『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』:2010、日本

2010年3月28日。刑事課強行犯係の係長となった青島俊作は署員を集め、新湾岸署への引っ越し対策会議を開いた。本部長として引っ越し を指揮することになった彼は、「完璧にやってやんからな」と意欲を燃やす。青島は署内を歩き回り、進行状況をチェックする。強行犯係 の緒方薫に「遅れてるよ」と注意すると、「一番遅れてるの、係長です」と指摘された。強行犯係の篠原夏美がダンボール箱を持って来た 。警務課課長の魚住二郎は、健康診断を担当した医者が連絡を欲しがっていることを青島に伝える。
新庁舎では、署長の神田、刑事課課長の袴田、副署長の秋山がテレビの取材を受けている。新しい湾岸署には、テロ対策のための高度な セキュリティーが導入されている。新庁舎に移転すると、署長と副署長は引退することになっている。しおかぜ銀行で窃盗事件が発生した という通報があり、刑事課盗犯係の恩田すみれは中西修や森下孝治と共に現場へ向かう。しかし、ネットワークによって管理された金庫が クラッキングで開けられていたものの、盗まれた物は何も無かった。
レインボーブリッジ付近でバスジャック事件が発生したため、青島は夏美や緒方、栗山孝治や研修生の王明才を引き連れて出動した。青島 は停車しているバスに突入するが、犯人は降りた後だった。乗客によると、犯人は5名だったという。一味は財布を出せと脅したものの、 それを残して去ったらしい。その頃、新湾岸署には引っ越し業者の人材派遣登録スタッフに扮した若者たちが侵入し、警務課の保管庫から 3丁の拳銃を盗んで逃亡した。
青島たちが引っ越し作業に戻ると、和久平八郎の甥・伸次郎がやって来た。本日付で強行犯係に配属されたのだ。彼が強行犯係に赴任 したのは、警察庁長官官房審議官となった室井慎次が「青島の下で働け」と言ったからだった。伸次郎は形見分けの品として、和久の言葉 が記されたノートを持っていた。そこへ婦警たちが来て、新湾岸署で使われるセキュリティーカード代わりの携帯端末を配った。
青島とすみれの元を神田、袴田、秋山が訪れ、拳銃が奪われたことを伝えた。盗まれたのは青島、すみれ、王の登録拳銃だ。神田は呑気な 態度で、「引っ越しの最中に盗まれたんだから、僕の責任じゃないよね。だったら引っ越しが終わるまで隠し通せばいいんじゃない」と口 にした。一方、犯人グループは、ネットの掲示板に拳銃紛失の不祥事があったことを書き込んだ。青島は部下たちに捜査を指示するが、 栗山は「あんまり捜査の経験も無いし」と意欲を示さなかった。
交渉課を外れた真下正義が青島たちの前に現れ、テレビのニュースでも拳銃紛失が報じられていることを教える。神田たちは記者会見を 開き、メイクで疲れた様子を演出し、申し訳ないと感じているような芝居をした。青島は引っ越し作業員のリストを調べるが、バイトを 含めると200人以上もいた。派遣スタッフは名前の代わりに番号で登録され、携帯メールで呼び出される仕組みになっていた。
翌朝、東京湾に停泊中のボートで変死体が発見される。死体の上には、王の拳銃が置かれていた。新湾岸署で捜査会議が開かれ、警視庁の 刑事部捜査一課管理官・一倉正和たちがやって来た。被害者は上村和彦という22歳の男で、前日に派遣スタッフとして働いていた。一倉が 「捜査は本庁の捜査員のみで行う。所轄は引っ越しでもやってろ」と冷淡な態度で言うと、所轄の連中が怒声を上げた。
一倉に同行していた警視庁刑事部捜査一課管理補佐官・鳥飼誠一は、「皆さんの気持ちは分かりました。僕に任せてくれませんか」と 穏やかに言う。彼は何やら神田たちと話し、続いて一倉と会話を交わした。それから深々と所轄の面々に頭を下げる。彼は本庁と所轄の 調整役だった。鳥飼は「近隣所轄署は捜査に参加し、湾岸署刑事課は引っ越しが終わってから参加する。本庁と所轄がバディーを組んで 捜査することにしましょう」と決めた。会場から拍手が湧き上がった。
青島は鳥飼とバディーを組むことになった。2人は上村のアパートの部屋を調べ、彼がネットゲームの中毒者だと知る。青島は新湾岸署の セキュリティーマニュアルを渡されるが、かなり厚いので嫌になり、伸次郎に「勉強しといて」と預けた。真下の後任の交渉課課長と なった小池茂は、上村がプレイしていたオンラインゲーム「バトル・オブ・コンバット」に参加し、情報を得ようとした。すると、一人の プレイヤーがボイスチャットを要求してきた。彼は野良犬というハンドルネームを使用していた。
小池がボイスチャットに繋ぐと、野良犬は相手が警察だと見抜いていた。小池が捜査協力を求めると、野良犬「伝えたいことがある。 奪った拳銃は、あと2丁」と笑い、要求を出してきた。サーバーに預けたというファイルを小池がダウンロードすると、これまでに逮捕 された犯人9名の写真があった。野良犬は「彼らを釈放せよ、釈放しなければ盗んだ拳銃を使う」と無差別殺人を示唆した。
