『親指さがし』:2006、日本

暑い夏の午後、20歳の武は小学校時代の同級生・由美子の家で引っ越し作業が行われているのを見て、慌てて駆け込んだ。由美子の母・ 恵美は、「いつまでもクヨクヨしていても由美子に叱られるだけだから。今までありがとうね。でも、もう由美子のことは忘れて」と 告げた。武が帰宅すると、同窓会の知らせが届いていた。開かれるのは8月13日だ。武は「死んだ人が帰ってくる日なんだって」という 小学校時代の由美子の言葉を思い出した。
武は同窓会が行われる小学校の体育館へ赴き、同級生の智彦、信久、知恵、綾と再会した。卒業以来、8年ぶりの再会だ。小学6年生の 8月13日、由美子も含めた6人は、廃墟となったホテルの屋上で遊んでいた。武は由美子から「もし、この後、由美子がいなくなったら どうする?」と尋ねられ、「絶対に探し出すよ」と言って指切りした。
由美子は武たちを「親指さがし」に誘った。「呪文を2回唱えたら手を離す。すると見たことの無い部屋に行く。そこが親指探しの部屋。 ロウソクが1本あるから帰りたかったら吹き消せばいい。肩を叩かれても絶対に振り向いちゃダメ。その部屋から帰って来られなくなる」 と彼女は説明した。親指さがしの後、由美子は行方不明になり、警察が捜索しても発見できなかった。
武は同窓会で集まった4人に、「もう一度、みんなで親指さがしをやってほしい」と頼んだ。信久は武を殴り倒し、「忘れろよ。みんな だって、とっくに忘れてるんだ。俺たちはあいつの家出に利用されたんだよ」と怒鳴った。本気で由美子が親指さがしの部屋に行ったと 思っている武に、知恵は「あれは集団催眠よ」と告げた。武が「行けないって思うのなら、もう一度、由美子のためにやってくれても いいだろ」と言うので、4人は承諾した。だが、親指さがしをやっても、何も起きなかった。
ラジオ局で働きながら番組の恐怖体験募集の掲示板を見ていた武は、その中に「親指さがしでいなくなった子は、大人になったら帰って 来る。彼女の呪いを解かなければ、一緒に遊んだ子は全員殺される」という書き込みを見つけた。階段を下りていた武は、由美子が付けて いた鈴の音を耳にした。彼は何者かに後ろから肩を掴まれ、「親指を返せ」と言われる。だが、振り向くと誰もいない。慌てて逃げようと して、武は階段から転落した。
公衆トイレに入った信久は、鈴の音を聞いた。個室を覗き込むとドアが閉まった。怯えて外に飛び出すと、後ろから肩を掴まれた。武は 入院している病院に知恵、智彦、綾を呼び寄せた。そこに秋葉刑事と上野刑事が現れ、事情を聞いた。武は信久が殺されたことを知らせる ために知恵たちを呼んだのだった。武は掲示板のコピーを見せて「由美子の声を聞いた、彼女が付けていた鈴の音も聞いた。由美子の意志 じゃないけど、呪われて襲ったんだ。親指さがしの呪いを解かないと」と述べた。
智彦が「その噂は知ってた」と言うと、知恵は「だって由美子は家出だったのよ」と口にする。武は「俺だって、そう思いたいよ。でも、 俺の肩を叩いた手、親指が無かった」と告げた。綾がロビーのテレビを付けると、信久の親指が切断されていたことが報じられた。知恵は 恵美を訪ね、由美子が家出した原因について質問したが、何も分からないという答えだった。
恵美は知恵に「もう知恵ちゃんも忘れてね。武くんは、由美子がいなくなったのは僕のせいだって、毎年、由美子が好きなヒマワリを 持って来てくれていたの。でも、もう8年よ。いいかげん、前を見なきゃって言ったんだけど、僕は忘れられませんって」と告げた。知恵 は武と遭遇し、2人でホテルへ行く。「良く来るの?」と知恵が訊くと、武は「うん。俺はどうしても由美子のことが忘れられない。必ず 助けるって約束したのに。徹底的に調べてみたいんだよ」と語った。
武が新たな書き込みをチェックしていると、「親指さがしはサキの呪い」と書かれたファックスが届いた。帰宅すると秋葉が待っていた。 8年前、武は警察署に乗り込んで「由美子は親指さがしの部屋に閉じ込められている」と喚いたが、その時に秋葉も現場にいた。秋葉は 「親指さがしのことを教えてほしい」と言うが、「何か関係があるんですか」と武は拒絶反応を示した。警察署に戻った秋葉は、上野たち から「事件前の親指さがしに関する書き込みは、全てCANDLEというハンドルネームの人物によるもの」と告げられた。
