『宇宙怪獣ガメラ』:1980、日本

大宇宙で略奪を繰り返す宇宙海賊船ザノン号は、次の標的を地球と定めた。その地球でペットショップ「モントウトウ」を営むキララは 異変を感じ、マツダの販売店で働くマーシャ、福田幼稚園で保母をしているミータンに連絡を取る。3人は平和星M88星から派遣された 宇宙人だった。キララが店の車に乗り込んで出発すると、それは光の塊となった。それは彼女たちのUFOだった。マーシャとミータンは 宇宙人の姿に変身し、UFOに合流した。だが、2人は何も異変を感じなかったという。
その時、「地球に派遣されている平和星M88星の宇宙人に告ぐ」という声が聞こえてきた。それは宇宙海賊ザノン号のキャプテンが 発した声だった。キララは「危険だわ、元の姿に変身しましょ」と言い、3人は地球人の格好に戻る。キャプテンは「貴様たちがこの惑星 にも派遣されていることは分かっている。この宇宙海賊ザノン号に抵抗することは許さん。余計な手出しをすると、地球人を抹殺する」と 脅しを掛ける。キララは「私たちには武力も無いし、何か役に立つものを探すしか無いのね」と仲間たちに告げた。
宇宙海賊の配下であるギルゲが地球に降り立った。彼女は地球上に存在する邪魔者を抹殺する使命をキャプテンから命じられ、地球人の姿 に変身した。翌朝、木下圭一という少年は、エレクトーンの練習をしてから外出した。彼は友人たちに「お前の好きなガメラのことが 載ってるぞ」と言われ、週刊少年ジャンプの漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を見せられた。友人に「これから亀有公園前派出所へ 行って、このお巡りさんに会ってみないか」と誘われて行ってみると、両津勘吉そっくりの警官がいた。
圭一はモントウトウへ行き、亀を眺めた。するとキララは「そんなに好きなら、一匹持っていきなさい」とタダでプレゼントすることに した。圭一は一匹の亀を手に取り、「こいつは僕と心で話が出来るんだよ」と言う。火山が噴火し、人類は調査団を送り込んだ。しかし 地上から発射された光線でヘリは切断され、爆発した。自衛隊の戦闘機が緊急出動するが、光線によって壊滅させられた。
圭一は自作の歌『ガメラのマーチ』をエレクトーンで演奏し、亀に歌を聴かせる。そこへ来た母は、「本当に亀が好きなら、水槽の中じゃ なく大自然に放してやりなさい」と優しく促す。圭一は川へ行き、亀を放した。地球に超音波怪獣ギャオスが現れ、暴れ始めた。人類が 所有する武器は全く効かず、ギャオスが飛来した名古屋の人々は絶望の淵に叩き落とされる。合流場所へ急ぐマーシャは渋滞に巻き込まれ 、宇宙人の姿に変身する。それをキャッチしたギルゲは、キャプテンに攻撃を要請した。
キララとミータンが車で待っていると、そこへマーシャがやって来た。その時、宇宙からレーザーが発射され、キララはマーシャに回避 行動を指示した。キララは元の姿に戻るよう告げ、「私たちが宇宙人になると、体の分子構造が変化して、敵のレーダートレーサーに キャッチされるのよ」と注意した。彼女は「ギャオスを私たちのUFOで何とかしなきゃいけないと思ったけど、返って被害を増やして しまうわ」と歯痒そうに漏らした。
翌日、臨時休業のモントウトウを訪れた圭一は、裏から中に入る。するとM88星の3人が集まっていた。キララは仲間たちに圭一を紹介 した。圭一はキララに、母に言われて亀を川へ逃がしたことを話す。キララは「圭一君はいいことをしたのよ」と口にした。部屋の中に エレクトーンがあったので、圭一は自作の『ガメラのマーチ』を演奏して歌った。彼は「あの亀がガメラにならないかなって思ってたんだ 。地球の大異変を救ってくれるのはガメラしかいないんだよ」と言う。
圭一の言葉を聞いたキララは仲間2人に、「私たちは敵のレーザートレーサーに狙われて殺されるかもしれない。でも、この地球のために 命を捨てましょ」と言う。外に出た3人は変身し、念力でガメラを呼ぼうとする。すぐにレーザーで攻撃されたため、慌てて回避し、人間 の姿に戻った。直後、ガメラが日本に出現し、それを見た圭一は「僕の亀がガメラになったんだ。祈りが通じたんだ」と喜ぶ。その様子を 目撃したギルゲは、圭一に声を掛ける。ガメラの存在を知った彼女は、圭一に「詳しく話を聞かせて」と持ち掛けた。
