『WXIII(ウェイステッドサーティーン) 機動警察パトレイバー』:2002、日本

釣り客を乗せて東京湾を航行していた第五海福丸の船長は、貨物機の破片が降って来るのを目撃した。草野球をしていた警視庁城南警察署の秦真一郎は呼び出しを受け、事件発生現場へ急行した。既に先輩の久住武史は到着し、現場検証に当たっていた。レイバーの作業員が犠牲となっていたが、これで同様の事件は4件目だった。秦は鑑識班から、指紋と毛髪のサンプルを入手する仕事を依頼された。
駐車場で車が故障して困っている岬冴子を見つけた秦は、声を掛けた。秦は重いスーツケースを持っている彼女を、目的地まで送った。捜査会議に出席した久住は、4つの事件に「海辺で作業中」「夕方から夜に掛けて起きている」「レイバーがシャフト製」という共通点があることから、連続犯行だという推理を述べた。しかし他の刑事の中には、「欠陥機による事故」「湾岸開発に反対する環境保護団体による企業テロ」という可能性を唱える者もいた。
事故と事件の両面から捜査を行う方針が決定し、久住と秦は聞き込みに回る。潰れ掛けのスタジアムにいる面々が気になった2人だが、ロックバンドのミュージック・ビデオを撮影しようとしていただけだった。なかなか手掛かりを得られない中、2人は食堂で大きなハゼの魚拓が貼ってあるのを目にした。そのハゼが釣れたのは、事件現場近くの海だった。さらに2人は第五海福丸の船長に聞き込みを行い、飛行機の墜落した10日ほど後から大きな魚が釣れるようになったという証言を得た。秦は「偶然の一致じゃないですか」と言うが、久住は「お前に任せるから調べてみろ」と指示した。
東都生物医学研究所の栗栖敏郎所長は訪問者との面会を終えた後、研究員の宮ノ森静夫から「大佐は何と言っていました?」と問われる。栗栖は「カプセルが上がらなかったことを気にしていたよ。こんなことなら無理してでも横田か厚木に送れば良かったと悔やんでおった」と述べた。「12号の方は、あとどれぐらい持ちそうだ?」と彼が訊くと、宮ノ森は「まだ生きているのが不思議なぐらいです。明日にでもコードネーム通り、廃棄物でしょう」と答えた。
海底ケーブルの損傷を調べていた水中レイバーが、謎の生物にワイヤーを引っ張られて故障した。久住と秦は、墜落した貨物機について調査した。墜落原因は金属疲労だった。コンテナの1つが不自然に壊れていたが、爆薬などの反応は出なかった。積み荷は理化学機器で、納入先はヘルメス商事となっていた。5件目の発生を知らされた久住と秦は、水中レイバーをリモートコントロールしていた作業員たちと会った。レイバーはシャフト製ではなく、菱井重工業の製品だった。作業員はレイバーのビデオモニターが捉えた映像を2人に見せて「これです、こいつがやったんじゃないですかねえ」と言うが、そこに写っている物の正体はハッキリしなかった。
久住と秦はヘルメス商事の住所へ行ってみるが、先月の内に契約を解除して退去していた。転居先の住所はデタラメであり、久住はダミー会社の可能性が高いと睨んだ。冴子が自宅でビデオに見入っていると、宮ノ森から電話が掛かって来た。留守電に「アルバイトの件が、ちょっと問題になっています。時間があったら連絡を下さい。例の事件は非常に残念でした」というメッセージが録音されるが、冴子は微動だにせず、じっとテレビ画面を見つめていた。
秦は冴子が車に置き忘れたライターの返却を口実にして、彼女が働いている大学へ出向いた。久住と秦は、貨物機の部品が引き上げられる様子を捉えたニュース映像をチェックした。その場にアメリカの軍人らしき男が船に乗っていることに、久住は着目した。さらに彼は、水中レイバーのビデオモニターに写っていた生物との関連性を疑った。久住と秦は軍人らしき男の口の動きを専門家に読み取ってもらい、「検査」「カプセル」「13」という言葉を喋っていることを突き止めた。
ディスコの駐車場に来た若者は、隣に停めてある車の中でカップルが惨殺されているのを発見した。パトカーで移動中だった久住と秦は、バビロン工区の水上コンテナ備蓄基地で作業員と連絡が取れなくなったという知らせを受けた。警官2名と共に備蓄基地へ赴いた久住と秦は、そこで巨大な怪物と遭遇した。怪物が警官1名を食らい、久住たちは慌てて逃げ出した。その際、怪物の体は封鎖されたシャッターに挟まり、その一部が肉片となった現場に残された。
