『俺は、君のためにこそ死ににいく』:2007、日本

昭和18年春。知覧には大勢の若者たちが集まり、飛行訓練を受けていた。そんな彼らが足繁く通うのは、鳥濱トメの営む富屋食堂だった。 昭和19年、フィリピン・マバラカット。第1航空艦隊司令長官・大西瀧治郎は軍の幹部3名を集め、「1週間でいい。敵空母の甲板を 使えないようにするのだ」と特攻作戦を命じる。かつて大西は「パイロットを無下に殺すわけにはいかない」という考えから、特攻には 反対していた。それを指摘されると、彼は「その通りだ。しかし、この戦いは敗れるだろう。敗れる限り、敗れた後々にも国体は守らねば ならんのだ」と述べた。
「これは志願ですか。それとも命令で行うのでありますか」という質問を受けた大西は、「必ず死ぬと分かっている作戦に志願してくる者 が、どれだけいるものか。今さら、綺麗ごとで済む企てではないわ。これは志願という名目の命令で行うのだ」と告げた。戦斗第301 飛行分隊長の関行男は、最初の特攻隊員を引き受けるよう幹部3名から求められた。苦悩した関だが、承諾して特攻機に乗り込んだ。その 後、マッカーサーがフィリピンに上陸し、東京と大阪の大空襲があり、米軍の沖縄上陸が開始された。
昭和20年。トメが長女の美阿子や次女の礼子と食事をしていると、電話が掛かって来た。礼子が通う知覧高等女学校からの連絡で、飛行場 へ行くので制服とモンペを着て来るようにという指示だった。礼子は親友の折口ミツたちと共に、奉仕隊として飛行場へ赴いた。すると、 担当として現れた隊長は、「今日から皆に、しばらくここで働いてもらう。実は知覧は、特攻隊の基地になったんだ」と告げた。
第47振武隊・荒木隊は戦闘機で飛行場へ向かっていたが、田端絋一の機体はオイル漏れになった。そのため、彼は隊長の荒木に許可を得て 、先に飛行場へ着陸した。板東勝次少尉は少佐の元に現れ、自分の機はどうなっているのかと追及した。「練習機で構わんです。行かせて ください」と彼が詰め寄るので、第6航空軍参謀の川口は手配してやることにした。鉾田から第35振武隊・安部隊の9名、満州から荒木隊 の5名が到着した。礼子やミツたちは彼らの兵舎を掃除し、挨拶した。
荒木隊の金山は知覧の教育隊出身で、ミツとは旧知の仲だった。金山はミツに、彼女が前から欲しがっていた本を渡した。そして「貰って ほしいんだ。もう読めないと思うから」と告げた。板東はトメを訪ね、「萬沙(バンセイ)から出撃することになった。特攻に志願した」 と言う。驚くトメに、彼は「日本は必ず勝つ。そのために行く。ただ、こないだ帰省した時、どうしても親父に言えんかった。出撃した後 、親父に伝えてやってほしいんだ。親父はお袋が死んだ後、俺と妹と弟の3人を男手一つで育ててくれた。一番上の俺が特攻に志願した なんて、とても言えんかった」と語る。しばらくして、トメが送った坂東の手紙が実家に届いた。
トメの元に、金山が荒木を連れてやってくる。彼は「最後の願いを聞いて頂けますか」と言い、卵丼を注文。卵を切らしていたトメは、 美阿子に正月用の着物を渡し、それを売って卵を買って来るよう告げた。金山はトメに、朝鮮人である自分を優しく受け入れてくれたこと への感謝を告げる。荒木は命令受領の知らせを受け、金山には丼を食べてから戻るよう命じた。しかし金山は隊に迷惑が掛かるため、トメ に「行きます」と告げて立ち去った。
荒木隊と安部隊は第6飛行団長の東大佐から、明朝5時の出撃を命じられた。東は「嘉手納湾周辺の敵機動部隊と輸送船団を撃破せよ。 お国の残された活路は、今や陸団による特攻しかない。生きて戻るな」と告げた。川口は東に「彼らの技術では沖縄に辿り着くのがやっと 。米艦隊に突っ込む腕は無いと思います。分かっていながら出撃させるのは犬死であります」と意見した。しかし東は「決断が下った以上 、俺たちに出来ることは彼らに勇気を与え。夢を抱かせ、一人でも多く散ってもらうことだ」と述べた。その夜、荒木たちは、家族や恋人 に向けて手紙を書いた。
翌朝、荒木隊と安部隊は飛行場を出撃していく。それを目撃した近隣住民の鶴田正造は手を合わせ、娘の一枝に「挺身隊に入って軍神の お世話をしなさい」と告げる。一枝は「はい、行きます」と素直に答えた。第71振武隊・中西隊の中西正也隊長たちは、汽車で知覧に到着 した。隊員の大島茂夫は隣村の出身者で、祖父と母は芋飴屋を営んでいる。富屋食堂に田端の許嫁・良子が現れ、「夫はどこにいますか」 と尋ねた。トメが「今朝、出撃なさいもした」と教えると、彼女はショックで気を失った。
悪天候のため、荒木は沖縄への到着が無理だと判断して知覧へ戻った。荒木は川口から、他の部隊は行ったぞ。貴様には信念が足りん」と 怒鳴られ、明朝5時に再出撃するよう命令を受けた。飛行場にやって来た中西は、親友の荒木と再会する。その夜、中西は荒木隊のために 富屋食堂の2階で宴を開く。良子はトメから田端が戻って来たと聞き、彼に泣いて抱き付く。明日が出撃だと知った彼女は、「貴方と一緒 に行きます」と告げる。「そんなこと出来るか」と田端が言うと、「死なないで、お願い、死なないで」と口にした。良子は「せめて籍を 入れて。妻として残していって」と懇願する。
