『黄金の犬』:1979、日本
昭和53年秋、北海道。北守数重は牧場を経営する友人の伊清に呼ばれ、愛犬のゴロを連れて東京から熊狩りに出向いていた。標津岳で熊を発見した北守は発砲するが、襲われて大怪我を負う。ゴロが熊に飛び掛かり、伊清が仕留めた。伊清は牧場の車に北守を乗せて病院へ向かい、ゴロは走って後を追う。北守は病院で手術を受けるが、助からなかった。ゴロは牧場へ戻らず、そのまま東京を目指した。ゴロが牧場に来ていないことを知った伊清は、捜索するよう従業員に指示した。
永山勇吉と大橋忠夫は殺されることを避けるため、逃亡生活を続けていた。しかし大橋は耐え切れなくなり、ヒッチハイクで東京へ戻ろうとする。大橋が通り掛かった車を停めたため、永山は仕方なく同乗する。しかし彼は車に乗っていた2人の男たちが拳銃を所持していると気付き、ドアを開けて飛び降りた。2人組は大橋を射殺し、遺体を捨てた。警視正の安高則行は釧路警察署へ赴き、身元不明の遺体が発見された事件について刑事の増田から報告を受けた。この事件を指揮することになった安高だが、全くやる気を見せなかった。本部長の雨村は呆れた様子で、「返り咲きのチャンスは、そう巡ってこないぞ」と告げた。
浜辺のボロ小屋で休息を取っていた永山は、衰弱しているゴロを発見した。ゴロに歩み寄った永山は首輪の刻印を見て、東京の目黒から来たことを知る。彼がゴロを動物病院へ連れていくと、獣医は初期の肺炎と診断して抗生物質を注射した。獣医はゴロが飼い主とはぐれて東京へ帰る途中だろうと言い、詳細を知りたければ首輪に着いている小さな樽を調べてみるよう促した。ゴロを小屋へ連れ帰った永山は、「俺は東京へは帰れないんだ」と話し掛けた。
殺し屋の田沼良一は調布にある永山の家へ乗り込み、妻の順子を脅して夫の居場所を吐かせようとする。順子が知らないと言うと、彼は服を脱ぐよう要求した。田沼はナイフで脅して服を脱がすと、順子を犯した。安高は増田から、遺体の身元が船舶ウィークリーで記者をしている大橋だという報告を受けた。使用された拳銃がチェコ製のチェスカだと聞いた安高には、思い当たる節があった。東京へ出向いた刑事の倉田たちが聞き込みを行い、大橋が銀座の高級クラブで通産省の武器課長を務める永山と話していたことが判明した。その永山は、大橋と会った2日後の10月19日から失踪していた。
永山は大橋とクラブで会った時、約25億円のリベートが商社から政府高官に流れた証拠を3千万で買い取るよう要求されていた。報告を受けた産業局長の阿形は、輸出を認可した永山に全ての責任を押し付けようとする。永山は「公表されたら検察庁の取り調べは私1人では済みません」と言い、金で解決するよう持ち掛けた。永山はサウナで大橋と会っている時、何者かに命を狙われた。夜道を歩いている時も車でひき殺されそうになったため、2人は逃亡したのだ。
永山はゴロを連れて、列車で移動した。そこへ2人の殺し屋が現れたので、永山はゴロを抱いて列車から飛び降りた。彼は公衆電話で順子に連絡するが、無言のまま切った。順子は田沼のアパートへ行き、彼に抱かれた。漁を手伝って金を稼いだ永山は、食堂で昼食を取った。順子が幼い娘の友子と無理心中したというテレビのニュースを見た彼は、2人が殺されたと確信した。憔悴した彼はゴロがアザラシを殺害して肉を食う様子を見て、「生きてるって、こういうことだったんだよな。戦うことだったんだよな」と呟いた。
永山は阿形に電話を掛け、「契約書を写真に撮った。共犯を認めた上で、アンタたちの犯罪を国民の前にさらけ出すことにした。例え俺が殺されても、証拠のマイクロフィルムは確実な方法で東京へ届くことになっている」と語った。彼はマイクロフィルムを首輪の樽に入れ、何があっても東京まで行くようゴロに話し掛けた。平岡里美という女子大生が林で3人の男たちで強姦されそうになっている現場を目撃した永山は、助けに赴いた。彼は殴り倒されるが、ゴロが襲い掛かると3人組は逃亡した。