ガメラは名古屋でギャオスと戦うが、惜しくも逃げられた。翌日、ギルゲは圭一の小学校に出向き、「ガメラ、負けたわよ。今晩ギャオス が出ても、きっとガメラは負けるわね」と言う。しかし、ガメラはギャオスを倒した。ギルゲはキャプテンから「ガメラとは何者だ?」と 問われ、「圭一という少年に聞いたのですがよく分かりません」と答えた。キャプテンは「良く調べるのだ。次の攻撃は海からやる」と 言い、圭一を利用してキララたちをおびき寄せるようギルゲに命じた。
圭一は「ガメラが海辺で大活躍する夢を見たんだ」と母に言うが、信じてもらえない。圭一はモントウトウへ行き、夢のことをキララに 語った。キララは彼の話を信じ、「次は海が襲われるのね」と言う。店を出た圭一はギルゲと遭遇し、夢の話をする。圭一と話したギルゲ は、キララがM88星人ではないかと疑いを抱いた。彼女は圭一に「海でガメラが大活躍する様子を見たくない?」と言い、海へ瞬間移動 する。そして「私は宇宙人なの。地球の平和を守るのが私の仕事なの」と述べた。
海から深海怪獣ジグラが出現すると、呼応するようにガメラが飛来し、退治して去った。M88星人が誰も海岸に現れないため、ギルゲは 「なぜだ」と眉間に皺を寄せる。圭一が「もう瞬間テレポートは気持ち悪いから嫌だ。普通の乗り物で帰る」と言うので、ギルゲは「別の 海岸に怪獣が現れるのよ。見に行きましょう」と強く引き留めようとする。その態度に不審を抱いた圭一は、「お姉さん、悪い方の宇宙人 だね」と気付いて走り去る。
圭一がギルゲに追われる様子をモニターで確認したキララは、自分の部屋に彼をテレポートさせた。キララは圭一に、自分たちが宇宙人で あることを明かす。彼女は「夜は車の中に住んでいるの」と言い、圭一に見せることにした。一方、ギルゲはキャプテンから「失敗の責任 は取ってもらうぞ」と言われ、「もう一度、チャンスを下さい」と頼む。キャプテンは「よし、何としてもガメラを倒すのだ。バイラスを 出せ」と命じた。水中怪獣バイラスが出現するが、またしてもガメラに倒された。
ギルゲはキャプテンに「もう弁解は許さんぞ」と言われ、「攻撃目標を変えさせてください。ガメラを操っている宇宙人どもを抹殺すれば 良いのです。もう確かめている暇はありません。疑わしい連中を消します」と述べた。その晩、圭一はガメラが宇宙を飛ぶ夢を見る。同じ 夜、ギルゲはM88星人の本拠地と思われる車を爆破する。翌朝、圭一はモントウトウへ行くが、閉まっているので駐車場に向かった。 そこで彼は、車が無くなっていることを知った。
圭一は駐車場に置かれているバッグの中で小型化しているキララたちを見つけ、車が消えていることを教えた。透明バリヤーでバッグだけ は守られていたのだ。その中だけは、レーザートレーサーにキャッチされない。キララは圭一に、バッグに入るので運んでほしいと頼んだ 。キララたちを抹殺したと思い込んだギルゲは大阪へ移動し、キャプテンの命令で大魔獣ジャイガーを出現させる。しかしガメラの攻撃を 受けて、すぐに退治されてしまった。
ギルゲはキャプテンに「M88星の宇宙人は死んでおらんではないか。お前を処刑する」と言われ、「もう一度だけ、チャンスを与えて 下さい。考えがあるのです。ガメラの脳波をコントロールして、こちらの命令通りに動かすのです」と弁明した。キャプテンはガメラに、 コントロールマシーンを取り付けた。ギルゲの「地球を破壊せよ」という指令を受けたガメラは、地球で激しく暴れ始めた。
キララはコントロールマシーンを見つけ、自身が爆発物となって破壊することを決意した。彼女は宇宙人の姿に戻り、ガメラに接近した。 宇宙海賊の宇宙船は、キララを狙ってレーザーが発射する。キララが回避してレーザーをコントロールマシーンに命中させたため、ガメラ は正気に戻った。公園で喜ぶキララや圭一たちに、ギルゲが近付いた。彼女はキララを光線銃で狙うが、戦いの末に敗れた。
キララはM88星の掟に従ってギルゲを殺さず、奪った銃を捨てた。ギルゲは銃を取ってキララ狙うが、ためらった末に自ら死を選ぼうと する。慌てて制止に入ったキララたちに、彼女は「帰れば処刑されるのよ」とうなだれた。一方、ガメラは宇宙に向かい、宇宙海賊が怪獣 を飼育している惑星へと赴いた。ガメラは大悪獣ギロンと戦い、勝利を収める。ガメラは地球へ戻り、冷凍怪獣バルゴンと戦う…。