田端の父・由蔵が食堂に来たので、トメは良子との入籍を認めるよう頼む。しかし由蔵は「あの人を、明日は死んでいく分かっている男の 嫁にするわけにはいかんです」と反対した。彼が息子に会わずに帰ろうすると、田端と良子が現れる。金山はトメに写真を託し、親戚一同 が「朝鮮人がそこまですることない」と特攻に反対していたことを語る。彼は「お袋に陸軍士官の姿を見せてやりたかった」と言い、その 母親が半年前に死んだことを明かす。彼は「自分が何のために、誰のために死ぬのか分からなくなりました。確かなことは、何があろうと 自分が明日は死ぬってことだけです」と語った後、祖国の歌『アリラン』を歌った。
翌朝、荒木隊は特攻の準備に向かうが、体調の悪い加藤だけは置いていくことになった。加藤が「連れて行ってください」と泣いて懇願 するので、荒木は「後から来い。靖国神社で待ってるぞ」と告げて出撃した。奉仕隊が作業をしていると爆撃があり、数名が命を落とした 。挺身隊や軍属の人々も犠牲となった。田端は3度目の出撃をするが、エンジンの不調を理由に、また基地へ戻って来た。川口は「女に 未練を残しているからだ。恥知らずが」と殴り、「軍法会議に掛けて厳罰に処す」と告げた。
挺身隊として作業をしていた一枝は、整備兵が「特攻隊員に口実を与えてはならん」と叱責されているのを目撃した。田端はトメの元を 訪れ、「日本は負けるよ」と漏らす。そこへ中西が来て彼を連れ出し、「命を惜しんで恥ずかしくないのか」と殴り倒す。田端は「日本は 負けるのだから、生き抜くべきだ」と主張するが、中西は彼の考えを認めず、また殴り倒す。翌朝、田端は特攻命令を受け、戦闘機を離陸 させるする。だが、田端の機は飛び立った直後に墜落した。
中西は東から、「もはや特攻は空母撃沈という成果が問題ではない。落としても落としても、悪天候でも日本軍機が襲い掛かる。本土上陸 は容易ならざらんと思わせることが肝要だ」と聞かされる。「では、死ぬことが目的ということでありますか」中西がと質問すると、彼は 「そうだ。喧嘩にも負け方がある。七分三分の講和を五分五分まで持って行く。それが今の日本を守ることだ」と述べた。
特攻に失敗した坂東が、知覧まで戻ってきた。川口は山田に、新しく着た戦闘機「隼」を回すよう命令した。中西は、まだ到着していない 残りの隊員が数日中に必ず到着することを述べて反発する。しかし命令は変わらず、川口は「坂東少尉は貴様の部隊に編入させる」と言う 。一枝は「中西さんたちのために血書しましょう」と挺身隊に提案し、指先を切って鉢巻きに血を垂らし、日の丸を作った。
トメが憲兵隊に捕まったとの知らせが中西たちの元に届いた。軍の検閲を逃れるため、特攻隊員から託された手紙を密かに送っていたこと が露見したためだ。トメは憲兵大尉に「明日、死ににいく若者に門限だの、検閲だのが必要ですか」と食い下がり、激しい暴行を受けた。 そこへ坂東が殴り込むが、取り押さえられる。中西は隊の遺書と遺品を解放されたトメに渡し、家族に届けるよう頼んだ。
中西隊は明朝4時半の出撃が決定し、隊員の河合惣一はトメの元を訪れる。彼はトメに礼を述べると、「俺の故郷は蛍が名物でさ。見る度 に夢みたいだった。だから、俺、蛍になって、またここに戻ってくるよ」と微笑んだ。彼が「死ぬって、どういうことかな。俺が死んだら 、みんな忘れてしまうんだろ」と声を震わせるので、トメは「忘れたりするもんか。親御さんも兄弟の方法も、私だって絶対に忘れたり しもはんど」と涙する。
坂東の父・真太次、妹・寿子、弟・秀次が飛行場へやって来た。坂東が「あいつらみんな、靖国神社の鳥居の前で待っとんじゃ。俺が 行かんな中に入られへんのや」と言うと、真太次は「はよう行ったり」と促した。中西は一枝の家を訪れ、明日の出撃を告げた。鉢巻きの 礼を述べて去ろうとすると、一枝の父・正造から「では、最後の盃を」と懇願される。中西は家に上がり、一枝の酌を受けた。
坂東は秀次から「なんで死ななあかんの。お国のためか、父ちゃんや姉ちゃんのためか。ワイ、誰のためでも絶対に嫌じゃ」と言われ、 「お前も男ヤロ。ワイらが守らんでどないするんじゃ」と告げる。「ほな、兄ちゃんが死んだに日本は勝つんか」と弟が訊くので、彼は 「ほうじゃ。お父ちゃんとお姉ちゃん、頼むぞ」と言う。だが、秀次は「嫌じゃ」と泣きじゃくる。大島は隣村にある実家へ行くが、芋飴 を仕込んでいる祖父と母を眺めて深々を頭を下げ、会わずに立ち去った。中西が見送りを受けて鶴田家を去ろうとすると、一枝は部屋に 駆け込んで泣き出してしまった。一枝は父の黙認を受けて中西を追い掛け、また泣き出した。中西は彼女を強く抱き締めた。翌朝、中西隊 の若者たちは戦闘機に乗り込み、特攻していく…。