里美は車で北海道一周を終え、東京へ戻る途中だった。タイヤがパンクして立ち往生していると、3人組が修理を手伝うと言って近付いてきたのだ。彼女は「泣き寝入りしたくない」と言い、一緒に警察署へ行って証言してほしいと頼んだ。永山は難色を示すが、里美に懇願されて応じた。彼と犬が里美を助けた出来事は、北海道新聞で大きく取り上げられた。新聞社を訪れた安高と倉田は、犬のことを知りたいという女性が来ていることを記者から聞いた。その女性とは、北守の妻の礼子だった。
礼子は安高たちに、永山と一緒にいる犬がゴロだと断言した。ゴロがはぐれた標津岳は、殺人のあった場所の近くだった。安高と倉田は礼子を連れて港へ行き、青森行きの連絡船に犬が乗っているという情報を得た。青森港で船を降りた永山は、殺し屋2人組に襲われた。彼は発砲されて腹に怪我を負うが、ゴロが2人組を撃退した。田沼は青森へ行き、後藤俊介と合流した。ちょうど衆議院議員選挙の最中であり、憲民党の大物議員である遠沢要一が精力的に選挙活動を行っていた。
安高と倉田は殺し屋2人組の逃亡に手を貸した男を尋問し、依頼人が遠沢の秘書を務める後藤だと聞き出した。選挙事務所へ乗り込んだ安高は後藤を連行しようとするが、遠沢から選挙妨害だと批判される。逮捕状が無かったため、安高は激しい怒りを示しながらも立ち去るしかなかった。彼は倉田に、5年前の因縁を明かした。土地開発公団の愛人だったホステスが、土地買い占めに関わる秘密を知った。この買い占めを巡って巨額の政治献金を受け取っていた遠沢は殺し屋を雇い、ホステスはチェスカで射殺された。遠沢は警察の上層部に圧力を掛け、安高は刑事局長の相沢貫から捜査中止を通告された。
安高は礼子がレンタカーを使って1人でゴロの捜索へ向かったことを知り、倉田にパトカーの手配を指示した。礼子は2人の男たちに襲撃されて昏倒し、田沼の待つ小屋に連行された。田沼は礼子の服を脱がし、小屋の周辺に撒いた。彼は意識を取り戻した礼子をドスで脅し、四つん這いで犬のように歩くよう命じた。そこへ安高たちが駆け付けると、田沼の一味は小屋に火を放った。安高は一味の3人を射殺するが、田沼はパトカーを奪って逃亡する。倉田は通り掛かったダンプカーの運転手に後を追ってもらい、田沼の車をクラッシュさせた。だが、運転手が去った後、倉田は気絶したフリをしていた田沼に射殺された。
永山は駆け出したゴロを追い、焼け落ちた小屋を発見した。安高は電話を受けた警官から、倉田の死を知らされた。彼は礼子に永山を発見するための協力を要請するが、「狂ってるのは貴方の方よ。貴方の体は血の匂いがする」と拒絶された。すると安高は彼女に手錠を掛けて車に乗せ、犯人一味をおびき寄せる囮に使う。安高は待ち受けていた殺し屋の発砲を受けて怪我を負い、入院する羽目になった。次の朝、彼は相沢から電話を受け、「個人的な恨みで目がくらんでるんじゃないか。頭を冷やせ」と手を引くよう要求される。しかし安高は「今度ばかりは引き下がりません」と告げ、電話を切った。
永山は川で溺れた小学生のサチコを発見し、ゴロが飛び込んで救助した。サチコの母である加田吉子は永山に礼を言い、家に招いた。地元の新聞記者が知らせを受けて駆け付け、永山の写真を撮った。新聞記事を見た安高が右腕を吊ったまま現場へ向かおうとすると、礼子が車の運転を買って出た。田沼は加田家へ乗り込み、永山に拳銃を向けた。彼は庇おうとした吉子を射殺し、永山に契約書のコピーの隠し場所を吐くよう迫った。永山は足を撃たれても黙秘し、ゴロを逃がして田沼に始末された。加田家に着いた安高は、2人の遺体を発見した。そこへサチコが学校から帰宅し、安高は外へ連れ出すよう礼子に指示した。