久住たちの目撃証言や肉片という証拠があるにも関わらず、警察は「大規模テロの可能性も考慮に入れて調査中」とマスコミに発表した。秦は大隅課長に、「都民の臨海部への立ち入りは禁止すべき」と訴える。しかし大隅は、「刑事2人の目撃証言だけで、都レベルの対策なんて上申できるか」と却下した。肉片の分析は外部施設に依頼されることになり、秦は科警研の岸田技官を東都生物医学研究所へ送っていく。そこで彼は冴子と遭遇し、そこでの研究が本業で大学講師がアルバイトだと知った。家族写真を見つけた秦に、彼女は同僚だった夫の晃一を3年前の事故で亡くしていることを話した。
久住は旧知の仲である特車二課の後藤喜一と会い、情報を教えてもらう。後藤は彼に、米国の貨物機がマーシャル諸島に立ち寄っていること、水中レイバーの動力部にシャフト製の起動モーターが使われていることを教えた。かずさ研究所に怪物が現れて研究員を全滅させる事件が発生したが、警察はテロ事件として発表した。合同対策本部に赴いた岸田は、肉片の分析結果を語った。その細胞はニシワキセルと人の癌細胞の融合体で、増殖の特異性から人為的に手が加えられた可能性が高いと考えられた。細胞は驚異的な再生能力を持っており、岸田は「攻撃によって分裂して増える可能性もある」と述べた。
宮ノ森は栗栖から見せられたデータを確認し、廃棄物はエサであるニシワキトロフィンの供給が断たれれば死ぬはずなのに」と驚愕した。そのデータは、30日以上が経過しても生き続けていることを証明するものだった。栗栖は「13号に自己崩壊プログラムは仕掛けられていなかった。おまけに人の癌細胞が使われておった」と言い、同席した冴子に「君がやったのかね」と尋ねた。冴子は「はい。実験用の個体なので、生存を優先させました」と悪びれずに答えた。黙って勝手な行動を取ったことに怒りを示した栗栖は、彼女に「君は下がってよろしい。後は私と宮ノ森君で処理する」と告げた。
久住と秦は東都生物医学研究所へ行き、栗栖と宮ノ森にニシワキセルのことを尋ねた。ニシワキセルの特許は研究所が持っているが、そのサンプルは世界中で手に入るらしい。久住がヘルメス商事の名を出すと、栗栖と宮ノ森は明らかな動揺を示した。久住の調査によって、ヘルメス商事の所有者が宮ノ森の名義になっていることが判明した。久住たちが去った後、栗栖は石原一砂佐と連絡を取った。久住は大隅から、「東都をつっつき回すのはやめろと署長から遠回しに言われた。上の方で何かあったらしい」と聞かされた。
ニシワキセルの発見者である西脇は、栗栖と共に東都生物医学研究所を創設した人物でもある。西脇の遺族について調査した久住は、冴子が彼の娘だと知った。冴子に疑いを抱く久住に、秦は「彼女は犯罪を犯すような人間じゃありません」と反発した。石原一佐は栗栖の元を訪れ、廃棄物13号を倒すためのウイルスを受け取った。石原が「今回の一件は不始末が多すぎましたね。特に、あの女については」と口にすると、栗栖は「癌細胞との融合と、自己崩壊プログラムの除外を承認したのは君たちではないか」と批判した。石原は冷淡に受け流し、現場を離れて外国へ行くよう指示した。
冴子が働いている大学のロッカーを調べた秦は、無断で持ち出されたニシワキトロフィンのカプセルを発見した。秦が彼女のマンションへ行くと、もぬけの殻となっていた。彼が奥の部屋に足を踏み入れると、大きく引き伸ばされた冴子の娘・一美の写真が壁に貼られていた。秦は冴子の実家を訪れ、彼女の両親と会った。すると両親は「一昨日の夜に冴子から預かった物があるのです。貴方が来たら渡してくれと頼まれました」と言い、ビデオテープを取り出した。そこには一美の姿が撮影されていた。冴子の両親は秦に、晃一の事故死から半年も経たない内に一美が入院したこと、小児癌で死去したことを話した。
久住は秦からビデオテープを渡され、科警研に持ち込んだ。一美がピアノを演奏している映像を分析した結果、その映像の高音域と久住が持ち込んだサンプルの音が一致した。石原は警察庁と防衛庁の合同会議に出席し、ウイルス弾頭を使った怪物退治を提案した。ただし弾頭は1つしか無く、目標は水中レイバーのカウルを身にまとっているため、射撃が困難で一発必中が要求される。しかも怪物の肉片は全て回収しなければならない。そこへ久住が現れ、怪物が超音波に寄って来ることを話す…。

