『思い、思われ、ふり、ふられ』:2020、日本

高校1年生の山本朱里は友人の市原由奈から、「王子様に会った!」「明日、学校で話すね!」というメールを受け取った。翌朝、朱里は由奈と一緒に登校する時、同級生から声を掛けられて挨拶を返した。内気な由奈は、入学から間もないのに朱里が同級生と親しくなっていることに驚いた。今まで転校が多かった朱里は、すぐに打ち解けることが出来るのだと語った。教室に着いた由奈は朱里からメールの件について問われ、お気に入りの絵本に出てる王子様とそっくりな男子にマンションのエレベーターで出会ったことを明かした。
由奈が王子様に声も掛けられなかったことを話すと、朱里は「待ってるだけじゃ始まらないよ」と言う。彼女が「お互いに合図を出したり仕掛けたりしてる内に好きになることもある」と告げると、由奈は「人工的で嫌だな」と呟く。朱里は「由奈は異常なほど奥手」と感じるが、由奈は「朱里は本当の恋をしたことが無いのだ」と受け止めた。そこへ乾和臣が来て由奈に話し掛け、見たがっていたDVDを渡した。由奈は朱里を紹介し、春休みに同じマンションに引っ越して来たことを説明した。和臣が去ってから、朱里は由奈に「喋れんじゃん」と言う。すると由奈は、「カズくんは幼馴染だもん」と告げた。
放課後、由奈は朱里から遊びに来るよう誘われ、彼女の家を訪れた。するとドアを開けて姿を見せた理央は、由奈が王子様だと思った相手だった。由奈が驚いていると朱里が出て来て、理央は弟だと教える。由奈の様子を見た朱里は全てを察し、理央に勉強を教えてほしいと頼んだ。彼女はコンビニに行くと言い、理央と由奈を2人きりにした。外に出た朱里は、同じマンションに住む和臣と遭遇した。理央は鞄に入っていたラブレターを由奈に気付かれると、他校の生徒に貰ったことを淡々と告げた。
由奈が「良くあるの?」と尋ねると、理央は「たまに。でも、ちゃんと断った」と言う。「わざわざ傷付けなくても」と由奈が遠慮がちに告げると、彼は「ダメならダメで、ちゃんと振ってくれないと気持ち引きずっちゃうじゃん」と述べた。朱里は和臣から、「由奈と仲良くなってくれて良かった」と言われた。朱里が由奈と出会ったきっかけは、お金を貸してほしいと頼んだことだった。駅で友人を見送ろうとした時、財布も携帯も家に忘れた彼女がお金を貸してほしいと頼むと、初対面なのに由奈は承諾したのだ。必ず返すので連絡先を教えてほしいと朱里は言い、住所が引っ越し先のマンションだと知って驚いたのだった。
「由奈はいい子だけど、いつもうつむきがち」と朱里が評すると、和臣は「昔から自分に自信が無い」と言う。彼は朱里に、「山本もいい子だと思うよ」と告げた。由奈は理央に「好きな子とかいないの?」と訊かれ、「好きになっても意味ないから。私レベルが何言ってんのって相手に思われそうで」と返す。理央が「そう思う奴は、ただのクソ野郎だよ」と言うと、彼女は「振られるって分かってて告白する意味ないよ」と口にした。
理央は「そういうの、告白できないって言わない。しないのと出来ないのとは違う。俺の場合とは違う」と語り、「理央くんの場合?」という由奈の疑問に「それはね、秩序が失われるから」と説明する。ノックも無しに母が部屋へ入って来たので、理央はノックぐらいするよう要求した。すると母は、異常なほど何度も謝った。
そこへ朱里が戻って「どうしたの?」と言うと、理央は「俺と朱里が2人で部屋にいるんじゃないかって」と教える。朱里は憤慨し、母を「いいかげんにしてよ。お母さんが考えるようなこと、理央は絶対にしないってば」と怒鳴り付けた。彼女の「どんだけ気を遣ってると思ってんの。それだけ心配なら、どうして理央のお父さんと再婚なんてしたの」という言葉で、由奈は朱里と理央が本当の姉弟ではないと気付いた。2人の様子を見た彼女は、理央が告白ではなかった相手が朱里だと悟った。
翌日の放課後、由奈が朱里を待っていると、理央が来て前日のことを詫びた。マンションに戻った理央は和臣と遭遇し、彼が借りた映画のDVDで意気投合した。和臣の部屋に招かれた理央は、大量のDVDを見て興奮した。和臣は6つ上の兄から貰った物が多いこと、兄が両親と揉めて家を出て行ったことを話した。理央は朱里と双子だと思っている和臣に、両親が再婚したことを話した。すると和臣は詮索しようとせず、「そうなんだ、了解」という言葉で済ませた。
理央との同居生活に難しさを感じる朱里は、コンビニへ出掛けて和臣と遭遇する。「なんかあった?」と訊かれた彼女は、「色々あって、現実逃避中。私、いい子じゃないから」と言う。「悪い子の言い分、俺で良かったら聞くよ」と和臣が言うと、理央は家の空気を考える苦労を吐露した。彼女は母がバツ2だと明かし、再婚で引っ越しも多かったが自分に選択権は無いと告げる。すると和臣は「親の事情に振り回されても仕方ないって思うしかないもんな」と、彼女に共感を示した。朱里と和臣が楽しそうに話しながらマンションへ戻って来る様子を、理央はベランダから目撃した。
由奈は理央を好きになってはいけないと自分に言い聞かせるが、気持ちを止める方法が分からなかった。彼女が図書館で理央から勉強を教えてもらっていると、女子3人がやって来た。理央は3人から「ウチらも混ざっていい?」と言われると、頭痛がすると言って断った。図書館を出た彼は、頭痛が嘘だと理央に明かした。理央が「好きな気持ちを言える相手なら、言った方がいいよ。振られたら、また新しい誰かを好きになったらいいよ」と告げると、由奈は「私、理央くんが好きです。だから私を振って」と口にした。理央が戸惑いつつ「告白してありがとう。でもゴメン」と言うと、由奈は気丈に振る舞う。しかし彼女は朱里の元へ行き、事情を話して泣いた。
