『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトル・スター・ウォーズ)』:1985、日本

ある星の城が反乱軍の攻撃を受け、部下たちから脱出を促された大統領は残って一緒に戦おうとする。部下たちは強引に大統領をロケットに乗せて、星から脱出させた。スネ夫はプラモデルを使ってビデオで宇宙大戦争を撮ろうと考え、のび太とジャイアンも参加した。だが、のび太はミスを犯してジャイアンの怒りを買い、すぐに追い払われた。のび太は家に帰り、ドラえもんに泣き付いた。ドラえもんは一緒にビデオを撮ることを快諾するが、人手が足りなかった。
ドラえもんとのび太は出木杉を誘おうとするが、ジャイアンとスネ夫に先を越された。そこで彼らは、しずかを誘うことにした。しずかはビデオ撮影に前向きな態度を示すが、宇宙大戦争と聞いて「つまんない」と口にする。彼女は自分の人形を使って、夢一杯の人形アニメを作りたいと告げた。のび太は嫌がるが、ドラえもんが説得すると渋々ながら受け入れた。3人は裏山へ移動し、リリカという人形を主役にしたファンタジーの撮影を開始した。のび太は全く乗り気ではなく、ずっと愚痴ばかりこぼしていた。
ドラえもんはリリカとウサギのヌイグルミにロボッターを付けて動かし、ビデオカメラを回す。しずかが悪者を出したいと言うと、のび太はロボットを使おうと提案する。しずかが了承したので、のび太は家へ取りに向かう。スネ夫の作品が気になって庭を密かに覗き込んだ彼は、爆薬を使った本格的なミニチュア撮影に衝撃を受けた。プラモデルのロボットを持って裏山に戻ったのび太はウサギの回収に向かうが、どこにも見当たらなかった。命令無して勝手に動くはずが無いので、ドラえもんは首をかしげた。
ドラえもんたちは手分けして裏山を捜索し、のび太は小さなロケットを発見した。一方、ジャイアンたちは撮影した映像を確認し、出木杉は何かが画面を横切ったことに気付いた。スネ夫がスロー再生すると、それはウサギで、小人のような何かを背中に乗せていた。ウサギを見つけられずにいたドラえもんたちは、日が暮れたので裏山を後にした。のび太のママは、庭に落ちていたウサギを発見した。のび太はしずかに電話を掛け、ウサギが見つかったことを知らせた。
夜、ドラえもんとのび太は部屋に侵入していた小人と遭遇した。小人はパピと名乗り、ピリカ星から来たことを説明する。パピはウサギに乗り、野比家の庭まで来たのだった。翌朝、しずかはのび太からパピのことを聞き、人形用のドールハウスを持って行く。パピはしずかにドールハウスで暮らすよう勧められるが、すぐに立ち去ろうとする。彼が「恐ろしい敵がいて、いずれ自分を追って地球に来るから迷惑が掛かる」と話すと、ドラえもんたちはドールハウスで身を隠すよう説得した。
パピがドールハウスに入ると、しずかは「小さい頃、人形の家に住めたらと良く空想した」と言い出した。ドラえもんはスモールライトを出し、のび太&しずかと一緒に小さくなった。3人はドールハウスに入り、ドラえもんは実際に暮らせるように改造した。一方、撮影を続けていたジャイアンたちの元にクジラの形をした小さな宇宙船が飛来し、熱線で攻撃を仕掛けた。ジャイアンが大きな石を投げ付けると、宇宙船は煙を吐いて飛び去った。ジャイアンとスネ夫はのび太の嫌がらせと決め付け、怒って野比家へ向かった。
しずかはピアノのレッスンがあるため、野比家を後にした。入れ違いで乗り込んで来たジャイアンとスネ夫は、のび太に怒りをぶつけた。「クジラみたいなラジコン」という言葉を聞いたパピは、自分を追って来たPCIA(ピシア)の戦闘艦だと言う。ピシアは独裁者のギルモア将軍が作った情報機関で、反対する者をあらゆる手段で消していた。パピは自分がピリカ星の大統領だと打ち明け、反乱を防げず政府軍は全滅したと語る。事情を聞いたドラえもんたちは、パピを守ってピシアと戦うことを決めた。
ピシアのドラコルル長官は戦闘艦から大量の探査球を放出し、パピの協力者としてジャイアンとスネ夫をマークした。パピは探査球を発見して撃ち落とすが、そのせいで野比家はマークされることになった。ドラえもんはパピの安全を考え、しずかの家へ移動させる。さらに彼は壁紙秘密基地を出し、その中にドールハウスを置いた。同じ夜、宇宙からカプセルが飛来し、中から犬のロコロコが出現した。次の朝、のび太たちが登校すると大量の探査球が周囲を飛び回り、1つはジャイアンのズボンのポケットに侵入した。
ドラえもんはのび太たちを集め、緊急会議を開くことにした。しずかが不在だったので、ドラえもんたちは彼女以外で始めることにした。彼らはスモールライトで小さくなり、ドールハウスに入った。その際、ドラえもんはスモールライトをハウスの外に放置した。ドラコルルは探査球でドールハウスの場所を知り、戦闘艦を発進させた。ドラえもんはのび太たちに、探査球の発信地を突き止めたことを知らせた。スネ夫がラジコンの戦車で乗り込もうと提案すると、他の面々も賛同した。
ドラえもんたちが戦車で出撃した直後、しずかが帰宅した。スモールライトを見つけた彼女は小さくなり、牛乳風呂を楽しんだ。そこへドラコルルが部下たちを率いて乗り込み、しずかを連れ去った。ドラえもんたちは発信地の廃車置き場に着くが、敵は発見できなかった。彼らが諦めてドールハウスに戻ると、ドラクルルの「1人で公園に来ないと人質の命は無い」というパピ宛てのメッセージが残されていた。ドラえもんたちがスモールライトが無いことに気付いて焦っている間に、パピはこっそり抜け出した。
ドラえもんたちは小さいまま戦おうと決意し、戦車を改造した。パピは公園へ赴き、しずかを解放させた。パピが戦闘艦で連行されるのを、しずかと共にロコロコも見ていて嘆いた。しずかはドラえもんたちに、パピが連れ去られたことを知らせた。ロコロコはパピの愛犬で、同志が秘密基地を作ってギルモアに決戦を挑むことになったので迎えに来たのだった。ドラえもんは敵と戦うためにスモールライトを取り返す必要があると考え、パピのロケットでピリカ星へ向かうことにした。
ロコロコはドラえもんたちを乗せてロケットを操縦し、ピリカ星へ向かった。その途中、彼は仲間のシャトルがピシアの無人戦闘艇に攻撃されるのを見た。ドラえもんたちは戦車で出動し、無人戦闘艇を倒した。ロコロコはロケットを小衛星の秘密基地に着陸させ、自由同盟のリーダーであるゲンブにドラえもんたちを紹介した。ゲンブは彼らに、パピがピシア本部で捕まっていること、明後日に処刑されることを語った。ピリカ星では同志の地下組織が救出の手筈を整えていたが、ピシアの警戒網を突破するのは容易ではなかった。
ドラえもんは地下組織との連絡係を引き受け、スネ夫としずかには秘密基地を守る役目を任せた。ドラコルルは発信機で自由同盟の動きを突き止め、ギルモアに報告した。彼は「連絡員の動きを辿って地下組織のアジトを突き止め、小衛星の本部とピリカ星の自由同盟に総攻撃を仕掛ける」という作戦を説明した。ドラえもんたちは首都のピリポリスに潜入するが、ドラクルルは動きに気付いた。ギルモアは報告を受け、アジトを突き止めたら無人戦闘艇を束にして送り込めと命じた…。