知恵は智彦を訪ね、「あの時に由美子は親指さがしをしていない」と打ち明けた。「武の気を惹きたくて、みんなに内緒で隠れることに していた。みんなが手を話した後に輪を抜けて」と知恵は言う。「隠れるはずだった場所にもいなかったんだよね」と智彦が訊くと、知恵 は「うん」とうなずいた。智彦は「じゃあ親指さがしに参加しなかったって言えないんじゃないのかな。だって、見てないんだろ」と告げ 、「武を信じてみたいんだ」と口にした。
智彦の携帯に、サキの家の写真が武から送られてきた。武は智彦たちと共に、車でサキの家へ向かう。「俺が親指探しで行った部屋は、 その屋敷の部屋だよ。屋敷に行けば何か手掛かりが見つかるはずだ」と武は言う。4人は天神村の屋敷に入り、分かれて手掛かりを探す。 武は何者かに右肩を後ろから掴まれて呻いた。苦悶の声を聞いて、3人が慌てて駆け付けた。智彦たちは武を連れて、ひとまず屋敷を出る ことにした。すると、そこに村の山田老人が現れた。武は「サキさんのことを教えてください」と山田に頼んだ。
山田の息子・和正は、ラジオを聴きながらボーッとしている。山田は「この村でつまらんことが起きるのが私の役目だ。二度と屋敷には 近付かないでくれ」と注意した後、「サキは30年前、事業に失敗した父親と宿泊先のホテルで心中して亡くなった。サキは幼い頃、事故で 親指を亡くした。そのせいで、この広場で同じ年頃の子供らに良く苛められていた。サキの呪いなんて最初から無い。自分の中の闇を 恐れてはいけない」と武たちに語った。
刑事たちは武の担当医に事情聴取を行った。担当医が「ホントに誰かに突き落とされたのなら警察に届けなさい」と言った時、武は「僕が 悪いんです、由美子を助けられなかったから」と口にしていた。綾は、小学生の頃、たまごっちを持ってチヤホヤされていた由美子を妬み 、たまごっちを埋めて隠したことがあった。そのせいで由美子に恨まれて、殺されてしまうことを恐れた綾は、小学校の校庭へ行って たまごっちを掘り返す。だが、その直後、彼女は何者かに襲われた。
智彦は武から掲示板の書き込みのコピーを見せられ、「彼女の呪いを解かなければ」という文面が気になった。彼は「サキも由美子も女 だけど、なんでこいつは女だって分かったんだろう」と口にする。武は「あの頃、俺たちホテルは屋上以外、入ったことが無かったよな。 2人が心中したのはあそこじゃないかと思うんだよ」と言う。秋葉たちはCANDLEが掲示板に書き込んだ店の防犯ビデオを入手し、そこに 写っている人物の特定作業に入っていた。
知恵は山田の元を訪れ、「12歳の娘道連れに 父娘無理心中か」という新聞記事を突き付けた。彼女はサキと父親が村で死んだことを指摘 し、「ホントのこと教えてください」と告げた。山田は「サキの母親は体が弱くて療養のために屋敷に引っ越してきた。その母親が死んで サキの父親は変わった。母を恋しがって親指をしゃぶるようになったサキの親指を切って捨てた」と告げた。
山田は「その頃、子供たちの間で、サキの親指を見つければ願いが叶うと言って探す遊びが始まった。サキが死んでから和正は喋らなく なった。それ以来、誰からともなくサキの呪いなんて言い始めた」「君らが呪いと呼んでいるのは、当時、見て見ぬフリをした村人たちの 罪悪感だ」と語った。知恵は親指探しをした日のことを思い出した。みんなが屋上を去って捜しに行った後、彼女は由美子が隠れている はずの換気口の扉をノックした。しかし返事は無く、扉を開けたが姿は見えなかった。
知恵が車に戻ると、携帯に武からのメッセージが残されていた。「箕輪親子が死んだのはあのホテルだ。今から智彦と親指を探しに行く」 という内容だった。知恵は「武は呪われてる」と呟き、ホテルへ向かった。秋葉たちが防犯ビデオを解析した結果、書き込みを行った人物 が武だと判明した。親指さがしの部屋から出て来た武は、斧を振り回して智彦と知恵に襲い掛かった…。

