『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』:2010、日本

コンビニでアルバイト情報誌を立ち読みしていたフリーターの結城理久彦は、須和名祥子という女性から「アルバイトって難しいですか? 相談に乗っていただけませんか。こういう場所って、どう思われます?」と話し掛けられ、携帯サイトの募集詳細を見せられた。その内容 は、時給11万2000円、人文科学的実験のモニター、室内での心理実験で、一日あたりの拘束時間は24時間というものだった。
結城はそのアルバイトに募集し、ハイヤーで実験場所に案内された。車には彼と祥子を含め、8人の実験参加者が乗っていた。山奥の建物 に到着すると、機械音による指示があった。「監視モニターで行動は全て監視される。実験に関する質問には応じられない、荷物を全て ロッカーに預けるように」と、その声は結城たちに告げた。さらに、不穏当かつ非倫理的な行動が発生するので、それでも良いという人 のみが先に進むようにと声は語った。
結城たちが建物の廊下を進むと、豪華なディナーが用意された食堂に辿り着いた。テーブルの上には、10体のインディアン人形が置いて あった。みんなが料理を食べ始めると、参加者の一人・大迫雄大が場を仕切り、自己紹介をすることになった。大迫は研修医で、恋人で あるネイリストの橘若菜と一緒に参加している。真木雪人は「コツコツ働くのがバカらしいから来た」とクールに言い、関水美夜は仏頂面 でウェブデザイナーだと自己紹介した。
岩井は自分の苗字だけ言うと、すぐに「次の人」と促した。祥子は「OLをしていました」と言い、渕佐和子は専業主婦だと自己紹介した 西野宗広はリストラされてから仕事を転々としていることを語り、安東吉也は経営していた建築事務所が倒産したことを話した。その時、 不意に人形が「ここはリトル・ワールド。世界のミニチュアです。ようこそ、暗鬼館へ」と喋り出した。「アシスタントを紹介するよ」と 人形が言うと、ガードと呼ばれる監視ロボットが食堂にやって来た。
スクリーンに映像が写し出され、人形がルールを説明した。「夜10時以降は自分の個室に入っていること。外に出ているところをガードに 見つかると排除される。事件が起きたら、解決すること。解決する人を探偵と呼び、誰でもなることが出来る。解決が正しいかどうかは 多数決で決定し、多数決で決まった犯人は投獄される。実験終了は7日目を迎えるか、生存者が2人になって実験不可能になったと判断 された場合のみ」と人形は語った。
結城は不安を打ち消そうとするが、西野は「この中に通り魔がいる」と言い出す。結城は「念のため、互いに危害を加えないと取り決めを したらどうでしょう」と提案するが、大迫は冷淡に「意味あるかな?」と言う。安東は「そもそも、知らない人間同士が信頼を築けるかと いう実験じゃないのか?」と口にした。プロファイルが得意だという佐和子は、美夜に「子供、いるでしょ?」と問い掛けた。西野から 「世田谷で幼児虐待をして新聞に出た園長に似てる」と言われた佐和子は、激しく動揺しながら「人違いでしょ」と告げた。
大迫と若菜は真木に声を掛け、多数決で自分たちのチームに加わらないかと持ち掛ける。そこへ西野が来て、「安東は奈良の連続殺人犯 、岩井は通り魔殺人犯に似ている」と述べた。安東は廊下の壁に血の跡を見つけた。遊戯室に入った安東は、酒を見つけて喜んだ。彼が アル中だと気付いている結城は、「やめた方がいいんじゃないですか」と説いた。娯楽室には箱があり、そこには様々な物品が入っていた 。書棚にはミステリー小説ばかりが何冊も並んでいた。
就寝時間になり、「個室に入って下さい」というアナウンスが入った。結城が用意された部屋に行くと、ドアには鍵が付いていなかった。 壁を見ると、監視カメラが埋め込まれている。部屋には大きな箱があり、開けると火かき棒が入っていた。火かき棒に添えられたカード には、「撲殺 火かき棒 まだらの紐」と書いてあった。結城は不安になるが、消灯の時間になったため、ベッドに入った。