朱里は体育の授業中に熱中症で倒れ、和臣がお姫様抱っこで保健室まで運んだ。そのことをクラスメイトから聞いた理央は、回復した朱里が和臣から「あんまり無理しちゃダメだよ」と心配される様子を目撃した。放課後、傘を持って来なかった朱里が大雨で困っていると、理央が迎えに来た。「カズのこと、好きなの?」と理央が訊くと、朱里は「何言ってんの?」と告げる。不機嫌な様子を見せていた理央は、いきなり朱里にキスをした。朱里は「ノリでこういうことしないでよ。今のは無かったことにしてあげるから。こんなことして、私たちの今までしてきた努力を無駄にするの」と声を荒らげ、その場から走り去った。
翌朝、朱里は学校で理央が話し掛けても、無視して逃げるように去った。理央は由奈に声を掛けられ、朱里にキスしたことを明かす。彼は中学時代に転校してきた朱里を好きになったこと、告白を決意してメールで公園に呼び出そうとしたこと、直後に両親の再婚を知らされたことを語った。次の日も、朱里は理央に話し掛けられると拒絶する態度を示した。そこへ男子たちが現れ、2人の血が繋がっていないことを茶化した。すると和臣が来て、男子たちを厳しい口調で諌めた。
朱里が逃げ出すと、理央は大勢の生徒がいる前でも構わず告白しようとする。由奈は彼を連れ出し、「勢い任せに言おうとするなんて良くない」と止める。理央が我慢を強いられることへの憤りを吐露すると、由奈は朱里が公園に呼び出された時に告白だと見抜いていたことを教えた。彼女は理央に、朱里が「家族が終わるのは嫌なの」と漏らしていたことを話す。次の朝、理央は母がいる前で、朱里に自分の軽率な行為を謝罪した。彼は由奈と会い、「朱里のことは、ちゃんと整理が付いた。全部、由奈ちゃんのおかげ」と礼を言う。それ以来、理央は気が付くと由奈を目で追うようになった。
朱里は仲間と一緒にいる和臣に声を掛け、オススメの恋愛物の洋画を尋ねた。和臣は『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』を挙げ、家にあるので持って来ると告げた。彼が帰宅すると、両親の留守中を狙って兄の聡太が荷物を取りに来ていた。聡太は和臣に、「俺のことは気にしないで好きなことをしろ」と言う。「好きな子とかいないの?」と問われた和臣は、「いないよ」と答えた。すると聡太は、嘘をつく時の癖が出ていることを指摘した。彼は大学の退学証明書を残し、家を出て行った。
夏祭りの日、由奈は浴衣に着替え、朱里にメイクをやってもらう。由奈が「これからは私をもっと頑張りたい」と前向きな様子を見せると、朱里は彼女を応援するため自分のメイク道具をプレゼントした。由奈に「朱里ちゃんは浴衣を見せたい人、いないの?」と訊かれた朱里は、少し迷ってから浴衣に着替えた。理央と和臣が待っていると、朱里と理央が浴衣姿で現れた。
理央が買い出しに行った3人を待っていると、理央のクラスメイトの我妻暖人が声を掛けて来た。理央が挨拶を返すと、我妻は以前と変化して話しやすくなったと告げる。和臣は途中ではぐれた朱里を捜索し、見つけ出して安堵した。朱里は彼に、連絡先の交換を持ち掛けた。由奈の元へ戻ろうとした理央は、彼女が我妻と楽しそうに話す様子を目撃した。朱里は和臣に、「私と付き合ってみませんか」と告げる。しかし理央が朱里にキスする様子を目撃していた和臣は、「ゴメン。俺、山本さんのこと、好きとかじゃないから」と断った。朱里は「私の勘違いだったか。忘れてくれていいから」と明るく振る舞い、その場を去った。
朱里たちの1年4組は、光吹祭で青春フォト選手権をやることになった。役割分担が決められ、朱里と和臣はB班になった。学校で由奈を見掛けた我妻は、大声で呼び掛けた。由奈が手を振り返す姿を、我妻と一緒にいた理央が見ていた。我妻は親友の柴から由奈への恋心を指摘され、全く隠そうとしなかった。和臣が屋上で下調べしていると、朱里が来て手伝いを申し出た。和臣が何か言おうとすると、彼女は「夏祭りのことだけど、気にしないでね」と笑顔で告げた。
光吹祭の当日、由奈がコスプレイヤーを見つけ出すスタンプラリーをやっている1年3組の教室を除くと、我妻が話し掛けた。由奈が理央について訊くと、我妻は「好きな子に見られたら恥ずかしいから隠れてる」と教えた。彼は「一緒に捜す?」と言い、由奈の手を握って走り出した。朱里が教室に戻ると、前の学校で一緒だった花乃と栞が元カレの亮介を連れて来ていた。朱里は困惑するが、花乃と栞は適当な理由を付けて席を外した。
朱里は亮介に、「別れようって言われた時、まだ好きだったよ」と言う。すると亮介は、「いつも一番大事な時に言わないで、事が過ぎてから言うよな。自分と同じだけの気持ちを返してもらえなかったら、赤っ恥だと思ってるんでしょ。だから本気じゃないみたいな態度になるんじゃないの?」と彼女を責めた。彼は「上から目線じゃないと自分を保てないとか、中身空っぽすぎでしょ」と朱里を扱き下ろし、来なけりゃ良かった」と不愉快そうに去った。朱里は和臣への態度を思い出し、何も反論できなかった。
理央は由奈が我妻に手を握られて走る様子を目撃し、捜しに行く。由奈は朱里をメールで呼び出し、我妻に告白されたことを明かす。彼女は生まれて初めての告白が嬉しかったと前置きした上で、断ったと告げる。由奈は我妻から以前とは変わったと言われたこと、理央を好きになれたから変わったのだと改めて気づいたことを語り、「この気持ちを理央くんに伝えたいと思った」と口にする。背中を押してほしいと頼まれた朱里は、自分の気持ちに真っ直ぐに走って行く由奈が羨ましかったのだと気付いた。由奈は理央を見つけ出し、「理央くんのおかげで頑張れたんだ」と礼を言う。理央は「ずっと由奈ちゃんを捜してた」と言い、改めて「もう一度、俺のことを好きになってほしい。俺、由奈ちゃんが好きだと」と改めて告白した…。

