『映画版 変な家』:2024、日本

雨宮トオルは仮面で顔を隠して「雨男」と名乗り、変な間取りの家を取り上げる動画を生配信している。しかし最近はマンネリで再生数が停滞しており、担当マネージャーの柳岡は「運営側が心配しているので、ガツンとした動画が欲しい」と要求する。柳岡は引っ越し先を探しており、「理想的な物件があった」と二階建て一軒家の間取り図を見せた。駅が近くて築一年で自分は気に入ったが、妻が「間取りが気にになる」と言っているのだと彼は語った。
間取り図を見ると台所とリビングの間に変な空間があり、不動産屋に問い合わせても分からなかったと柳岡は語る。彼は雨宮に、設計士の栗原に聞いてほしいと頼む。雨宮から間取り図を見せられた栗原は、自分なら絶対に買わないと告げた。彼が1階の空間について「何かのために必要だったから作られた」と言うと、雨宮は「死体を塗り込めたとか?」と推測を口にした。栗原は2階の子供部屋にも着目し、「窓が無く二重扉で、トイレは備え付け。刑務所の独房のようだ」と評した。
栗原が「住人は子供を管理下に置きたかったのではないか」と語ると、雨宮は監禁や児童虐待の可能性を口にした。自宅に戻った雨宮は、1階と2階の間取り図を重ねると謎の空間が子供部屋の角と重なることに気付いた。彼は栗原のアパートを訪れ、そのことを説明した。栗原は謎の空間が隠し通路になることを指摘し、「1つのストーリーが見えて来ませんか」と言う。彼は「住人の若夫婦が客を招き、客が浴室に入ったら子供に合図する。子供は隠し通路を使って浴室へ行き、客を殺す」というストーリーを語り、「つまり、この家は殺しのために作られた家だということです」と述べた。
栗原は雨宮に、死体をバラバラにして運び出すためのルートもあると説明した。雨宮は柳岡から電話を受け、「あの家を買うのはやめた」と言われる。近所の雑木林でバラバラ遺体が発見され、ニュースで大きく報じられたのだ。遺体の左手首は見つかっておらず、雨宮は本当に殺人のための家だったのかと震えた。大きなネタになると興奮する雨宮だが、栗原は「これ以上の詮索はやめましょう」と言う。しかし雨宮は家とバラバラ殺人事件の関係について動画で取り上げ、再生数は大幅に上昇した。
その家について心当たりがあるというメールが届いたので、雨宮は送り主である宮江柚希を家に招いた。柚希は雨宮に、その家の住人に夫が殺されたかもしれないと告げた。柚希は3年前に恭一と結婚して埼玉県で暮らしていたこと、恭一が行方不明になった数ヶ月後に遺体で発見されたこと、左手首が無かったことを説明した。警察の捜査は難航し、打ち切りになったことも彼女は語る。柚希は力を貸してほしいと雨宮に頼み、近所で変な家を見つけたといって間取り図を渡した。
雨宮が間取り図を見ると、謎の空間と子供部屋が栗原に渡された物件と共通していた。栗原は雨宮から間取り図を見せられ、2階の三角の部屋は後から作られたのだろうと指摘した。さらに彼は、1階の何も無いスペースに着目した。彼はスペースの下に地下室があり、死体を捨てるために使われていたのだと語った。帰宅した雨宮は柳岡に埼玉の物件のことを語り、「絶対にバズる」と言われる。柳岡が去った後、雨宮が柚希の動画を再生していると画面が乱れて停電になった。彼は着物の女に襲われ、意識を失った。
雨宮は訪ねて来た栗原に起こされ、マンションの外で柳岡が白目を剥いて倒れていたことを知らされた。柳岡は「マジもんじゃねえかよ」と怖がり、マンションを後にした。雨宮は栗原から「これ以上は付き合えない」と言われ、自分だけで続けることを宣言した。彼は柚希を伴い、柳岡が購入予定だった物件に忍び込んで動画を撮影した。雨宮が子供部屋に行くと、床には大量の傷が付いていた。部屋の隅にある棚を移動させると、1階に降りる穴が見つかった。
