『美味しんぼ』:1996、日本
創立100周年を迎えた東西新聞社。社主の大原大蔵はその記念として「究極のメニュー」という企画を始めることを提言し、監修を陶芸家で美食家の海原雄山に頼もうと考える。海原雄山は料理に対しては非常に厳しい男として知られている。
担当記者が文化部から選ばれることになリ、水と豆腐を使って味覚テストが行われることになった。全て正解したのは新人の栗田ゆう子と、グータラ社員の山岡士郎。山岡が担当に決まったことを知った海原は、「こんな男とは仕事が出来ない」と言って監修を断ってくる。
実は海原と山岡は親子だった。しかし芸術のためと称して母親に冷たく当たった海原を山岡は憎んでおり、互いに反目しあう関係だった。大原は海原と山岡の関係を知っており、この企画を通して2人を和解させようと考えていたのだ。
「究極のメニュー」の監修を断った海原は、東西新聞社のライバルである帝都新聞の企画「至高のメニュー」の監修を担当することになった。そして週刊誌上で「究極のメニュー」と「至高のメニュー」の対決が行われることになる。
魚をテーマにした第1回目の対決は「至高のメニュー」の勝利。続いて中華をテーマにして2回目の対決が行われたが、ここでも「至高のメニュー」が勝利する。そんな中、海原の下で働く山岡の幼なじみが何も口にしなくなり、山岡は彼女のために奔走するのだが…。監督は森崎東、原作は雁屋哲&花咲アキラ、脚色は丸内敏治&梶浦政男、製作は奥山和由&村上光一&田中迪&峰谷紀生&大野茂、撮影は東浦三郎、美術は横山豊、録音は原田真一、照明は栗木原毅、編集は鶴田益一、音楽は井上堯之。
出演は三國連太郎、佐藤浩市、羽田美智子、遠山景織子、柴俊夫、財津一郎、竜雷太、清川虹子、樹木希林、田中邦衛、芦田伸介ら。
人気料理漫画の映画化。親子という設定の2人を、実際の親子である三國連太郎と佐藤浩市が演じている。
ま、それだけが売りですな。上手く作れば松竹のヒットシリーズ映画にもなったと思うんだけど、この出来映えではシリーズ化は無理ですな。本物の親子が演じたということもあるのか、原作よりも親子の関係をクローズアップしている。それは別に構わないが、肝心の料理勝負に対する演出が貧弱になっているのは問題だ。どう考えたって、この作品を引っ張っていく軸は料理勝負でしょ。
だけど、この映画は料理勝負を軸に進めていきながら、そこを深く描かない。後半なんて、幼なじみのために奔走する山岡と、それに絡む親子の愛憎ドラマを中心にしてしまう。こうなると料理勝負、完全にカヤの外である。原作はウンチク漫画であり、そのまま映画化するとモッチャリした作品になる。だから工夫が必要なわけで、その結果が「親子関係を描こう」ということなのだろう。だけど、そのためには料理勝負を深く描き、そこで対立する親子の姿をもっと見せるべきだった。
大事なのは料理勝負なのに、それを軽薄に扱っている。そんな調子だから、この映画が面白くなるはずが無い。勝負だというのに、緊張感が全く無いのである。最も工夫すべきなのは、料理勝負をいかに面白く見せるかという部分だったのに。
海原雄山は料理に関しては冷徹とも思える人物のはずなのだが、三國連太郎はどうも好々爺に見えてしまう。厳しさより優しさが強く感じられるのはダメでしょ。
ところで主人公は山岡を演じる佐藤浩市のはずだが、テロップで三國連太郎の名が先に出るのはどうなのかなあ。