翌朝、廊下で倒れている西野の死体が発見された。近くには弾丸とカードが置かれていた。発砲の音は誰も聞いていなかったが、佐和子は 「締め切ると何も聞こえないわよ」と言う。結城は「実験は終わりだ、開けてくれ」と喚いて出口ドアを叩くが、ビクともしない。真木は 冷静な態度で、「むしろ始まったってことじゃないか」と言う。安東の提案で、西野の箱を調べることになった。開けると薬のカプセルが 入っており、カードには「毒殺 青酸カリ 緑のカプセルの謎」と記されていた。カプセルは、少しへこんでいた。
西野の死体はガードによって霊安室に運ばれた。棺桶は全部で8つ用意されていた。人形は「解決の時間です。探偵と犯人、死体には ボーナスが付きます。報酬が倍になります」と言う。大迫は、西野から通り魔犯人と疑われていた岩井が犯人だと指摘する。結城は反発し 、「みんなの箱の中を見れば、誰が銃を持っているのか分かります」と口にした。しかし美夜が「誰が何を持っているのか分かったら、 犯人に弱い者から順番に殺される」と反対し、佐和子と若菜も彼女に同意した。
多数決が取られ、岩井が犯人という大迫の意見に4人が賛同した。祥子が棄権したため、岩井はガードによって投獄された。結城が自分の 部屋に戻ると、箱の中身が拳銃に摩り替えられていた。みんなで岩井の箱を見ることになるが、中身は空っぽだった。結城は祥子だけに、 箱の中身が拳銃に摩り替えられていたことを打ち明けた。彼は祥子の部屋に侵入しようとしている佐和子を見つけ、慌てて声を掛けた。 彼女は祥子を疑っており、結城に「こういう所では、生きる意志が一番強い人が最後まで生き残るのよ」と告げた。
佐和子は夜の10時過ぎてからミステリー小説の下巻が読みたくなり、部屋を出て娯楽室へ向かおうとする。だが、廊下で美夜にネイルガン で撃たれ、死亡した。3日目の朝、佐和子の死体が発見された。真木は祥子を犯人と決め付け、「昨日の夜、逃げる女を見た」と言う。 すると大迫は、「俺も見た」と嘘を口にする。彼は自分の凶器であるナイフを構え、祥子に「潔白を証明したければ自分の凶器を見せろ」 と迫った。結城は慌てて割って入り、祥子を擁護した。
安東が制止に入ると、大迫と若菜は彼を怪しんだ。なぜゲームに参加したのかと訊かれた安東は、「半年前、息子がこのゲームに参加した 。君たちを見て確信した。息子の時は、ここで全員が死滅したんだ。そして俺たちも同じ道を辿ろうとしている」と語った。その夜、安東 は結城の部屋を訪れ、順番で見回りをしてはどうかと提案した。昨夜の内にガードの動きを調べ、10分ごとに回って来ることが分かったと いう。「必ず右回りなので、その間に行けばいい」と彼は述べた。
結城は祥子と共に、廊下を巡回することになった。彼は祥子から「貴方をずっと見ていてわかりました。貴方は優しい人」と囁かれた。 交代のために美夜が現れるが、彼女と一緒に回るはずの若菜が来ていなかった。彼女は霊安室で大迫と絡んでおり、交代の時間に気付いて 部屋を後にした。彼女が去った後、霊安室の吊り天井が落下し、大迫が死亡した。4日目の朝になって、彼の死体が発見された。
結城たちが霊安室に集まっていると、廊下にいた真木がリモコンのスイッチを作動させる。結城と安東が追い掛けると、彼は拾っただけだ と釈明し、部屋に入って自分の凶器であるボウガンを構えた。安東が発射された矢を何とかかわすと、そこへ美夜が飛び込んで来た。彼女 は斧で真木を殺害し、自分も命を絶った。真木の箱には「射殺 ボウガン 僧正殺人事件」と書かれたカードが入っていた。
結城は佐和子を殺した犯人が美夜だと気付き、彼女の部屋を訪れて犯行を指摘した。だが、美夜が飲み物に混ぜておいた弛緩剤によって、 彼は体の自由が利かなくなってしまう。結城が必死で廊下に逃げ出すと、美夜はネイルガンを構えて追い掛けて来た。そこへガードが現れ 、部屋に戻るよう警告した。結城は隙を見て部屋に飛び込み、取り残された美夜はガードのマシンガンによって射殺された…。