雨宮は栗原から電話を受け、「宮江恭一について調べたが結婚歴は無い」と聞かされる。彼は自分を襲ったのが柚希だと確信し、慌てて逃げ出した。雨宮は近所に住む主婦の北川から話を聞き、その家に住んでいた片淵綾乃の妹が柚希だと知った。柚希は雨宮のマンションに来て嘘を謝罪し、「本当のことを言ったら気味悪がって会ってもらえないと思った」と釈明した。柚希は両親と姉の4人で暮らしていたが、中学時代に父が病死した。すぐ後に姉がいなくなり、母の喜江は「もうウチの子じゃなくなった」と説明した。それから柚希と喜江を見張るように、親戚の森垣清次が顔を出すようになった。
半年ほど前に、柚希は綾乃から連絡を受けた。綾乃は片淵慶太という男と結婚し、もうすぐ2歳になる浩人を設けていた。どうして連絡してくれなかったのかと柚希が訪ねると、綾乃を待っている車が大きくクラクションを鳴らした。すると綾乃は怯えた様子で「そろそろ行かないと」と言い、柚希にメモを握らせて車で去った。そのメモには、東京と埼玉の家の住所が記されていた。綾乃は結婚して4年ほど片淵の本家で過ごし、4年ほど前に埼玉の家を建てた。その後、東京に家を建て、そちらに引っ越していた。
雨宮は北川から、片淵家か引っ越す前、夜中に窓越しに立つ子供らしき人影を見たことを聞いていた。その時に北川が撮影した写真を確認した雨宮は、その子供が自分を襲った人物と同じ仮面を被っていることを知った。彼は栗原に写真を見せ、浩人の他にも小学生ぐらいの子供がいたのだと話した。すると栗原は、謎だった部分が解明できると述べた。栗原は片淵夫妻が埼玉の家で少年を監禁しており、浩人が生まれたので彼のために三角部屋を作ったのだと説明した。
柚希は雨宮と栗原に、本家へ行けば姉の行方が分かるかもしれないと話す。彼女は本家が不気味な場所だと話し、間取りを説明した。玄関から真っ直ぐに廊下があり、屋敷を左右半分に分けている。廊下の突き当たりには大きな仏壇があり、4つの和室には窓が無い。結婚当初に暮らしていた母の喜江なら、何か知っているかもしれないと柚希は言い出した。彼女は雨宮と栗原を伴い、喜江を訪ねた。喜江は何か知っている様子だが、口は重かった。
柚希が「本家へ行く」と告げると、喜江は「やめなさい」と声を荒らげた。彼女は夫が事故死ではなく、呪われた片淵家に狂わされたのだと述べた。柚希が自分だけで本家を訪ねようとすると、雨宮は同行を申し出た。栗原は喜江の元へ戻り、隠してある仮面と幻覚剤の存在を指摘して真実を明かすよう詰め寄った。柚希は雨宮を連れて本家の屋敷に上がり込み、昔から開かずの襖があること、この家に来てから失踪した人物がいるという噂があることを語った。
屋敷に本家の当主である重治と妻の文乃、清次、綾乃と慶太が現れ、雨宮と柚希は対峙した。綾乃は柚希から今までどこにいたのかと質問され、「ずっと本家にいたわよ」と機械のように繰り返した。「子供はどうしたの?」と柚希が訊くと、彼女は「子供?」と不思議そうに言う。慶太は以前に会っているにも関わらず、「初めまして」と柚希に挨拶した。重治は雨宮と柚希に、ゆっくりして行きなさいと告げた。いつの間にか眠り込んだ柚希が目を覚ますと栗原が来ており、薬を盛られたのだろうと述べた。
栗原は雨宮と柚希に、喜江から聞き出した情報を伝えた。明治時代、高島潮という女中が片淵家の当主に可愛がられ、身籠って妾になった。しかし本妻の怒りを買って酷い虐待を受け、彼女は流産した。潮は精神を病み、左手首を切って自殺した。その後、本妻が産んだ子供に左手首は無く、身内は次々に亡くなった。潮の呪いだと確信した当主は、霊媒師に相談した。霊媒師は潮の霊を祓うため、左手供養の儀式を行うよう当主に命じた。左手供養の儀式では一家の血を引き、産まれてから一度も日の光を浴びずに育った男児が必要となる。その男児が10歳になった時、人間を殺させる。そして死体の左手首を潮の霊に捧げ、それを3年続けて行うのだ…。