警察庁の会議室には警察庁長官の池神や官房副長官、法務省次官らが集まり、対策を話し合う。その会議に出席した室井が「何があっても 犯人の要求に屈するわけには」と口にすると、池神は「そんな教科書みたいな答えを聞くために広島から戻したわけじゃないよ」と言う。 青島が連絡を取らなかったため、医者が署に出向いてきた。医者はレントゲン写真を見せ、胸部に腫瘍が出来ていることを説明する。医者 から「悪性なら専門の病院で診てもらうように」と言われた青島は、すっかり気力を失ってしまった。
青島は一倉から、野良犬が釈放を要求してきた9人は、全て自分が逮捕した犯人だと知らされる。医者の宣告に同席していた魚住は、腫瘍 のことを中西に喋ってしまう。中西はすみれに、そのことを話した。青島は鳥飼と共に、関東中央医療刑務所へ赴いた。そこには野良犬が 釈放を要求した一人・日向真奈美が無期懲役刑で収容されていた。絵を描いていた真奈美は、青島の心を見透かすように不気味な笑みを 浮かべ、「手術してやろうか」と言い放った。
翌日、野良犬は「明日の深夜午前0時と共に、無差別殺人のショーが始まる」と釈放の期限を設定する。一倉が「ふざけるな、こんな要求 が飲めるか」と怒鳴ると、野良犬は仲間の一人を射殺し、死体の上にすみれの拳銃を置いた。一方、魚住の元には、青島のレントゲン写真 の影は撮影ミスによるものだという連絡が届いていた。それを聞いた神田は、「元気が無い方が、僕らに迷惑が掛からない」と言い、事実 を青島には隠しておくよう指示した。
体調の悪さを理由に捜査会議まで休もうとする青島の様子を見て、すみれは「どうせ死ぬんでしょ。知ってるわよ。だから何よ。そうなら 残された時間、大切にしなさいよ」と告げる。和久ノートの「死ぬ気になれ。その時だけ生きられる」という言葉を知った青島は、やる気 を取り戻した。青島は伸次郎を引き連れ、捜査に赴いた。2人目の被害者の部屋に潜入すると、爆破装置が仕掛けられていた。青島は装置 を解除し、爆破を阻止した。
犯人グループは新湾岸署に派遣スタッフとして潜入し、机の上にあったマニュアルを偽物に摩り替えた。署に戻った青島は、栗山が真奈美 のファンサイトを見ているのを知る。その掲示板には、彼女の現在の健康状態を細かく書き込んでいる者がいた。調べた結果、真奈美の 相談に乗っていたソーシャルワーカーがいて、外出願を出していたことが判明した。そして1年前の今日、裁判所から外出許可が出ていた 。その男・須川圭一は、真奈美と似た名前の受刑者の書類と摩り替えて、裁判所に申請していた。
鳥飼は野良犬に、「圭一君」と話し掛ける。正体を突き止められた須川だが、余裕の態度でビデオチャットを要求した。彼は「新しい 湾岸署を占拠する。傭兵を送り込む。守り切れるかな」と口にした。鳥飼はセキュリティー・レベルを上げるよう指示を出す。青島と鳥飼 は、須川の住居へ向かうことにした。伸次郎は偽マニュアルを見て、サーバールームのコンピュータを作動させてしまう。新湾岸署は封鎖 され、中にいた署員と引っ越し業者が閉じ込められてしまった。
須川は「奴らを釈放しないと、建物の中に毒ガスを撒く」と通告した。閣僚会議の面々は、受刑者の釈放を要求した。政治的判断を優先 することに室井は反発するが、池神に「この部屋に正義は無いよ。あるのは、それぞれの立場の都合だけだ」と言われる。青島と鳥飼は、 警視庁刑事部捜査一課特殊犯捜査係の木島丈一郎や浅尾裕太たちと共に須川の部屋へと乗り込んだ。青島は、真奈美から須川に送られて いた何通もの手紙を発見した。鳥飼はパソコンを操作するが、爆発が起きて負傷した。
一倉たちはセキュリティー・システムの開発者が呼び、解除するよう要求した。開発者は「プログラムがいじられており、クラッキング されているのでネットワークによる遠隔操作は無理です」と言う。政府と法務省は法的措置として受刑者の釈放を決めるが、室井は書類 へのサインを拒んだ。そこへ鳥飼が調整役として現れ、「受刑者を新湾岸署に集めて釈放。周辺にSATを配備。拳銃の放棄と扉の解除。 ガスの回収が確認された段階で射殺する」というプランを提案した。室井も承諾し、受刑者の釈放が決まった。
扉を開ける方法を考えていた真下は「目には目を、歯には歯を」という交渉術のテクニックを思いだし、小池に連絡を入れた。SATの 草壁中たちは指示を受け、解放された受刑者の射殺準備に入った。室井は鳥飼に電話を入れ、「青島に日向の護送を担当させ、彼女を説得 するよう伝えろ」と告げる。しかし一倉は所轄の面々が捜査に関わることを嫌悪し、青島を現場から追い払った…。