総監督は高山文彦、監督は遠藤卓司、原案は ゆうきまさみ『機動警察パトレイバー』小学館・少年サンデーコミックス所蔵『廃棄物13号』より、原作はヘッドギア、脚本は とり・みき、キャラクター原案は ゆうきまさみ&高田明美、企画は角田良平&薬師寺衛、エグゼクティブプロデューサーは渡辺繁&川城和実&小坂恵一、プロデューサーは杉田敦&福島正浩、キャラクターデザインは高木弘樹、メカニックデザインはカトキハジメ&河森正治&出渕裕、デザインワークスは渡部隆&武半慎吾&佐山善則&末弥純、撮影監督は白井久男、編集は瀬山武司、音響監督は亀山俊樹、スーパーバイザーは出渕裕、美術設定は渡部隆、プロップ・セットデザインは武半慎吾、ディスプレイデザインは佐山善則、クリーチャーデザインは末弥純、生物学考証は みかみあきこ&尾前二三雄、科学監修は金子隆一、コンセプトフォトは樋上晴彦、絵コンテは高山文彦、作画監督は黄瀬和哉&高木弘樹&岩田幸大&水畑健二&冨永拓生&林千博&中山大介、色彩設計は志甫聡子&西香代子、美術は浅井和久、アニメーションプロデューサーは丸山正雄&篠原昭、音楽は川井憲次。
声の出演は綿引勝彦、平田広明、田中敦子、穂積隆信、拡森信吾、森田順平、池田勝、納谷六朗、斉藤晶、矢野陽子、大林隆介、冨永みーな、古川登志夫、池水通洋、二又一成、郷里大輔、小島敏彦、大森章督、亀山助清、橋村琢哉、Paul Lucas、Janika Southwick、鈴木里彩、中野雷太(ラジオたんぱ)、白川次郎(ラジオたんぱ)ら。


メディアミックス展開された『機動警察パトレイバー』の劇場版第3作となる長編アニメーション映画。
ゆうきまさみによる漫画版の「廃棄物13号」がモチーフになっている。
前2作を手掛けた押井守とProduction I.Gは全く関与せず、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』や『超時空世紀オーガス02』の高山文彦が総監督を務めている。
久住の声を綿引勝彦、秦を平田広明、冴子を田中敦子、栗栖を穂積隆信、宮ノ森を拡森信吾、石原を森田順平、大隅を池田勝が担当している。

まず初めに言いたいのは、「何のつもりで、こんなに読みにくいタイトルを付けたのか」ってことだ。
「WXIII」という表記を見て、すぐに「ウェイステッドサーティーン」と読める人は、ほとんどいないだろう。
しかし、そのタイトルが、実は本作品の中身を表現している象徴的な箇所だと言っても過言ではない。
と言うのも、映画の中身も無駄に分かりにくいのだ。
だから「無駄に分かりにくい映画ですよ」ってことをアピールするためのタイトルだとしたら、ある意味で内容とは合致している。

まず冒頭、第五海福丸の船長は何かが空から降って来るのを目撃するが、その降って来た物が何なのかが分かりにくい。
ここは、その時点で観客にインパクトを与える目的で、何かが海へ降り注ぐ様子を描いているはずでしょ。それなのに、何が降って来たのか良く分からないということだとマズいんじゃないのか。
そこを分かりにくくしてしまったら、掴みのシーンとしての意味が無い。
だったら、そんなのは描写せず、後から「こういうことがありまして」というニュース映像でも入れた方が分かりやすい。