監督は中田秀夫、原作は米澤穂信『インシテミル』(文藝春秋刊)、脚本は鈴木智、製作はウィリアム・アイアトン&堀義貴&宮崎洋、 エグゼクティブプロデューサーは小岩井宏悦&菅井敦&奥田誠治、Co.エグゼクティブプロデューサーは津嶋敬介&菅沼直樹&村上博保、 プロデューサーは下田淳行&野村敏哉&井上竜太&畠山直人、撮影は林淳一郎、編集は高橋信之、録音は北村峰晴、照明は磯野雅宏、美術 は斎藤岩男、VFXスーパーバイザーは立石勝、 音楽は川井憲次。
主題歌『シンジテミル』作詞:岩里祐穂、作曲:鷲巣詩郎、編曲:CHOKKAKU/鷲巣詩郎、歌:May'n。
出演は藤原竜也、綾瀬はるか、北大路欣也、片平なぎさ、石原さとみ、武田真治、阿部力、平山あや、石井正則、大野拓朗、小島祐輔、 羽田沙織、風間晋之介、桃瀬美咲、池田絢亮、今野圭裕ら。


米澤穂信の推理小説『インシテミル』を基にした作品。
ホリプロ50周年映画として製作されている。そのため、出演者は全てホリプロのタレントで占められている。
結城を藤原竜也、祥子を綾瀬はるか、安東を北大路欣也、渕を片平なぎさ、美夜を石原さとみ、岩井を 武田真治、大迫を阿部力、若菜を平山あや、西野を石井正則、真木を大野拓朗が演じており、人形の声をバナナマンの日村勇紀が担当 している。
監督は『怪談』『L change the WorLd』の中田秀夫。

いきなりハイヤーのシーンから始まっているんだけど、だったら、どこかに集合場所があって、そこで初めて顔合わせをしているはずだ。
それなら乗り込む前に、もしくは乗り込む時点で、全員とは言わないまでも、結城は数人と挨拶を交わしたり、今回のバイトについて話を したりしているんじゃないか。
ハイヤーの中では、ほとんど会話らしい会話が無いのだが、それは不自然に思えてしまう。
だったらハイヤーで全員が運ばれるのではなく、バイトに興味を持った結城が応募して、指定された場所に行ってみると、そこに他の面々 もいる、もしくは後から集まってくるという形にしておいた方がいいんじゃないの。
そうすれば、それが初顔合わせだから、そこで「互いに挨拶し、自己紹介する」という手順を踏むのも自然な流れになる。それと、登場 する役者を一人ずつ観客に対してアピールできるという利点もあるし。

暗鬼館に到着すると「不穏当かつ非倫理的な行動が発生するので、それでも良いという人のみ先にお進みください」というアナウンスが あるが、それに対する参加者のリアクションが全く無い。
それは特に意味の無いアナウンスであるかのように、「先にお進みください」という指示に従って先に進む様子を淡々と描いている。
だけど、その言葉に違和感を抱く奴を一人ぐらい用意すべきでしょ。
軽く受け流す奴がいていいけど、「でも時給がいいから」ということで進んでもいいけど、そこで観客に対しても何の意味も無いかの ようにスルーしてしまったら、「不穏当」かつ「非倫理的」な行動という前フリが、ホントに無意味なものになってしまう。

原作でもそういうのが出て来るらしいんだけど、天井のレールを移動するロボットが登場した時点で、ちょっと笑ってしまう。一応は シリアスな雰囲気で始めているけど、すげえ荒唐無稽だなあと。
SFじゃない世界観の中で、急に近未来的なロボットが登場すると、違和感が強いんだよな。
そりゃあ科学技術が進歩して、様々なロボットが作られるようになったけど、まだ「一般人の身の周りに当たり前のようにロボットが存在 する」という時代じゃないのでね。
ロボットが登場した時点で、もう「ああ、ってことは、何でもアリな映画なのかもね」と思ってしまうんだよな。

最初から不穏な空気を作りすぎていると感じる。
ルール説明の段階では、参加者は何のことやら良く分かっていないはずなのに、明らかに「何か本当にヤバい事件が起きるのではないか」 という不安が強くなっている。まるで、そのゲームの内容に何となく気付いているかのようだ。
だけど、それは先走っていると感じる。その段階では、まだ何も怪しいことは起きていない。
自分たちの中にヤバい奴がいて、そいつがヤバい事件を起こすんじゃないかというような不安を抱いているようにも感じられるのだが、 どうにも不可解だ。