監督は新城卓、脚本は石原慎太郎、製作総指揮は石原慎太郎、製作委員会は坂上順&平林彰&住田良能、企画は遠藤茂行&高橋勝、 プロデューサーは角田朝雄&吉田晴彦、製作統括は生田篤、撮影は上田正治&北澤弘之、美術は小澤秀高、照明は山川英明 編集は井上治 &佐藤連、録音は矢野正人、特撮監督は佛田洋、VFXスーパーバイザーは野口光一、音楽は佐藤直紀、音楽プロデューサーは津島玄一。
主題歌『永遠の翼』B'z 作詞:稲葉浩志、作曲:松本孝弘。
出演は徳重聡、窪塚洋介、筒井道隆、岸惠子、石橋蓮司、寺田農、勝野洋、伊武雅刀、前川泰之、中村友也、多部未華子、長門裕之、 江守徹、中越典子、桜井幸子、戸田菜穂、宮崎美子、的場浩司、渡辺裕之、中原丈雄、遠藤憲一、渡辺大、古畑勝隆、田中伸一、宮下裕治 、蓮ハルク、木村昇、勝野雅奈恵、新海百合子、阿知波悟美、矢柴俊博、松尾諭、山西道広、新藤栄作、佐藤仁哉、永倉大輔、向井理、 平田竜也、奥村知史、春木みさよ、大嶋捷稔、星川玲奈、井上高志、真実一路、勝野洋輔、於保佳代子、中浜奈美子、岩崎光里、中村栄子 、仙學、木村圭作、加瀬慎一、竹内和彦、千田孝康ら。


