『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』:2012、日本

十文字撃と大熊遠矢は、サイドカーレースに出場した。撃が遠矢の指示に従わずにスピードを上げようとしたため、マシンはスピンした。レースの後、撃と遠矢は言い争うが、河井衣月が来ると笑顔を浮かべて仲直りした。3人は幼い頃から大の仲良しだった。やがて撃と遠矢は宇宙飛行士になり、火星へ行くことになった。宇宙物理学研究開発機構「SARD」で勤務する衣月は、自分も付けている星型のペンダントを2人に渡した。しかし探査船「かなた」は事故を起こし、乗船していた撃と遠矢は行方不明となった。
1年後、衣月は撃と遠矢が宇宙のどこかで生きていると信じていた。SARDの岩本室長が仕事を追えて帰ろうとすると、宇宙犯罪組織マクーの幹部であるザン・バルドが襲い掛かった。ザン・バルドは岩本や警備員たちを抹殺し、衣月に迫った。そこへ宇宙刑事ギャバンtypeGが出現し、ザン・バルドと戦う。ザン・バルドが衣月を人質に取ったため、typeGは手が出せなくなる。その時、レーザーZビームがザン・バルドに向けて発射され、衣月は解放された。
typeGはギャバンダイナミックでザン・バルドを倒し、超次元高速機ドルギランで去る。衣月はドルギランが飛び去る瞬間、typeGの蒸着が解けて撃らしき姿に戻るのを目撃した。衣月は落とした星型のペンダントを拾い上げた。撃はパートナーのシェリーと共に、バード星の銀河連邦警察本部へ帰還した。シェリーはコム長官の姪である。コム長官は許可を取らずに地球へ向かった撃を叱責し、秘書のエリーナは「貴方はまだ正式な宇宙刑事ではないはずです」と指摘した。
「マクーは君が太刀打ちできるような相手ではない」とコム長官が言うと、撃は「マクーの復活は前に阻止されたはずでしょう?」と訊く。「何らかの理由でまだ蘇ったようです」とエリーナが告げると、撃は正式に地球へ行かせてほしいとコム長官に志願する。エリーナは「貴方があの女性に関わっている間に、SARDのセキュリティー・ルームから何らかのデータが盗み出されました」と述べ、コム長官は「うかつだったな、宇宙刑事として」と告げた。
コム長官が「しかも君は一人では勝てなかった」と指摘していると、別の任務に当たっていた日向快と烏丸舟が報告に来た。エリーナは2人に、地球での任務を担当するよう指示した。下がるよう言われた撃は、コム長官に「どうして俺が宇宙刑事になろうと思ったか、分かりますか」と話す。探査船の事故で宇宙空間へ投げ出された際、彼は「諦めるな」という声を耳にした。銀河連邦警察に拾われた彼は、コム長官から銀河系の危機を知らされ、「宇宙刑事として戦う意思はあるか」と尋ねられた。
撃は思い出を振り返り、コム長官に「地球には大切な人がいる。宇宙刑事は、そんな地球を守ることが出来る。そのために俺は宇宙刑事になったんです」と語る。するとコム長官は「ならば、もう一度だけチャンスを与えよう」と告げ、ギャバンの名を汚さないよう説いた。同じ頃、マクーのアジトである魔空城では、怪人のリザードダブラーがSARDから奪って来たデータを仮面の剣士である新首領のブライトンに見せていた。ブライトンは強化されたザン・バルドと幹部の魔女キルを呼び寄せた。ブライトンはキルに、真の復活への鍵を取り戻す任務を命じた。
撃は衣月の元へ行き、自分が宇宙刑事になったことを話す。彼は衣月をドルギランに乗せ、奪われたデータについて尋ねる。「そんなことより、遠矢がどうなったのか」と遠矢のことを気にする衣月に、撃は「重要なことなんだ」と告げた。衣月は彼に、大山エネルギー研究所が20年前に回収したアクシオン隕石に関する組成データが盗まれたことを告げた。アクシオン隕石はワームホール生成のトリガーになる物質ではないかという仮説を、遠矢は持っていた。
衣月は遠矢の仮説に基づき、この1年に渡って組成データを収集していた。「遠矢に何があったの?火星で何があったの?」と尋ねる衣月に、撃はかなたの目的が火星の衛星軌道上で観測されたワームホールらしき光の歪みを調査することだったと話す。その際、遠矢は撃に「ワームホールが見つかれば俺の勝ちでいいか。勝った方が衣月を貰うんだ」と持ち掛けていた。さらに彼は、「そして見返してやるんだ。俺を否定した連中を」と強い意志を口にしていた。
