『お墓がない!』:1998、日本

映画スターの桜咲節子はテレビで人気の子役女優・一風弓と共演する映画『宣告』に主演することになった。ガン宣告を描く作品のため、勉強のために病院で検査を受けた節子は、なぜか自分がガンで余命が半年だと思い込んでしまう。
節子は取りたてて大騒ぎすることは無かったが、撮影スタッフが「墓が無いのは惨めだ」と話すのを聞いて動揺する。もうすぐ死ぬというのに、自分が入る墓が無いのだ。節子は撮影をすっぽかしてまで、大女優にふさわしい墓を探そうとする。
だが、プライドの高い節子は自分が墓を探していることを知られたくない。そこで春日アキという老婆に変装し、霊園会社「聖香メモリアル」の墓を見学するツアーに参加した。しかし節子は歯に衣着せぬ発言で担当者を怒らせてしまう。
だが、若手社員の川嶋一平は節子に墓を売ろうと奮闘。彼女に付き合い、マンツーマンで様々な墓を紹介して回る。節子からガンで時間が無いことを知らされ、親身になって彼女に接する川嶋。自分の家に招待して夕食をご馳走したりもする。
一方、映画の撮影も進んで行く。最初は生意気だった弓だが、節子の真剣な態度に感化され、映画に対する取り組み方が変わっていく。順調に撮影が進み、節子と弓の間にも親愛の情が生まれ始める。いよいよクランクアップが近付く中、節子は突然倒れ、病院に運ばれる…。

監督は原隆仁、脚本は大森寿美男、製作は鈴木光&久板順一朗&関一由、撮影は前田米造、編集は川島章正、美術は和田洋&沖山真保、録音は橋本文雄、照明は加藤松作 音楽は大島ミチル。
主演は岩下志麻、共演は安達祐実、袴田吉彦、金田明夫、高橋ひとみ、石橋蓮司、橋爪功、村野武範、田口トモロヲ、森山良子、中山忍ら。


「やっぱり松竹はダメらしい」と世間に知らしめた駄作。
ゴミ箱直行型のコメディ。
笑えないこと、山の如し。ここまで酷い作品を、よくも作る気になったものだ。墓や葬儀を取り巻く裏事情を紹介する作品としての価値はあるかと思ったが、その部分での描写も中途半端。

最悪なのは、岩下志麻の扱い方。『極道の妻たち』シリーズで凄味のある女を演じていた彼女がコメディに挑戦するということが話題となったが、この作品の製作者は彼女の扱い方を失敗している。
というのも、彼女に「コメディ映画の演技」をさせているからだ。

岩下志麻という人が弾けた芝居の出来る人なら、もっとメチャクチャにキレた役でギャグを連発するような芝居をさせてもいいのだが、彼女に弾けた演技を要求するのは酷だろう。結局、この作品では煮え切らないコメディ演技という結果に終わっている。

岩下志麻を使ってコメディ映画を作ろうとするなら、彼女には普通の(彼女の演技がそもそも普通ではないという見方もあるが)芝居をさせるべきだった。そして周囲のキャラクターや状況との絡みによって、笑いを生み出すというやり方をするべきだった。
彼女にコメディエンヌの芝居をさせようとしたことが、最大の失敗であろう。

話もヌルくて、まず節子がガンだと思い込む部分が強引過ぎる。ここで笑いを生み出すことも出来たはずなのに、簡単に流してしまう。
節子が世間知らずなために一般の人々と噛み合わないという部分でも笑いは作れたはずだが、そこでも半端な流れに終わってしまう。
ダメだこりゃ。

 

*ポンコツ映画愛護協会