監督は三木孝浩、原作は『思い、思われ、ふり、ふられ』咲坂伊緒(集英社マーガレットコミックス刊)、脚本は米内山陽子&三木孝浩、製作は市川南、共同製作は村田嘉邦&瓶子吉久&細野義朗&弓矢政法&菊川雄士&吉川英作&森田圭&渡辺章仁&永田勝美&國枝信吾&青井浩&前嶋宏&安部順一&田中祐介、エグゼクティブプロデューサーは山内章弘、企画・プロデュースは臼井央&春名慶、プロデューサーは川田尚広&岸田一晃、撮影は柳田裕男、美術は矢内京子、録音は豊田真一、照明は宮尾康史、編集は坂東直哉、音楽は伊藤ゴロー、劇中音楽は小瀬村晶、主題歌『115万キロのフィルム』はOfficial髭男dism。
出演は浜辺美波、北村匠海、福本莉子、赤楚衛二、戸田菜穂、古川雄輝、野間口徹、上村海成、三船海斗、若林時英、貴山侑哉、羽瀬川なぎ、葉月ひとみ、一本気伸吾、土佐和成、柿本朱里、泉川実穂、鈴川琴音、私市夢太、外山将平、白石優愛、溝口奈菜、シャーロック麗良、熱田佐武、原健太、入江海斗、岡田翔太郎、酒井康行、東條織江ら。


