『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』:2003、日本

警視庁のSATチームが公開訓練を行うことになり、湾岸署の面々は豪華客船の客と乗っ取り犯の役を命じられた。乗っ取り犯のリーダー役は、刑事課強行犯係の青島俊作だ。SATの草壁中隊長に挑発された湾岸署の面々は、徹底的に抵抗することにした。青島らは次々にSATの連中を捕獲し、制圧作戦を失敗に終わらせた。
お台場は観光地へと変貌し、湾岸署では観光者相談係の面々が多忙な日々を送っている。熱くなれる仕事を求める青島だが、噛み付き魔による連続婦女暴行事件や、家族による連続スリ事件など、飛び込んでくる事件は乗り気になれないものばかりだ。
そんな中、青島は全身を綱で縛られて死んでいる男性を発見する。しかし殺人となると、湾岸署ではなく警視庁の管轄になる。警視庁では刑事部捜査一課管理官・沖田仁美が陣頭指揮を執り、室井慎次管理官がサポートをることになった。
湾岸署に合同特別捜査本部が設置され、警視庁の面々が乗り込んで来た。その頃、湾岸署では神田署長の不倫メールが、ウイルスによって全員のパソコンに流れるという出来事が発生した。青島は、署長の浮気相手を探し出そうと意欲を燃やす。
青島が発見した被害者は、61歳の建設会社役員だった。現場には多くの遺留品が残されており、近くで4人の不審人物が目撃されていた。室井は官房審議補佐官の新城賢太郎から、所轄の人間を何名か引き抜いてくるよう指示された。
青島と刑事課盗犯係の恩田すみれは、室井から捜査本部へ来るよう指名された。2人が招き入れられた部屋には、何台ものモニターがあった。警視庁は、お台場に監視システムを張り巡らせていたのだ。警視庁は今回の捜査で、監視と盗聴を使った新しい捜査方法をテストしようとしていた。青島とすみれは、モニターのチェックを命じられた。
やがて、あるビルの前で会社役員の死体が発見された。現場近くでは、社員の江戸りつ子が逃げる犯人を目撃していた。りつ子は、犯人が3人組で、「カメダ」と話していたことを語る。そこへ、犯人を名乗る男から電話が入った。男は、りつ子に目撃されたことを知っていた。逆探知によって、電話は湾岸署の建物から掛けられたことが分かった。
ネゴシエーターとして、警視庁刑事部捜査一課の真下正義が呼び寄せられた。再び犯人を名乗る人物から電話が掛かるが、先程とは違う男だった。真下は男との会話で、彼が1つ目の事件には関与しているものの、2つ目の事件は知らないと判断した。
沖田はりつ子に対し、会社のパーティーに出席するよう告げた。犯人が彼女を狙ってくる可能性が高いため、囮に使おうと考えたのだ。青島とすみれは警護役を命じられ、パーティー会場に潜入する。警視庁の面々も、それぞれ配置に付いた。
青島とすみれは、会場でスリの家族と噛み付き魔を発見する。しかし一方で、りつ子を狙う不審な2人組も目撃されていた。青島とすみれは室井からの指示を受け、スリの家族と噛み付き魔を見逃した。だが、捜査本部は2人組を取り逃がしてしまう。
湾岸署指導員の和久平八郎は、犯人が現場に残した洋梨が、「用無し」というメッセージだと指摘した。和久の言葉を受けて、真下は犯人グループがリストラされたサラリーマンだと確信する。彼らはリーダーを置かず、命令系統が存在しないグループだった…。

監督は本広克行、脚本は君塚良一、製作は村上光一、企画は宮内正喜&永田芳男、プロデューサーは臼井裕詞&堀部徹&安藤親広&石原隆&高井一郎、キャスティングプロデューサーは東海林秀文、ラインプロデューサーは羽田文彦&村上公一、エクゼクティブプロデューサーは亀山千広、監督補は長瀬邦弘、助監督は河合勇人、制作担当は松岡利光&曳地克之、撮影監督は藤石修、編集は田口拓也、録音は芦原邦雄、照明は加瀬弘行、美術制作は河井實之助、美術監督は梅田正則、美術デザイナーは[木へんに青]木陽次、音楽は松本晃彦、音楽プロデューサーは森田和幸。主題歌「Love Somebody」は織田裕二 featuring MYA。
出演は織田裕二、いかりや長介、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、ユースケ・サンタマリア、小泉孝太郎、小西真奈美、真矢みき、筧利夫、岡村隆史、小野武彦、佐戸井けん太、斉藤暁、小林すすむ、甲本雅裕、遠山俊也、北村総一朗、小木茂光、高杉亘、神山繁、大和田伸也、中原丈雄、升毅、河西健司、六平直政、平賀雅臣、高嶋ちさ子、池田成志、三上市朗、八十田勇一、星野有香、星川なぎね、児玉多恵子、前原実、真柴幸平、佐藤正行、山口年美、赤池公一ら。