ただし、それはルール説明にも問題があって、「生存者」とか言い出すのは、ちょっと早いなあと。
そこは「何か良く分からないけど
ゲーム的なことが始まるんだな」とだけ思わせておいて、実際に犠牲者が出たところで、ようやくこれがヤバいゲームなのだと気付かせる ぐらいの婉曲的な言い回しによるルール説明にしておいた方がいい。
初日はそんなに不安を煽り立てず、もう少し呑気な感じにして、落差を付けた方がいいように思うんだけどなあ。
これから殺人が起きることは、雰囲気だけでバレバレになっているんだよなあ。
そりゃあ見る前から大半の観客は「殺人が起きる」と知っているだろうけど、それにしても、あけっぴろげすぎないかと。

あと、この映画で示されるルール説明だと、「多数決で勝ち残った奴だけが高い時給を貰えるということを参加者が意識する」というのが 、ちょっと伝わりにくい。
それはルール説明の問題だけじゃない。
その後に参加者が「ってことは、**ってことなのか」という感じで、自分の解釈や感想を口にすることで、観客にどういうことなのか 分かりやすく説明するという手順も足りていないし。

それぞれの部屋に置かれている凶器にはカードが添えられており、そこには道具の名前と殺害方法、さらにミステリー小説のタイトルが 記されている。
だが、その小説が何か事件解決のヒントであったり、ストーリー展開の伏線だったり、そういうところに繋がって行くのか というと、まるで関係が無い。
だったら、そのメモは何のためなのかと。
拳銃や青酸カリなんて、良くある凶器なんだし、わざわざ特定の小説に結び付けている意味が無いでしょ。

最初の殺人が発生した段階で、なぜ「参加者の中の誰かが犯人である」という結論に関しては全員の意見が一致するのか、そこがイマイチ 分からない。
確かに箱の中には武器と殺害方法を示すカードが入っていたが、だからと言って「誰かを殺そう」という気持ちになるのは、自然な感情の 流れとは思えない。
大迫は「西野から通り魔犯人と疑われていた岩井が犯人だ」と指摘するが、西野がそれを言い出したのは、ルール説明の後になってからの ことだ。
ルール説明の段階で「事件が起きたら解決して云々」ということは示されていたのだから、実験の主催者サイドで事件を起こそうとして いるということは、容易に推測できる。

確実に事件を起こさないと実験は成立しないのだから、「たまたま西野が変なことを言い出して、それを恨んだ奴が彼を殺す」という、 「突発的な事件」ではダメなのだ。
事前に計画されていた殺人でなければいけない。
それに、「事件を起こせば報酬がもらえる」ということは、その段階では分かっていなかったのだから、参加者サイドの人間が殺人を犯す 必然性は何も無い。
そう考えると、もうゲーム開始の段階でボロが出ていると言ってもいい。

結城が「みんなの箱の中を見れば、誰が銃を持っているのか分かります」と言った時、「誰が何を持っているのか分かったら、犯人に弱い 者から順番に殺される」と美夜や若菜たちが言い出して凶器を見せ合うことを拒否するのは、かなり不自然に感じる。
だって、誰が銃を持っているのか分かれば、そいつが犯人ってことでしょ。
犯人だと判明すれば、そこか実験が終わるまでは投獄されるわけで、そいつに狙われることは無くなるはずでしょ。
だから、狙われることを心配するのは、意味が分からない。

ガードによって岩井が投獄されるシーンで、全員がものすごく怖がっているんだけど、「そこまでビビることなのかな」と首をかしげて しまう。
ある部屋に監禁されるだけで、殺されたり拷問されたりするわけじゃないんだし。
正直、西野の死体を見つけた時よもり恐怖を煽っている感じだけど、それって演出として変じゃないかなあと。
言い出しっぺの大迫まで、かなりビビってるけどさ。

ミステリー小説の下巻が読みたいというだけで、佐和子がルールを破って部屋を出るというのは、あまりにも不自然な行動だ。
ガードが西野の死体を運んだり、犯人に指定された岩井が投獄されたりする様子を見ているのに、そんな不用意な行動を取るなんて、 どんだけバカなのかと。
しかも、そういう行動を取るのは、その直前に「気を付けなさいよ。「こういう所では、生きる意志が一番強い人が最後まで 生き残るのよ」とか言っていた奴なんだよ。

