原俊夫 、 振付は小井戸秀宅&辻村功、メカ・デザインは石森章太郎[石ノ森章太郎]&ひおあきら(石森プロ)&青柳誠(石森プロ)、音楽は森岡賢一郎、音楽プロデューサーは木村英俊。
出演はビック・モロー(ヴィック・モロー)、千葉真一、志穂美悦子、フィリップ・カズノフ、ペギー・リー・ブレナン、真田広之、丹波哲郎、岡部正純、清水イサム、成田三樹夫、佐藤允、天本英世、織本順吉、三谷昇、サンダー杉山、曽根晴美、ジェリー伊藤、小林稔侍、成瀬正、ウィリアム・ロス、中田博久、林彰太郎、唐沢民賢、阿波地大輔、笹木俊志、波多野博、フィリップ・エバンス、テリー・オブライエン、城春樹、古賀弘文、栗原敏、木谷邦臣、藤沢徹夫、鳥巣哲生、細川ひろし、峰蘭太郎、小峰一男、白井滋郎、司裕介ら。


1977年、アメリカでは『スター・ウォーズ』が公開され、爆発的なヒットを記録した。日本でも翌年の公開に向けて『スター・ウォーズ』に関する情報が発信され、SFブームが巻き起こった。
東宝の田中友幸プロデューサーはブームに便乗するため、自ら企画を考えた映画『惑星大戦争 THE WAR IN SPACE』を製作日数2ヶ月 (撮影期間は数週間)という突貫工事で完成させた。『スター・ウォーズ』が日本で公開されるのに先んじて、1977年12月に公開された。
それに負けじと東映が製作したのが、この映画である。
ガルダをビック・モロー(ヴィック・モロー)、ハンスを千葉真一、エメラリーダを志穂美悦子、アロンをフィリップ・カズノフ、メイアをペギー・リー・ブレナン、シローを真田広之、ノグチを丹波哲郎、ジャックを岡部正純、ベバを清水イサム、ロクセイア12世を成田三樹夫、ウロッコを佐藤允、ダークを天本英世、キドを織本順吉、カメササを三谷昇、ビッグサムをサンダー杉山、ラザールを曽根晴美、連邦軍総司令官をジェリー伊藤、フォックスを小林稔侍、ヒキロクを成瀬正、星間連絡船の船長をウィリアム・ロスが演じている。
翻訳家でSF作家の野田昌宏と漫画家の石森章太郎が、原案に携わっている。

タイトルは『MESSAGE from SPACE』という英語の題名だけが決まっており、邦題は公募されたが、決まったのは『宇宙からのメッセージ』。
「そのまんまやないかーい」と言いたくなる、何の捻りも無い邦題である。
それでいいのなら、最初からそうしておけばいいのに。わざわざ公募して、その結果がそれかよ。
賞金総額は500万円だが、かなり大勢の人が『宇宙からのメッセージ』で送ったと思われるので、1人当たりの配分は少なかったんだろうなあ(そもそもホントに支払われたのかも疑問だが)。

東宝は特撮映画を多く手掛けており、SF物に対するそれなりのノウハウを持っていた。
しかし、大規模なスペース・オペラの経験値が無かったこともあって、『惑星大戦争 THE WAR IN SPACE』はポンコツな出来栄えになっていた(製作期間が短かったという事情は考慮する必要があるだろうが、たぶん時間を掛けてもポンコツだったと思う)。
特撮映画で有名な東宝でさえ、そんな有り様だったのだから、SF作品のノウハウをあまり持ち合わせていない東映が『スター・ウォーズ』に対抗する映画を作ろうってのは、かなり無謀な挑戦と言っていいだろう。
そして、その無謀な挑戦は、見事に砕け散った。

東映では「現代劇は東京撮影所、時代劇や任侠映画は京都撮影所」という区分があり、『海底大戦争』や『ガンマー第3号/宇宙大作戦』は東京撮影所で撮影されたが、この作品は京都撮影所で作られている。
たぶん「京都の方が大きなセットがあるから」という理由なんだろう。
ただ、京都撮影所の雰囲気に染まったせいなのか知らないが、この映画、スペース・オペラとしての雰囲気が薄い。
まあねえ、千葉真一が出て来て「宇宙の帝国の王子」と言われたら、それだけでも随分と違和感があるしね。