咲坂伊緒の同名の少女漫画を基にした作品。
監督は『坂道のアポロン』『フォルトゥナの瞳』の三木孝浩。
脚本はTVアニメ『ウマ娘プリティーダービー』の米内山陽子と三木孝浩監督による共同。
朱里を浜辺美波、理央を北村匠海、由奈を福本莉子、和臣を赤楚衛二、朱里の母を戸田菜穂、聡太を古川雄輝、ケーキ屋の店長を野間口徹、我妻を上村海成、亮介を三船海斗、柴を若林時英、理央の父を貴山侑哉が演じている。

モノローグを多用して心情を説明するのは、少女マンガだと良く用いられる手法だ。ただ、そのまんま映像化すると、上手くハマらないケースも少なくない。
この映画でも、そういう事態に陥っている。
まだ序盤「由奈がここまで奥手とは」「朱里ちゃんはきっと本当の恋をしたことが無いんだ」というモノローグは、ギリセーフでもいいだろう。しかし、「(本当の朱里を)知っても、たぶん俺のジャッジは変わらないよ」という和臣の言葉を受けて、朱里の「サラッと凄いこと言うんだなあ」という心の言葉を語らせるのは、ものすごく不自然。
そこは言葉にせず、朱里の表情だけで済ませた方が間違いなく効果的だわ。
ひょっとすると言葉にしない分、伝わる情報の明確さは減るかもしれないが、その程度で充分だよ。

理央が何も訊かれていないのに「俺の場合とは違う」と自分から言い出すのも、ものすごく不自然。
「理央の恋には何か秘密があるな」と匂わせたいんだろうけど、そのための無理がハッキリとした形で見えちゃってるぞ。
しかも、そこで匂わせる必要性って実は全く無いんだよね。その直後のシーンで、「理央は朱里に思いを寄せているけど、両親のことがあるから内緒にしている」ってことが明らかになるんだから。
だから、そっちだけで事足りるのよ。

っていうか、実はそこで朱里が発する台詞も、ものすごく不自然な作業なのよね。「朱里と理央は親の再婚で姉弟になっただけで血は繋がっていない」という事情を由奈と観客に知らせるための台詞ってのが、露骨に分かっちゃうのよ。
あと、そこで「2人は本当の兄弟じゃない」という由奈のモノローグを入れるのも、すんげえ邪魔。そんなの、驚く由奈の表情だけで充分でしょ。その前の朱里の台詞だけで、もう「2人は本当の兄弟じゃない」ってことは伝わってるっつーの。
その後にある由奈の「待って。理央くんが告白できなかった人って」という気付きのモノローグも、これまた邪魔なだけ。そこも由奈の表情や理央の動きだけで伝わるよ。
とにかくモノローグの大半が、疎ましいだけの存在になっている。

どうやら原作漫画は、朱里と由奈の2人が主人公になっているらしい。
しかし映画版では『君の膵臓をたべたい』コンビの再共演を売りにしたかったのか、単純に知名度の問題なのかは分からないが、朱里と理央がメインになっている。由奈と和臣は、その相手役として配置されている。
これにより、ロマンシスとしての要素は、かなり薄くなっている。
それと厄介なのは、ネタバレになるが、朱里&和臣と理央&由奈のカップルで物語が着地することだ。
前述したように、最初から明確な形で「キミスイ」コンビを強く押し出しているため、ここがカッブルにならない結末に何となくモヤッと感が残るのだ。