監督は芝山努、原作・脚本は藤子不二雄、レイアウトは本多敏行、作画監督は富永貞義、美術設定・デザインは工藤剛一、美術監督は川本征平、録音監督は浦上靖夫、撮影監督は斎藤秋男、特殊撮影は原真吾、監修は楠部大吉郎、プロデューサーは別紙壮一&小泉美明&木村純一&波多野正美、演出助手は安藤敏彦&原恵一、色設計は野中幸子、特殊効果は土井通明、効果は柏原満、編集は井上和夫、音楽は菊池俊輔、主題歌『少年期』は武田鉄矢、『ドラえもんのうた』は大杉久美子。
声の出演は大山のぶ代、小原乃梨子、たてかべ和也、肝付兼太、野村道子、千々松幸子、八名信夫、金井大、潘恵子、三ツ矢雄二、屋良有作、中尾隆聖、白川澄子、松原雅子、塩屋翼、加藤正之、佐藤正治、速水奨、島田敏、菅原淳一。


藤子・F・不二雄(当時は「藤子不二雄」名義)の「大長編ドラえもんシリーズ」を基にした劇場版シリーズ第6作。
脚本も藤子不二雄が担当している。
監督はシリーズ第4作から3作連続で芝山努が担当している。
ドラえもん役の大山のぶ代、のび太役の小原乃梨子、ジャイアン役のたてかべ和也、スネ夫役の肝付兼太、しずか役の野村道子、ママ役の千々松幸子、出木杉役の白川澄子、しずかのママ役の松原雅子は、TVシリーズの声優陣。
ギルモアの声を八名信夫、ゲンブを金井大、パピを潘恵子、ロコロコを三ツ矢雄二、ドラコルルを屋良有作、ドラコルルの部下を中尾隆聖が担当している。

「宇宙小戦争」と書いて「リトル・スター・ウォーズ」と読ませるサブタイトルからも何となく分かるだろうが、『スター・ウォーズ』の影響を受けている。
また、のび太たちがビデオを撮影している設定から、オープニング・クレジットでは『トロン』『スター・ウォーズ』『フランケンシュタイン』『スーパーマン』『キング・コング』『E.T.』の有名なシーンを真似たカットが用意されている。
ちなみに、クロージング・クレジットでは『ガリバー旅行記』を真似たカットがある。