しかも、向こうへ飛んで行く飛行機が何かを空からバラ撒いたのかと思ったら、後で「飛行機の墜落から10日ほど後に云々」という船長のセリフがあるので、そこで初めて「あれは飛行機が墜落する様子を描いていたのか」と分かる。
でも、冒頭シーンでは、飛行機は普通に飛んでいるんだよな。
墜落事故なら、なんで飛行機が落ちて行くする様子を描写しないのか。
あれで飛行機の墜落だと解釈できる人は、多数派じゃないと思うぞ。

呼び出しを受けた秦が事件現場へ向かうので、冒頭で描かれた出来事(その時点ではまだ飛行機の墜落事故と分かっていなかったので)に関連しているのかと思ったら、どうやら違うみたいだと分かる。
しかし、違うみたいだってことは分かるものの、どういう事件の捜査に当たっているのかは分からない。
「死体って、これだけですか」と彼は口にするのだが、どれだけなのかも良く分からない。
捜査会議のシーンになっても、やはり事件の詳細は全く説明してくれない。

どうやらレイバーの作業員が死亡したらしいってことだけは分かるのだが、そこから先は何も教えてもらえない。
だから刑事たちが「事件じゃないか」「いや、事故の可能性も」と様々な意見を口にしても、「そもそも、どういう出来事が起きたのか教えてくれよ」と言いたくなる。
「何月何日の何時何分ごろ、湾岸工事をしていたレイバーが突如として暴れ、作業員が犠牲になった」とか、その程度の説明でも充分なのに。
「その程度なら説明しなくても分かるだろ」と思ってるのかもしれんが、でも説明があるか無いかで印象は大きく異なる。説明が何も無いと、物語に対して無駄に入りにくくなっちゃうのだ。
何のメリットも無いんだから、説明は入れるべきだよ。

水中レイバーが襲われるシーンでは、作業員が水中ケーブルをチェックしているが、それが何のための作業で、どこの組織の人間なのかが分かりにくい。
そこは「こういう理由でケーブルの損傷があって、それを調べるために水中レイバーを使っている」ってのをセリフの中で説明しておけば、分かりにくくなることを防げる。
もちろん、そういう説明を入れなくても、描写されている内容は何となく伝わる。
でも、やはり無意味に説明を不足させていると感じる。

水中レイバーの作業員が久住と秦にビデオモニターの映像を見せて「これです、こいつがやったんじゃないですかねえ」と言うのだが、何が写っているのかはサッパリ分からない。
後のシーンで久住と秦の「水中レイバーのビデオモニターに写っていたアレ」「魚のヒレみたいなやつですか」という会話があって、そこで初めて魚のヒレに見える物が写っていたことが分かる。
だけど、それなら作業員が見せた時点で、魚のヒレっぽい物を写し出すとか、「魚のヒレみたいですね」という台詞を入れるとか、そういうことをやっておけばいい。

この映画、とにかく説明が足りなかったり、下手だったりする。
それはミステリー作品としての「謎を持たせる」とか「真実を隠したまま進める」という作業とは別の部分で、分かりにくさを生じさせている。
「作り手だけが分かっていて、観客には充分に伝わっていないことに気付かない」ってのは、作家性の強い監督が撮った実写映画で見られるケースだ。しかし、これはアニメなので、どこに責任の所在があるのかは分からない。
あと、軍や研究所が絡んでいる肝心の陰謀に関しても、そこはミステリーとして用意されている部分だから解明されるのかと思いきや、なんかボンヤリして良く分からないままだし。

怪物が姿を現した時点で、そこに東都生物医学研究所が絡んでいることも、冴子が生みの親であることもバレバレだ。
だったら、その辺りを中途半端に隠さず、もっと多くの情報を早い段階で観客に提示してしまった方が良かったんじゃないか。そして、冴子が怪物を放った目的を明かして、彼女の抱えている悲しみや歪んだ母性を厚く描写した方がいいんじゃないか。
そこを隠したまま物語を進めているのは、勿体無いと感じる。
冴子が亡くした娘の癌細胞を使って怪物を生み出したことを早い内から明らかにして前面に押しだすと、『ゴジラVSビオランテ』的な感じが強くなっちゃう可能性はある。
でも、原作を改変して『ゴジラVSビオランテ』っぽい要素を盛り込んだのだから、それは仕方が無い。