SF作品どころか特撮映画のノウハウも足りないんだから、思い切って外部から監督を呼んじゃってもいいと思うんだが、そこは東映のプライドなのか、内部の人間を起用した。
ただ、TVの特撮番組は製作していたんだから、そこから監督を抜擢してもいいんじゃないか、あるいは『海底大戦争』の佐藤肇という手もあるんじゃないかと思ってしまうが、起用されたのは、よりによって深作欣二だった。
深作欣二は『ガンマー第3号/宇宙大作戦』という東映では数少ないSF映画も撮っているが、基本的には『県警対組織暴力』や『暴走パニック 大激突』など、荒々しい暴力映画を得意とする監督である(ちなみに脚本は『0課の女 赤い手錠(ワッパ)』『必殺女拳士』の松田寛夫)。
この選択に、JACとタッグを組んだ判断が組み合わさったことで、本作品はスペース・オペラの世界ではなく、混沌の世界へと迷い込んでしまったのである。

『南総里見八犬伝』をモチーフにしたシナリオは、前述のように野田昌宏と石森章太郎の2名が原案に参加しているにも関わらず、シオシオのパーな内容になっている。一言で表現するなら「安っぽい」という言葉が最もピッタリ来る。
まず中途半端に『スター・ウォーズ』を真似していることからして、安っぽい。
キャラ配置は明らかに『スター・ウォーズ』を意識していて、アロンとシローがハン・ソロ、メイアがレイア姫、ベバ2号はC3-POといった具合だ。
当時のインタビューで深作監督は「スタッフで『スター・ウォーズ』を見た者は一人もいない」と言ったらしいが、だとしたら、むしろ見た方が良かったんじゃないか。

宇宙蛍について船長は「名前こそシャレてますけど、本当は放射能廃棄物のことでしてね。つまり名物とは言っても、隕石ベルトは原子炉などから出た死の灰、いわゆるゴミ捨て場ですな」と言っている。
そんな場所に、アロンたちは口元を隠すマスクを装着しただけの姿で普通に出て行く。ものすごく体に悪いと思うんだけど、「後になって死の灰の影響で云々」という展開があるわけでもないんだよな。
ガルダはベバ1号の死を悼み、わざわざ軍のロケットを使って葬式として打ち上げているが、既にベバ2号が従者ロボットとして動いている。もう代わりがいるのかよ。そりゃあ、勝手に軍のロケットを使って司令官から激怒されても仕方が無いぞ。
「堕落しきった軍に未練は無い」と言ってるけど、軍の大事なロケットを私的な目的で使っているアンタも、その堕落しきったムードに染まってるだろ。

リアベの実はどうやって8人の勇者を選ぶのか、どうやって勇者の手に届くのかと思ったら、「いつの間にかエンジンに挟まっている」「いつの間にかグラスに入っている」「かじったトマトに入っている」といった描写で、どうにも安っぽい。
せめて「何かが光って足元に落下し、拾うとリアベの実」とかさ、もうちょっと何とかならなかったのか。
しかも、その時点で勇者たちは実の意味を知らないんだから、捨てちゃう可能性だってあるわけで。なぜ全員がエスメリーダと会うまで捨てずに持ち歩いているのか。
せめて1人ぐらいは「捨てたけど、すぐ手元に戻ってくる」とか、そういう描写を入れてもいいんじゃないのか。

そもそも、ガルダが「奇妙な顔触れだな」と言うように、とてもじゃないが第一印象で「勇者たち」ってのが納得できる連中ではない。
ガルダはともかく、アロン&シローは暴走族、メイアはジャジャ馬のお嬢様、ジャックはチンピラだ。
それでも、「実は秘められた能力があった」ということが明らかになる展開が待ち受けていればいいんだけど、そんなのは無いのだ。ただ単に「使命感に目覚めました」というだけで、勇者として戦う展開に移行してしまう。
だからリアベの実が適当に選んだようにしか見えない。

ガルダが協力を辞退するのは素直に受け入れられるのだが、アロンとシローが無関心なのも、ジャックがエスメリーダとウロッコを罠に掛けるのも、どっちもキャラとして受け入れ難い。
もちろん、「考えを改めて戦うことを決意する」という展開があり、そこへの前振りとして非協力的な態度を取らせているのだ。
しかし、そこで失った好感度やキャラしての魅力は、後半に入って改心しても全く取り戻せていない。
協力を拒むだけでなく、ウロッコを殺してエスメリーダを売り飛ばそうとしているわけだからね。

あと、「悪びれずに自分たちの卑劣な行為を正当化する」という態度を取った夜に悪夢を見て反省し、すぐに改心するって、早すぎるだろ。
そんなに簡単に改心するような奴が、あれほど卑劣なことを何の迷いも無く平然とやらかすかね。そんなに簡単に改心させるぐらいなら、卑劣な行為を取る展開なんて要らんわ。
あと、そもそも彼らが率先して罠に陥れるのではなく、「誰かに脅されて、金を返すために仕方なく」という形にしておけば良かったんじゃないのか。
そうすれば、エスメリーダたちを騙す時点で彼らは「本当にいいのか」と迷いや罪悪感を抱くことになったはずで、それなら不快感も随分と薄まっただろう。