監督は湯浅憲明、脚本は高橋二三、企画は徳山雅也、製作は大葉博一、プロデューサーは徳山雅也&篠原茂、撮影は喜多崎晃、録音は飛田喜美雄、照明は島田忠昭、美術は横島恒雄、編集は田賀保、助監督は村石宏實、 擬闘は松尾悟(グループ十二騎)、劇画は関田裕治、視覚効果は石田徹、効果はP・A・G&赤塚不二夫&藤田信夫、音楽は菊池峻輔。
主題歌“愛は未来へ…”唄:マッハ文朱、作詞:やま ひさし、作曲:菊池俊輔。
出演はマッハ文朱、小島八重子(現・やや)、小松蓉子、工藤啓子、前田晃一、高田敏江、林博二、豊隅哲明、小林英樹、池田真、 飛田喜美雄、桂小益(9代目桂文楽)ら。


大映が1971年11月29日に破産し、それに伴ってガメラシリーズも打ち切りとなった。
1974年になって徳間書店が経営再建に動き、傘下の映画製作子会社とした。
1977年に入り、徳間書店は大映を大映映画撮影所、大映映画京都撮影所、大映配給、大映映像という4つの子会社に分割した。
この内の大映配給が約9年ぶり復活させたシリーズ第8作が、この映画である。
キララをマッハ文朱、マーシャを小島八重子、ミータンを小松蓉子、ギルゲを工藤啓子、圭一を前田晃一、圭一の母を高田敏江が演じて いる。
小島八重子は後に「やや」という芸名になり、『夜霧のハウスマヌカン』という歌をヒットさせる。

1978年頃、第三次怪獣ブームが巻き起こった。
たぶん『コロコロコミック』に掲載された内山まもるの漫画「ザ・ウルトラマン」シリーズなどが火付け役だと思われる。
かたおか徹治が『コロコロコミック』でウルトラ兄弟の漫画を連載したり、テレビでウルトラシリーズが再放送されたり、アニメ『ザ・ ウルトラマン』が始まったり、特撮番組『メガロマン』が登場したりした。
ポピーからソフトビニール人形の「キングザウルス」シリーズが発売されたり、朝日ソノラマが雑誌『宇宙船』の発行を開始したりした。
この第三次怪獣ブームは、1981年辺りで消滅する。

そんなブームの中で、大映配給はガメラを復活させた。
しかし予算は低く抑えられ、特撮シーンの大半は過去のシリーズからフィルムを流用することを前提として企画が進められた。
劇中でガメラが怪獣と戦うシーンは、全て過去作品の映像である。
それどころか、調査団のヘリが光線で爆発されるシーン、戦闘機が壊滅させられるシーン、記者が乗った車が光線で真ん中から切断される シーン、ガメラにコントロール・マシーンを取り付けるシーンなども、全て過去作品の映像だ(前の3つはギャオス、4つ目は バイラス)。

映画が始まると、これが映画初主演となったマッハ文朱の歌う主題歌が流れてくる。
タイトルは『愛は未来へ…』だが、歌詞は「♪戦えガメラ、火を吐けガメラ、愛する者のために行け」と、思い切りガメラの応援歌で、 しかも曲調はマーチ。
タイトルと歌詞が全く合ってない。
あと、劇中では圭一がそれを自作の『ガメラのマーチ』として歌うシーンが何度も出て来るが、これが疎ましいなあ。

本編が始まると、パロディー(っていうか単なる模倣っていうか)を色々と盛り込んでいる。
宇宙船は『スター・ウォーズ』のスターデストロイヤーにそっくりだし、こち亀の両津巡査に似ている桂小益(9代目桂文楽)も登場 する。
だけどパロディーの多用ってのは、ガメラシリーズのテイストから外れてるような気もするんだよなあ。
あと、主な観客層であろう小学生の子供たちに、そういうノリって伝わるんだろうか。