撃とシェリーは衣月をドルギランに残し、大山エネルギー研究所へ向かう。悲鳴を耳にした2人が駆け付けると、女性研究員が倒れていた。「怪物が、向こうに」と彼女が言うので、撃はシェリーに後を任せて研究所へと走った。だが、その女性は研究員に化けたキルだった。シェリーが後ろを見せた隙に、キルは彼女に襲い掛かった。立ち去ったキルを追い掛けようとしたシェリーは、操られている警備員の襲撃を受ける。一方、撃も操られた警備員や研究員たちに襲われる。撃が倒しても、彼らはすぐに立ち上がって来た。
キルは追い掛けて来たシェリーを柱に縛り付け、アクシオン隕石を地軸転換装置と連動させて魔空城に転移させた。彼女はシェリーに、ワームホールを生み出し、かつてマクーの首領だったドン・ホラーを復活させる企みを語った。そこへ撃が駆け付けるが、キルは姿を消した。研究所が炎に包まれて崩壊を始める中、シェリーは撃に「私はいいから」と表にいる人々を救うよう促した。シェリーはレーザービジョンでインコに変身し、研究所から脱出した。
崩れ落ちた研究所を見つめる撃に、シェリーはキルたちがドン・ホラーを復活させようとしていることを教えた。衣月は地面に落ちていた星型のペンダントを発見した。それは彼女が遠矢にあげたペンダントだった。撃は「どうしてここに?」と疑問を口にした。ドルギランに戻ったシェリーは、衣月に「遠矢のことが好きだったんでしょ?」と尋ねる。衣月は遠矢のことを振り返る。彼女は宇宙に憧れる遠矢の純粋な心が好きだった。しかし研究に没頭した遠矢は、「夢のためなら何でも犠牲にする」と言い放つほど変貌してしまった。
シェリーは撃の元へ行き、「鈍いから気が付いてないみたいだけど、衣月は撃のことが好きみたいだよ。確かめてみれば、彼女に本当の気持ち」と言う。撃は「俺にそんなに資格はねえ」と告げ、「かなた」での出来事を回想する。火星の衛星軌道上に到着した撃と遠矢は、空間異常を発見した。遠矢は撃の制止を無視し、そこへ向かおうとする。直後、「かなた」は大爆発を起こし、撃と遠矢の掴んでいた手が離れた。遠矢は空間異常に吸い込まれ、撃は宇宙へ投げ出された。
撃はシェリーに、「俺はあいつを救えなかった。それに、そのことを衣月に話す勇気も無い」と漏らした。ドルギランに残っていた衣月は地球上のどこからか発信されたワームホール用の基礎方程式をキャッチし、撃とシェリーに知らせた。衣月は発信したのが遠矢ではないかと考える。シェリーが発信源を特定し、撃が向かおうとすると、衣月は「私も連れて行って」と頼んだ。2人が工場跡に行くと、そこへブライトンが現れた。撃はtypeGに蒸着して戦うがまるで歯が立たず、衣月はブライトンに連れ去られた。
撃はキル、ザン・バルド、リザードダブラー、マクーモンスターたちの攻撃を受け、窮地に追い込まれる。そこへ一条寺烈が駆け付け、撃を車に乗せて逃走した。ドルギランで意識を取り戻した撃に、烈は「お前を助けるのは3度目だな」と告げる。それを聞いた撃は、宇宙へ投げ出された時に「諦めるな」と呼び掛けたのも、SARDでレーザーZビームを発射したのも彼だと気付く。そこへコム長官から通信が入り、重大なミスを犯した撃を任務から外し、特務刑事の列に引き継がせることを告げた。
落ち込んでいた撃に、烈は「一人の女すら守れないお前は、宇宙刑事として、いや、男として失格だ」と厳しい言葉を浴びせて殴り倒した。撃が立ち向かっていくと、軽くいなした烈は「その悔しさがあるなら、まだ戦える。彼女を救いたければ、自分に打ち勝て」と告げた。一方、魔空城で目を覚ました衣月の前に、ブライトンが現れた。仮面を外すと、その正体は遠矢だった。しかし彼は無表情のまま、「俺はもう、大熊遠矢じゃない」と口にした。
遠矢は爆発事故でワームホールに吸い込まれ、ドン・ホラーから「撃が衣月を手に入れるため、わざと手を離した。お前を裏切った」と吹き込まれた。遠矢はブライトンの仮面を被せられ、憎しみと欲望に覆われてマクーの首領となった。彼はドン・ホラーを復活させるため、衣月を器として使おうと目論んでいた。一方、撃と烈の前には、シェリーを捕まえたリザードダブラーが現れた。2人はシェリーを奪還するが、魔空空間に引きずり込まれてしまう。元の世界に戻った2人は、ワールホールが発生しているのを目にした…。