ガバナス軍がエメラリーダを連行するのは、まだ分からんでもない。
ただし、殺せばいいんじゃねえかとは思うけどね。ロクセイア12世が彼女の美貌に惚れていて、モノにしたいと考えていたってことなら分かりやすいけど、「話をしてみたかった」というのが目的で連行するというのは、「なんだ、そりゃ」って感じなので。
で、それより遥かに意味不明なのがカメササを拉致したことで、兵士は「参考のために捕らえた」と説明しているけど、まあ無理があるねえ。
それは「ロクセイア12世が地球を手に入れようと考えて出撃する」という展開にするためってのが明らかだが、かなり下手な御都合主義になっている。

「ガバナス軍が地球を標的にする」というのは、「地球が物語に関与しないと、観客の気持ちを引き付けるのは難しいんじゃないか」という判断だったのかもしれない。
ただ、これが見事にマイナス作用を起こしている。
何がダメかって、詰め込み過ぎの状態を引き起こしているってことだ。
ガバナス軍が地球へ来るのは、映画開始から55分ほど経過した頃。そこまで来て急に敵の目的が地球侵略になるってのは、タイミングとして遅すぎる。
他のことで手一杯なのに、今さら新たな展開を入れちゃうのかと。

地球を絡めるなら、もっと早い段階でやらないと。もう55分も経過しちゃったのなら、そこまでの中身だけを使って最後まで進めるべきだ。
そもそも、地球が襲われたからって、そこまでの主要人物が「地球を守るために戦うことを決意する」という展開になるわけでもない。
地球が襲われようが襲われまいが、アロンたちはジルーシアを救うためにガバナス軍と戦うのだ。地球連邦首脳部が退任しようと、ノグチが評議会議長に就任しようと、どうでもいい。
ガルダは特命全権大使としてガバナス帝国へ行くことになっているが、そんなことが仮に無かったとしても、「ガルダが思い直して戦いに参加する」という展開を作ることは難しくない。

アロンだけリアベの実が戻って来るのが遅いのだが、なぜシロー&ジャックと差が付いたのか、その理由は全く分からない。
ガバナス軍がアロンたちを空爆するのは「リアベの実の勇者を始末する」という目的なのかもしれないが、だとしたらジャックを拉致して飛び去るのは理解不能。
なぜジャックを拉致するのか、なぜ他の連中は放置するのか、サッパリ分からない。
そのように、理由や意味が良く分からない箇所が色々と出て来るが、たぶん何も考えず、テキトーに描いているんだろう。

ガルダが兵士との決闘を要求した時、ロクセイア12世が了承するのは無理があり過ぎる。
ガルダを加えた面々はキドの元へ行くが、8人の勇者が揃わないとジルーシアを救えないはずなのに、まだ6人しか集まっていない状態で「動力炉を破壊してガバナスを倒す」という作戦の決行に向けて話が進むのは違和感がある。
キドの説明で「動力炉を破壊すればジルーシアの星自体も爆発してしまう」ということが明らかにされるが、それってものすごく重要な事実なのに軽く処理しすぎ。
母星を失うと知ったウロッコがショックを受けるのは分かるが、だからって簡単にガバナス側へ寝返ってエスメリーダたちを殺そうとするのは違和感を禁じ得ない。

改めて書くまでもなく、これはSF映画である。
しかし、ガバナス要塞やガバナス人の描写が特撮ヒーロー作品のノリだったり、宇宙暴走族のアロンやシローたちの描写が不良映画のノリだったり、ジャックがヤクザ映画に出て来るチンピラのノリだったり(なぜか関西弁で喋りまくるし)、要塞での白兵戦が実録ヤクザ映画やチャンバラ映画のノリだったりと、東映が得意にしていたジャンルのテイストがたっぷりと持ち込まれている。
そりゃあ『スター・ウォーズ』だって黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』がモチーフになっているけど、だからって「時代劇っぽさ」なんて感じない。
時代劇の要素を持ち込むのは別にいいのよ。ヤクザ映画や不良物だって同様だ。ただ、そういう要素を「SF映画」として調理する作業が必要なのだ。そこをサボったり間違えたりすると、情けないぐらい陳腐な印象になってしまうのである。
これがコメディーなら、「SFなのに時代劇っぽい」「SFなのにヤクザ映画っぽい」というのも笑いとして成立するかもしれない。
しかし、シリアスな作品なので、それは意図せぬ笑いに繋がるだけだ。

(観賞日:2014年2月8日)

 

*ポンコツ映画愛護協会