『いぬのえいが』:2005、日本

『A Dog’s Life:good side』はアニメーション。犬のチャイムは寝ている飼い主の少年を起こし、一緒に散歩へと出掛ける。様々な犬や飼い主と出会い、少年とチャイムは楽しく遊ぶ。

『うちの子No.1』はミュージカル。アイリッシュ・セターを連れたおじさんと、4匹のヨークシャー・テリアを連れたおばさんが、公園でライバル心を剥き出しにする。

『CMよ、どこへ行く』は、広告プランナーの山田賢太郎が主人公。彼はドッグフードのCMを手掛けることになり、人気女優の白鳥美咲を起用したコンテを作った。しかし上司の小野田からは「美咲ちゃんにダンスをさせよう」と指示され、クライアントからは「BGMに演歌を」と注文され、美咲のマネージャーからは「もっと彼女を目立たせて」と要求される。

『ポチは待っていた/思い出』。思い通りに行かないCM作りに悩まされた山田は、帰宅途中で1匹の犬を目撃し、昔を思い出す。少年時代、山田は病気療養のため田舎に引っ越した。香織という少女が店番をするパン屋であんぱんを購入した山田少年は、向かいの空き地で捨て犬と出会った。山田少年は犬にポチと名付け、ボール投げをして遊んだ。ある日、山田少年はボールを茂みの中に投げるが、ポチは発見できない。雨に打たれた少年は体調を崩し、東京の病院へと運ばれた。

『恋するコロ』は、犬のコロが主人公。飼い主の克彦は、知美という女の子に片思いし、ストーカーまがいの行動に出る。一方、コロは壁の向こうから覗くシッポを目にして、そのシッポの持ち主リリィの姿を妄想する。克彦の知美に対するアプローチの方法を見ながら、コロは自分も同じようにリリィにアタックする妄想に浸るが、ことごとく失敗する。

『ポチは待っていた/唄う男』。ある公園で、美春は恋人の劇団員・正夫に「あんたなんか要らない」と言い放つ。彼女は近くにいたポチを発見し、「あの犬がいればいい」と言ってマンションに連れ帰る。正夫は美春の部屋を訪れ、新作ミュージカルを見に来て欲しいと告げるが無視される。正夫は稽古に励み、いよいよ本番当日を迎える。

『犬語』は、犬のキモチを翻訳する道具“バウリンガル”に関する架空の話。開発担当者の丸山健太郎は、海外の番組に出演して司会者の質問に答える。丸山は発明しようと思ったきっかけを問われ、幼い頃から犬に吠えられてばかりいたことを語る。やがて丸山は、犬たちが何か訴え掛けているのではないかと考え、犬語の研究を開始した。しかしバウリンガルを開発したものの、その思いが強すぎて未だに犬からのメッセージは聞いていないという。しかしスタジオに1匹の犬が現れ、丸山はメッセージを聞くことになった。

『ポチは待っていた/病院』。足を怪我したポチは、東京の病院に運び込まれた。そこは山田少年が入院していた病院だったが、既に彼は退院した後だった。しかしポチは、ずっと病院の前で山田少年を待ち続ける。看護婦の泰代と梨香は、ポチの面倒を見る。患者の女の子は、ポチの姿を見て元気付けられる。長い年月が過ぎたある日、ポチは山田少年の幻を見た。

『ポチは待っていた/空き地』。山田は、かつてポチと遊んだ空き地を訪れた。そこには大きなスーパーが建設されていたが、向かいのパン屋は今もあった。大人になった香織と再会した山田は、仕事を辞めようかと考えて会社を飛び出したことを語った。その夜、ホテルに宿泊した山田は、あの頃にポチがくわえていたボールを発見する。山田は、空き地があった場所へ向かった。

『A Dog's Life:bad side』は、冒頭のアニメーションから繋がる作品。少年や家族から飽きられたチャイムは、ある工場へと運ばれる。

最後は『ねえ、マリモ』。ずっと可愛がっていた愛犬マリモを失った美香は、これまでの日々を回想し、マリモに語り掛ける。そんな彼女に、マリモも自分の気持ちを語り始める…。

プロデューサーは一瀬隆重、コー・プロデューサーは長松谷太郎&宮田公夫、エグゼクティブ・プロデューサーは小谷靖&若尾一彦&三木裕明。

『A Dog’s Life:good side』
監督は黒田昌郎、脚本は山田慶太。

『うちの子No.1』
監督は称津哲久、脚本は山田慶太、撮影は猪瀬雅久、録音は稲村和己、照明は浜本修次、美術は花崎綾子、音楽は萩原隆成&杉山正明。
出演は佐野史郎、渡辺えり子、吉川ひなの。

『CMよ、どこへ行く』
監督は黒田秀樹、脚本は山田慶太、撮影は村上松隆、録音は弦巻裕、照明は府川秀之、美術は有田優子、音楽は近藤達郎。
出演は中村獅童、伊東美咲、高橋克実、北村総一朗、戸田恵子、モロ師岡、村松利史。