監督は本広克行、脚本は君塚良一、脚本協力は金沢達也、製作は亀山千広&永田芳男、プロデューサーは臼井裕詞&安藤親広&村上公一、 アソシエイトプロデューサーは瀬田裕幸&上原寿一、撮影は川越一成、編集は田口拓也、録音は加来昭彦、照明は加瀬弘行、美術制作は 後藤正行、美術監督は梅田正則、美術デザインは[木青]木陽次、VFXスーパーバイザーは石井教雄、音楽は菅野祐悟、 オリジナルテーマ曲は松本晃彦。
主題歌「Love Somebody CINEMA Version III」歌:織田裕二、作詞:織田裕二 with MAXI PRIEST、作曲:GARDEN、編曲:松本晃彦。
出演は織田裕二、深津絵里、ユースケ・サンタマリア、柳葉敏郎、小泉今日子、小栗旬、岡村隆史、稲垣吾郎、伊集院光、伊藤淳史、 内田有紀、小泉孝太郎、北村総一朗、小野武彦、斉藤暁、佐戸井けん太、小林すすむ、甲本雅裕、遠山俊也、小木茂光、寺島進、松重豊、 高杉亘、東根作寿英、川野直輝、滝藤賢一、宮藤官九郎、近藤芳正、北山雅康、布川敏和、古田新太、森康、時東ぁみ、近藤フク、 札内幸太、飯泉学、大鷹明良、津嘉山正種、辻萬長、辻つとむ、山崎直樹、上杉祥三、貴山侑哉、野仲イサオ、前原実、真柴幸平、 佐藤正行、山口年男、赤池公一ら。