監督は金田治(ジャパンアクションエンタープライズ)、特撮監督は佛田洋、アクション監督は おぐらとしひろ(ジャパンアクションエンタープライズ)、原作は八手三郎、脚本は小林雄次、製作は鈴木武幸&平城隆司&間宮登良松&木下直哉&松田英史&古澤圭亮&前山寛邦、企画は白倉伸一郎&桑田潔&日達長夫&天野智弘&疋田和樹&小野口征&八木仁、エグゼクティブプロデューサーは杉山登、プロデューサーは日笠淳&加藤和夫&佐藤現&佐々木基、撮影は菊池亘、照明は本田純一、美術は竹内公一、編集は佐藤連、録音は深井康之、キャラクターデザイン(クリーチャーデザインは間違い)は篠原保、イラストは野口竜、音楽は渡辺宙明&山下康介。
主題歌「宇宙刑事ギャバン」歌:串田アキラ、作詞:山川啓介、作曲:渡辺宙明、編曲:馬飼野康二。
「宇宙刑事ギャバン -Type G-」 歌:串田アキラ、作詞:山川啓介、作曲:渡辺宙明、編曲:和田耕平。
出演は石垣佑磨、大葉健二、西沢利明、永岡卓也、滝裕可里、森田涼花、三浦力、岩永洋昭、穂花(現・下村愛)、人見早苗、イジリー岡田、飛田ありさ、中村圭佑、吉田晴登、小泉遥香、大村亨、丹野宣政、前川綾香、木下鈴奈、成澤卓、木村大介、浜添伸也、會田栞子、浅井宏輔、藤井祐伍、松本竜一、大藤直樹、岩上弘数、羽賀亮洋、高田将司、石井靖見、松岡千尋、橋口未知、村井亮、蔦宗正人、藤田慧、玄也、岡田和也、片伯部浩正、白崎誠也、寺本翔悟、水野由香利、伊藤茂騎、北川裕介、井口尚哉、つちださゆり、小笠原竜哉、柏木佑太、北村海、松本拓巳、大隈厚志、三村幸司、中山甲斐、金子起也ら。
声の出演は飯塚昭三、小林清志、松本大、関智一。


1982年に放送された特撮テレビドラマ『宇宙刑事ギャバン』の映画版。宇宙刑事シリーズ30周年記念作品。
この映画の公開は2012年10月20日だが、同年1月に封切られた『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』で大葉健二がギャバンとして登場しており、その評判が良かったことから、単独での映画化という運びになった。
これまで多くの特撮ヒーロー作品で監督やアクション監督を務めて来た金田治がメガホンを執り、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』の小林雄次が脚本を担当している。
烈を演じる大葉健二とコム長官の西沢利明、ドン・ホラーの声を担当する飯塚昭三は、TVシリーズからの続投となる。撃を石垣佑磨、遠矢を永岡卓也、衣月を滝裕可里、シェリーを森田涼花、エリーナを穂花、キルを人見早苗、岩本をイジリー岡田が演じている。快役で『獣拳戦隊ゲキレンジャー』の三浦力、舟役で『トミカヒーロー レスキューフォース』『仮面ライダーオーズ/OOO』の岩永洋昭が友情出演している。

そもそも宇宙刑事ギャバンを二代目に引き継がせるというプロットの時点で、納得しかねるモノがある。
宇宙刑事ギャバンと言えば、イコール一条寺烈、イコール大葉健二なのだ。大葉健二が死去しているならともかく、まだ存命であり、それどころかアクション俳優としてバリバリに動ける状態なのだ。だから、若い役者を起用したいのなら、ギャバンは大葉健二に演じてもらい、別の宇宙刑事として登場させてほしいと感じる。
ギャバンが交代するという内容を百歩ならぬ百万歩譲って受け入れるとしても(ほぼ受け入れるつもりが無いってことだけど)、それなら一条寺烈と二代目の師弟関係や絆のドラマ、二代目の成長物語を軸にして映画を作るべきではなかったか。
ところが、なぜか本作品は、三角関係の恋愛劇を軸に据えているのだ。それだけでもダメなのに、その恋愛劇もグダグダのグズグズで、どうしようもない。
とにかく、やっつけ仕事だったのかと邪推したくなるほどシナリオの出来栄えが酷いのだ。