祥子が大迫から「凶器を見せろ」と要求された時、それを見せないってのは不自然。
っていうか、何も言わずに立ち尽くしている間に結城が割って入るというのは、かなり不自然な御都合主義。
完全ネタバレだが、祥子は主催者サイドの人間なので、凶器が用意されておらず、だから見せられないってことなのか。
だとしたら、脇が甘いよな。むしろ、そこは凶器を見せた方がいいでしょうに。
実際、その事件に関しては、彼女はやってないわけだし。

終盤、残された結城、安東、祥子の3人が凶器を見せ合おうとなった時、それでも祥子が凶器を見せないってのもおかしい。
それ自体がおかしいと言うよりも、彼女は見せなかったのに、すぐに6日目のシーンに移るという展開がおかしい。
安東は彼女の凶器を確認する前に部屋へ戻っちゃうし、結城も凶器を見せるよう促すことはない。
それはシナリオに問題がある。そこは彼女に偽りの凶器を提示させればいいわけで、「凶器を見せないまま次のシーンへ」という不自然な シナリオにしている意味は何なのか。

中盤で美夜が佐和子を殺すシーンを堂々と見せてしまうのは、何の意図があってのことなのかサッパリ分からない。
ミステリーをやる気が無いってことなのか。
あと、殺害の動機も「西野の言葉で佐和子に幼児虐待の疑いを抱いたので怖かった」ということなんだけど、美夜が自分の子供の元へ 帰りたがっているからって、それと「幼児虐待をしていた女が怖いから殺す」というのは、結び付けるには無理がある。
てめえの子供を虐待されて殺される危険性があるわけじゃないんだからさ。

この話って、たぶん「殺人が発生し、互いに犯人ではないかと疑心暗鬼になる」というところにスリルや面白味があるはずなんだけど、 主役である結城がアタフタしたりビビったりしているだけで、「こいつが殺したんじゃないか」と色々な奴に疑念を抱いたり調べようと したりということが全く無いので、そういう面白さが見られない。
っていうか、他の連中にしても、あまり互いを怪しんで云々というのが見られない。
で、「廊下を巡回中に、ガードに見つかってしまうかもしれない」という別の部分でサスペンスを作り出したりする。
いやいや、この作品が描くべきスリルって、そういうことじゃないだろ。
あと、「ルール違反はガードに射殺される」ということになっちゃうと、「この中に犯人がいて、次に自分が殺されるかもしれない」と いうところで怖がらせるはずが、恐怖の対象がボケてしまうでしょ。

あと、吊り天井で人が死んだ時点で、もはや「凶器を使って殺し合い」というルールから完全に外れているでしょ。
その屋敷自体に殺人トラップが仕掛けられているわけで、ってことは、「そのゲームを仕掛けた奴が自分たちを殺そうとしている」という 推測が成り立つように思うんだけど。
そういうことを、誰も言い出さないのね。
祥子と美夜はともかく、結城と安東のどちらかは、そういう推測を立てようよ。
結城に関しては、もう何も考えられないって感じなんだよな。
あと、実際には岩井がリモコンを持っていたので、ってことは彼の凶器がリモコンだったってことか。だとしたら、それは「凶器」の ルールから逸脱しているだろ。

途中で「一般人がネット中継で実験の様子を見ている」というのをバラしているけど、これもマイナスでしかないでしょ。
そんなに簡単に種明かしをして、何のメリットがあるんだろうか。
それと、選ばれた特定の人間ではなく、世界中の誰でも自由に実験の様子を視聴できるようになっているのだとすれば、なぜ参加者は誰も そのことを知らないのか。
特に安東なんかは、息子が死んで調べていたはずで、なぜ実験に参加するまでネット中継されていることを知らないのかと。

あと、実験で生き残った奴を解放したら、そこから情報が漏れるから主催している組織としてはマズいはずでしょ。
っていうか、そんなネット中継を普通にやっているのだとすれば、間違いなく警察が捜査するでしょ。
どうやって商売として成立させているのかと。
他にも、7日間も参加者が同じ服を着ているのが引っ掛かったり、若菜が大きな斧を楽々と振り回したり、弛緩剤を飲ませた結城を追い 掛ける美夜が自分も弛緩剤を飲んでいるかのようにフラフラしていたりと、不可解な点がたくさんある映画だ。

(観賞日:2011年10月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会