そもそも、朱里は映画が始まった時点で完全に割り切っていたようだが、理央は彼女の強い恋心を抱いていた。周囲に大勢の人がいても告白しようとするぐらい、気持ちが溢れそうで我慢できなくなっていたのだ。
それが、「家族を終わりにしたくない」という朱里の思いを聞いたからって、それだけで簡単に吹っ切れるものなのか。
そうじゃなくて、朱里のことが好きだから、彼女のために本心を押さえ付けただけにしか思えないのよ。
ところが、その直後には「いつの間にか理央を目で追っていた」とモノローグを語り、理央に恋心が移るのよね。
それは強引に舵を切っているシナリオだとしか思えんよ。

夏祭りのシーンで我妻が由奈に声を掛けた時、「お前は誰だよ」と言いたくなった。
それまでのシーンで、こいつって出て来ていたかね。まるで見覚えが無いぞ。既に登場していたとしても、「こいつは我妻ですよ」という分かりやすい存在アピールは無かったはず。
由奈が前の学校で親しかった相手とか、幼馴染とか、そういうキャラなら夏祭りが初登場でもいいよ。だけど同級生なので、そこまでに少しぐらい存在を示しておかないとキャラの見せ方としてマズいでしょ。
っていうかさ、我妻って由奈のクラスメイトなのかと思ったら、別のクラスなのよね。それなのに、由奈は我妻と普通に喋っているのね。
同級生でもクラスが違えば、良く分からない奴だっているだろ。たぶん「理央の友人だから知っていた」ってことなんだろうけど、そんな立ち位置としての存在感も皆無に等しかったからね。

亮介は朱里との復縁を狙って学園祭に現れ、恋愛劇をかき乱す存在として使われるのかと思いきや、ただ文句を言って去るだけの扱いだ。
「断る理由は無かった」ってことで学園祭に来ているんだけど、普通に断れただろ。
来ておきながら不機嫌そうな態度を取り、朱里を批判して去るって、どんなキャラだよ。
朱里に和臣との接し方を反省させるために、こいつを使っているのは分かるよ。でも、もっと上手く事を運ぼうよ。
その場限りのキャラとして都合良く使い捨てにするぐらいなら、こいつを使わずに処理しようよ。

後半、朱里は和臣に将来の夢を尋ね、まず自分が「通訳になりたい」と叫ぶ。だけど、彼女が通訳になる夢を抱いていることなんて、そこまでの展開からは全く伝わって来なかったぞ。明言しないにしても、英語の勉強に力を入れているとか、そういう描写さえ無かったはず。
で、そこで叫んだ後には、「英語の勉強をするため、アメリカ転勤する父に付いて行くことを決める」という展開がある。「勉強のため」ってのは建て前で、ホントは「自分が同行を申し出れば母も来るかもしれない。そうすれば両親の離婚を阻止できる」と考えたからだ。
だけど、そもそも「通訳になる」という夢に対する気持ちの強さが伝わっていないので、「それを建て前にする」という部分も弱くなっている。
あと、アメリカ転勤で離婚するぐらいなら、それが無くても離婚すると思うぞ。そんなことで離婚するとしたら、もう実質的に破綻しているでしょ。

少女漫画では、親の存在を徹底して排除し、若者たちだけで物語を閉じてしまうケースも少なくない。親が出て来るにしても、ほぼ背景のような存在で終始させることも少なくない。
しかし本作品の場合、由奈を除く3人が親のせいで苦しい気持ちを抱えたり辛い目に遭ったりするという形になっている。
ただ、ちゃんと顔の見える親が、朱里の母だけなのよね。理央の父は少しだけ出て来るけど、存在感は乏しい。和臣の両親に至っては、うっすらと声が聞こえてくるだけだ。
それもあって朱里たちと親の関係描写が薄いため、そこを使ってドラマを膨らませようとしても、あまり上手く行っていない。

映画開始から1時間20分ぐらい経過した辺りで、理央と由奈の恋が成就する。
あと40分ぐらい本編は残っているのだが、そこは朱里と和臣の恋愛劇だけが描かれることになる。
もちろん理央と由奈も完全に出番が無くなるわけじゃなくて、それなりに絡んで来る。ただし、それは朱里と和臣の「親友」や「家族」としての関与だ。
そっちの恋愛劇は既に終了しているため、「思い、思われ、ふり、ふられ」の恋愛劇を描く上では用済みになっちゃってるのだ。それは構成として、上手くないと思うぞ。

(観賞日:2022年3月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会