『ポチは待っていた/思い出』
監督は犬童一心、脚本は佐藤信介、撮影は蔦井孝洋、編集は上野聡一、録音は浦田和治、照明は疋田ヨシタケ、美術は磯田典宏、音楽はcoba。
出演は中村獅童、小西真奈美、天海祐希、木村多江、川平慈英、広岡由里子、江口のり子、石坂良昭、菅野莉央、速水元基、森下能幸、清水美那、松岡璃奈子、於保佐代子、大家由祐子。

『恋するコロ』
監督&脚本は佐藤信介、撮影は蔦井孝洋、編集は上野聡一、録音は浦田和治、照明は疋田ヨシタケ、美術は磯田典宏、音楽は上田禎。
出演は佐藤隆太、乙葉、声の出演は荒川良々。

『犬語』
監督は永井聡、脚本は永井聡&山田慶太、撮影は長谷川圭二、録音は弦巻裕、照明は山崎公彦、美術は有田優子&宮崎園子。
出演は田中要次、Randy Goins、慈菜。

『A Dog's Life:bad side』
監督は黒田昌郎、脚本は山田慶太。

『ねえ、マリモ』
監督は真田敦、脚本は山田慶太、撮影は小倉和彦、録音は太斉唯夫、照明は小山田智、美術は山口修。
出演は宮崎あおい、利重剛、角南範子、桜井ひかり、大橋のぞみ、キタキマユ。


犬が登場する11の短編を繋いで構成されたオムニバス映画。
共通点は「犬が登場する」という部分だけで、テイストは様々だ。
また、1本で完結するエピソードもあれば、続き物になっている話もある。

アニメーションの『A Dog's Life』は、「good side」と「bad side」で一対になっている。
『CMよ、どこへ行く』は、4話完結の『ポチは待っていた』シリーズへと繋がっていく。

『うちの子No.1』はミュージカル形式になっているのだが、踊るのは人間だけ。歌や曲に合わせて、犬を動かしたり口パクさせたりということは無い。完全に犬はないがしろ状態で、インサート・カットの如くに出てくるだけ。ミュージカルの主役として犬を使おうという意識は全く無い。
別に犬がいなくても、成立してしまうような内容だ。

『CMよ、どこへ行く』は、「犬なんてお構い無しに、人々がCMの内容を変えていく」というのがコメディーとしてのツボになっている。
しかし、山田は常に犬を重視しようとスタンスを主張するわけではない。
この作品、「犬がないがしろにされる」というよりも、「CMの内容がどんどん変わっていく」という所に重きを置く作品になっている。
つまり、犬じゃなくても別にいいわけだ。犬が主役というわけでもないし。
一応は犬が出てくるけど、「犬を扱って笑いにする」ということではない。

『うちの子No.1』『CMよ、どこへ行く』『恋するコロ』『犬語』の4つはコメディーなのだが、これらは、その話単体での質が云々ということよりも、全体の構成を考えると要らないんじゃないかと思ってしまう。
それらのエピソードは、『ポチは待っていた』という連続モノのエピソードを邪魔しているようにも感じられてしまうのだ。
オムニバス映画にするなら、『ポチは待っていた』の部分もシリーズにせず、1つずつ別々のエピソードにして、さらに言えばコメディーにした方がまとまりは出ただろう。
ただし、前述した4つのコメディー作品と比較すると、『ポチは待っていた』シリーズの方が出来映えとしては上なんだよな。でも、『ポチは待っていた』の部分だけ独立した1本の映画にしたらと考えると、それは劇場映画としては短いわけで。
っていうか、この程度なら劇場映画じゃなくて、テレビのスペシャル・ドラマで充分だろうと思うけどさ。

『ポチは待っていた』シリーズにしても、他の3つは感動劇で、「唄う男」だけはコメディーというのは、どうなのよ。そこは統一感を持たせようよ。「病院」ではポチが山田少年を探し続けていたような表現があるけど、「唄う男」では全く示されていないし。
あと、「唄う男」って、完全に犬がいなくても成立する話だよな。
いっそ全てのエピソードを、「ポチが旅の途中で関わる人々の物語」という括りにしてしまったらどうかね。
ああ、だけど、それだと「いぬのえいが」じゃなくなってしまうかもね。

っていうか、そもそも、これってどういう企画なの?
タイトルからして、明らかにターゲットとしている観客層は犬好きの人のはずなのに、犬好きに向けて作られているように思える話は少ないし。
「犬が出てくる話」という大雑把な決まりごとじゃなくて、もう少し細かい縛りを設定しておいた方が良かったんじゃないの。
ハッキリ言って、製作サイドの志、心構えが全く分からない。

ただし、最後に待っている、セリフほとんど無しのエピソード『ねえ、マリモ』が、ものすごく卑怯だとは思うけれど、でもピカイチの出来映えなんだよな。
結局、「終わりよければ何とやら」で、このエピソードで締め括ることによって、いい作品を見たような気持ちになって誤魔化されてしまう人は少なくないんじゃないだろうか。
だけど、じゃあ『ねえ、マリモ』を膨らませて長編で作ればどうなのかというと、それは絶対に無理。このエピソードは、掌編だからこそ成立する作り方の感動劇。2時間どころか、1時間、いや30分でもキツいだろう。
結局、この『ねえ、マリモ』だけが本編で、他のエピソードはオマケみたいなモンだ。
ものすごく無駄で長いオマケだけどね。

 

*ポンコツ映画愛護協会