監督は熊澤尚人、原作は山田悠介、脚本は熊澤尚人&まなべゆきこ&高橋泉、プロデューサーは長松谷太郎&原公男、共同プロデューサー は柳崎芳夫&原藤一輝、エグゼクティブプロデューサーは三木裕明&千葉龍平&尾越浩文&藤島ジュリーK.&古屋文明&渡辺純一& 神野智&沼田宏樹、撮影は斉藤幸一、編集は宮島竜治、録音は深田晃、照明は豊見山明長、美術は松本知恵、音楽は安川午朗、 主題歌は「オール・オン・ミー」フィリッパ・ジョルダーノ。
出演は三宅健、伊藤歩、手塚理美、佐野史郎、松山ケンイチ、永井流奈、尾上寛之、小野明日香、品川徹、春海四方、斎藤歩、 伊藤正之、谷本一、国枝量平、鈴木リョウジ、大谷俊平、望月章男、長屋猛、野澤祐樹(ジャニーズJr.)、大坪あきほ、桑田尚典、 塚田真依、石崎直、小幡沙弥、小関裕太ら。


山田悠介の同名小説を基にした作品。
V6の三宅健が単独で初主演した映画。
監督は『虹の女神 Rainbow Song』の熊澤尚人。
武を三宅、知恵を伊藤歩、恵美を手塚理美、秋葉を佐野史郎、智彦を松山ケンイチ、綾を永井流奈、信久を尾上寛之、由美子を小野明日香、山田老人 を品川徹、山田和正を春海四方、幼少時代の武を野澤祐樹(ジャニーズJr.)が演じている。

親指さがしって、どんな遊びなのかと思ったら、完全に妄想に頼った遊びなのね。
オカルトめいた遊びであっても、例えばコックリさんなんかは、見ている目の前で現象を起こすことが出来る。
だけど、この遊びって「手を離すと見たことの無い部屋に行く」と言ってるけど、実際には絶対に行けないわけで(行けたとしたら、 その時点で既に遊びの次元を超えている)。
ホラーの発端となる遊びの設定からして、随分と無理があるように思うぞ。

その親指さがしの時、みんな律儀に目を閉じていたのね。親指さがしの部屋なんかに行けるはずがないわけで、行けなかった時点で目を 開けるだろ。
そんで、すぐに目を開けたら、由美子が換気口に隠れる現場を目撃できると思うんだよな。
かなり設定に無理を感じるぞ。
目を閉じていたにしても、由美子がこっそり立ち去ろうとした時に、足音ぐらいすると思うんだが。
それに、その時も由美子は鈴を付けていたんだろうに。だったら換気口へ隠れる時に、絶対に鈴が鳴るぞ。

「警察は署員300名を動員して3日間、ホテルと近辺を捜索したが発見できなかった」という説明があるが、それで見つけられないって、 どんだけボンクラなんだよ。
そもそも由美子がいなくなった時点で、武たちは警察に届ける前に、まずホテルを捜索するでしょ、普通は。
「あの頃、俺たち、ホテルは屋上以外、入ったことが無かったよな」とか言ってるけど、そんなバカな。由美子がいなくなった時点で捜索 してないのかよ。
あと、なぜ知恵は換気口に由美子が隠れたことを言い出せなかったのか、全く分からんし。

武は同窓会で「もう一度みんなで親指さがしをやってほしい」と頼むが、そんなことを今さら言い出すのも変だけど、それだけで激怒して 殴り付ける信久は、完全に頭がおかしいとしか思えない。普通に断ればいいだけだろ。
「なんで来たんだよ。由美子は友達だろ」と責めるように武は言うけど、だったら8年が経過するまで何の行動も取らなかったお前は どうなのかと言いたくなる。本気で由美子を見つけたいと思っているのなら、なぜ今さらなのかと。
武の希望で5人は親指さがしをやるんだが、それを実際にやるシーンは無くて、小学生の武が親指さがしの部屋に迷い込むシーンが挿入 されるが、どういうことなんだかサッパリだ。
そもそも、小学生の頃、親指さがしをやってどうなったのかがサッパリ分からない。そこが明確に描かれていないのだ。
だから、どういう経緯で由美子がいなくなったのかが良く分からない。

