『終わった人』:2018、日本
田代壮介は会社の専務取締役を定年で退職する日、部下からロッカーに残っていた荷物を渡された。荷物の写真を見た彼は、15年前を回想した。たちばな銀行の支店長だった壮介は、本部で最優秀店舗の表彰を受けた。東大卒のエリートである彼は、本部役員への昇進が確実視されていた。しかし同期のライバルに負けて関連会社への出向を命じられ、銀行を戻れないまま定年を迎えていた。銀行では定年の日、地位に関係なく黒塗りのハイヤーが自宅まで送り届けることになっている。壮介にもハイヤーが用意されたが、彼は「本来なら毎日の送迎があるべき人間だった」と感じていた。
[終わった人 1日目]
壮介がハイヤーに乗り込む時、大勢の部下が集まった。部下たちは笑顔で見送るが、壮介は「定年は生前葬のようだ」と思った。ハイヤーの運転手は彼に、「死んだも同然です。辛いですよ、仕事が無いのは。私なんて一回辞めて、すぐ出戻りました」と語った。嫌な気持ちでマンションに戻った壮介は、ドアの前で気合いを入れた直した。彼が家に入ると、妻で美容師の千草、出戻り娘の道子と孫娘の麻衣、千草の従弟でイラストレーターの青山俊彦が笑顔で待ち受けていた。千草たちは壮介の定年をお祝いするため、御馳走を用意していた。
千草たちは盛岡に住む壮介の母・田代ミネと妹・桜田美雪のビデオメッセージ、施設に入居している千草の母のビデオメッセージを流した。義母の言葉を聞いた壮介は、「俺の人生は、家族を守って生き、終わった。ただそれだけか」と暗い気持ちになった。「これからは貴方のやりたいことをして」と千草が言うと、彼は「そうは言われてもな」と漏らす。道子が「だったら恋でもしたら?」と冗談めかして言うと、千草は笑って同調した。壮介は千草に、「これからは夫婦でゆっくり楽しもう」と告げた。彼が温泉旅行に誘うと、千草は「いきなりは休めないから無理。落ち着いたら1泊ぐらいは付き合うわ」と述べた。
壮介は今までの習慣で朝6時に起床し、「今日から行かなくていいのか」と思い出して二度寝した。彼は出勤する千草を見送り、テレビを見たりして過ごすが、すぐに飽きてしまった。一方、千草は美容室の常連客から、今は卒婚が多いことを聞かされた。老後になってからの離婚は面倒なので、籍を抜かずに同居を解消するのだと客は説明した。勤務時間の終わった千草は、同僚とカフェヘ行こうとする。しかし壮介が車で迎えに来たので、千草は呆れた。壮介は千草を車に乗せ、道子が小さい頃に3人で花見に出かけた公園へ連れて行った。千草は彼に、明日からは迎えに来なくていいと告げた。 [終わった人 2日目]
壮介は千草に「予定があるから外で食べる」と嘘をつき、コンビニ弁当で昼食を済ませた。ゴミを家で捨てるとバレるため、彼は公園まで捨てに出向いた。公園と図書館で大勢の老人を目撃した壮介は、老人的なことから距離を取るため、行かないようにしようと決めた。彼はスポーツジムに行くが、そこでも鈴木直人という男を除けば老人ばかりだった。鈴木は老女に取り囲まれ、笑顔で対応していた。壮介はインストラクターに質問した彼は、老人が元気に運動していることを聞かされた。 [終わった人 3日目]
壮介はスポーツジムの会員になり、体を動かした。ジムを出た彼は鈴木に声を掛けられ、良かったら家まで送ると言われる。鈴木は運転手付きの車を呼び、壮介を乗せた。彼はIT関連企業の社長で、シニア世代をターゲットにしたソフト開発のマーケティングでジムに通っていることを話す。彼は老人たちの噂話で壮介のキャリアを知っており、また仕事をするつもりは無いかと問い掛けた。壮介は「もう充分、働きました」と言い、「後悔は無いんですか」という質問に「無いです」と即答した。