安高の元に雨村が現れ、北海道へ戻るよう促した。公安委員会が安高の除名を要求し、査問会が開かれるのだ。安高は罷免を覚悟で査問会への出席を拒否し、捜査の続行を宣言した。彼は礼子に、「永山はゴロの首輪の樽に、何か証拠を残したらしい」と告げた。女川警察署へ赴いた安高は、後輩である警視庁刑事の水木守と会う。水木はゴロの目撃者と既に会っており、安高に情報を伝えた。安高はゴロの移動ルートを知り、確実に東京へ向かっていることに感心した。
海辺の小屋で暮らす片瀬京子はゴロを見つけ、「おいで。私も一人ぼっちなの」と声を掛けた。彼女はゴロの正体を知った上で食事を与え、「強い犬なのね、お前は。私はいったい何のために生きてきたのかしら」と漏らす。夜になり、貨物船の船員とした働く弟の洋次が帰宅し、酒を飲んでいる京子を見て注意する。彼が酒を取り上げると、京子は「みんなが隠したって、どうせ私はもうすぐ死ぬんだから」と口にする。ゴロを見た洋次が「変な事件に巻き込まれたらどうするんだ」と心配すると、彼女は「私はゴロを守ってあげるの」と告げる。死への不安で泣き出した京子は洋次に抱き付き、2人はキスを交わした。安高と礼子はゴロを保護しているという情報を聞き、石巻へ向かう。それは田沼が仕掛けた罠であり、2人は彼の手下たちに捕まってしまう…。監督は山根成之、原作は西村寿行(徳間書店刊)、脚本は白坂依志夫&加藤盟、総指揮は徳間康快、製作は武田敦、企画は小林政夫&荒井修、プロデューサーは大岡弘光、撮影は椎塚彰、録音は飛田美喜雄、照明は牛場賢二、美術は福留八郎、編集は白江隆夫、擬斗は上野隆三、音楽は大野雄二。
主題歌「天使の墓標」作詞:荒木とよひさ、作曲:大野雄二、唄:長瀬晴美。
出演は鶴田浩二、島田陽子、夏木勲(夏八木勲)、森田健作、ハナ肇、三田佳子、菅原文太、小沢栄太郎、平田昭彦、岡田英次、地井武男、宮下順子、池玲子、藤巻潤、坂東正之助(四代目河原崎権十郎)、倉石功、待田京介、誠直也、福田豊土、田中小実昌、白井佳夫、三谷昇、原田清人、三上真一郎、村上不二夫、山谷初男、瀬良明、守田学哉、高並功、奈三恭子、加山麗子、ひし美ゆり子、河合紘司、守田比呂也、小池雄介、村上幹雄、蓑和田良太、五野上力、団巌、奈辺悟、細川純一、宮城健太狼、司裕介、鳥巣哲生、幸英二、吉宮慎一、津野途夫、側見民雄、荒瀬寛樹、町田幸夫、篠田薫、きくち英一、樺沢恵、近藤真理、石矢博ら。
西村寿行の同名小説を基にした作品。徳間書店の創立25周年記念作品。
監督は『愛と誠』『九月の空』の山根成之。
脚本は『肉体の悪魔』『曽根崎心中』の白坂依志夫と、『先生のつうしんぼ』『走れトマト−にっぽん横断三300キロ』の加藤盟。
安高を鶴田浩二、礼子を島田陽子、永山を夏木勲(夏八木勲)、倉田を森田健作、雨村をハナ肇、遠沢を小沢栄太郎、相沢を平田昭彦、阿形を岡田英次、田沼を地井武男、吉子を宮下順子、順子を池玲子、水木を藤巻潤、洋次を坂東正之助(四代目河原崎権十郎)、北守を倉石功、後藤を待田京介、増田を誠直也、ハンターを福田豊土が演じている。
京子役で三田佳子、ダンプカーの運転手役で菅原文太が特別出演している。冒頭シーンで登場する熊は、アップのカットは本物だろうけど、北守やゴロと同じ画面に映る時は明らかにキグルミだ。
まあ本物の熊が人間に襲い掛かるとか、犬に襲われるとか、そんなシーンを撮影するのは無理だろうしね。
だからキグルミを使うのは当然っちゃあ当然なのだが、そのために映像としては不自然が隠せないモノとなっている。
ただし、そんな不自然さなど、それ以降に待ち受けている演出の不自然さと比べれば、遥かにマシなのである。技だけに頼っているとしたら、それは彼の負担が大きすぎるし、まるで伝わっていないのだから失敗ってことになる。まず、ゴロが牧場の車に乗せてもらえないってのが、恐ろしく不自然だ。