この映画は「本当に由美子が親指さがしの部屋に行ったのだ」というところでホラーとしての道筋を作っていて、それを観客が受け入れる ことでミスリードも成立するんだけど、その時点で私は脱落だな。
だって、最初に遊びとしてのルールの中で、「その部屋に行く」と設定されていて、仲間たちはみんなそれを信じているっぽいん だよな。
例えば、そこで誰か「そんなのホントに行けるけないだろ」と否定したり、懐疑的な奴がいたりすれば、それが観客と同じ位置にいる キャラクターになってくれて、「そんなことは有り得ないはずなのに、実際に由美子が消えた」という形で、スムーズに持って行けると 思うんだけど。

これはホラーではない。なんせ全く怖さは無いのだから。
そしてサスペンスでもない。サスペンスとしての怖さも無い。
あえて言うなら「主人公が抱えている過去への執着を断ち切ろうとするドラマ」ということになるかな。
ただ、それをマトモにやるには、親指さがしの設定があまりにも陳腐だから、苦しいものはあるよな。
っていうか、そういうドラマとして進んでいくわけでもないし。

智彦が絵を諦めたことが語られたり、「大人になるってさ、自分に出来ないことが分かっちゃうことなのかなって。俺にはもう出来ない から、武みたいに何かを信じること。だから武を信じてみたいんだ」と、まるで青春ドラマか何かのようなセリフを吐いたり、青春ドラマ のようなシーンを用意したりするが、何がやりたいのやら。
熊澤監督はホラーを撮る気が無かったのか。
根本的に、武がそんなに怖がってる感じが無いのよね。階段ではビビってるけど、恐怖の芝居は薄い。サキの屋敷では苦しんでいるけど、 怖がっているわけじゃない。
単純に三宅の芝居が稚拙というのもあるだろうけど、それ以上に演出として「登場人物が怖がることで観客の恐怖を喚起しよう」という 意識が薄いんじゃないか。
そもそも本気で怖がらせる気なら、主役は男より女だよな。
まあ、主役のポジションは、たぶん大人の事情でジャニーズになったんだろうから仕方が無いとしても、それでも女が怖がるのをなるべく 見せるべきなんだけど、その意識は乏しい。
綾の芝居なんかは、恐怖を喚起するモノじゃないのよね。メソメソしている怖がり方は、こっちの恐怖を喚起しない。もっと顔を 引きつらせて、悲鳴を上げてくれないとね。

武が病院に3人を呼び、そこへ刑事が来て事情聴取を行うが、そこで信久が殺されたことへのショックを表現する様子は薄い。
そもそも、刑事が来た段階ではそれが分からず、立ち去った後で智彦が「武、信久が殺されたのって」と言うので、ようやく刑事が訪問 した理由が判明するという次第。
なぜ無意味に話をややこしくしているのか。
その狙いがサッパリ分からん。

武が「親指さがしの呪いを解かないと」と言うが、この時点でみんな怯えまくりなんだよな。武が思い込むのはポジション的に分かるけど 、みんな早い段階で同調しすぎだよ。
で、武が「俺の肩を叩いた手、親指が無かった」と言うが、そこで初めて「へえ、そうだったのか」と思う。
それぐらい、ラジオ局で彼に触れた手に親指が無かったことの印象が全く無いのよ。
っていうか、そもそも、親指さがしが、なぜ親指さがしという名前の遊びなのかも分からないから、幽霊に親指が無いことにどのような 意味があるのか、そのことが具体的にどう恐怖に繋がるのかが、サッパリ分からないんだよな。
親指さがしというのが広く知られている遊びという設定なのか、そうではないのか、その辺りもボンヤリしているし。

テレビで偶然にも信久のニュースをやっていて、親指が切断されていたことが報じられるという知らせ方は、構成が下手だと言わざるを 得ない。
普通、そんなのは警察が来た時に言うだろ。
警察が病院に来たシーンで、全く具体的なことは言わず、「また何かあったら来ますから」的な中身の無いセリフだけで済ませてしまった ことは大きな間違いだよ。
その程度なら、刑事が来た意味が無い。

武は智彦の携帯にサキの屋敷の写真を送り、「俺が親指探しで行った部屋は、そのサキの屋敷の部屋だよ」と言うが、どうやってサキの 屋敷を見つけ出したんだよ。サキという名前しか分かっていないのに。
それに全く疑問を持たない仲間たちも仲間たちだし。
武は「窓の感じが似てるんだよ」って言うけど、曖昧すぎるだろ。
外からの景色は見ていないんだし、8年前に一度だけ、しかも短い時間しか行っていないのに、 そんなにハッキリと覚えているわけねえし。