監督は石川淳一、原作は雨穴『変な家』(飛鳥新社)、脚本は丑尾健太郎、製作は市川南、共同製作は上田太地&山本大樹&土井尚久&梅景匡之&奥村景二&齊藤貴&森下正樹、エグゼクティブ・プロデューサーは臼井央、企画・プロデュースは遠藤学、プロデューサーは西野智也&小林宙、ラインプロデューサーは武石宏登、撮影は柳田裕男、美術監督は相馬直樹、照明は宮尾康史、録音は藤丸和徳、美術は秦知奈美、編集は上野聡一、VFXスーパーバイザーは廣田隼也、音楽は小島裕規 “Yaffle”、主題歌はアイナ・ジ・エンド『frail』。
出演は間宮祥太朗、佐藤二朗、川栄李奈、石坂浩二、斉藤由貴、嶋政伸、根岸季衣、瀧本美織、長田成哉、DJ松永(Creepy Nuts)、しゅはまはるみ、長井短、森廉、浅井陽人、宮部のぞみ、萩原護、黒石波琉、鈴木惟冬、阿部岳明、井上栞那、神尾優典、網谷翔陽、垣内健吾、平井夏貴、水原睦実、白川朝海、大門与作、野田孝之輔、生田俊平、金目匠叶、佐々木修二、荒井しき、布施伸吾、川角圭弘、ちゃびまち、市川貴之、星耕介、ダンディ由輝、聖隆樹、小原輝、佐野陽治朗、山田真由子、花岡咲、真柳美苗、遠藤龍希、若尾颯太、瀬野一至、吉本隆久、島元朱理、松上順也、高嶋宏一郎、高野ひろき、Volo武田、俵広樹ら。


ウェブライターの雨穴による同名のミステリー小説を基にした作品。
最初はウェブメディアの記事で、そこからYouTubeの動画に繋がり、それが注目を集めるようになったので小説が発売されたという流れである。
監督は『エイプリルフールズ』『ミックス。』の石川淳一。
脚本は『七つの会議』『大名倒産』の丑尾健太郎。
雨宮を間宮祥太朗、栗原を佐藤二朗、柚希を川栄李奈、重治を石坂浩二、喜江を斉藤由貴、森垣を嶋政伸、文乃を根岸季衣、綾乃を瀧本美織、慶太を長田成哉、柳岡をDJ松永(Creepy Nuts)、北川をしゅはまはるみ、高間を長井短が演じている。

まず「雨宮が何者なのか」という初期設定の説明が、まるで足りていない。雨穴の動画を見ていた人なら脳内補完も余裕だろうが、この映画から入る一言さんに対しては、あまりにも不親切なレベルの紹介パートしか無い。
雨宮が変な家を取り上げる配信者ってことは分かるけど、どういう方向性なのかは良く分からない。
証拠を集めて結論を出しているのか、ただのデタラメな考察なのか。「これが答えだ」と明確に出しているのか、それとも「答えはそっちで考えて」と謎のままにして視聴者に下駄を預けているのか。
その辺り、「いつもの動画はこんな感じの内容です」という、チュートリアル的なパートも無いんだよね。

栗原の「ここは殺人のための家」とか、「夫婦が子供を監禁して合図を送り、隠し通路を使って客を殺害させていた」という説明は、根拠に乏しい推察に過ぎない。極端に言っちゃうと、ただの妄想だ。
にも関わらず、なぜか雨宮は本気で怖がっている。
まだ「近所でバラバラ遺体が発見された」というニュースを知ってから「もしかすると」と怖がるなら分かるけど、そうじゃなくて最初からビビっているからね。
「今までに同じようなケースを動画で取り上げていた」という経験でもあるならともかく、そんなのは全く分からないし。