冒頭、撃と遠矢がサイドカーレースに出場している様子が描かれる。その後、2人が宇宙飛行士になって火星へ旅立つシーンに切り替わる。
サイドカーレースのシーンが後の物語にどう関わっているのかというと、まるで関係が無い。そこをバッサリと削っても、何の影響も無い。あえて言うなら「2人が衣月も含めた幼馴染」ということを示す意味はあるが、幼い頃の3人を冒頭で描写しておけば、それで充分なのだ(っていうか、その後も幼馴染という設定が活用されているとは言い難いことを考えると、それさえ要らない)。
たぶん、TVシリーズでギャバンがサイバリアンというサイドカータイプの乗り物を使っていたので、それを意識してサイドカーレースのシーンを入れたんだろう(今回のtypeGも、空や宇宙空間を飛行するタイプのサイバリアンtypeGを使う)。
でも、ちゃんと話に繋がる形で使わないのなら、そんなのは要らない。

エリーナが快と舟に地球での任務を指示すると、撃はコム長官に「どうして俺が宇宙刑事になろうと思ったか、分かりますか」と告げ、そこから短い回想が入る。
そういう流れであれば、その回想の中で「彼が宇宙刑事になろうと思った理由」が描かれると思うよね。っていうか、それが当然だ。
ところが実際には、回想が終わってから、彼は「地球には大切な人がいる。宇宙刑事は、そんな地球を守ることが出来る。そのために俺は宇宙刑事になったんです」と話している。
だったら、回想シーンの意味が全く無いぞ。

その回想シーンでは、探査船から投げ出された撃が「諦めるな」という声を耳にする描写がある。それは烈の声なのだが、そこからカットが切り替わると、撃は銀河連邦警察に本部でコム長官と一緒にいる。
いやいや、なんで烈が撃を助けたシーンをカットしているのか。
理解に苦しむ。
それだけでなく、ホントは「撃が烈に救われ、後継者として彼の下で訓練を積む」という手順を用意することで、師弟関係を描写すべきだと思うぐらいなのに。

人質にされた衣月は、typeGが「衣月!」と叫んだことにハッとする。ドルギランが飛び去る瞬間には、typeGの変身が解けて撃らしき姿に戻るのを目撃する(顔は見えていない)。
そういう描写があるのだから、「衣月はギャバンの正体が撃ではないかと考える」ということで話を進めるべきだし、「撃は正体を明かさないまま彼女を守ろうとする」という筋書きにしていった方がいいだろうと思う。
ところが、撃は地球へ戻り、あっさりと衣月に正体を明かしている。
最初にtypeGとして登場した時のネタ振りを、すぐ台無しにするのだ。

撃は衣月に正体を明かした後、ドルギランに乗せてデータのことを尋ねる。でも、データのことを尋ねるだけなら、ドルギランに乗せる意味なんて無い。
そこは何がやりたかったかというと、たぶん衣月とシェリーを会わせたかったのだろう。だけど、もっと上手くやれるでしょ。例えば、撃が衣月の元へ赴いて話しているところへシェリーが来る形でもいいだろうし。
っていうか、前述したように、そもそも三角関係の恋愛劇なんて要らないんだけどさ。
あと、そこでの衣月とシェリーのリアクションからして、そこでも撃を巡る三角関係を作るのかと思ったら、それは無いのね。
だったら、そんな形で衣月とシェリーと対面させる必要性は、ますます無くなるぞ。

あと、やたらと回想シーンによって色んなことを説明する構成も、その回想を入れるタイミングも悪い。
例えば、「遠矢に何があったの?火星で何があったの?」と衣月に質問された時に、撃は火星行きの目的を語り、探査船での遠矢との会話が描かれるが、火星行きの目的は出発する時点で示しておくべきだし、探査船での会話も事故の直前に描いておいた方がいい。
たぶん、さっさと撃をギャバンとして登場させたくて、だから後から回想で色んなことを描写する形にしたんだろうけど、マイナスしか感じない。
大山エネルギー研究所へ向かう途中でシェリーが撃に衣月と遠矢のことを尋ね、3人が「いつか一緒に宇宙へ行こうと」と約束した幼少期の回想シーンが入るが、それは一番最初に描いておくべきだし、そのタイミングでシェリーが衣月と遠矢のことを尋ねるのも不自然だ。