フジテレビの人気ドラマの劇場版第2作。
TVシリーズ&劇場版1作目のレギュラーに加えて、噛み付き魔役でナインティナインの岡村隆史、沖田役で真矢みき、りつ子役で小西真奈美、監視モニター室オペレーター役で小泉孝太郎が出演している。

殺人事件で捜査本部が設置されるというのに、湾岸署では宴会の手配や弁当の準備に余念が無い。賄賂や談合、当たり前の状態になっている。青島&すみれが男の身柄確保を命じられるが、それは頑固な寿司屋を開けさせる仕事だったりする。
おバカさんなことを真面目にやっている様子を見せるのは、緊張と緩和のコントラストを考えれば、それでいい。ただ、この映画では、緩和の部分が、本来は緊張になるべき部分まで侵食しているように思えてならない。連続殺人事件が現場で起きているにも関わらず、ふざけている時間が長すぎるように感じてしまうのだ。

連続殺人事件だけでなく、スリと噛み付き魔の事件も盛り込まれている。
しかし、「無関係だった3つの事件が、終盤になって1つに結び付く」という仕掛けは無い。3つの事件が絡むことも少ない。
所轄と本店の対立構造を描くために犯罪に格差を付けていることは分かるのだが、スリと噛み付き魔の事件は、無理な付け足しに思えてしまう。

劇場版の1作目で青島と室井の間に信頼関係が生まれているため、そこの対立は使えない。そこで、今回は沖田という新たな憎まれ役を用意している。ただ、あまりにも分かりやすいキャラにしようとしたためか、何か信念や哲学を持って青島と対立関係になるのではなく、ただバカでヒステリックなだけの女になっている。
で、沖田が頭のイカれた女になっているため、こいつ1人だけに問題があるということになってしまう。つまり警視庁の官僚主義ではなく、頭のイカれた女がガンだったという形だ。それだと、組織ではなく個人が悪いのだという形になってしまう。

指揮官が室井にスイッチし、所轄の面々が勝手に行動を開始すると、一気に事件は解決へと雪崩れ込む。しかし、問題は沖田というリーダーの資質にあったのであって、命令系統が縦に通っている仕組みが悪かったわけではないのだ。しかし皆が独自の判断で行動するのが正しいように描くので、そこに問題点のズレが生じている。
対立関係の描写に、かなりの無理を感じる。青島と沖田の対立が顕著に表れるのは、パーティー会場で殺人犯を捕まえるため、スリと噛み付き魔を見逃すという部分。ここで、殺人犯を優先した沖田に青島は怒る。しかし、「じゃあスリと噛み付き魔を捕まえるために、殺人犯を逃がしてもいいのか」と問われたら、たぶん答えに困るだろう。

で、そういう問題をクリアするために、沖田に対して「スリや噛み付き魔の事件なんて、捜査しなくていい。所轄の事件なんて、捜査しなくていい」というメチャクチャな意見を言わせている。そこまで極端にしないと、青島に正当性を持たせられないのだ。
本店と所轄の対立というのは、前作と同じパターンだ。しかし、前述したように、本店の陣頭指揮を執る人間は完全なバカ。一方で、所轄の連中も揃ってバカに見える。というわけで、もうすごく低いレヴェルの、バカとバカの対立に見えてしまう。あと、青島が反骨心のあるノンキャリアというより、やたら偉そうな奴に見えてしまうのだが。

今回の犯人達は、「新しいタイプのグループ」と称されている。しかし、リーダーが存在せず、個々が独自の判断で動くというのは、新しいグループではなくバラバラなだけだろう。それを集団で捉えるから「行動パターンが読めない」となるわけで、最初から1つずつの事件で、それぞれの犯人を捜査していけばいいだけのことだと思うのだが。
とにかく、その犯人グループが狡猾で知的とは正反対の、頭の悪いチンピラまがいの連中にしか見えない。だから、そんな連中に簡単に振り回される警察の面々は、もっとバカということになる。だから前述したように、やはりバカとバカが対立しているわけだ。

前述したように、犯人グループは決して知的レヴェルが高いわけではない。デタラメでバラバラな連中の寄せ集めだ。犯人と捜査陣の動きが、アンバランスに思えてならない。犯罪に対して、警察が過剰な対応で大きな騒ぎに仕立て上げているように感じる。
たぶん、警察機構の官僚主義や危機管理能力の無さを描こうという意識は、強くあると思う。しかし、それにしては、犯罪の規模が伴なっていない。2人が殺されたという事件で、街の封鎖までが必要だろうか。普通に検問で対応すればいいことじゃないだろうか。

今回は、青島の「どうして現場に血が流れるんだ?」という言葉が決めゼリフのように使われている。
しかし、現場に血が流れたのは、すみれがアホだからだ。
ノコノコと出掛けて行って余計なことをしなければ、現場に血が流れずに済んでいただろう。
だから、そこで青島が沖田や警視庁のやり方を批判するのは、お門違いなのである。

 

*ポンコツ映画愛護協会