フジテレビ製作の連続TVドラマ『踊る大捜査線』の劇場版第3作。
前作から7年ぶりで、スピン・オフの映画『交渉人 真下正義』と『容疑者 室井慎次』を含めると5年ぶりになる。
青島役の織田裕二、恩田すみれ役の深津絵里、真下役のユースケ・サンタマリア、 室井役の柳葉敏郎、神田役の北村総一朗、袴田役の小野武彦、秋山役の斉藤暁、魚住役の佐戸井けん太、中西役の小林すすむ、緒方役の 甲本雅裕、森下役の遠山俊也、一倉役の小木茂光などは、TVシリーズからの出演者。
夏美役の内田有紀はTVの番外編『湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル』の主演女優で、映画版では初登場。小池役の小泉孝太郎 は劇場版第2作から、木島役の寺島進と浅尾役の東根作寿英は『交渉人 真下正義』から、草壁役の高杉亘と池神役の津嘉山正種は 『歳末特別警戒スペシャル』からの出演者。真奈美役の小泉今日子は劇場版第1作の犯人。
今回の初登場組は、鳥飼役の小栗旬、伸次郎役の伊藤淳史、栗山役の川野直輝、王役の滝藤賢一など。

一言で言ってしまえば、これは『踊る大捜査線』シリーズに関わった人々の同窓会である。シリーズのファンだけに向けて作られた映画で ある。
今回は、事件の首謀者である真奈美の他にも、これまでのシリーズに登場した犯人たちの釈放が要求され、稲垣吾郎や岡村隆史、伊集院光 が再登場する。
そこに「ああ、あの時の」という懐かしさを感じてもらおうという仕掛けになっている。
そうやって観客層を限定しても、かなり稼げるコンテンツだという自信が製作サイドにはあったのだろう。

しかし同窓会ではあるのだが、再登場すべきなのに、再登場しないキャストがいる。
まず、和久平八郎を演じていた、いかりや長介。
死去しているから不可能なのだが、そもそも彼が死去した以上、続編を作るべきではなかったと私は思う。
もう一人、柏木雪乃を演じていた、水野美紀も出演していない。
これは彼女がバーニングプロダクションから独立したためで、いわゆる「大人の事情」って奴だ。
そういう理由で出演させないのは、ホントに醜悪だよなあ。

今回の作品は、同窓会という意味合いと共に、もう1つの狙いが込められている。
それは、続編、もしくはスピン・オフに向けての布石を打っておくということだ。
青島は出世して若者を指導する立場になり、室井は捜査ではなく政治に携わる立場になった。神田署長はシャレじゃなくて、マジで老害に なっている。
そんな風に、みんなが出世したり退任したりしていく中、今までの連中をメインにしてシリーズを続けることは難しい。
だから、新しいキャラクターを投入し、布石を打っているのだ。

今回、かなり鳥飼の扱いが大きいんだが、彼でスピン・オフを作ろうという野心が見え見えなんだよな。和久伸次郎も、たぶん彼を主役 にした作品を作りたいという狙いがあったんだろう(結果的にはスピン・オフに繋がらなかったが)。
ただし、鳥飼はともかく、伸次郎に関しては、まるで有効に使おうとしていない。ただ単に「和久の甥を出しときゃファンへのサービスに なるだろう」という手抜き感覚が透けて見える。
和久の甥として、彼を登場させる意味が全く感じられないんだよな。和久の魂を引き継いでいるわけでもないし(ノートは「ただ持って いる」というだけ)。
ちなみに、栗山と王に関しては、まるで存在価値が無い。
ただの数合わせに過ぎない。

幾ら引っ越し作業中であろうとも、拳銃の保管庫が全く警備されていないというのは、かなり荒唐無稽だ。それと、犯人グループが、なぜ 3丁だけ盗むのか、良く分からない。
あと、銀行の事件とバスジャックは、何の意味があったのかサッパリ分からない。陽動作戦のつもりで盛り込まれているんだろうか。
だけど、そっちに気を取られて警備が手薄になったわけじゃないので、陽動作戦としての意味は無い。
最初から保管庫は警備されていないし、派遣スタッフへのチェックも無いんだし。

コメディー・タッチが本作品のノリなのは分かっているけど、拳銃が盗まれたのに、スリー・アミーゴスがノンビリしているのは不愉快だ 。
で、その捜査を始めた青島が作業員のリストを調べると、「派遣は名前の代わりに番号で登録されている」と言われる。
だけどバイトであろうとも、名前も分からないまま雇っているというのは、ちょっと納得しかねる。
君塚良一は「あたかもリアリティー」で脚本を作ってきた人のはずなんだけど、今回は完全にファンタジーの世界観になっている。