石原慎太郎閣下が製作総指揮と脚本を務めた作品。彼が“特攻の母”として知られる鳥濱トメから生前に聞いていた特攻隊員の話を題材に している。
監督は『秘祭』以来、10年ぶりにメガホンを執った新城卓。
ちなみに『秘祭』は石原閣下の原作・脚本だ。
中西を徳重聡、板東を窪塚洋介、田端を筒井道隆、トメを岸惠子、正造を石橋蓮司、真太次を寺田農、東を勝野洋、大西を伊武雅刀が 演じている。他に、金山を前川泰之、河合を中村友也、礼子を多部未華子、大島の祖父を長門裕之、由蔵を江守徹、一枝を中越典子、良子 を戸田菜穂、河合の母を宮崎美子、関を的場浩司、奉仕隊に仕事を説明する隊長を渡辺裕之、憲兵大尉を中原丈雄、川口を遠藤憲一、加藤 を渡辺大、大島を古畑勝隆、荒木を田中伸一が演じている。
役所広司の息子・橋本一郎が、特攻隊員の役で俳優デビューしている。

ウヨッカーの石原閣下が製作総指揮と脚本を務めたことで、公開前から「戦争賛美の映画ではないか」という評判が立っていた。
しかし実際に見た限り、戦争賛美の色は感じない。まあ特攻隊員を描く以上、戦争賛美にするのは難しいと思うしね。
その代わり、「英霊賛美」の意識は感じる。
それは悪いことでもないけど、描き方が押しつけがましくて鼻についてしまう。
あと、やたらと「靖国神社で集合だ」とか、「靖国神社で待っている」とか、そういう「靖国」を崇拝する発言が違和感たっぷりに盛り 込まれている辺り、やはり石原閣下のイデオロギーが強く注入されている。

冒頭で「雄々しく美しかった、かつての日本人の姿を伝えて残したいと思います」という石原閣下の言葉が表示されることからも分かる ように、どうやら特攻隊員を「美しき若者たち」と位置付け、彼らの物語を美談として描こうとしているみたいだ。
でも、そりゃあ少し違うんじゃないかと。
別にワシはさ、どっかのサヨッカーな団体みたいに、特攻隊員をディスるような気持ちは持ち合わせてないよ。
ただ、特攻した若者たちの物語を美談として描いても、それが彼らの魂を弔うことになるとは思えないんだよね。

「国体とは?」と問われた大西は、「日本と言う国家、民族の意思だ。この戦いはあくまでも白人たちの手から俺たちと同じ顔色をした アジアやほかの民族を解放する大義のためのものだったはずだ。それは絶対に間違いなどではない。絶対に正しい信念だった。その意志を 、心意気を、たとえ戦いに敗れはしても国家の名誉のために歴史に確かに記録して残すために、若者たちに死んでもらうのだ」と語る。
東は中西に、「もはや特攻は空母撃沈という成果が問題ではない。落としても落としても悪天候でも日本軍機が襲い掛かる。本土上陸は 容易ならざらんと思わせることが肝要だ」と語る。
そういう主張からすると、特攻隊って完全に宗教的な自爆テロだよな。
もはや負けると分かっていながら名誉のために突っ込むんだし、成果うんぬんよりも「まず死ぬこと」が目的になっているわけだから。
こういう描き方をしてしまうと、「自爆テロと特攻は全く違うものだ」と主張できなくなっちゃうよ。

あと、とにかく色々と詰め込みすぎだよね。
かなり長く感じる(っていうか上映時間は140分だから実際に長い)んだけど、それでも詰め込みすぎだと感じるんだから、石原閣下の 脚本で1本の映画にするのは、最初から無理があったのよ。
例えば序盤、最初の特攻を命令された関は、その場で苦悩し、すぐに承諾する。
それ以前の関がどういう人物だったのかは、全く描かれない。
また、承諾した後、特攻の様子は明示されない。特攻までに仲間や家族と喋る様子も描かれないし、特攻直前の心境なのかも示されない。