壮介は俊彦の家を訪れ、一緒に酒を飲んだ。彼は俊彦に、「仕事から離れた途端、社会から必要とされてないように思えてなあ。やっぱり、仕事がしたいんだなあ」と漏らした。帰宅した壮介は、千草に「この頃、15歳から人生をやり直したいと考えてる。そしたら絶対、違う人生を選ぶ」と語った。書店へ出掛けた彼は石川啄木の『一握の砂』を手に取り、地元で定年まで中学教師を務めた父のことを思い出した。浜田久里という女性から「それ、買うんですか」と声を掛けられた彼は、慌てて「買います」と告げた。
書店を出た壮介は、高校時代の同級生である二宮勇と約30年ぶりに再会した。二宮は一流商社を辞めた後、ボクシングのレフェリーに転職していた。壮介は二宮が捌く試合を観戦した後、一緒に居酒屋で飲んだ。2人は南部高校時代にラグビー部に所属し、壮介はキャプテンを務めていた。彼は「羅漢」と呼ばれており、チームには川上喜太郎監督の息子で「16番」と呼ばれる川上も所属していた。チームは全く勝てず、壮介が試合前に「勝つためなら反則でも構わん」と言った時には川上が反発して喧嘩になった。
二宮は壮介に、いずれは世界戦を捌くのが夢だと語った。帰宅した壮介は千草に二宮のことを話し、「負けだよ、負け」と漏らした。彼が「それに比べて俺は」と愚痴っていると千草は腹を立て、昔と違うのだから現実を受け入れるよう説教した。二宮はハローワークの紹介を受け、山下良夫と正美の夫婦が経営する山下メディカルという会社へ面接に赴いた。しかし山下夫妻は二宮の経歴が立派すぎると評し、家族経営の小さな会社では雇えないと断った。
帰宅した壮介は、大学院に行って石川啄木を学ぶ考えを明かした。千草は笑顔を浮かべ、「貴方なら出来る。応援する」と告げた。大学院に入るには論文の試験を受ける必要があり、俊彦はカルチャースクールでガイドラインを勉強するよう勧めた。壮介はカルチャーセンターを訪れ、啄木の講義を見つけ。彼は受付係が久里だと気付き、同じ盛岡の出身ということで親しくなった。壮介は浮かれた気分になり、身だしなみを整えてカルチャースクールに通い始めた。彼はスポーツジムにも通い、体作りに励んだ。
壮介は久里を焼き肉店に誘い、宮沢賢治が好きで童話作家を目指していること、コンクールに向けて作品を執筆していることを聞いた。彼が大学院へ行くつもりだと明かすと、久里は「高い目標に挑んでいる人は素敵だと思います」と告げた。喜んで帰宅した壮介は、千草と道子に「恋が訪れた。相手は35歳だ」と楽しそうに話す。道子は「親父に恋なんてそうそう無いからね」と忠告するが、壮介は全く相手にしなかった。彼が「俺が本格的に恋に走ったらどうする?」と質問すると、千草は笑顔で「見直す」と答えた。
壮介は久里から、焼肉のお礼として宮沢賢治展のチケットをプレゼントされた。彼はスクールのシフトから久里が来る日を計算し、会場の前で待ち伏せた。狙い通りに久里が現れ、壮介は彼女と一緒に宮沢賢治展を見た。2人はバーに立ち寄り、壮介は好きな男のタイプを訊く。久里が「年上で包容力がある人」と答えたので、彼はますます気持ちが高ぶった。壮介は鈴木から、会社の顧問になってほしいと依頼された。彼は資料を用意し、年商5億円を超えたことを話す。壮介が「ITは専門外だ」と言うと、鈴木は経歴が重要なのだと言う。若い社員が多いので、壮介の立派な経歴が会社の信用に繋がるのだと彼は説明した。
壮介は帰宅して財務資料を読み、会社の顧問を依頼されたことを千草に話した。「どう思う?」と彼が意見を求めると、千草は「貴方はどうしたいの?」と問い掛けた。壮介は「俺に必要なのは仕事だよ。俺はまだ終われない」と答え、千草に髪を染めてもらった。彼は鈴木の会社の顧問に就任し、精力的に仕事をこなした。彼は久里にメールを送り、しばらくはカルチャーセンターに行けないことを知らせた。鈴木が心臓発作で倒れて急死し、壮介は退職しようと考える。しかし社員たちから社長に就任してほしいと頼まれ、引き受けることにした。千草は「責任が違う。もう充分じゃない」と反対するが、彼は「俺はサラリーマンとして成仏していない」と語った。