青島が腫瘍のことを知って気力を失うが、実は撮影ミスだったというエピソードは、ホントに要らない。
製作サイドは「生と死」というテーマを掲げていたらしいが、それを表現するために、バカみたいな誤診でオチを付けるようなエピソード は要らない。腫瘍が出来ていると言われただけで、悪性と断定されたわけでもないのに、落ち込みすぎだし。
そもそも根本的な問題として、「生と死」というテーマも要らないんじゃないの。

ホントなら青島は「釈放を要求してきた受刑囚は全て自分が逮捕した連中だ」と知らされた時点で、大きく驚き、「なぜ自分の逮捕した 犯人ばかりなのか」と疑問を抱き、捜査を進める展開になるべきなのだ。
それを知らされたことが、物語の推進力になるべきなのだ。
だが、青島は、それどころじゃなくなっている。
腫瘍と診断されたことが、青島だけじゃなく、物語にもマイナスに働いている。

腫瘍に関連して、青島とすみれのロマンス的な場面もあるが、そんなにノンビリしている場合じゃねえだろうと言いたくなる。
それと、観客に撮影ミスだったと明かした後も、青島がマジに落ち込んだり、死ぬと思い込んで頑張ったりするので、すげえバカバカしく 思える。
あと、すみれの言葉で青島が捜査への意欲を取り戻すのかと思ったら、きっかけは和久ノートの言葉なんだよね。
そうなると、すみれの励ましは無意味になってしまうじゃないか。

須川が釈放を要求した受刑囚の中には、既に釈放されている面々もいる。
だが、「既に釈放されている人物も含まれているのは、どういうことなのか」というところでの疑問提示も無い。
そもそも、既に釈放された人物がいることも、しばらくは明かされないままだ。
室井がサインした後、ようやく5名が既に刑期を終えて出所していることが判明するが、遅いでしょ。
あと、キリスト教に入信して出所を拒否した者と精神を病んでいる者がいたため、釈放は2名だけとなるのだが、それが分かった段階で、 須川と交渉すべきじゃないのか。彼は9名の釈放を要求したのに、実際は2名なんだから、それでOKかどうか確認を取らなきゃいけない はずでしょ。

青島と鳥飼は真奈美に会いに行くが、なぜ最初が彼女なのかは不明。
「最初が」っていうか、彼女以外の受刑囚には会いに行かないし。
それと、捜査の初期行動として、真奈美に会いに行くことが適当だったのかも疑問が残る。
鳥飼の行動に関しては、もう一つ引っ掛かることがある。彼は須川のパソコンを操作し、画面に「san」「ni」「ichi」「zero」と 書かれた箱を順番にクリックして爆発が起きるが、そんな不用意な行動を取るのは不自然。
そこで彼が負傷することが、物語において何の意味があるのかも不明。

クライマックスであるはずの箇所には、青島が一対一で真奈美を説得するという展開が用意されている。
それがクライマックスとしての力を持っていると、本気で思っていたのだろうか。
織田裕二と小泉今日子の持つ役者としての存在感や演技力で、観客を惹き付けることが出来る、作品のハイライトにすることが出来ると 本気で思っていたのか。
だとしたら、それは2人を買い被りすぎだろう。
ただ単に、テンションが下がってチンタラしているだけ。

その説得工作と並行して、毒ガスやセキャリティーの解除、実行犯グループの拘束といった動きが描かれるが、そちらの方が遥かに推進力 がある。
ただ、それが意図的だったとしたら、青島は噛ませ犬ってことになっちまうぞ。それはそれでマズいでしょ。
あと、さんざん引っ張っておいて、「電源を切ったら扉が開きました」という解決方法には脱力するしか無い。
そこでアンチ・クライマックスを持って来るとはね。
青島がカップラーメンを食べて「俺の賞味期限も……」と漏らすシーンがあるが、このシリーズの賞味期限も切れている。

(観賞日:2011年4月20日)


2010年度 HIHOはくさいアワード:6位

第7回(2010年度)蛇いちご賞

・作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会