なぜ伊清は、車が走り出すまでゴロが乗っていないことに全く気付かないのか。そして運転手は、なぜゴロを乗せるために停車しようとしないのか。
伊清も停めるよう指示せず、ゴロに後を追ってくるよう言っているし。もちろん、そこでゴロが置き去りにされないと、「ゴローが東京を目指す」という展開に持ち込めないのは理解できる。
ただ、そういう状況を作るための手順が強引すぎるだろ。永山と大橋が夜道を移動していたら、そこへ殺し屋が来るってのも不自然さしか無い。
永山たちがどこかに宿泊していて、そこへ殺し屋が来るのなら分からんでもないのよ。でも永山たちは野宿していて、道路に出た大橋がヒッチハイクしたら、その車に殺し屋2人が乗っているのだ。
つまり殺し屋たちは、永山と大橋のいる場所を絶対に把握できていなかったはずなのだ。つまり、「たまたま通り掛かった」ということになるが、それで受け入れるのは無理だ。
っていうか、ちょっとだけ知恵と手間を使えば、そこをスムーズに処理することなんて難しくないはず。そこに限らず、この映画はとにかく手抜き仕事が酷すぎるのだ。
まだ粗製乱造のプログラム・ピクチャーだったり、何かの併映として突貫作業で撮影されていたり、そういうことなら分からなくもないよ。
でも、これって前述したように、徳間書店の創立25周年記念作品なのよ。出演者の顔触れを見ても、かなり力の入った映画だったはずなのよ。
ってことは、実は手を抜いたんじゃなくて、実力を出し切った結果が、この体たらくってことなのか。永山が列車で移動していた時にも殺し屋2人組がやって来るが、これも奇妙な話だわ。
なぜ殺し屋は、その列車に永山が乗っていることを知ったのか。
っていうか、最初から「この列車に永山が乗る」というスケジュールが分かっていなかったら、そいつらも同じ列車に乗るのは無理なはずだよね。だけど永山は計画を立てて行動しているわけじゃないので、これまた「たまたま同じ列車に乗り合わせた」とでも解釈しないと成立しないシーンだ。
そんなことは無いはずなので、ただデタラメだと感じるだけだ。田沼は順子を脅して「永山の居場所は知らない」と言われると、ナイフで脅して服を脱ぐよう要求する。
これが「居場所を教えないと強姦するぞ」という脅迫なら分かるのだが、そうじゃなくて単純に強姦するだけ。それで彼は、もう永山の居場所を聞き出そうとしなくなる。
っていうか、どうせ順子から聞き出さなくても、なぜか殺し屋は永山の居場所を突き止めているので、田沼の行動は無意味だ。
あと、なぜ順子は自ら田沼の元へ行って抱かれるのか。そんなシーンを入れた意味が不明。
その後、田沼は順子と娘を始末するが、生かしておけば人質にして永山をおびき寄せることも出来るだろうに、ボンクラにしか思えない。永山が里美に頼まれて警察署へ同行するのも、これまた田沼には及ばないものの、やはりボンクラにしか思えない。
「泣き寝入りしたくないから証言してほしい」と懇願されたからって、引き受けるかね。
そんなことをすれば、どういう事態になるのかは確実に分かるはずで。自分のやろうとしていることを考えたら、そこは絶対に断らなきゃダメだろ。
っていうか、「たまたま輪姦されそうになっている女性を永山が救う」という出来事がそういう展開に繋がった時に、そこの陳腐さが完全にアウトになっちゃうし。冒頭の熊はキグルミを使っていると前述したが、その一方でゴロが襲い掛かるアザラシは本物だ。つまり、「犬がアザラシを襲う」というシーンを、実際に見せているわけだ。
ゴロを演じた犬にアザラシを攻撃する本能があるとは思えないし、どういう芝居を付けたんだろうか。
そこは凄いっちゃあ凄いけど、なんか嫌な感じがするシーンになっちゃってんのよね。だってさ、ゴロが殺したアザラシの肉を食っているんだぜ。