社長に就任した壮介は、ミャンマーの会社に新たなシステムを導入してもらう話をまとめた。彼は酔っ払った久里から電話を受け、泣いていることに気付いた。「何があったの?」と壮介が尋ねると、久里は会いたいと言い出した。壮介は週末に熱海のホテルで会議があることを話し、来ないかと誘う。「ただ、一泊しないと無理な時間だ」と彼が語ると、久里は「行きます」と告げた。壮介は期待感を膨らませ、久里とホテルの部屋で肉体関係を持つ妄想に浸った。
壮介はホテルのバーで久里と会い、「一緒に童話作家を目指していた友達がコンクールで賞を取ったのに喜べなかった。事故にでも遭えばいいと考えた自分が嫌になった」と聞かされる。彼は「童話作家、諦めたら?」と言い、10年経っても芽が出ないのは才能が無いからだと指摘した。壮介が違う道に進んだ方がいいと助言すると、久里は「やっぱり会いに来て良かった」と告げた。壮介がホテルの部屋に誘うと、久里は「電話で話した時は、どうなってもいいと思った」と釈明して去った。
壮介は部屋に入り、感情を爆発させた。そこへ千草から電話が掛かって来たので、彼は平静を装った。千草から大事な話があると言われた壮介は、帰ったら聞くと告げる。彼は浮気がバレたのではないかと考え、激しく狼狽した。翌日、帰宅した壮介は、すぐに大事な話の内容を尋ねた。離婚を切り出されるのではないかと焦った壮介だが、千草は独立してヘアサロンを開く考えを明かした。ちょうどいい居抜きの物件があると説明され、壮介は安堵した。一方、会社では大きな問題が勃発した。ミャンマーの取引会社で、経営者である大臣が収賄で逮捕されたのだ。そのせいで、既に導入したシステムの3億円が約束の期限になっても支払われなかったのだ…。監督は中田秀夫、原作は内館牧子『終わった人』(講談社文庫)、脚本は根本ノンジ、製作総指揮は黒澤満、製作は村松秀信&植村徹&間宮登良松&木下直哉&浅野謙治郎&飯田雅裕&吉崎圭一&中村卓&吉羽治&片岡尚&志賀司&東根千万億&鎌田英樹&榧野信治&藤澤利憲&富永健治、企画・プロデュースは近藤正岳、プロデューサーは明石知幸&坂井正徳、アソシエイトプロデューサーは柳迫成彦、ラインプロデューサーは望月政雄、撮影は斉藤幸一、照明は豊見山明長、美術は三ツ松けいこ、録音は室薗剛、編集は洲崎千恵子、音楽は海田庄吾、音楽プロデューサーは津島玄一、主題歌『あなたはあなたのままでいい』は今井美樹。
出演は舘ひろし、黒木瞳、広末涼子、臼田あさ美、今井翼、笹野高史、田口トモロヲ、渡辺哲、高畑淳子、岩崎加根子、ベンガル、清水ミチコ、温水洋一、志賀廣太郎、駒木根隆介、戸田昌宏、菅登未男、稲川実代子、小川節子、小林トシ江、田中真理、泉晶子、山口美也子、彦摩呂、森岡豊、桜井ユキ、荒谷清水、柳憂怜、諏訪太朗、桐生コウジ、岩永ジョーイ、内館牧子、松岡未紗、ささの友間、高尾悠希、野澤しおり、山田琉生、阿由葉さら紗、兒玉宣勝、ねりお弘晃、佐野元哉、井上幸太郎、矢崎まなぶ、吉岡睦雄、村井麻友美、朝比奈加奈、石井貴就、曽我部洋士、飯田隆裕、早川知子、堀田祥子、長屋守芳、LYDE、カマル、ファイサー、アフラ、土屋修平、白鳥大珠、範田紗々、竹本茉莉、池田功、ノーマン・イングランド他。
内館牧子の同名小説を基にした作品。
監督は『劇場霊』『ホワイトリリー』の中田秀夫。
脚本はTVドラマ『フリンジマン〜愛人の作り方教えます〜』『居酒屋ふじ』の根本ノンジで、これが映画デビュー作。