そりゃ武が犯人だから、全て把握しているのは当然なのかもしれない。
だけど、彼が妄想に取り憑かれているのだとしたら、やっぱりサキの屋敷を知っているのは変だよな。
その屋敷を知っているってことは、ただ妄想に狂っているわけじゃなくて、サキの呪いってことなのか。でも、どういう繋がりで呪われる ことになったのかは全く分からないんだよな。
大体さ、由美子の失踪事件と、サキの悲劇を関連付けようとする描写も上手くないんだよな。
そもそも、武が階段で見たのは由美子の手だし、彼や信久が襲われた時、サキが幽霊として登場したわけではない。サキ、もしくはサキ らしき存在が彼らの前に現われるシーンは全く無いのに、その中でサキについての話を持ち込まれても、関連性を強く感じることは難しい。

信久や綾が殺されるシーンは、「何かが手を伸ばしてきた」というところで終わっていて、それ以上のモノは無い。
まあ実際、それ以上のモノを見せてしまうと武が殺していることがネタバレしちゃうから出来ないわけだが。
で、それ以外では、残酷描写で怖がらせるわけではないし、「何かがそこにいる」という描写でジワジワとして恐怖を煽るのかというと、 それもほとんど無い。
どうやって怖がらせようとしているのかさえ疑問を抱くほど、BGMだけが必死で健闘しているという感じ。

智彦は「メールに彼女ってあっただろ」とネット掲示板のコピーを見て武に電話してるが、それはメールじゃねえから。
防犯ビデオの映像を見ている刑事たちも「CANDLEがこの店からメールを送ったのは間違いないんですけどねえ」と言うが、だからさ、 メールじゃなくてネット掲示板への書き込みだろうに。
根本的に熊澤監督は、ネットのことを全く理解できていないのか。

知恵が山田に「ホントのこと教えてください」と求めた後、和正が持っていたメモには「親指さがしはサキの呪い」の文字がある。それは 武の元に送られてきたファックスと同じ筆跡だ。
でも、それを送ったのは武なんだよな。なぜ和正が同じ文面、同じ筆跡のメモを持っているのか。
その謎は最後まで解明されない。
そんで山田は「サキの父親は、母を恋しがって親指をしゃぶるサキの親指を切って捨てた」と説明するが、右の親指を切られたら左の親指 をしゃぶるだろうし、それも切られたら別の指をしゃぶると思うぞ。
片方の親指を切断したところで、おしゃぶりが止まることは無いと思うぞ。

で、そこで知恵が山田から話を聞くことによって、武たちがホテルへ行く前に、ホテルに呪いの根源が無いことが明らかになる。
それは構成としてマズいだろうに。
その後、武が犯人だとバレバレにしているけど、それも一つタイミングが早いんだなあ。
実際に武が殺人を犯す場面までは、ネタバレを引っ張らないと。これはサスペンスじゃなくてホラーなんだからさ。
っていうか、サスペンスとしても破綻しているけどさ。

掲示板に書き込みをしたのが武だと判明した後は、どんな怪奇現象を起こしたところで、それは「呪い」じゃなくて「武の妄想」としか 思えないんだよな。
っていうか実際、サキの死とか、親指さがしとか、何の関係も無さそうだ。
ただ、「武は妄想に狂っているだけ」と結論付けたいところなんだけど、サキの屋敷をなぜ武が知っているのかという部分だけは謎が 残る。
ただし、それは解明したくなる謎じゃなくて、「ようするに整合性が取れてないんだな」と切り捨てたくなるだけ。
まあホラー映画で整合性を二の次にすることは珍しくも無いけど、その場合、「整合性を無視しても恐怖を優先する」ということが あるから許されるわけで、整合性を無視した上に全く怖さが無いってことになると、もはや救いようが無いのである。

狂って襲い掛かってきた武を止めようとした時、なぜ智彦がシャベルを投げ捨ててから「知恵、逃げろ」と言うのかも分からん。
行動が全く道理に適っていない。
あと根本的に、「妄想に取り憑かれている狂信者」という役柄を演じるには、三宅は明らかに力不足。最終的には恐怖の対象がそこに ならなきゃいけないのに、演技力の低さばかりが目立ってしまう。
それと、仮に呪われたにしても、なぜ智彦たちを殺そうとするのかは意味不明だぞ。
何に対する殺意なのか、サッパリ分からん。

(観賞日:2010年5月5日)

 

*ポンコツ映画愛護協会