アザラシの死体は偽物かもしれないけど、だとしてもゴロが「応援したくなる、けなげな犬」から「恐ろしい奴」という印象になっちゃうわ。田沼は礼子を捕まえた時、下着姿にして四つん這いで歩くよう命じる。安高たちが駆け付けると小屋に入るが、礼子を縛り上げて首筋を舐めている。
順子と接する時もそうだが、どうやら田沼を変態性の強い殺し屋として造形したかったようだ。それによって、個性を出そうとしたんだろう。
しかし、ただ下品な奴という印象を強めているだけであり、悪人としての魅力には全く貢献していない。
そして田沼だけでなく、作品自体も下品な方向へ傾けることに繋がっている。ダンプカーの運転手役で菅原文太が特別出演しているのは、1975年から1979年まで続いた『トラック野郎』シリーズで主演を務めていたことに絡めたキャスティングだ。『トラック野郎』シリーズは東映の作品なんだけど、その辺りはOKなのね。
ただ、菅原文太がダンプの運転手として登場した途端、そこだけ急にコミカルな雰囲気が強くなっちゃうのよね。だけど、この映画にとって、そういう緩和は邪魔なだけなのよね。
そんな菅原文太が登場する追跡シーンでは、ダンプの運転手が田沼の車をクラッシュに追い込む。運転手が去った後、倉田が車に近付くと、失神したフリをしていた田沼が拳銃を発砲して射殺する。
でも、これって不自然さが強いんだよね。「倉田が田沼に殺される」という状況を作るための手順が、ものすごく強引なのよ。
なぜクラッシュした後、すぐに近付いて田沼の様子を確認しようとしないのか。なぜ運転手は、さっさと去ってしまうのか。礼子は安高から永山の捜索に協力するよう頼まれて、「狂ってるのは貴方の方です」と糾弾される。
彼女の指摘は正しい。
まだ「倉田の死を知っても何の反応も示さない」ってのは、「ホントはショックだけど平静を装っている」と受け取れなくもない。しかし、犯人をおびき寄せるため、礼子に手錠を掛けて囮にするという行動に関しては、全く擁護できない。完全なるクズ野郎だ。
何の関係も無い礼子を危険な目に遭わせておいて、罪悪感のカケラも無いし。京子はゴロを見つけた時には「物静かで陰気な女性」という程度の印象だったのに、洋次が帰宅してから急に体調が悪化し、そのまま息を引き取ってしまう。見事なぐらい都合のいい死に様で、あっさりと退場する。
ちなみに、この姉弟は近親相姦の関係なのだが、そんな設定を用意している意味は全く無い。
もっと言っちゃうと、この2人を登場させる意味さえ乏しい。「田沼の一味が安高と礼子を連行するために利用した貨物船に、たまたま洋次がゴロを連れて乗っていた」という状況を作るために登場させているだけだ。
そこは上手くやれば他の方法でも成立させられそうな箇所で、少なくとも「近親相姦の姉弟」というキャラの必要性は皆無だ。終盤に入ると「安高と礼子が恋に落ちる」という展開があるが、何の脈絡もないし、ひたすら唐突で陳
ちなみに、その展開は「貨物船が炎上し、ゴロが置き去りにされる」というシーンの後にやって来る。
だが、その恋愛劇も含めて、貨物船が炎上した後のシーンは全てが蛇足のようになっている。
まだ何も問題は解決していないから実際は蛇足じゃないんだけど、すんげえダラダラしてんのよ。安高が阿形を拉致して脅迫するとか、阿形が自殺して証言の録音テープも相沢から「証拠にならない」と言われるとか、ゴロが見つかって田沼の一味も安高&礼子も現場へ向かうとか、色んな展開があるんだけど、全て「まだ続くのかよ」と言いたくなる。
例えば、田沼は貨物船で始末しておいて、「安高が遠沢を苦々しく見つめていたらゴロが走って来る」みたいなことでもいいんじゃないかと。とにかく、貨物船のシーンの後は、テンポ良く一気にラストまで畳み掛けた方がいいんじゃないかと。(観賞日:2019年6月19日)