壮介を舘ひろし、千草を黒木瞳、久里を広末涼子、道子を臼田あさ美、鈴木を今井翼、二宮を笹野高史、俊彦を田口トモロヲ、川上を渡辺哲、美雪を高畑淳子、ミネを岩崎加根子、正美を清水ミチコ、良夫を温水洋一、冒頭のタクシー運転手を志賀廣太郎が演じている。美容室まで迎えに来た壮介に呆れる千草だが、思い出の場所に案内された時には素直に「懐かしいなあ」と喜ぶ。
しかし壮介が「散る桜 残る桜も 散る桜」という良寛の辞世の句の意味を説明して「40代の頃は、こんなこと考えなかったなあ。明日が来ることが楽しみでしかなかった」と漏らすと、途端に不機嫌になる。
そして「もう帰ろっか」と言い出し、明日からは迎えに来なくてもいいと告げる。
この急激な変化の理由が壮介は全く分からないので、ただ戸惑うだけだ。しばらくして、壮介が「この頃、15歳から人生をやり直したいと考えてる。そしたら絶対、違う人生を選ぶ」と漏らすシーンがある。
壮介から「お前は人生、やり直したいと思ったこと無い?」と訊かれた千草は笑顔で「無いわよ」と答えた後、洗面所に行って深いため息をつく。
ようするに彼女は、壮介が「昔は良かったね」と気持ちに支配され、「違う人生を歩めばよかった」と後悔ばかり口にすることが嫌なのだ。
自分が「終わった人」と決め付けて、前を向いて人生を歩もうとしないことに苛立ちや寂しさを覚えるのだ。壮介が書店を訪れた時は、父に東大合格を伝えた時の回想シーンが挿入される。そして、「もし親父が生きていたら、昼間から行く場所も無くブラブラしてる俺をどう思うんだろう」というモノローグが入る。居酒屋で二宮と思い出話に花を咲かせる時には、ラグビー部の頃の回想シーンが挿入される。
そのように何度か挿入される回想シーンも、「壮介が過去に囚われている」ってのを示すための演出だろう。
だからこそ、ラグビー部の回想の後には「あの頃は希望しか無かった。これからの人生、何だって出来ると思ってた」と壮介に語らせるんだろう。
でも、ただ定年で退職しただけで、人生が完全に終わったわけではないのだ。それは本人の気持ちや行動次第なのだ。粗筋で[終わった人 1日目]と書いたが、そのようにテロップが表示される。しかしテロップは[終わった人 3日目]で終了し、翌日以降は全く表示されない。
ずっと最後まで続けないのなら、それは中途半端な演出でしかない。
これが「壮介が終わった人なのは3日目までで、翌日からは終わった人じゃない」ってことなら、それは分かるのよ。
だけど、そうじゃないんだからさ。どう考えても、まだ壮介は前向きな気持ちに切り替わっていないんだからさ。壮介が大学院で啄木を学ぶと言い出すのは、かなり唐突に感じる。そこまで文学好きな男だったのかと。
書店で『一握の砂』を手に取るシーンはあったけど、それも「たまたま」にしか見えなかったし。学生時代の回想シーンも、ラグビーをやっていた様子だけだし。
ってことは、大学以降に文学や啄木にハマッたのか。その辺りの描写や説明が、まるで足りていない。
あと、壮介が宮沢賢治を「詩人」と評し、童話作家として認識していないという設定は、あまりにも無理があり過ぎるだろ。壮介は定年退職で「終わった人」になるが、久里に恋をして毎日を楽しく過ごすようになる。
それはコメディーとしては悪くないのかもしれないけど、この話の作り方としては、果たしてそれで良かったのかどうか。
恋は二次的な要素や副産物にしておいて、それ以外のことで「愚痴と思い出話ばかりだった壮介が人生の目標や目的を持ち、前向きな気持ちに変化する」という形にした方が良くないか。
壮介が恋に浮かれるけど、「大事なのはそういうことじゃないんだ」と気付く筋書きならともかく、そこを上手くテーマに落とし込めているようには思えないし。壮介がIT企業の顧問に就任すると、すぐに鈴木が急死する。それなりに出番は用意されていた鈴木だが、中身は薄っぺらいままで終了している。
とどのつまり、彼は壮介をIT企業の社長に就任させるための都合のいい駒に過ぎず、言ってみれは噛ませ犬だったわけだ。