特攻の後、関の家族や上層部がどういう反応なのかも描かれない。余韻もへったくれもありゃしない。
後になって、川口が東に「彼らの技術では沖縄に辿り着くのがやっと。米艦隊に突っ込む腕は無いと思います」と意見するシーンで、関が 3度目の出撃で敵への特攻を成功させたことが語られる。そこまでは、そういうことも全く教えてもらえない。
ハッキリ言ってさ、「最初の特攻隊員」ってことなんだから、彼だけで1本の映画に出来るぐらいのモノだと思うのよ。
それなのに、描写が淡白すぎる。

遡って、最初に食堂へ教育隊の若者たちが来る様子がチラッとだけ写るけど、そこの描写も薄いし。
そこには金山もいるんだけど、ただ飯を食っている様子が描かれるだけ。その程度なら、別に要らないんじゃないかと思ってしまう。
後で金山はトメに、偏見を持たずに接してくれたことへの感謝を述べているけど、だったら差別されていた頃の様子を描いて「でもトメと 娘たちだけは違っていた」という対比を見せないと、セリフだけでは説得力に欠ける。
それと、金山はミツと昔馴染みで、彼女に本を渡すシーンもあるんだけど、そこの関係は全く掘り下げない。特攻すると決まっても、金山 とミツの関係は全く描かれない。
だったら、ミツは要らないでしょ。

板東がトメに会って特攻に志願したことを明かし、「こないだ帰省した時、どうしても親父に言えんかった。親父はお袋が死んだ後、俺と 弟と妹の3人を男手一つで育ててくれた」などと語るシーンがある。
これも、まず板東が食堂に通ってトメと親しくしている関係性を描き、それから「なぜ彼は特攻に志願するのか」という彼の考えや性格を 、特攻が決まる前に時間を割いて描写し、それから実際に帰省した時のシーンも描いて、父親や家族との会話を見せるべきでしょ。
そして、どうしても父親に特攻のことを言い出せない坂東の苦悩を描くべきでしょ。
セリフだけで処理しているせいで、全てが浅薄なのよね。

特攻隊員に限らず、他の面々にも気を配った構成になっている。
奉仕隊に関しても、トメの次女が駆り出されることになったところから描いている。
挺身隊に関しても、一枝が父親に「軍神のお世話をしろ」と言われるところから描いている。
飛行場で働く女性たちを登場させるなとは言わないよ。特攻隊員を描く中で、世話をする女性たちが出て来るのは構わない。
ただ、それなりのウエイトを置いて描写しているから、詰め込みすぎによる処理能力の超過に繋がってしまう。

中西と一枝の恋愛劇も、まるで描かれていないから、一枝が泣き出したところで「中西に惚れていたのかよ」とツッコミを入れたくなって しまう。
中西の方も彼女を強く抱き締めるから、「お前も彼女に惚れていたのかよ」と言いたくなってしまう。
で、その中西たちが特攻した時だけ、敵の空母へ向かって飛行し、敵と空中戦を繰り広げ、空母からも攻撃を受け、次々に隊員が命を 落としていく様子が詳細に描写されているけど、むしろ、そこは無くてもいいのよ。
考え方が完全に逆。
っていうか、そこを詳細に描きたいのであれば、劇中に登場する特攻隊は、中西隊だけに絞り込んだ方がいい。

大勢の特攻隊員を粒立てて描こうとして、どれも全て薄っぺらいものになっている。
複数の面々を描くにしても、同じタイミングで出撃する同じ隊の面々だけに限定すれば良かったのよ。
別々の部隊の隊員たちに次々とスポットを当てて行く形を取っているから、「キャラ描写もドラマも薄いまま、どんどん特攻していく」と いう状態になっているのだ。
あと、戦後の様子がダラダラと続くのも冗長だし。

(観賞日:2012年4月14日)


2007年度 文春きいちご賞:第8位

 

*ポンコツ映画愛護協会