圭一がガメラが宇宙を飛ぶ夢を見るシーンでは、急に宇宙戦艦ヤマトか現れる。
何しろアニメなので、そこだけ完全に別物になっていて、「ガメラがヤマトの映画を見ている」という感じの映像になっている。
圭一が夢を見る2度目のシーンでは銀河鉄道999が登場するが、それも同様だ。
そしてヤマトにしろ銀河鉄道999にしろ、映画の展開には何の関係も無く、ただ通り過ぎていくだけだ。

キララが異変をキャッチし、仲間たちに異変を伝えた後、最初に変身して空を飛ぶのはマーシャで、次がミータン。
キララは車に乗り込み、それが光の塊になって空を飛び、そこに3人が合流するという形。
いやいや、そこは最初に変身して空を飛ぶのをキララにすべきでしょ。
っていうか、何かミッションのために集まるんじゃなくて、異変を感じたから連絡を取っただけなのかよ。
だったら、わざわざ変身して宇宙船に集まる必要性なんて無いんじゃないの。普通に人間の姿で会えばいいでしょ。電話で話してもいいし。

最初にマーシャとミータンが変身する時は、一瞬でコスチューム姿になっている。しかし元の姿に戻る時は、ダンスの振り付けみたいな 変身ポーズを取っている。
その変身ポーズ、その後、何度も登場する。
何しろ、劇中では「変身して、元の姿に戻って」というシーンが何度も出て来るのだ。
変身ホーズなんて、最初と最後の2度で充分だよ。
っていうか、変身するのも、2回か3回ぐらいでいいし。
そう考えると、変身したら必ずレーザーでキャッチされるという設定自体が邪魔なんだよな。

あと、キャプテンの声が聞こえた時にキララは「危険だわ、元の姿に変身しましょ」と言うが、どういうことなのか良く分からない。
大体、そんなに簡単に元の姿に戻るなら、そこで変身する意味って無いでしょ。
で、彼女たちは「私たちには武力も無いし、何か役に立つものを探すしか無いのね」と言うのだが、じゃあ何のために派遣されているん だよ。地球の平和を守るためじゃないのかよ。「そうよ、それ(何か役に立つものを探すこと)が私たちに与えられた使命だからね」って 、なんだそりゃ。
っていうか、武力も無いような奴らなら、わざわざ宇宙海賊が「手出しするな」と警告する意味も無いでしょ。放っておけばいい。
それと、どうせ宇宙海賊は地球を荒らすんでしょ。だったら「余計な手出しをすると、地球人を抹殺する」という脅しの意味も無い。
手出しをしなくても、やっぱり地球人を殺すんだからさ。

それがいいのか悪いのかは置いておくとして、ガメラは子供の味方という設定だけど、ここでは明らかに人類のために戦っているよね。
捨てた亀ががガメラになったというのは圭一の思い込みだし、もしそうだとしてもガメラは圭一のために戦っているわけではない。
あと、キララたちの存在がただの邪魔者にしかなっていない。
彼女たちが戦うわけでもないし、ガメラを導いたり手助けしたりするわけでもない。
そこをバッサリと削除して、それこそ「圭一の逃がした亀が、彼の祈りでガメラになった」という設定にでもした方が、話としては スッキリする。

この映画でキララたちが登場している意味って、実は皆無だよな。
ギルゲは「ガメラを操っている宇宙人どもを抹殺すれば良いのです」と言っているけど、キララたちがガメラを操っているというのは彼女 の勝手な解釈だし。
もしもギルゲが言うようにキララたちがガメラを操っているのだとすれば、それは「ガメラは子供の味方」というところから、ますます 外れちゃう。
ガメラは子供たちのために戦っているわけじゃなくて、単にキララたちの指示で動いているというだけになってしまう。

終盤、宇宙海賊の宇宙船が地球を攻撃しようと迫って来る中、ガメラは宇宙へと飛び立つ。
すると宇宙船は何もせずにガメラの接近を待ち受け、そして突っ込まれて爆発する。
いやいや、ガメラが近付いているのが分からなかったのかよ。なんで攻撃しないんだよ。
無抵抗でガメラの特攻を受け入れるって、どういうつもりなんだよ。
あと、ガメラも最初に火炎放射か何かで攻撃して、それでもダメなら特攻という方法を取れよ。
いきなりカミカゼ作戦って、どういうことなんだよ。バカなのか。

(観賞日:2012年1月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会