雨宮が「その家に心当たりがある」というメールを受けて、いきなり柚希を家に招き入れるのは、あまりにも不用心だろ。
なぜ「最初は外で会い、詳しい話を聞く」という手順を踏まず、いきなり自宅に招いて動画を回すのか。
いきなり東京の物件に忍び込み、動画を撮影するという犯罪行為に出るのは不可解。
その前に例えば「近所に聞き込みをする」とか、やり方は色々とあるだろうに。
せめて「そんなことも分からないバカだから痛い目を見る」という扱いならともかく、そういうことでもないし。

「リアルに怖い事件があった」という方向性で考察して来たのか、それとも「怪奇現象があった」というオカルト路線だったのか、その辺りも良く分からない。
今回の一件に関しては、最初は「その家が連続殺人に使われていた」という方向で進めている。しかし「動画が乱れて停電になり、着物の女に襲われる」という出来事が発生すると、いきなりオカルト路線になる。
その現象に関しては、「連続殺人犯が住んでいた家がある」というだけでは説明が付かない。
ところが怪奇現象が起きた後も、雨宮がそれを気にする様子は無い。そこまでの「殺人犯が云々」という考察をひとまず横に置いて、改めて推理を組み立てようという意識はゼロだ。

柚希の行動には、色々と不自然な点が多い。
例えば「本当のことを言ったら会ってもらえないと思った」という理由で、「住人に自分の夫が殺されたかも」と宮江恭一の妻を詐称するのが変だ。
そして喜江の行動も、それに負けず劣らず変だ。「雨宮を本家から遠ざけたい」という目的があったにせよ、部屋に忍び込み、仮面や幻覚剤を使って脅かすのは「なんでやねん」と言いたくなる。
脅かすための方法が、無駄にケレン味たっぷりなのよ。むしろ動画でバズることを考えると、逆効果じゃないかと。
あと少年と同じ仮面を使ったら、余計に好奇心を刺激することになるとは思わなかったのか。

片淵本家の話が出て来ると、完全に「横溝正史ミステリーのバッタモン」になる。
もはや「間取りが云々」なんて、どうだって良くなる。あえて「単なる」と頭に付けるが、単なる「田舎の一族の呪われた因習を巡る話」になる。
そういう話をやりたいのなら、最初から「変な間取り」とか要らないでしょ。そういうのを全てスッ飛ばしても、何の支障も無く成立するでしょ。
「変な間取りになっている理由の謎を解く」という要素が、後半に描かれる「忌まわしき片淵本家」の話と上手く結び付いているとは到底言い難い。

片淵本家が舞台になった後も、「雨宮たちが奇妙な間取りに気付いて調査する」という作業は行われる。
しかし、栗原が「喜江から聞いた話」として片淵の一族に関する情報を詳しく説明してくれるので、間取りを調べる意味は乏しい。
しかも、栗原が教えた情報を上回るような「驚くべき真相」は、雨宮たちの調査からは何も出て来ない。せいぜい「地下室に仮面の少年がいる」という程度。
そんで片淵サイドから勝手に追加情報を教えてくれるから、「調査によって明らかになる新事実」は皆無に等しいんだよね。

仮面の連中が何人も出て来るクライマックスは、本来なら「顔が見えないから怖い」と感じなきゃならないはず。だけど実際には不気味さも恐怖も全く感じられず、表情の分かる清次だけが恐ろしさを放つという体たらく。
それと、事件が明るみに出て報道された後、雨宮が綾乃の告白動画を撮影するのは完全に蛇足。
まだ明らかになっていない事実を説明するための手順だから、本来なら絶対に必要なはずだ。でも、そこで明かされる真相なんて、どうでも良くなっちゃってるんだよね。
ラストシーンで「まだ事件は終わっていなかった」的な描写を入れるのは、ホラー映画としては定番だけど、これも蛇足になっちゃってるしなあ。

(観賞日:2025年5月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会