冒頭、反乱軍の攻撃を受けた大統領がロケットに乗せられて星を脱出するシーンがあるが、その姿は全く画面に登場しない。もちろん説明しなくても、それがパピなのは言うまでもない。
ここで姿を見せないのは、後で「パピが大統領だと告白し、ドラえもんたちが驚く」というシーンがあるからだ。
でも、どうせパピが登場した時点で、冒頭の大統領と同一人物なのはバレバレなんだよね。だから、その仕掛けは全く効果を発揮していない。
それと、パピだけでなくドラクルルとピシアの面々も、しずかを包囲するシーンまでは姿を見せないのよね。こっちに関しては、何か仕掛けがあるわけでもないので、ホントに無意味なだけだ。

のび太がどういう性格なのかは、それなりに理解しているつもりだ。だから、ある程度のワガママは許容できるが、今回の序盤は不快感が強いなあ。
彼はビデオ撮影にしずかを誘うが、人形アニメを提案されると露骨に不満をこぼす。裏山に移動しても、やる気が全く無い。
人手が足りなくて手伝いを頼んだ立場なのに、自分が撮りたい作品を何とか押し通そうとする。しずかがウサギがいなくなって悲しんでいるのに、ロケットを見つけると「これを使って特撮ビデオを撮ろうよ」と楽しそうに言う。
酷い奴だよ。

ドラえもん、のび太、ジャイアン、スネ夫、しずかという「いつものメンバー」がパピを助けるために行動する物語にするのは、当然ではある。
ただ、今回の展開で出木杉を除外するのは、いかがなものかと思ってしまうんだよね。
出木杉はスネ夫のビデオ撮影に協力していただけでなく、画面を横切るウサギに気付いているし、ピシアの戦闘艇が襲って来た時も一緒にいたのだ。
今回の一件には深く関わっているわけで、そんな彼に全く声を掛けないのは、仲間外れにしているんじゃないかと。

パピはドールハウスで暮らすよう言われた時、ドラえもんたちに「恐ろしい敵がいて、自分を追って地球に来る」と話す。
それに対して、ドラえもんたちはドールハウスで隠れるよう言うだけ。詳しい事情を尋ねるとか、敵が来た時に備えて準備を整えようとしたり、そういう行動は全く無い。
そしてスモールライトで小さくなり、ドールハウスで人形と踊ったりして楽しく過ごす。危機感が全く無いのだ。
実際に敵が来た後も、やはり危機感が欠けている。小さいサイズのままラジコン戦車で乗り込もうとするなんて、遊び感覚にしか思えない。
それでも「最初は遊び感覚だったけど反省して」みたいな手順があればリカバリーは可能だが、そんなのは無いし。

ドラえもんは最初にドールハウスに入る時、スモールライトを放置することは無い。しずかがピアノのレッスンへ行く時、四次元ポケットからスモールライトを出して元のサイズに戻している。
ところが緊急会議を開く時は、なぜかスモールライトを外に放置する。
っていうか、そもそも会議のために小さくなる必要も無いし。元のサイズのままでも、パピと話すことは出来るなんだから。
「スモールライトを敵に奪われる」という展開にするために、ドラえもんの行動が不自然になっているぞ。
あと、スネ夫がラジコン戦車を動かす時に使うリモコンはミニチュアサイズだが、スモールライトが無いのに、どうやって小さくしたんだよ。

っていうかさ、ドラえもんは「スモールライトが無いと元の大きさに戻れない」と焦るんだけど、そんなことは無いでしょ。
ビッグライトがあれば、大きくなれるはずで。ビッグライトが無くても、例えばガリバートンネルを使う手はダメなのか。
あと、タイムふろしきで時間を戻せば、小さくなる前のサイズに戻れるんじゃないか。
もっと究極を言えば、もしもボックスで「もしもスモールライトの効果が出なくなったら」と言うとか。
とにかく、ちゃんと考えれば色々と対策はありそうだよね。

ロケットでピリカ星へ向かう途中、スネ夫は「上手く行くわけないよ。必ず捕まる」と泣く。
でもドラえもんがのび太&ジャイアンと同志の元へ向かうことを話すと、スネ夫は「僕は?」と言う。危険の多い任務なのに、一緒に行きたがる様子を見せるのだ。
そして、しずかと戦車の操縦を練習している時は、余裕の態度を見せる。
ところが敵が基地に攻め込んで来ると、戦わずに隠れようとする。
なんか支離滅裂になってないか。ずっと怯えている設定にしておけば良かったんじゃないか。

終盤、敵の大軍が小衛星の秘密基地を攻撃し、スネ夫やしずかたちは窮地に陥る。だが、ドラえもんはそんなことを全く知らず、地下組織のアジトでノンビリと歌を聴いて楽しんでいる。
もちろん秘密基地の状況を知らないから仕方が無いんだけど、「大切な仲間が殺されるかもしれないのに、何を呑気に過ごしているのか」と言いたくなる。
そんでネタバレだけど、最終的にはスモールライトの効果が切れてドラえもんたちが元の姿に戻ったことで、あっさりと敵を倒せるんだよね。
だけど、そこを「たまたまスモールライトの効果が切れた」という偶然だけに頼るのは、締まりが悪いぞ。
何か少しぐらい、自分たちの作戦やアイデアが貢献する形にすべきだろ。

(観賞日:2023年3月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会