大山エネルギー研究所が崩壊した後、衣月は遠矢のペンダントを発見し、撃は「どうしてここに?」と言うが、それはワシも言いたい。
遠矢は魔空城にいるんだから、そんな場所にペンダントが落ちているのはおかしいぞ。
ものすごく強引に「地軸転換装置を使った時に、魔空城から転移された」と解釈したとして、それでもまだ無理な点が残る。それで転移したとすれば、ペンダントは大山エネルギー研究所に落ちているべきなのだ。そこから随分と離れた場所に落ちているのは、どう頑張っても説明が付かない。
そして、もっと問題なのは、そこで衣月と撃が遠矢のペンダントについて疑問を抱いても、後の展開には全く影響が無いってことだ。

大山エネルギー研究所へ向かう際、シェリーは人間の格好に変身するが、派手な服装なので撃は困惑する。その場面はユーモラスな雰囲気になっているが、そこで緩和が入るのは別に構わない。
問題は、やっちゃダメな箇所で喜劇テイストを持ち込んでいることだ。撃と烈が魔空空間に引きずり込まれた途端、そこまではシリアスに進めていたのに、撃と烈が観客に向かってピースするとか、リザードダブラーが車掌になるとか、そういった描写が入るのだ。
いやいや、アホかと。
むしろ、そこまでは緩和があっても、魔空空間に入ったらシリアスにやるべきでしょうに。
しかも、そういうのを少し見せただけで、撃と烈は魔空空間から元の世界に戻って来る。つまり、そういう喜劇タッチを見せるためだけのシーンなのだ。
魔空空間をギャグのためだけに浪費するって、なんちゅうセンスだよ。

「マクーの野望」は三角関係とは別で進行するのではなく、そこは密接な関係性を持たせている。遠矢は「撃が衣月を手に入れるために裏切った」と吹き込まれてブライトンになり、ドン・ホラーを復活させるために衣月を使おうとする。
だけど、そもそもドン・ホラーが遠矢を新首領として選ぶのも、ドン・ホラーの復活に衣月が器として使われるのも、ものすごく無理がある筋書きなんだよね。
なぜ既存の幹部たちだけでは不充分なのかも、なぜ復活に器が必要なのかも、納得できる説明は無いし。
少なくとも「遠矢でなければいけない理由」「衣月でなければいけない理由」ってのは、何も用意されていないし。

その「そいつでなければいけない理由」ということに関連して言うと、一条寺烈が特務刑事として地球へ派遣される理由も良く分からない。
前半では、そもそもエリーナが日向快と烏丸舟に任務を指示ていたはず。だったら、その2人を派遣して、撃と交代させればいいんじゃないのか。
少なくとも、「一条寺烈でなければいけない理由」は何も無い。
そもそも、烈が今でも現役で宇宙刑事をやっているのなら、彼を地球担当にしておけばいいんじゃないかと思っちゃうしね。

シャリバンとシャイダーの扱いは、かなり酷いことになっている。序盤にチラッと顔を見せた後、終盤にもチラッと出て来るだけ。あんな扱いなら、出さない方がマシだ。
っていうか、初代シャイダーの円谷浩は既に死去しているから仕方が無いにしても、シャリバンの渡洋史は健在なんだから、登場させるべきでしょ。ギャバンは引き継ぎがあるのに、なんでシャリバンは引継ぎが無いんだよ。
あと、ミミー役の叶和貴子も出演させてほしかったなあ。シェリーがコム長官の姪ってことは、ミミーの娘なんじゃないのか。だとしたら、せめてセリフでミミーの名前を出すぐらいのことはやってもいいでしょ。
渡洋史にしろ叶和貴子にしろ、どうやら本人は出演に前向きだったみたいなのに、オファーを出していないんだよな。

大葉健二が登場するとテンションが高まるし、話もピリッと締まる。ぶっちゃけ、石垣佑磨は露払いみたいなモンだと感じてしまう。
その感情に「TVシリーズを知っている人間だから」という事情が大いに関係していることは認めるが、それを差し引いたとしても、一条寺烈が登場するまでの間、しばらくはグダグダになっているんだよな。
繰り返しになるけど、恋愛劇とか見せられても、「こっちが求めているギャバンの映画って、そういうモノじゃないから」とマジで言いたくなる。
恋愛劇をメインに据えたかったら、『鳥人戦隊ジェットマン』のリメイク版でも作って、そこで思う存分やってくれと。

(観賞日:2013年11月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会