それと、秦と冴子の恋愛劇が全く描けていない。
秦はライターを見つけるまで冴子に会おうとはしなかったし、そもそも彼女の存在すら忘れていた。その後に舞台を見に行くデートのシーンは挿入されているが、そこに「付き合っている」という印象は皆無だし、秦の冴子に対する恋心も見えない。
だから秦が久住に「彼女は犯罪を犯すような人間じゃありません」と言い、怒りを示す辺りも、どこか嘘っぽくなってしまう。
そんなに感情的になるほど、冴子に対する思いの強さが伝わって来なかったからだ。

冴子は終盤になって秦に「貴方、あの人に少し似てるの」と言うけど、彼女の秦に対する感情も全く伝わって来なかった。
そのセリフを口にした時に、「あの時の彼女がああいう反応を取ったのは、そういうことだったのか」と思い返して納得するようなことも無い。
そこまでの進行の中で、冴子が秦に少なからず恋愛感情を抱いていたようには、まるで感じられなかった。
この2人の関係性が表面的で薄っぺらいモノになっているので、後半に入って恋心があるようなセリフを吐いても、段取り芝居にしか思えないのだ。

怪獣の出番を増やしたり、怪獣とレイバーのバトルを充実させたりというアクションに重きを置いた方向性は打ち出していない。
やたらと陰気&地味で全く弾けず、一方でサスペンスとしても煮え切らない。
せめて人間ドラマに厚みを持たせるのかというと、そこも薄っぺらい。
もっと冴子の存在感を重視し、彼女の悲哀や情念を強く表現していかないと、「娘を亡くした彼女が、その癌細胞をニシワキセルと融合させた」という設定の意味が無くなってしまうでしょうに。

冴子にとって廃棄物13号は、死んだ娘を投影した存在のはずだ。
ところが、そういう彼女の感情も、全く伝わって来ない。13号に対する彼女の歪んだ愛情や母性が、まるで感じられない。
「あの子は生まれ変わったのよ」とか「怪物、ベイカーズ・ダズン、廃棄物13号。みんなが色んな名前で呼ぶけど、私にはあの子の名前は1つだけ」と言うけど、それにしては怪物退治を阻止しようともしないし。
冴子がホントに13号を娘のように感じているなら、殺されるのを止めようと必死になるはずでしょうに。
でも、栗栖たちが13号の抹殺を考えていると知っても、それに反対することは無いし、何の行動も起こさない。13号が攻撃されているのを間近で見ている時も、全くの無表情だ。
っていうか、冴子って全編を通して、ほとんど感情が表に出ないんだよな。普段はそれでもいいけど、娘や13号のことに関連する時は、もうちょっと気持ちを表現させた方がいいよ。

この映画で最もダメなのは、特車二課の面々が主役じゃないってことだ。
だったら今までの劇場版2作に登場したキャラクターを主役に据えたスピンオフ的な映画なのかというと、それも違う。今回の主役は、初めて登場するオリジナルのキャラクターだ。
前2作の登場人物の身内とか、そういう設定でもない。久住に「後藤と旧知の仲」という設定がある程度の繋がりだ。
そんで肝心の特車二課は、チラッと顔を出す程度。しかも、特車二課が登場する必要性はゼロで、「とりあえず出している」という程度の存在でしかない。パトレイバーも終盤にチラッと出てくるだけ。
これで『機動警察パトレイバー』を名乗るのは、ほとんど詐欺に近いぞ。

仮にへッドギアの面々が「怪獣映画を作りたいけど、オリジナル作品として企画しても難しいだろう。だから『機動警察パトレイバー』という人気作品の訴求力を利用しよう」と考えて本作品を作ったのだとしても、それは別に構わない。
ただし、その名前を使うのであれば、ちゃんと『機動警察パトレイバー』にふさわしい映画に仕上げるのが、商業アニメに携わる職業人としての矜持ってモンじゃないのか。
わざわざ原作を改変し、特車二課をチョイ役に回すってのは、どういうつもりなのかと。

(観賞日:2014年8月18日)

 

*ポンコツ映画愛護協会