そして急死したら、その存在は完全に忘れ去られる。
幼い息子を抱えた鈴木の妻が号泣する姿を描いておきながら、物語としてのアフターケアは何も用意されていない。壮介は顧問に就任してカルチャーセンターに行けないことを伝えるメールを久里に送った時、「童話作家の夢、がんばって!」と応援している。
ところがホテルで相談を受けた時には、いきなり「才能が無いから諦めた方がいい」と冷たい言葉を言い放つ。
本人としては「彼女のためには早く諦めて別の道に進んだ方がいい」という助言であり、久里も「会いに来て良かった」と納得している。
そして久里は別の道を選ぶので、「壮介の対応は正解」という形になっているのだが、そこは賛同しかねるんだよなあ。日壮介は久里に、「諦めなければ一生が無駄になる。辞めさせるのも愛情だよ」と言っている。それが全くの的外れだとは思わない。
だけど、果たして「10年で芽が出ないのは才能が無い証拠」と言い切ってもいいものかどうか。
ジャンルは違うけど、お笑い芸人や役者の世界だと、「10年以上も燻ってから活躍するようになる」というケースは珍しくもない。文学界に詳しいわけじゃないけど、小説家だって同じようなことは言えるんじゃないかと。
しかも壮介は、自身の経験を踏まえて久里にアドバイスしているわけでもないんだよね。
そういうことも含めて、引っ掛かっちゃうんだよなあ。終盤、ミャンマーの会社が潰れて金が支払われず、会社が倒産して壮介は社長として9千万の借金を背負うことになる。怒った千草は家を出て行き、壮介はカプセルホテルで宿泊する。
南部高校が高校ラグビー選手権に出場していることを新聞で知った壮介は、岩手県予選決勝の観戦に赴く。
彼は高校時代の仲間である二宮や工藤たちと一緒に応援するが、チームは逆転負けを喫する。
でも、この試合のシーンなんて全く要らんよ。アナウンサーによる実況の音声も、ただ邪魔なだけだし。試合の後、壮介は工藤が東日本大震災の時に東京の保険会社を辞めて戻って来たこと復興のNPO法人を立ち上げたことを聞く。でも、そういうトコで薄っぺらく震災を絡めるのは疎ましいだけ。
で、工藤が16番も法人を手伝っていると話すと、壮介が彼と揉めて監督から叱責された時の回想シーンが挿入される。
それは前半と全く同じ回想パートで、監督の叱責までを繰り返して再生しているわけだが、こんなの全く要らんよ。
16番と台詞で言うだけで充分に伝わる。回想を入れるにしても、短い1カットでいいよ。壮介は16番に会うため、彼の実家である川上写真館を訪れる。そこで監督に再会した彼は挨拶するが、それが実は現在の16番だと判明する。
「年を取って父親そっくりになった」という設定で、回想パートで監督を演じていた渡辺哲が16番として登場している。
だけど、その1人2役は完全に失敗だよ。
しかも、16番の父である川上監督は存命で、写真館で暮らしているのだ。
そして現在の川上監督は渡辺哲と似ても似付かない別人が演じているので、「お前は誰なんだよ」と言いたくなるぞ。終盤、壮介は千草の元へ戻り、今まで身勝手だったと詫びる。そして「このまま一緒にいたら苦しめるだけだ」ってことで、離婚しようと告げる。
すると千草は拒否し、いきなり離婚を言い出すのも身勝手な行為だと批判する。同席していた道子は、両方を批判する。そして最終的には千草が卒婚を提案し、壮介が了承する。
壮介は工藤のNPO法人で働き始め、千草が2週間に1回は髪を染めに来るという形で「ハッピーエンド」にしてある。
前半で卒婚のネタ振りはしていたけど、それが本当にベストな答えなのか。
NPO法人で働くのも、壮介に対する「まだ終わった人じゃない」という答えとして全く綺麗に着地できていない印象だし。(観賞日:2025年3月20日)